災厄の少女とド底辺聖騎士   作:eXs(まっく)

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第九話

「クラッド」

「どうした?シャクティ」

「ドローンがすごい速さで撃破されてる、それもほぼ同時に複数個所で」

 

 少し焦った様子で、手元のタブレットを指さしてシャクティがクラッドに告げる。

 

「ほんとか?」

「ええ、生徒が撃破してるにしてはペースが速すぎる」

「全員のGPS通信機に通信を入れろ、予定変更。開始場所に戻るように……」

 

「クラッド先生!!……生徒のGPS反応が消えていってます!!」

 

 クラッドが行動を起こそうとする前に、随行していた聖騎士から緊急通信が入る。事態は急速に動き出していた。

 

 護衛の聖騎士がけして油断していた訳でも弱かった訳でもない。しかし、場所がまずかった。地表すれすれを飛行する量産型機人クレイモア、生徒達の反応が消えた地点に急行していた四人の聖騎士全員が同時に森の中から襲撃を受けたのだ。

 

「まて、地面の中に何かいるぞ!」

 

 四番機が焦ったように叫ぶと、各機体からも似たような状況を告げる通信が入る。

 

「く、こちら四番。地中から飛び出してきた触手に応戦中!」

「三番、生徒の居た位置に繭状の触手発見。微弱だが中から電波が出ているぞ」

「一番、こいつら切っても再生するぞ!」

「二番、いくら何でも量が多すぎる、本部に救援要請!」

 

 開始地点で通信を聞いていた二人は、同時に互いへと手を伸ばす。

 

「クラッド……」

「ああ、怪獣だ!」

 

 開いた手のひらを互いに合わせ、二人は祈るように叫びをあげる。

 

「「汝、陰に潜むもの、【ダーク/暗殺剣】」」

 

 渦巻く影から這い出す濃紫の機人。東洋におけるシノビのような、全体的に鋭角の機体、関節から立ち上る黄色のオーブ、青く輝くデュアルアイを森に向け紫の忍びは駆け出した。

 

「まずは生徒を助ける。怪獣退治はそれからだ、シャクティ!」

(ええ!)

 

「シャドウ・シフト!」

 

 機体は影になり、森の闇へと消えていく。

 

 一方、アラン達五人はうっそうと茂る森の中を逃走していた。

 

「アラン!早くぅ!」

「カーリー、首絞めるな、苦しい!」

 

 背負ったカーリーに首を絞められながらも必死に足を動かすアラン。

 

「敵影確認、後方五」

「いくら切っても意味ない触手なんて、相手にするだけ無駄だ」

 

源泉で脚力を強化し先頭を走るジョーとローラン。

 

「激しく同意ぃー、も、もうむりー」

 

 強化しながらも、緊張からか既にばてているサラ。

 

「が、がんばれサラ。捕まったら何されるかわからねぇぞ」

「触手ぅーぬるぬるぅー」

 

 先導するジョーとローラン、遅れるサラにカーリーを背負って走るアラン。五人は森の中を触手から逃走していた。

 

「先生も動いてるはずだ、とにかく森から抜けるぞ」

「ジョー、前方地中に熱源反応」

「くっ」

 

 突如としてめくれ上がる地面、五人の正面に現れたそれは、触手で形作られたワニの咢を持ち、短い手足で体を支えた巨大な爬虫類状に成型された触手群だった。

 

「GYOOOOOOO!」

 

「く、ロー……」

 

 ローランに手を伸ばすジョーだったが、それを遮るように森の影から伸び上がり飛び出す者がいた。

 

「ちょおっとまったー!」

 

 その影は、大口を開けて五人に喰らい付こうとしていた怪獣を両手で切り飛ばすと、五人を庇うように立ちはだかった。

 

「俺の生徒に何してんだ!」

 

 紫の忍び、クラッド=クレイの操る第二世代型機人ダークだった。

 

「この声ぇ、先生ぃ」

「おう、嬢ちゃん待たせたな!他の生徒はみんな回収済みだ、あとは嬢ちゃん達だけなんだが……その前にこいつをどうにかしないとダメみたいだな」

(回収しようにも、周囲が触手だらけだな)

 

 クラッドの声を捕足するシャクティ。

 

「ジョー、アラン。少し耐えてろ……いくぞ!」

(正面からは、苦手なんだが……致し方ない)

 

 剣を振るい触手を切り払うアラン、ジョー、サラ。光線を出し焼き払うローラン、逃げ惑うカーリー。

 

「加勢しようジョー!」

「ダメだ、命令は耐えることだ」

 

 我慢できないといった風のアランにジョーは冷静に否定の言葉を告げる。

 

「先生の機人は奇襲用のダークだ、正面戦闘じゃあ再生型の怪獣相手は不利だ!」

「それでもだ、不用意に動けば現場が混乱する。他に騎士もいるし、応援も要請したはずだ……それまで待つんだ」

 

 触手の攻撃をさばきながら喧嘩をする二人、そんな二人の隙を突くように

盛り上がる足元の地面。

 

「二人とも、危ない!」

 

 二人を突き飛ばして、代わりに巻き上げられるサラ。サラを助けるために剣を振るう二人。

 

「サラ!」

「くっ!」

 

 サラを巻き上げた触手を根元から切り飛ばした二人。上空から落下したサラを受け止めたアランは、状態を確認するように顔を覗き込む。

 

「大丈夫、気を失ってるだけみたいだ」

「まずいな、サラとカーリー二人同時にはカバーできない」

「俺は行くぞ、ジョー」

 

 何かを思い出したように決意を新たにするアラン。

 

「待て、命令は……」

「守るものは、自分で選ぶんだ!」

 

周囲の触手が一斉に五人に襲い掛かった。

 

「「汝、全て奪うもの、【ドゥルガー/簒奪王】」」

 

 触手を切り払い黒い銀河のただ中から風と共に顕現する漆黒の機人。黒武者は周囲の触手を一掃すると、触手の塊へと一撃を加え、ダークの援護をする。

 

「加勢します、先生!」

 

 コックピットにはサラを抱いたアランがいた。

 

「アラン、耐えてろって言っただろ!」

「守るものを見失うなって、先生言いましたよね!」

「……しょうがない奴だ、合わせろ!」

「はい!」

 

 数瞬見つめ合った二人は一つ頷くと、互いに左右から触手塊へと攻撃を仕掛ける。

 

「潜影剣!」

「バイト!」

 

ワニのような巨体を影によって延長された足で蹴り上げるダーク、ぶちぶちと音を立てて地面から離れたその体、それに合わせるようにその半身を抉り抜くドゥルガー。しかし、地に着くと同時に、負わせた損傷の大部分が修復していく。

 

「やっぱりか、こいつはほかの触手と同じ末端だ」

(地面との接続を切れば再生しない、逆に言えば地下から何かを受け取っていると?)

「ああ、おそらく地下に本体がいるな」

 

 そう考察するクラッドにアランは尋ねる。

 

「じゃあどうすれば」

「アランは何か方法はあるか?」

 

 逆に尋ねられ一瞬返答に詰まったアランへカーリーからイメージと共に声が届いた。

 

(アラン……いけるよ)

 

 瞬間的にアランの脳裏にそれが浮かぶ、自身を中心に周囲一帯すべてを漆黒の銀河に飲み込むドゥルガーの姿だ。

 

「っ……無理です!」

 

 あまりの惨状に思わず否定の声を上げるアラン。

 

「……そうか、俺が何とかするにしても、せめてもう一機ほしいところなんだが」

 

 アランの返答に若干いぶかしみながらも、クラッドはその視線を地上のジョー達へと向けていた。

 

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