インフィニット・ハンドレッド~武芸の果てに視る者 作:カオスサイン
Sideイチカ
「ファッー!?(ノ゜⊿゜)」
「これはこれは…」
「んなぁっ!?!?」
鈴と再会してから翌日の一限目授業が終わった直後に俺はいや、俺達は衝撃的な光景を目の当たりにしていた。
愚兄は別の意味で仰天している様だが。
「…(^^;;」
「ん~!はーくんの一年半振りの匂いだ~!」
春が突然うちのクラスにやってきた美少女に抱き着かれていたのだ。
頭に恐らく野良であろう白い子猫を乗せながら…此処ってペット可だったけ?
もしや彼女が件のイタリア代表候補の転入生なのか?
まさか春が彼女と顔見知りだとは思いもよらなかったが…彼の様子が可笑しかったのはこれだったのか。
…よし!
「ちょっと良いかな?」
「ちょ!?剣崎君!?」
思い切って春と転入生であろう少女に問いかけようと俺は断りを入れた。
醸し出されていた甘い空間(スウィート・スペース)に赤面していたクラスメイトにビックリされるがかまわない。
「誰ー?…」
転入生の少女は俺にまるで興味が無い様なぼんやりとした物言いで聞いてくる。
あれ?…このパターンは物凄くアレな予感がするぞ!?
「ああ、俺の兄…じゃなかった親友の一人だよ音六」
「剣崎イチカだよろしくな」
「うにゅ…そうなんだよろしくーイーくん」
「い、イーくん?そうかそうか!」
「にゅ?…気持ち良い…」
春が音六と呼んだ少女は俺もあだ名呼びしてきた。
俺は辛抱堪らずいつの間にか手が勝手に動いて彼女を撫でていた。
「イ~チ~カ~さん?」
「ハッ(||゜Д゜)!?か、カレンゴメン!」
「…後で私の事も撫でてくれたら許してあげます」
「分かった!分かったから!」
「むー~!約束ですよ!」
隣でカレンがダークオーラを出しながら物凄く良い笑顔でだが微かに笑ってない表情で俺を見てきたので即座に必死に謝罪した。
「だって衝動的に撫でたくなったんだつい!」なんて言えなかったが。
「イチカ君ごめん。
彼女の代わりに俺が紹介するよ。
名前は音六・フェッロン・セラフィーノなんだ」
ン?…セラフィーノだと?彼女はもしや…後で一応更識会長にも聞いてみるか。
そう思っていた矢先に
「へー、春季の癖にこんなカワイイ娘とお知り合いだなんてな。
俺は織斑秋彦、春季の兄貴だよろしくしようか!」
愚兄が茶化す様に、尚も春を見下しセラフィーノを値踏みする様な視線で取り入ろうとしてきた。
が…
「…この人なんか嫌だ…怖い!…」
「ね、音六?…」
「ほう?…」
愚兄がセラフィーノの視界に入ってきた瞬間、彼女は愚兄に向かってそう言い放ちながら春の背後に隠れてしまった。
ついでに彼女の頭に乗っていた子猫も降りてきて愚兄を「フシャー!」と威嚇していた。
初対面なのにも関わらず恐らく愚兄の歪んだ性根に感憑いたのだろう。
俺は一人関心していた。
「んなっ!?俺はソイツの兄貴なんだぜ?なんで怖がられなきゃいけないんだよ!?{春季の野郎…彼女に俺の事を悪く吹き込みやがったんだな!}」
そんな事も分かろうとしない愚兄は明らかな思い違いをして春とセラフィーノに吠え叫んでいた。
Side春季
「そうは言われてもな…{秋彦兄さん…どうしてアンタは気付けないんだ?…あれだけ完膚無きまでの焦燥を刻み付けたというのに!…音六にまで迷惑をかける気かよ!…}」
予感は当たってしまった。
二年前の不良生活を送っていた中で出会った少女、音六が恐らくは俺が修行していた一年半の間に彼女も帰国しイタリア代表候補生になる努力をしていたのだろう。
つい最近なったようだったから確信が持てていなかったのだが…俺の傍に居たいが為に…でも俺はそんな彼女の好意を煙たがってしまっていた。
どうしても後一歩が踏み出せない理由があるからだ…。
でも今はこの状況をなんとかしないと!…
秋彦兄さんの言い寄りに音六は知らない他人から見たら過剰ともいえる拒否反応を示した。
「秋彦兄さんす・ま・な・い」
「おい春季お前謝る気無いだろ?」
俺は音六を秋彦兄さんから距離を取らせて、兄さんに代わりに空謝罪をすると彼はそれでも収まりがつかない様子で空謝罪がバレたがこの光景を見ているクラスメイト達も誰一人として取り合わない。
それ所か「秋彦君ってあんな大人しくて天使の様な子にも些細な事で怒り出すなんて流石に大人気無くない?」とか聞こえてくる。
「ぐっ!?…」
どうやらこの言葉が兄さんにも聞こえていたようでしばらくして流石に押し黙った。
だが彼は全然納得していないだろうが…千冬姉さんに相談…いや出来るならとっくにしているわな…
「秋彦!お前の事を良く知らないこんな女に構ってやる必要はないぞ!
おい今すぐ彼に謝れ!」
突如先程まで購買に行っていて教室に居なかった盲信掃除用具という名の箒がいつの間にか戻ってきていたようで兄さんと俺達の間に割って入りそう戯言を抜かしながら音六の右手を掴む。
しまった!不味い!彼女の右手は!…
「いたっ!?…離して!…」
「む?…貴様はどうやら容姿だけでもてはやされていたようだがこの様な傷があるのではまるで台無しだな!」
俺が気付いた時は既に遅く箒は音六に暴言を吐いていた。
「…この傷は…」
音六はそんな箒の暴言に深く傷付けられ反論しようとするが今にも泣き出しそうになっていた。
「箒姉…」
美月も箒の暴言にほとほと呆れ果てている。
流石にこれ以上はこのままなんて事にはしておけずに俺は箒に向かって怒号を浴びせた。
「箒姉さん…いくらアンタでもこれ以上音六を馬鹿にする事は許しておけない!」
「な、なんだとそれではまるで私と秋彦が悪いみたいな言いがかりではないか!」
「そうだ不当な言いがかりだぞ春季!」
「…」
駄目か!…家族すらも大事に出来ない今の二人に彼女の傷の本当の意味を言っても理解しようとしないだろう。
俺が頭を抱えていると
「何をそんなに騒いでいる馬鹿者共とっくに授業は始まっているぞ?」
千冬姉さんが割って入ってきて強引に止められた。
Side千冬
「ム?…秋彦に箒が春季に何か言い合っているな。
それに春季の後ろにいる生徒は確か五組の転入生でつい最近イタリア代表候補生になったって奴だったか?…」
二時限目は私の担当だった為教室に入ろうとすると彼等が何やら言い合っていたようだった。
「ーこれ以上音六の事を馬鹿にするなら俺は例えアンタ達でも許さない!」
音六…それが転入生の名前か。
それに春季は彼女の事を知っているようだが一体何処で知り合ったというのだ?…
いや今はそれより春季が此処まで秋彦達にここまで怒りを露わにするとは思わなかった。
昔は大人くて良い子だった筈なのだが…何がお前をそこまで変えた?
そして、秋彦も礼儀正しい自慢の弟と言える存在だった。
だけどそんな彼も代表決定戦の時から何かが可笑しいと思う様になった。
「そろそろ止めねばな」
そんな彼女の考えは多少の間違いはあるが未だ「家族」の繋がりという名の鎖しか見れていない今にしては上出来であろう。
Sideイチカ
「全くアイツ等にも呆れたものだよな…」
賢姉殿はどういった理由で春達が言い争いを始めたのかあまり理解出来ていないだろうが…元・姉の強引さにも呆れていた俺は授業そっちのけで思考していた。
セラフィーノの手の傷に関して春が見せたあの尋常じゃない怒り様…どうやらまた一波乱起こりそうだ…。
思ったよりモップの屑度が大きく…まこれも彼女が自ら招いた自業自得って事で。
次回!
喧嘩騒動から翌日、イチカはもう一人の転入生、音六のファミリーネームに疑問を抱き、本人や春季に聞く前に暗部である更識会長を訪ねる事にする。
果たして刀奈の口から語られる音六の抱える複雑な事情とは?
そして現状春季しか知らない彼女の手の傷の意味とは?
一方でやはりわざわざ音六に対し言いがかりをつけてくる秋彦や箒に対して春季達そして偶然聞いていた鈴は遂にその怒りを限界突破しようとするが…
「再会の中国娘と春季の憂鬱PARTⅣ」