インフィニット・ハンドレッド~武芸の果てに視る者 作:カオスサイン
時空移動装置→正しくは時空転移装置でした。
寮入りが決まってからの翌日の昼休み時間に学内食堂で俺の今迄の出で立ちを可能な範囲までを春達に話した。
勿論愚兄や愚幼馴染が会話に聞き耳や入ってこれないような位置の席で。
そして彼等には言っていなかったカレンと恋人同士という関係という事も洗いざらい暴露した。
「そ、そんな!?…」
「ええ!?今夜はヤケコーラじゃあ~!…」
「イッチー男だねー」
案の定俺の事を密かに好いてくれていた美月には泣かれてしまい、会話を聞いていた俺をイッチーと呼ぶクラスメイトののほほんさんや他クラスの女子達には驚かれ彼方此方で悲鳴が聞こえてきた。
あ、女子の叫びは愚兄には聞こえていないよ?
何故なら授業中に完全に爆睡をしていた所終わる寸前にコッソリ耳栓を投入しておいたから。
その後彼は賢姉殿に出席簿アタックを喰らっていたのはいうまでもない。
「本当にすまない…」
「…イチ兄さんちょっと一発だけ軽く殴っても良い?…」
「ああ…」
「じゃあいくよ…」
春は少しばかり俺に対しての不満と怒りを感じていたようで軽く俺の頬を殴ってきたので素直に受け止めた。
「!?」
その光景を見ていた美月や他の者達は驚く。
「ちょ!?…」
「良いんだよコイツは俺の罪だからな…」
春の奴…殴る際に少しだけ笑みをこぼしていたな。
そういう事か。
「…ねえイチ兄、俺は変われるかな?」
俺が彼に対して言おうとすると向こうから聞いてくる。
「ああ、己の心が変わろうと思えているならいつだって変われる筈だ!」
「そう…」
春も今迄と違う自分へと変わろうとしている。
俺は影ながら彼を応援したいと心から思った。
「いつ迄話をしているつもりだ?昼休みはもうすぐ終わるぞ」
「それはどうもすみませんね織斑教諭」
「分かっているのなら早く次の授業準備をしろ」
空気の読めない賢姉殿がやってきたので俺達は「はあ…」と思いながらも次の授業準備へと取り掛かるのだった。
~そして代表決定戦当日~
俺達三人は山田教諭と賢姉殿に呼び出された。
「学園には今使える予備機が無い。
なので政府からお前達に専用機が与えられる事になった」
「マジで!?千冬姉さん」
「織斑先生と呼べ」
出席簿アタック以下略。
そうかどうやら春の専用機については表向きは政府からとなっているようだ。
開発は天災、束さん製だけど。
まあ俺もハンドレッド技術を少しばかり組み込んでやって関わってはいるが。
愚兄の専用機?山田教諭から聞いた所機体名は『白式』、武装は賢姉殿が現役時代に運用していた刀『雪片・弐式』みたいだ。
おい俺のと若干被っているじゃねえか!という聞き入れられる事の無い個人的文句は置いといて…
「すまないが政府や企業の思惑に付き合うつもりは更々無い」
「テメ!ちふ…織斑先生の好意を無下にするのか!?」
案の定愚兄が意味不明な俺に噛みついてきた。
「お生憎様だが俺は既に専用機を所持しているんだよ。
スペックカタログも学園長に提出済だが?」
「なんだと?」
「ああそういえばそうでしたね」
俺がそう言うと賢姉殿は目を丸くし山田教諭は思い出すように言った。
まあ、流石に新たに作成して所持しているハンドレッド全てのカタログ提出が出来ている訳ではないが。
「まそういう訳だから。
そこの二人は初期化と最適化の時間が必要だろう?」
「あ、ああ…ならば初戦は剣崎、お前とオルコットの勝負になるな」
「それなら俺はもう行ってくる」
ようやく解放されアリーナに向かう途中、偶然カレンと美月に会った。
「イチカ君頑張ってね!」
「イチカさんなら負けないと思いますけれどくれぐれも油断禁物ですよ?」
「分かってるって!そんじゃ行きますか!」
二人の応援を背に受け俺は走りながらハンドレッドを展開しいざ戦場へと向かった。
「あら?逃げずに来ましたのね…ってふ、フルスキンのISですって!?」
俺のハンドレッドを見たオルコット嬢は驚く。
「ああ他の二人はセッティングがまだだから俺から先にアンタと戦う事になった。
ではいこうか!」
[『これより剣崎イチカVSセシリア・オルコットによるISバトルの開始を宣言する!
両者始め!』]
「ではお別れですわねっ!」
「おっと!」
オルコットが自身のIS、『ブルーティアーズ』の主武装『スターライトMK-Ⅱ』を俺に向け発射してきたが俺は難無く回避した。
「避けたですって!?」
「初動前から銃口を向けられてたらアホでも分かるわ!
よもや手を抜いているんじゃないだろうな?ん?」
俺はオルコット嬢を挑発気味に誘う。
「い、今のはきっとマグレですわ!
踊りなさい私のブルーティアーズが奏でる円舞曲で!」
彼女のIS最大の特徴といえる機体名と同じ名のBT[ビット]兵器が俺の周囲を囲み浮遊しながらレーザーを撃ち放ってくる。
「受けて立つ!…と思ったがコイツは不味いな!…」
レーザーの火力はEバリアでは防ぎ切れない上にNバリアを展開したとしても多方向からの追撃まではカバーし切れない。
なので時には回避しながらチャンスを探る事に専念する。
「ムッ?…」
そういやオルコット嬢はBT兵器を操っている時には他には何も追撃してこないな…もしかして!
「温いステップだな!…」
「ッ!…」
俺は向こうの世界の記憶の一つ、ハヤトと共にリトルガーデン入学式で俺達がやらかしてしまったせいである後のクラスメイト達が危うく退学させられそうになった為にクレア会長とリディ・スタインバーグ副会長生徒会組に申し込まれた決闘を受け戦った事を思い出した。
クレア会長のハンドレッド『気高き戦姫<アリステリオン>』はオルコット嬢と同じような武装…すなわち『ドラグーン型』に分類されるあまりまともに扱える武芸者が少ない種類だ。
だけどクレア会長はオルコット嬢みたいに決して一つの動作しか出来ない訳じゃなく『絶対無敗の女王<パーフェクト・クイーン>』の二つ名に、そして『力を持つ者の責務』ノブレス・オブリージュを体現し恥じないかなりの強さを誇っていた。
一方のオルコット嬢は己の最大の弱点を俺に見抜かれたと気が付きBT兵器での攻撃を激しくしてくる。
「なんでこうも当たらないのですの!?」
「冷静さを失った乱雑な攻撃に当たってたまるかよ!
オルコット嬢、貴方はそれでも代表候補生なのかよ?
貴方が本当の気持ちで守り通したいものは一体何だ?!」
「!ッ…」
俺の言葉を聞いて彼女ははっとし何か思いに浸っているようだった。
Sideセシリア
今私とISバトルで相対している男性操縦者の内の一人である剣崎さんが私にかけた言葉で真剣勝負の最中だというのにふと私は数年前に両親が突然列車事故によって亡くなりその日から残されたオルコット財閥の莫大な遺産や次期当主である私の身を狙う輩の手から守る為に日々血眼になりながらISを勉強し自国の代表候補生の一人となった。
そして両親の事、母は社長令嬢でいつも強い誇りを持ち得ていた。
一方の養婿として母と結婚した父はいつも母にペコペコ低姿勢を保っていた。
物心付いた時は何も思わなかったが心と体が成長していくにつれていつの日か段々と父のその態度が嫌いになってしまっていた。
だけど気が付いたのだ。
母も父もお互いをとても信頼しそして愛し合っていた事を。
訪れてしまった事故の日も二人仲良く寄り添っていた事をお付きのメイドのチェルシーから聞いた。
「ぐすっ…」
「お、おい?」
「御見苦しい所をお見せしてしまい申し訳ありませんわ。
それでは再び参りましょう!」
それらの事を思い出し少々涙ぐんでしまうがすぐに気を取り直して再び武装を構えた。
Sideイチカ
オルコット嬢の現在の様子を見てどうやら彼女の中で色々とあったのだなと察した。
なら俺はその全力に応えるまで!
「いくぞ!『残影斬』!」
イグニッションブーストで一気に彼女との距離を詰め残影斬で畳み掛けようと仕掛けると…
「かかりましたわね!ブルーティアーズは後二基ありましてよ!」
オルコット嬢がフェイントで隠していた二基のビットを放ってくる。
「ムッ!?なら『虚残影幻斬』!」
「!?一体何が…」
俺もすぐにフェイントで対抗。
俺と義父さんで新たに編み出した残影斬を一度キャンセルし再び振るうという虚残影幻斬でビットを斬り裂いた。
「これで幕引きとさせて貰おう!『残影一突斬』!」
「い、インターセプター!」
刀身にセンスエナジーを流し込んだ俺の必殺の一撃に対しオルコット嬢は唯一の近接武装のダガーをコールし防ごうとするがリーチの差もあり叩き込まれた。
そしてブルーティアーズのシールドエネルギーが0となったと同時にアナウンスが鳴る。
「『こ、この勝負ブルーティアーズのシールドエネルギーエンプティーにより剣崎イチカの勝利!』」
「ワー!」
歓声が響き渡ると同時にオルコット嬢はペタンと座り込んでいた。
「ま、負けてしまいましたわ…」
「大丈夫か?」
「え、ええ…剣崎さんいえイチカさん…貴方のおかげで色々と私の心の中でモヤモヤしていたものを晴らす事が出来ましたわ」
「それはどういたしましてだな」
互いに握手を交わしクラス代表候補決定戦第一試合が終わった。