インフィニット・ハンドレッド~武芸の果てに視る者 作:カオスサイン
更に翌日、Sideイチカ
「何やっているんだアイツは?」
俺は休み時間、教室でコソコソとクラスメイト達の様子をうかがっているボーデヴィッヒを目にした。
「~…」
ああそうか、あの一件があったから俺やセラフィーノ以外の奴と打ち解けられていないのか。
「そんなに怖がらなくてもいいんだぞボーデヴィッヒ」
「あ、兄上、でもそのだな…」
モジモジと恥ずかしそうに顔を背けるボーデヴィッヒを見た俺は彼女をフォローする事にした。
「そ、そうか。あ、あの…」
俺に促されたボーデヴィッヒはクラスの輪の中に入っていく。
「あ、ボーデヴィッヒさん!あの時は災難だったねえー…」
「え、許してくれるのか?私は盲信に狂っていたとはいえお前達をも巻き込もうとしていたのだぞ?」
「そんなの過ぎた事じゃない!分からない事でもないしね…今が良いなら私達もボーデヴィッヒさんの事を受け入れるわよ」
「あ、ありがとう…」
良識なクラスメイト達に言われボーデヴィッヒは安心した表情をする。
「フン…全く良いご身分だな手前はよ」
そこに愚兄が余計な茶々を入れてくる。
クラスメイト達も凄ーく嫌な顔をしていた。
「何が言いたいのだ貴様は?…」
それに対しつい売り言葉に買い言葉をしてしまうボーデヴィッヒ。
「あんだけの事をしておいてよくもまあ平然としていられるねって言ったんだ」
「あの件は私もすまなかったと何度も謝罪しているのだがな…」
「チッ!…」
愚兄、真っ先に賢姉殿の技を使われてキレて暴走していたボーデヴィッヒを殺ろうとしたお前が言うな!
クラスメイト達もそう思っていたのだろうか苦い顔をしていた。
「やはり貴様だけは教官の汚点の様だな」
「なんだと?…もう一度言ってみろ」
「ああ、何度でも言ってやるさ。
貴様だけは最早教官の抱える唯一の汚点だとな!」
「ちょ!?…ボーデヴィッヒさんも秋彦君も喧嘩はやめて!…」
不毛な喧嘩をクラスメイト達が慌てて止めようとするがお互いヒートアップしていて止まらない。
「秋彦下がれ!その馬鹿者なぞ私が叩き直す!」
「ムッ!?」
「あの馬鹿共…」
そこに空気を更に読まないモップがどこから取り出したのか竹刀を構えてボーデヴィッヒに面打ちを仕掛けようとする。
「危ないボーデヴィッヒさん!」
不味い!…今ボーデヴィッヒの手元には自衛の手段が…
「甘いぞ小娘!」
「なっ!?…」
あ、そういえば彼女は軍人でもあったな。
モップは物の見事に見切られボーデヴィッヒに背負い投げを喰らわされていた。
「ならこれならどうだ!」
「ムッ!?しまっ!?…」
痛みを堪えながらモップは油断したボーデヴィッヒの隙を狙って先程よりも早い突きを放ってくる。
あれでは防御は間に合わず直撃は免れない。
誰もがそう思って目を閉じた時だった。
「アレ?…」
「お?…」
「なっ!?貴様は…」
痛みが襲ってこない事にポカンとした声を上げたボーデヴィッヒとモップの間にはクラスに遊びに来ていたセラフィーノが機体を展開し絶対防御でボーデヴィッヒを守っていた。
「大丈夫ウサちゃん?…」
「お、お姉ちゃん!…だ、大丈夫だありがとう!」
「これ以上ウサちゃんを苛めるというのなら私は決して貴方達を許さない!…」
今迄愚兄の愚行を見ていない筈のセラフィーノは愚兄とモップに怒りの目を向けていた。
僅かに向けられていたボーデヴィッヒへの彼の悪意にも気付いたか。
「チッ!…」
「あ、秋彦?…ま、待て!」
セラフィーノのボーデヴィッヒを思う気持ちに感化されたクラスメイト達も愚兄達を睨み付け、彼等はそそくさと席へ戻っていった。
全く懲りないなあの馬鹿共は。
その日の昼休み、予定よりも僅かに早いペースで遂に完成したボーデヴィッヒの機体が束さんから届けられていたので俺はセラフィーノと一緒になってボーデヴィッヒを呼び手渡した後、初回起動実験に付き合っていた。
Sideラウラ
「コレが生まれ変わったシュヴァルツェアレーゲンか!」
「ああ、新たなる名は『シュヴァルツェア・レーゲン デンスフォッグススプライター』だ。
新たに初期設定と最適化が必要だからそれも手伝ってやるよ」
「そうか。何から何まで本当にすまない。兄上もお姉ちゃんもありがとう!…」
私は素直に彼等に礼を述べた。
「どういたましてだ」
「良いよ。これは私達がウサちゃんとレーゲンを救いたくてやった事だから…」
兄上と音六お姉ちゃんはそう言ってくれて私は心の底から嬉しく思えた。
思いに浸ってすぐ私は生まれ変わったシュヴァルツェアレーゲンを起動して初期・最適化を開始、その間一部性能を閲覧した。
「これは…凄いものだな!」
「『マイマスター!良かった通じた!』」
「ム?…その声はまさかレーゲンのコア人格か?!」
強化された機体情報の数々に驚愕しているとふと声が何処からともなく聞こえてくる。
元々追加データはそんなに多くは無かった為予想より早く完了したようだ。
「『それはYesです。厳密にはそのコア人格を複製して開発されたシュヴァルツェアレーゲンデンスフォッグススプライターのサポートAIなんですがね。
…マスターには散々今迄危ない目に遭わされてきましたが…もう大丈夫だと思います!』」
「そ、それは本当にすまないと思っているぞ…」
私はレーゲンに謝罪する。
「『まあ、過ちを正せた今のマスターなら大丈夫でしょう!
私も安心出来ます!』」
音六お姉ちゃんや兄上があの時止めてくれなければ私とレーゲンは今も此処に存在していなかったのかもしれないのだから…。
もう過ちは二度と犯さない!そう決意した私はレーゲンのAIに助言して貰いながら機動試験を続けた。
Sideイチカ
「レーゲンのサポAIの起動を無事確認と。
この分ならボーデヴィッヒはもう大丈夫そうだな」
「うん!…」
レーゲンの完全起動を見届けた俺はそうセラフィーノに言うと彼女も頷いた。
そろそろ時間か。
放課後、俺はシャルと一緒に春に呼ばれ彼の部屋へと足を運んでいた。
春にはシャルが女性だという事を彼女の口から明かさせた。
当然彼もそれに驚いていたが
「では春、お前がセラフィーノファミリー経由で手に入れたデュノア社の裏情報を教えてくれ」
「ああ、分かったよイチカ兄さんもシャルルも。
コレを見てくれ」
「ふむこいつは…」
「ええ!?こんなの一体どうやって手に入れたの!?」
「音六の実家があのセラフィーノファミリーなんだよ…それでね」
「え?それってあの!?…」
「ああ」
俺は春に手渡されたセラフィーノファミリーの者が調べたデュノア社の裏事業の調査結果の数々を見て呆れた声しか出ず、一方のシャルはマフィアのボスを父に持つセラフィーノの素性とそのツテを扱える春季、そしてその情報収集能力に驚いていた。
「女尊男卑の世ならではだな…」
それというのもデュノア社の社長夫人がこの世界では本来の意味で活動してなどいない女性権利団体に多額の金の寄付、夫の会社が窮地に立たされているというのに自身を含む女性幹部は皆かなりの贅沢三昧な生活を送っているようだ。
その他には一部の政治家との癒着にその上、ごく最近から行われ始めらしいがもう既にいくつかの企業や団体が社長夫人達が仕掛けたのであろう様々な詐欺被害に遭ってしまっていたらしく泣き寝入りさせられた者も居れば被害金を穴埋めする為にした借金を苦に夜逃げ、自殺を図った者も居るみたいだ。
「じゃあ私のお父さんは!?…」
「この調子じゃシャルと交わした約束が守られるとは到底思えないな…」
「そんな!?…」
俺の推論を聞いたシャルは泣きだしそうになる。
「大丈夫だよシャル。
詐欺を仕掛けその上君のお父さんを監禁している夫人達や癒着している女利権や政治家共には俺とセラフィーノファミリーのメンバーさんの手で必ずお仕置きしてやるから!…」
「俺も手伝おう!」
「は、春季君、イチカ君!どうか父の事をよろしくお願いします…」
「承った!」
「分かったよ!」
「本当にもう決意したんだな?」
俺は春がセラフィーノファミリーの次期ボスになる決意をしたのだと思い問いかけた。
「うん…千冬姉さんにはまだ話せないけど…やっぱりシャルみたいに理不尽な目に遭わされて泣き寝入りする人達を救いたいんだ!
だから!…」
「世の中には綺麗事だけじゃ片が付かない事もあるからな…」
春の決意を聞いて俺はかつて向こうの世界で敵対する事になってしまった反武芸者団体の人達の事を思い出す。
救援を渋っていた者達が居た為にサベージに友や家族を目の前で殺された者達の憎悪の中で感じ、政治の裏の汚事を知っていた俺に春を止める理由は無い。
「とにかくこの件は俺を中心に任せてくれ!」
「ああ!…」
春と別れ、俺も不測の事態に備える為準備に入った。
反武芸者団体→政治的意図又は力への嫉妬で入った馬鹿者も少なからずはいるが大半はビル・ハーヴェイ=マダ男の仕事のやる気の無さのせいで親類を失ってしまった人達で構成された組織である。
又イチカや戦友であるフリッツやレイティアは先輩でもあったベルグリット・レオンハルトを彼等の不意な襲撃テロによって失っている。
彼とイチカの関係と強化されたラウラや黒雨については後日更新のキャラ集で。
まだ息子のジュダルの方がよろしかった…早目に世代交代しなかったのが運のつきだ…。
え?宇宙開発反対団体は…マジで発足された意味が未だに分からないですハイ。
恐らくほとんどが政治的意図野郎だろけど。
そして、悲報…ハンドレ原作Ⅵ巻だけどっか失くしたー!…しかも丁度件のレオンハルト登場の巻なんだ覚えてて良かった…だけどまた買い直さなくては…
次回、シャルを救う事を決意したイチカと春はそれぞれの戦い方で準備を着々と進めていく。
「それぞれの救済 PARTⅠ」