インフィニット・ハンドレッド~武芸の果てに視る者 作:カオスサイン
結構タイムリー?なネタで書いてみたよ。
*本編の春季に関するこの先のネタバレも含まれているから注意!
番外編Ⅰ「奏でられしワンサマーフェスティバル」
Sideイチカ
「早く行きましょうイチカさん!」
「そう引っ張るなってもう!」
カレンに手を惹かれ俺は少々戸惑う。
「はーくん…」
「あの…音六?あんまり人前ではくっつかないでくれないかな?…」
「や!…」
「…すみません私が悪うございました…」
「あ~…なんだか苦いコーヒーが飲みたくなってきたわね…」
「私もちょっと苦目の茶を所望したいな…」
「奇遇ですわね私もですわ…」
色々あって春が記憶を取り戻した一週間後、各地で夏祭りが開催されていた。
勿論愚兄は外出許可など出る訳がなく今も強制奉仕作業をさせられているが気にしてやる事ではない。
それからというものより一層激しくなったセラフィーノのスキンシップに春は困惑していたがまた新たな決意を固めているだろう。
二つの甘々なイチャつきを見ていた鈴達は砂糖を吐き出しそうになってげんなりとしていたが。
「じゃあ、花火が打ち上げられる十分前に此処に集合としよう!」
集合場所を確保し俺達は花火の時間までそれぞれ祭りを楽しむ事にした。
「ん?…」
それから十五分後、俺達はあるものを目にした。
それは…
「えーん!」
「そ、そんなに泣くなよ…当たりが出なかったんだからしょうがないだろ…」
「やだやだ!あのネコちゃんのぬいぐるみが欲しいよー!うえーん!」
「…」
大声で泣き叫ぶ少女とそれを必死になだめようとしている小学校低学年くらいの男の子の姿があった。
往来する周囲の人々は面倒事に巻き込まれたくないからか彼等に手を差し伸べる事はない。
「君達、一体どうしたんだい?」
「ふえ?…」
俺はそんな彼等を放ってはおけずに声をかけた。
「お兄さんに理由を話してごらん?」
「う、うん…妹の花南がクジ引きのお店に出ている景品を欲しがった僕もゲーム機とソフトが欲しかったから挑戦してみたんだけど…」
「お目当ての景品の当たりが全く出なかったという事だね?」
「うん…お母さんに貰った僕達の今月の御子遣いと貯金していたお年玉を全部使っちゃったんだけどね…それでも当たりが出なくて…花南はそれが諦め切れないみたいでさっきから泣き続けているんだ…」
「ちなみにいくらくらいはたいたんだい?」
「二人で二万円ちょっとです…」
ふむ…それだけ使っても当たらないとはその露店は怪しいな…。
流石に使った額が額だけに兄である彼も何処か諦めがついていない様子だった。
「話は分かった。カレン、春とセラフィーノに応援を頼んでおいてくれ」
「分かりました!」
「僕はそのクジ引き屋に俺達を案内してくれないか?」
「え?良いけど…」
男の子は少し困惑した様子ではあったが俺達を店のある場所まで案内した。
少し進んだ先で景品が縦列されたクジ引き屋の前に着く。
「君達は少し離れた所で待っていてくれ」
「う、うん…でもどうするのお兄ちゃん?…」
「まあ見てなって!」
予想外の事態が起きた時の為に男の子達を店から少し離れた所に待機させ、俺は件の店へ向かう。
「すみませーん!このクジって一回何円ですか?」
「二回で五百円、十回連続だったら三千円だぜ兄ちゃん」
「…じゃあやらせてもらおうかな」
「毎度あり!へっへ!…」
どこぞのチンピラの様な恰好をした店員が出てくる。
やはり!…この店、価格設定からして可笑しい事にすぐに気が付いた俺だが気が付かない振りをしてクジを引いていく。
だが一向に当たりに該当する番号のクジは見当たる事はなかった。
「お兄さん、此処のクジって本当に当たりはあるのか?」
「あ、あたぼうよ!…これを見てよ!馬鹿言っちゃいけないぜ兄ちゃん…」
俺が店員にそれとなく聞くと明らかに動揺を見せながら店に吊るしてある「安心して下さい。当たりは入っていますよ」的な信託状らしきものを見る様に促してきた。
がそんなものはただの紙切れにしか過ぎないのだ。
「お待たせ!」
「お?来たな!要件はカレンが伝えた通りだ」
「分かった!」
「じゃあ店員さん残っているクジを全て出して下さい!一緒に全部買いますから」
「何ィっ!?…」
流石に今日の俺の所持金では全ては買い切れないだろうと思い、春達に協力を仰いだ。
全てのクジを買い占めると言った俺達にチンピラ店員は信じられないといった表情で青冷めていた。
「どうした?」
「あ、アニキ!いやこの客の兄ちゃん達がウチにクレームをつけてきやがってですね…」
「ほう…」
「…」
親玉の店長らしきオッサンが出てきて店員に訳を尋ねて聞いた瞬間俺を睨みつけてきた。
「おうおう、あんちゃん達よぉしょうもないやり方すんなや!」
「はあ…」
続けてスキンヘッドのハゲたオッサンも出てきて此方を脅した口調でそう阿呆な言い分を言ってきた。
これはもう確定的だな。
Side春季
イチカ兄さんに呼ばれた俺は指定の露店に辿り着くと一目見て分かった。
このクジ引き屋は明らかな法律違反をしている露店だという事が。
そして景品の中にあるぬいぐるみは…俺と音六との記憶を繋いでくれたのと同じメーカーから出ているものだ。
それをあんな不届きな輩に利用されるなんて我慢ならない。
ん?あの店長らしきオッサンとスキンヘッドオッサンが着ている服のロゴは!…不味い!
「イチカ兄さん急いで展開を!」
「むっ!?…」
パーン!と銃声が辺りに鳴り響き周囲から悲鳴が聞こえてくる。
だが…
「なんだと!?…」
「危ないなおい!」
俺が急いでイチカ兄さんに武装を展開する様に促していた為に無事だった。
「おいおい…いくらなんでも祭りに拳銃を持ち込んでくるのは流石にどうかと思うぜ?なあ、「山夏至組」のヤクザさん達よ…」
見覚えのあるロゴのおかげで彼等の正体に気付いていた俺は暴露する。
「な、何者なんだ貴様等は!何故同じ男である貴様達がISを動かせている!?」
「おいおい勉強不足だぜオッサン」
「あ!?…こ、コイツ等確か世界初の男性IS操縦者の内の二人ですよ!」
「な、何ィッ!?」
チンピラ店員が俺達の正体に気が付き告げると親玉の組長達は驚く。
「やはりこの店のクジは外れしかないようだね…」
「な、何を根拠にそんな事を!…」
「アンタ等が意識をこっちに集中してくれていたおかげで残っていたクジ袋を全て調べてみたが一枚も当たりのクジは入っていなかったぜ?これは明らかな詐欺行為だろ?」
「!?い、いつの間に!?…」
チンピラ店員が握っていたクジの袋がいつの間にかイチカ兄さんの手にあり彼等は驚く。
「ああ、そうだ。
なけなしのお金を工面して楽しむ筈の幼い純粋な子供達から搾取して恥じはないのか?アンタ達は!」
「そ、そうだそうだ!」
俺の怒りに同調するかの様に周囲の客達も口々にオッサン達に向かって怒号を放っていた。
Sideイチカ
「…な、何がブリュンヒルデの弟だ…何が男性IS操縦者だ!
よくも山夏至組を舐めた真似をしおってえー!」
「むっ!?不味いぞ!…」
手口と身分を明らかにされてそれでもまだ懲りずに銃を手に取るオッサン。
ヤバイ!アイツ、もう感情の制御が効かなくなってやがる!
このままでは野次馬している他の客達に被害が及びかねない。
「大丈夫だ兄さん…もう応援はすぐそこまで来ている!」
「あ、そうか!」
「とう!○イダーキィィック!!」
「ぶべらあっ!?……」
「あ!?アニキィー!?」
春がもう助っ人を呼んでいたようだ。
オッサンに勢い良く本家並の○イダーキックを喰らわすタイセイさんが駆け付けてきてくれたのだ。
「へへん決まったぜ!…此処にも山夏至組の詐欺露店組が入り込んじまっていたようだな…日本のサツはこの辺しっかりしやがれってんだよったく…」
「お父さん…ちょっとやり過ぎ…」
「んあ?…」
いきなり現れたタイセイさんに他の者達は驚き、当人はやり過ぎだとセラフィーノにたしなめられていた。
「あ…アニキの敵ィー!」
「つくずく引き際ってモンを弁えない奴等だな…甘いんだよ!おらよお!」
「はあっ!」
「援護します!鳳流奥義、鳳凰烈突破!ひょおー!」
「ギャアアアー!?……」
「安心しろ…峰打ちだ」
ゾロゾロと敵を討とうと出てきたチンピラ達であったが相手が悪過ぎた。
見事にタイセイさんとレキナさん、そして春の援護により完膚無きまでに叩きのめされていた。
その後、通報を受け付近でパトロールをしていて駆け付けた私服の警官によってあえなく彼等は御用となった。
「それにしてもタイセイさん達も又日本に来ていたんですね」
「ああ、それなんだがな…」
「あ!おーい、イチカ君達大丈夫だったー?」
「何か物凄い音が聞こえてきたんだけど…」
向こうから先程の銃声を聞きつけて鈴達がやってくる。
刀奈会長だけ平気な顔でいる事からすぐに俺は察した。
「テヘペロ!・w・
でも助かったわタイセイさん。
あのヤクザ達はいつも入り込んで来てとても迷惑していたから」
「成程、この騒ぎは会長の仕業でもありましたか」
「二割ぐらいはイチカ君達のせいだと思うけどね…」
「はは…」
刀奈会長はここまで事を荒立てるとは予想外だったのかそう言った。
「イチカ坊、確かに最初にあの山夏至組の件の依頼は更識の嬢ちゃんだが他にも一緒にされちゃたまんねえといくつか親交のある真っ当な組にも依頼されてきたってワケよ!
ファミリーとしても世界規模で暗躍しつつあった山世夏至組の勢力は無視出来ねえ所まで拡大しつつあったんでな!そんじゃまだ依頼は完了してねえから引き続きいってくるぜ」
「皆様お騒がせしました」
そういってタイセイさん達は又旅立っていった。
「はい」
「え?あのコレは…」
「ゲーム類はちゃんとしたお店で買う方が良いから良く覚えておいてな」
「本当にイイの?お兄ちゃん…」
「その猫さんのぬいぐるみもあんな奴等の手元にあるよりも花南ちゃんの所にいた方が幸せだと思うよ」
「ありがとうお兄ちゃん!」
「あ、ありがとうございます!」
俺達はその直後あのヤクザ達から取り返したお金を俺が男の子に手渡し(せめてもの慈悲でぬいぐるみの一回分は払っておいた)、春がぬいぐるみを花南ちゃんに渡すと凄く喜んでくれた。
ドドーン!
「お!」
「いけない時間!」
花火が打ち上がる音がしたので俺達は慌てて集合場所に急ぎ楽しむのだった。
「「た~ま~や~あ~!」」
番外編は思いついたらやっていきます