災厄の少女とド底辺聖騎士   作:eXs(まっく)

10 / 23
第十話

 襲い来る触手を焼き払いながらローランはジョーに問う。

 

「命令がそんなに大事?」

「当たり前だ!」

 

 苛立ったようにそう返すジョー。返答する間もその剣は襲い掛かる触手を的確にさばいていく。

 

「なら、何をいらだつことがある?」

「いらだってなど……」

 

 手から光線を放ち触手を焼き払いつつも、ローランは決してジョーからその視線を外さなかった。

 

「私には解る。あなたは私の聖騎士。私たちは繋がっている……あなたはどんな騎士になりたかったの?」

 

 戦いのさなか歌うように告げられたその問いに、ジョーはとっさに答えることができなかった。

 

「僕は……」

 

 何を思い出したのか、数秒押し黙ったジョーだったが、次の瞬間には強い決意を目に宿してローランへと手を伸ばした。二人の手のひらが合わさり、そこに光が産まれた。

 

「「汝、堅き砕くもの、【デュランダル/不滅の刃】」」

 

 空間を割り、雷光を伴って現れる純白の騎士。

 

「ジョー!」

「聖騎士ならここにもいます」

「お前もかよ、まったく問題児共が。怒られるの俺なんだぞ」

 

 何処か嬉しそうにそう言うクラッドは、二人に作戦の説明をする。

 

「いいか、やることはさっきと一緒だ。地下の敵を俺が上空に転移させる、お前たちは全力でそこを叩け!」

 

「「はい!」」

 

「シャドウ・シフト」

 

 影に飛び込んだダークは、薄く広がり地中を猛スピードで網羅していく。

 

(……見つけたよ、クラッド)

 

「よっしゃ!行くぞ、二人とも!」

 

(目標補足、空間軸固定、転移開始)

「【シャクティ・ダーク/影を渡る無貌の鳥】」

 

 ――その瞬間、上空に森の全てを飲み込むほどの影が現れた、それは無数の触手を垂らした巨大なクジラのようだった。

 

(あなたに、力を!)

「【ローラン・デュランダル/不滅の聖光】」

 

 極太の光剣がその影を断ち切り、

 

(飲み込む、全てを!)

「【カーリー・ドゥルガー/遍く集う星光】」

 

 漆黒の闇が全てを飲み込んだ。

 

 それからは大混乱だった、学園に戻ると全生徒の身体検査が行われ、問題がないことが確認されるまで一部生徒が泣き出すほどだった。結局のところ、あの触手は源泉を吸い取る以外には害が確認できないとして、学園側は生徒への調査を打ち切った。

 

「お前も付き合うことないんだぞ?」

「任務だと言っただろう」

 

 学園に帰った後、検査から解放されると、アランとジョーはランニングをしていた。校内を走る二人が校舎裏の花壇に差し掛かると、そこではサラが花に水をやっていた。

 

「あ、アラン君!」

「サラ、何してんだ?」

「私、園芸委員会に入ってるんだ」

「いや、そうじゃなくて、今日は大変だっただろ?代わってもらえなかったのか?」

「ううん、いいのこういうの好きなんだ」

 

 花への水やりを切り上げると、サラはアランに近づきジョーに聞こえないぐらいの声で言った。

 

「(ありがとう、聖騎士様)」

 

 その声に、アランはぎょっとした顔をするのだった。

 

 

 森が確認できる荒野にその男はいた、容姿はどこにでもいそうな平凡なものだった、くすんだような金髪と少々生えた無精ひげ、新緑の瞳はふらふらとあたりをさまよっている。

 

「あれが簒奪魔法、奪い取る力……私が欲するもの」

 

 精気のない声が、乾いた風に乗って荒野に消える。男の周囲には無数に小型怪獣の死体が散乱していた……。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。