インフィニット・ハンドレッド~武芸の果てに視る者   作:カオスサイン

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EPⅡⅩⅤ「貴公子の正体と黒い雨の涙 中編」

Side千冬

私はボーデヴィッヒがアリーナで私闘騒ぎを起こしてると聞きつけ駆けつけたのだが彼女は剣崎の巧みな技に翻弄されていた。

途中で他の教師が止めに入り事無きを得たが…私は剣崎に言われた一言に目を見開き驚いた。

「賢姉殿今の心境は如何なものかな?」

「剣崎、やはりお前は…」

春季に聞いてみてもはぐらかされたが私はようやく目の前に居る剣崎イチカこそが私の大切な弟の一人である生死不明扱いになっていた一夏だと確信が持てたのだったが彼は何処か遠い目をしていた。

「一夏!なあ、お前なのだろう?!」

私は堪らずその名を叫ぶ。

だが彼は遠い目をしたまま言ってきた。

「賢姉殿、ボーデヴィッヒに一体何を教えてきたんだよ?…」

「一夏?…」

彼は怒りを込めた表情で私を睨みそう言ってきた。

「…それは私の指導がボーデヴィッヒにはあまり届いていなかったようだ…」

「本当にそれだけか?…」

「嫌…」

それだけではない事を悟った私はボーデヴィッヒの事について語った。

 

Sideイチカ

「はあ…」

元姉は自分ではなく俺がボーデヴィッヒの事を変えてくれるのではないかともしかしたらという僅かな希望に期待していたようだ。

「非常におこがましいが…今回はアンタの望み通りにやってやるよ」

まあ、元は些細な誤解から生じた事とはいえ未だに断ち切れていない家族たっての心からの願いを俺は引き受ける事にした。

「そ、そうか。

…一夏教えてくれ!何が其処までお前を変えたんだ?…」

賢姉殿は一応納得しもう一つ問いを投げかけてきた。

「別にアンタ自身を恨んでいる訳じゃない。

最初は二年前のあの日唯一信じていた者に裏切られ見捨てられたと思って世の中に絶望した事もあったが…義父さんやホクト先生、戦友と呼べる仲間達、そして大切だと想える様になった愛する人と出会って過ごした日々の中で俺は真の強さというものを学び悟った。

ただそれだけだ」

正確には若返っていた為に十二年という歳月だが向こうの世界でサベージという脅威に晒され続ける中で俺達は例え疲れ果てたとしても足を止める訳にはいかなかった。

止まる事が意味しているのは己の命だけでなく大切な者達や世界自体の死を招く恐れというものがあったから。

義父さんが教えてくれた「真の強さ」というものを完全に理解出来たのはつい最近ではあるが。

 

Side千冬

「…私達の元には戻って来てはくれないのか?」

私は彼の話を聞いて何かを悟り始め、聞いた。

「春にも言った事だけど家族だから当たり前に元の関係に戻れると思ったらそれは大きな間違いだ。

最も俺が戻らない大きな要因には別の理由があるがな…。

だがな…その家族という関係の鎖の先にあるべきものそれに気が付けた時、その時は…」

「そ、それは…」

彼はそれ以上の言葉を紡ぐ事なくアリーナを後にしていった。

「…私も変わり本質を理解するべき時が来たという事か…」

思えば私と肩を並べていた筈の秋彦の様子が何処か可笑しい点や守るべき存在と誓っていた春季の本来の素質に気が付けなかった愚かな私に対して一夏、嫌イチカの言葉には響くものがあった。

希望はある…それを無駄にしない為にも私はまたブリュンヒルデの名と罪を被ろうではないか。

そう決意を胸にし私もアリーナを後にした。

 

Sideイチカ

「~それで春にも正体が割れた…というよりこれは俺のミスだな…」

「俺もビックリしましたよ流石に…」

「あはは…ゴメンね…」

シャルルがシャルロットだという事を今現在知らない教師達が大浴場を解放してた事をすっかり失念していた。

まあ愚兄はあんまり風呂に入らない(汚ねえ…)のでアイツに身バレしなかったのが不幸中の幸いであった。

「ははは…でもシャルが話してくれてスッキリしたよ」

「春…」

春はというと当然最初こそ驚き、彼女が命令された事を聞いたがあまり気にしていない様だった。

今ではシャルと愛称で呼び合う仲になっている。

ちなみに俺も彼女にお願いされ当人同士で呼ばせてもらっている。

「それはともかく今度のタッグマッチバトルトーナメントは俺はセラフィーノと組む事にするがお前はどうするんだ?」

「俺はシャルと組む事にするよ」

「え、本当に良いの?」

シャルは驚いた顔をする。

「良いよ、シャルの事情を知らない他の人と組ませる訳にはいかないし」

「あ、ありがとう…」

シャルは照れ臭そうに春に礼を言っていた。

一方の俺はボーデヴィッヒの事を知っているかもしれないセラフィーノと組もうと考えていた。

後で彼女にも詳しい話を聞いて打ち合わせしておくべきか。

 

保健室

「ゴメンね折角アンタにチューニングして貰った甲龍をあんな状態にしちゃって…」

「体の方は回復しましたが機体がアレでは仕方ありませんわね…悔しいですが…」

俺は鈴とオルコット嬢の見舞いに来ていた。

彼女達の機体はダメージレベル度合が通常起動でも負担をかける程高かったらしく修復に時間がかかる為今回のタッグマッチバトルへの出場は許されていない。

「まあ、アンタや春季達があのラウラって子にお灸を据えてやれる筈だから楽しみだわ」

「はは、お任せ頂くとしようか」

そんな会話を交わしながら迎えたタッグマッチバトル当日

「結構な人だかりだな」

「各国政府の方やIS関連企業の来賓の方が生徒の実力を見測る一大イベントですからね」

美月がいうような人物達が開幕を今か今かと待ち構えていた。

「お偉いさん達がこんなに俺達を観に来ているとみると緊張するよ。

ま、いつも通り俺の天才振りを発揮するまでだけどね!」

愚兄よ、アンタの(笑)な天才では到底無理な話だがな。

「さてとトーナメントの組み合わせが発表された様だ。

これは…」

Aー1ブロック初戦 剣崎イチカ&音六・フェッロン・セラフィーノチームVS織斑秋彦&更識簪チーム

Bー1ブロック 織斑春季&シャルル・デュノアVS篠ノ之美月&乃仏本音チーム

Bー2ブロック 如月カレン&夜竹さゆかチームVS名も無きモブチーム

A-1ブロック第二戦 ラウラ・ボーデヴィッヒ&篠ノ之箒VS相川静香&名も無きモブチーム

以下他

Oh…一番当たりたくない奴と初っ端から当たっちゃったよ…ちゃっちゃと終わらせたいのが山々だがなんで愚兄のパートナーが更識会長の妹である簪なんだよ?

ああ、白式と打鉄・弐式が元は同じ倉持研究だから企業命令で組まされてしまったか。

なら愚兄をとっとと倒して簪の実力を調べてみるか。

「喰らええー!」

「よっと『残影ラッシュ斬』!とっととブッ飛んどけ!」

「ゲッ!?うぼあー!?……」

開幕愚兄はいきなりの零落白夜をブッ放してきたがそんな攻撃に当たる俺達ではなく遠慮無く全力の残影斬のラッシュで吹っ飛ばしておいた。

「…」

吹っ飛ばされた愚兄を見て簪は一瞬呆けていたがすぐに真剣な表情になっていた。

まあ少しの同情はしてやるけど。

「簪、何も企業命令に従う理由は無かっただろ?」

「組める人が他に見つからなかった…」

「Oh…それはそれは…」

そういえばのほほんさんは美月と組んでいるしな。

「…その子の調子万全そうだね…」

「あ、うん!…だけど二人を相手には出来ないかな…だけど音六ちゃんと勝負してみたいかな!」

流石に分が悪過ぎると見て簪はセラフィーノを指名してきた。

「なら俺は援護に回りますかね」

 

Side音六

簪ちゃんに指名された私は大太刀【炎月霊穿刀】をコールし構える。

「いくよツクモ!簪ちゃん!…」

「望む所!…」

「やあっ!…」

「そいやっ!」

私は思いっ切り刀を真っ直ぐに振るう。

対する簪ちゃんは近接ブレード【葵】を振るいぶつけ受け止めた。

「凄いね!…簪ちゃん、ツクモの炎月霊穿刀の初撃を受け切ってみせるなんて!…」

「ふふ…葵じゃなんとか受け止めるのが精一杯だけどね」

「それでも凄いよ!…その子も喜んでいるよ!…」

「打鉄弐式が?なら私も全力を以て答えてあげなきゃね!そこぉっ!」

「!…ツクモ!」

すぐに距離を取った簪ちゃんはアサルトライフルの牽制射撃を撃ち放ってくる。

私も即座に回避し【月神双水光】をコール、撃ち放つ。

「!ならこれはどうかな?」

「!?…」

私は驚いた。

簪ちゃんは私が撃ち放った水色のレーザーを葵で受け止めたのだ。

そして葵にレーザーが当たった途端にジュッ!という音は鳴ったが掻き消された。

「まさか!…そのブレードはレーザーコーティングを施してあるの!?…」

「良く分かったね!もう一撃!そいやぁっ!」

「!…いくよツクモ!」

簪ちゃんが再び葵を振るうと同時に私は瞬時加速で懐に潜り込みながら二丁の月神双水光を連結させる。

「え!?…」

「これは受け切れるかな?…ツクモ出力最大!」

驚く簪ちゃんを尻目に私は連結させた月神双水光から先程よりも強力な大出力レーザーを撃ち放った。

「くうっ!?…まさかそれが貴方の!…」

「そう、コレがツクモの単一仕様能力、<付喪双月波弾>!…」

「うっ!?…くううっ!?…」

いくらレーザーコーティングを施してあるブレードといえどこの火力差のある弾丸の嵐には耐え切れず受け止めていた葵は耐久限界を迎え粒子となって飛散した。

「あはは…もうライフルの残弾も少ないしこれまでだね…」

「…また今度もやろうよ!…約束!…」

「うん!」

私はリザインした簪ちゃんとそう約束した。

 

Sideイチカ

それぞれの初戦は終わった。

「あー…負けちゃったね…」

「おしかったね~美月ちゃん~」

春季チームは美月チームに無事勝利出来たようだ。

「え、ちょ!?…」

「そんなあぁー~!?…」

「ば、馬鹿な!?この私のISが!?…ええい!動けIS!何故動かん!?…あ、やっぱり無理ですか…」

カレンのチームもボーデヴィッヒのチームも順調に勝ち進んでいるみたいだ。

相手チームの断末魔が聞こえてくるが。

後、誰だ!?○ン○ム風に台詞言った人は!

なんだ相川さんか…。

そんなこんなで迎えたボーデヴィッヒチームとのバトル。

「貴様はおとなしく下がれ、奴は私の手で倒す!」

「何ッ!?私も奴にはこの手で引導を渡したいのだが!」

全くといっていい程連携のとれていないボーデヴィッヒとモップの譲れないプライドのつばぜり合いが勃発する。

「フン!どうしてもというのなら勝手にするがいい…」

「貴様等に言われなくても!」

そう言って突撃してくるモップを確認した俺はセラフィーノに告げる。

「セラフィーノ!まずは打ち合わせ通り俺が敵の相方の篠ノ之を片付けてくる!

その間君がボーデヴィッヒを抑えてくれ!」

「うん分かった!…」

俺の合図を聞きセラフィーノはボーデヴィッヒの方へと向かう。

「貴様一人だと?舐めてくれるなあー!てえい!」

「遅い!いくら秋彦より剣速が早かろうと奴に依存しているだけのお前の攻撃を喰らう程俺は弱くないんでね!」

真っ直ぐに葵を振り降ろしてくるモップに対し俺はカウンターを仕掛ける。

「『残影斬』!」

「何ッ!?」

「呆けている暇は無いぞ!『残影斬・弐式』!」

残影斬で刀を受け止め弾き返し彼女が驚いた隙に残影斬・弐式の斬撃を浴びせ彼女のSEをゼロに追い込んだ。

 

一方、Side音六

「やっぱり!…思い出して!…ウサちゃん!…」

「貴様等私は知らん!…一体貴様は何者だ!?」

私はイーくんに頼まれて対峙していたラウラさんが幼い頃誘拐された時に一緒にいた他の子の内の一人、ウサちゃんだという事を確信して応戦し必死に呼びかけを続けるが彼女は頭を抑えながら攻撃の手をより一層激しくしていた。

ラウラの両目は黄金に輝きを放っている。

「駄目!…ウサちゃんその力を使っちゃ!…今のその子じゃ耐えられない!

泣いているよ!…」

「何を訳の分からん事を!墜ちろ!」

「いけない!…」

聞く耳持たずのウサちゃんは構わず力を使おうとする。

私は炎月霊穿刀を横凪に振るうが彼女の機体のAICに止められてしまう。

なら…

「ム?…勝負を捨てたか?…舐めてくれる!…」

「違うよウサちゃん…そこだよ!…」

私がAICによって止められた炎月霊穿刀を一旦手放したのを見たウサちゃんが油断してAICの使用を停止したのを見計らってもう一本の刀をコールし思い切り振るった。

「何ッ!?…もう一振りあるだと!クッ!?…」

すかさず再び刀をAICで止めようとしてくるがそれよりも早く振るって斬った。

彼女が怯んだ隙を狙って手放していた刀を拾った。

「ッ!…」

一本の重量がとんでもない重さである刀なので普段はやらないがぶっつけ本番の二刀流を続け様に彼女に叩き込んだ。

やはり火力が落ちていたのかあまり彼女のSEは削れてはいない。

「セラフィーノ!大丈夫か?」

イーくんが篠ノ之さんを倒し此方に援護に来た。

「なんとか…だけど手が痺れる…」

「分かった、今は下がっておくんだ」

「うん…」

イーくんの指示通り私は後衛に下がった。

だけどイーくんがウサちゃんと交戦してしばらくすると私は途轍も無い悪寒を感じた。

お願い!…ウサちゃんとシュヴァルツェアレーゲンを助けてあげて!…

 

Sideラウラ

「クッ!?…」

何だというのだ?…私と彼等の間に一体どういう差があるというのだ!?…

生まれ持った力は脆弱で落ちこぼれだった私は織斑教官に教えを請われ、理想とする力を手に入れた筈だ。

それなのに目の前で対峙していた少女にAICの弱点を早々に見破られ押し切られた挙句に男性操縦者の一人である剣崎イチカにはAICでも通常攻撃でも止める隙すら無い程の斬撃を浴びせられ続けていた。

このまま私は無様に敗北してしまうのか?…嫌だ!

「『汝、強大なチカラを欲するか?』」

ふと私にはそんな声が聞こえた気がした。

「ああ、そうだくれ!…もっと力を寄越せぇー!」

その声に私は一瞬も躊躇う事無く答えてしまった。

『<【複写展開<トレース・オン>】開始致シマス。

ProstheticSaveage&Valkiyre・TrancesystemAwaken>』

「ガッ!?…嗚呼ああああアアァッー!……」

突如私は全身が激痛に襲われ意識を闇の中へと落とした。

 

Sideイチカ

「ムッ!?…」

セラフィーノに後ろを任せ、俺は対峙していたボーデヴィッヒの様子が可笑しい事に気が付く。

これは!…俺の中のヴァリアントとしての感が告げている。

このままではボーデヴィッヒが危険だという事が。

「アレは!…賢姉殿の影…束さんの言っていた【ヴァルキリー・トレースシステム】か!

それに…サベージ!それも人工型<レプリカント>が融合しているだと!?…」

ボーデヴィッヒの異変を切欠にアリーナ内は大パニックになり外賓等が逃げ出す中、俺は人工型サベージと融合したであろう賢姉殿の影を纏った彼女を捉えていた。

 

 

 




ちょっと予想以上に長くなってしまった為にまたもや前中後編構成になってしまいした。
相川さんはネタキャラ扱いですw
次回!歪んだ力を願い、シュヴァルツェアレーゲンに秘匿搭載されていたヴァルキリーサベージ・トレースシステムを起動させてしまったラウラは人工型サベージと融合した紛い物の影に飲み込まれてしまう。
そんな彼女を救うべく差し伸べられた手は…
「貴公子の正体と黒い雨の涙 後編」

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