インフィニット・ハンドレッド~武芸の果てに視る者 作:カオスサイン
Side千冬
「ン?山田先生他に何か聞こえてこなかったか?」
「え?…」
「クオーン」
「これは…犬の鳴き声?…」
怪物サベージの咆哮に混ざってふとその様な可笑しな声が聞こえてきた気がして耳を傾けていると驚くべき光景が私達の目に飛び込んできたのだ。
「なっ!?…」
「い、犬ぅー!?
犬が怪物と戦っているぅー!?」
麻耶の言う通り銀色の犬が怪物共と戦っていたのだ。
そしてその光景に私達が呆けていると何処からともなくビームの粒子が飛んできて怪物を一瞬にして溶かした。
Side?
「いっけえー!シルブリ!」
「ワオーン!」
「よしよしよくやったぞ!」
「我々の任務はここら一帯に現れたサベージの駆逐だ。
総員、心してかかれ!」
「「はっ!」」
そう、旅館に急襲してきたサベージ討伐に動いたのは生物型ハンドレッドである銀の鋼鉄犬『シルバーブリッツ』を巧みに操るアルフォンス・ブリュスタットとリディ率いるリトルガーデン第二生徒会選抜部隊であった。
「剣崎イチカが予測していた事が当たったという事か…」
そう実はイチカがフリッツに頼んで彼経由でもしもの事態の時の為の救援を要請していたのだ。
「…このサベージ達もやっぱり誰かに操られているよ…」
「何?それは本当かオルフレッド姉?」
「うん…ヴィタリーの時とは段違いの精度で制御されているみたいだよ…」
ネサットの返答にリディは少し思案する。
「そうか…ならばアレが使えるな!
総員に通達!最低一体の雀蜂型を残し捕獲を試みる!」
「「了解!」」
リディの考えはこうだ。
人工型ではないサベージを操る術を探る為には一番捕獲しやすい雀蜂型を確保するのが重要、それにはシャーロット博士が開発に成功した対サベージ用エナジーバリアネットを使用すれば可能であると。
「オルフレッド姉、このバリアネットの複写は可能か?」
「それにセンスエナジーが込められているというのなら私に複写出来ない物は無いよ…」
「そうか!なら頼むぞ!」
「うん…<複写展開(トレース・オン)>!」
ネサットが己の<真実の目(トゥルース・アイ)>の力でバリアネットを複写する。
「よし!オルフレッド弟と妹!私とオルフレッド姉がバリアネットの展開準備をしている間なんとか敵の数を減らしてくれ!」
「了解した!いくぞナクリー!」
「へいへい~!」
リディにそう頼まれたクロヴァンとナクリーは己のハンドレッド<叛逆の双刃(オルトロス・リべリオ)>と<双剋の武輪(デュオ・ヴァルガ)>を構えサベージの群れへと突撃していく。
「そらそらそらあー!」
「いっちゃえぇー!」
「す、凄い!…あれがルナルティアベース選抜隊の要の武陣なのか!」
クロヴァン達が繰り出す猛攻と実力に新入りの武芸者生徒達は皆驚きを隠せないでいた。
「此方リディ。たった今バリアネットの全展開が完了した!
総員、早急に射程区域から離脱しろ!」
「了解!こっちも粗方片付けてやったぜ!」
「バリアネット放てー!」
残存していたサベージへ向けてバリアネットを放つ。
サベージはもがき苦しみだしやがて力尽きて倒れ伏した。
「…成功したか!」
「それも良いけどよ~とっとと此処からトンズラしないと面倒な事になるぜ?」
「そのようだな。総員撤退準備に入れ!」
捕獲に成功したのも束の間クロヴァンにこれ以上此処にいれば無用な面倒事が起きると言われたリディは全員に通達し撤退していった。
Side鈴
「そんな!?…」
私達の目の前で突如引き起こされてしまった悲劇に対し私は酷く後悔していた。
「私のせいだ…私が撤退しようだなんて言ったから…」
「いいえ…鈴さんのせいではありません。
私がいけなかったんです!…
イチカさんを止めようとしたのに歌えなかった私が!…」
「カレンちゃん貴方!…」
私は思わずカレンちゃんに掴みかかりそうになる。
「おやめ下さい!鈴さんもカレンさんも今は喧嘩している場合じゃないですわよ!
早くお三方をお助けしなくてはいけないのですから!」
セシリアの言葉で現実に引き戻される。
「分かっているわ…」
本当は分かっている。
これはカレンちゃんや私達のせいではない。
ましてやイチカ達のせいでもない。
悪いのは乱入者の男と…
「痛いなオイ!」
「秋彦…アンタねえ!…」
「ぐふっ!?…」
未だに反省の色すら見せてこずボロボロの状態のまま佇んでいる秋彦に対し私は腸が煮え繰り返る思いで彼の急所を狙って双天牙月を投擲し機体を解除させた上に気絶させた。
と今は早くイチカ達を助けなきゃ!…
しばらくしてようやく三人の救助が終わり帰還準備に入っていた。
そこに PiPi!
「『ムッ!やっと回復したか!
そちらの状況はどうなっている?』」
織斑先生からの通信が入ってくる。
「福音は撃墜に成功しました」
「『そうか!なら…』」
ラウラが報告すると織斑先生はそのまま帰還する様に言おうとするが
「…その…非常に申し上げ難い事なのですが…春季殿と兄上が…」
「『?二人に何かあったのか!?』」
「はい…織斑秋彦が春季殿と兄上を巻き込んで福音を撃墜したのです…」
「『なっ!?…』」
Side千冬
「そんな馬鹿なっ!?…」
予期せぬ援軍が嵐の様に過ぎ去った後、ようやく通信が回復。
そこでラウラからとんでもない事実を聞かされた私は落胆してしまう。
秋彦は今現在も昏睡状態で眠っている筈!…それなのに何故アイツがあそこにいてしかも春季と一夏を滅多刺しにしただと!?
確かに秋彦達は学園では何処か険悪だったのは私にも分かっていた。
だけどなにも殺そうとするまでに発展するなんて…
「織斑先生大変です!
秋彦君が病室から抜け出してしまったそうです!」
「今その事を彼女達から聞いた…」
「ええ!?戦闘区域にいるんですか!?」
麻耶が遅れて報告してきて驚く。
「『ええいますよ?
これ以上何をやらかすか知れたものじゃなかったんで私が気絶させましたが』」
鳳の片腕にはボロボロの状態の秋彦が抱えられていた。
だが以前に負っていた筈の傷は見当たらない。
「総員、帰還を命ずる…」
私は帰還を命じる事しか出来なかった。
次回、秋彦に刺され重傷を負わされてしまったイチカと春季は生死の狭間を彷徨っていた。
一方、事件を引き起こした秋彦の弾劾裁判の行方は…。
「臨海学校と陰謀PARTⅩ」