インフィニット・ハンドレッド~武芸の果てに視る者   作:カオスサイン

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EPⅣⅩⅥ「臨海学校と陰謀PARTⅩ」

Side鈴

いくつもの傷痕を残した戦いから帰還した私達は織斑先生に報告する為皆旅館の大広間に集合していた。

「ラウラ、今回の作戦状況の報告を頼む」

「はい、我々が銀の福音への接敵をした直後、怪物サベージが出現。

兄上、アランシュ、カレンがこれの対応に、残りのメンバーで福音の対応にあたっていました。

ですがそこにどうしてかISを纏えるギリウスと名乗る男と一人の少女アヴリルと名乗る者が乱入。

兄上がそのギリウスという男を見た瞬間様子が可笑しくなり機体を暴走。

又その者もとても強く我々は劣勢を強いられました。

その後は帰還前にお話した事と同じです…」

ラウラはハンドレッドの存在を知っているがあえて伏せておいて話す。

「…(゜_゜i)な、なんだよ?」

「アンタね…自分が何をしでかしたのかよおーく胸に手を当てて考えてみなさいな!」

「やはり貴様だけは教官の唯一の汚点でしかないな!」

「なんだと!?」

今回の最大の戦犯である秋彦は皆に物凄い形相で睨まれていたが一向に反省の色を見せてこない。

「秋彦…」

只唯一今迄は彼の味方をしていた箒は何処か思う所があるのかそれ以上何も言い出せずにいるようだ。

「秋彦、どうしてあんな事をした?…」

「そ、それはアイツ等が手をこまねいていたようだから俺が…」

織斑先生に睨まれこの秋彦(馬鹿)はまるで自分は一切悪くないと言いたいかの様に慌てて見苦しい弁解をしようとする。

「だからといって味方を刺して良いなんて理由になる訳がないでしょうが!」

私はいい加減に我慢の限界を迎え叫びながら秋彦に殴りかかろうとした。

「待て鳳!お前達の気持ちは痛い程良く分かるが今は抑えてくれ!」

「…なんで止めるの千冬さん?…この馬鹿がイチカと春季を殺そうとしたのよ?…」

「俺は何も殺そうだなんてことは…」

「アンタは黙っててこの人殺し!」

「ぐっ!?…」

それは絶対防御を貫く攻撃を平気な顔して振るったお前が言える台詞なんかじゃない!

「オルコット、デュノア!鳳を抑えてくれ」

「わ、分かりましたわ」

「今は抑えて鈴!」

「わ、分かったわよ…」

千冬さんに指示されたセシリアとシャルロットが私を取り抑えにかかったので仕方無く抑える事にした。

「通信?…IS学園の理事長室からです!」

「何?繋げてくれ」

「は、はい!」

どうやら学園理事長先生からの通信が入ってきたようだ。

「『どうやら大変な事をしでかしてくれたようですね織斑先生、貴方の弟さんは』」

「は、本当に申し訳ありません轡木理事長。私の監督不行届きだったばかりに…」

理事長先生の耳にも入っていたようで怒気を含ませた表情で言う。

「『織斑秋彦君には先日の無断出撃及び戦闘海域に入り込んでいた漁船の方々の救助をせずに悪戯に被害を拡大させようとした件もありますからね…』」

「は、はあ…それで秋彦の処遇はどの様に?」

「『そうですね。

本来ならば即刻退学を言い渡す所なんですがね…なんせ秋彦君はブリュンヒルデである貴方の弟でしかもあの天災篠ノ之束の関係者です。

ですからそこを考慮して秋彦君の処分は夏休み中の奉仕活動への強制参加と反省文五百五十枚とします。

ですが庇い切れるのは流石に今回限りですよ。

私が言いたい事はこれだけです。』」

「…」

理事長先生はそう告げ通信を切った。

確かに千冬さんと束さんの関係者である以上仮に彼を退学処分にしたとして放り出せば世界にどんな影響を起こすか計り知れない。

いくら女利権団体が正常な形に戻った現在でもまだまだ世界中の研究機関が彼を狙っているのだから。

だけどそれっぽっちの理由でそんな軽い処分で済むんだなんて私達には当然納得がいく筈がなく散々猛抗議を申し入れたけど結局は受け入れられはしなかった。

だけどその願いは後日意外な形で叶う事となる。

 

その頃、IS学園理事長室では Side刀奈

「これで本当に良かったのかね?刀奈くん」

「ええ…彼にはある理由でまだこの学園に居てもらわなきゃいけないんです。

ご無理を言ってしまい申し訳ありません」

「いいよいいよ。

私も無用な面倒事は避けるべきとは思ってはいたからね」

私はあれからイチカ君と春季君の過去の裏付けを調べていた。

それには織斑家長男で一番目のIS男性操縦者である織斑秋彦が関わっていた事が分かった。

それも二人を追い詰める程の苛めの参謀役として決して自身の手は汚さないって事ね。

虫唾が走る程の悪魔だわコイツは…。

私が本音ちゃんから織斑秋彦の起こした事件を聞いて理事長に頼み織斑秋彦の在学を許可させたのには理由があったからだ。

この悪魔の所業をこのままにはしておけない。

ならばいっその事盛大にいってやりましょうと思いついたからである。

「まずは彼等にも連絡しないとね」

私はセラフィーノファミリーに連絡を入れるのだった。

 

Sideイチカ

「……はっ!?俺は一体…そうだ…」

確か福音と湧き出てきたサベージを堕とす作戦中にギリウスが乱入してきて、それで俺は彼に対する怒りに飲まれてそれでヴァリアントの力を大暴走させてしまったからそれで…でもなんで俺はこんな不思議な空間にいるんだ?

「…」

「君は?…」

俺の目の前には白髪の少女がいた。

「すみません…すみません…」

「?どうして謝っているんだ?」

少女はひっきりなしに俺に謝罪してくるばかりだ。

「私があのようなマスターに力を借してしまったばかりに貴方を傷付けてしまいました…本当にごめんなさい!…」

「マスター?…もしかして君は!」

「はい…白式のコア人格です。

そして此処は私達ISコアのネットワーク空間です」

「そうか…」

少女の正体が判明し彼女が俺の手の平に乗せてくる。

すると一つの映像が俺の頭の中に流れ込んできた。

「こいつは!…」

暴走した俺と福音、そして俺を止めようとしてくれていた春季が新たな姿となった白式を纏った愚兄に滅多刺しにされた光景だった。

「…」

白式のコア少女は凄く悲しそうな表情をしながら震えていた。

「大丈夫だ怒っていないさ…どうせあの馬鹿がハクナの事を脅しでもしたんだろうからな」

「ハクナ?…」

「そうお前の名前だ…」

「!…」

ハクナは途端に嬉しそうな顔をしたかと思うと俺の目の前は真っ白になっていった。

「はっ!?…」

ネットワーク空間から現実に戻されたか。

「グッ!?…」

いくら俺がヴァリアントといえどやはりこの傷は体に響くか…。

「春…」

やはりといった所か春季が俺の隣で眠っていた。

千式雷牙の百武装擬きである雷砲血神の力で簡易人工型ヴァリアントにはなっているものの所詮は簡易に過ぎず回復力は普通の人間より少し高い程度である。

加えて春は愚兄の滅多刺しによるダメージが一番大きかった。

これではいつ彼が目覚めるか分からない。

「イチカさん目が覚めてたんですね!…」

「よかった!…」

「カレンそれにセラフィーノか…だけど春はまだ…」

「はーくん…」

病室を訪れたカレンとセラフィーノが目覚めた俺に気が付き駆け寄ってくる。

だけどセラフィーノは春が未だ目を覚まさない事を知ると途端に暗い表情になってしまう。

「それで…今、あの馬鹿と鈴達はどうしている?」

「…あの怖いお兄さんなら理事長先生に処分を言い渡されていたよ…」

「でもやはり他の皆さんもその処分に納得していないようです…」

「はは、そうか…」

賢姉殿の弟という事で退学処分は免れたか…予想出来ていた事だがなんだか腐におちないな。

俺は未だよくは回復していない体を推して皆の待つ場所へと向かった。

 

 

 




次回、未だ昏睡状態から目覚めぬ春季。
だがそんな彼等を嘲笑うかの様に取り巻く陰謀は着々と進みつつあった。
「臨海学校と陰謀PARTⅩⅠ」
もうしばらく臨海学校編はオリジナル展開で続きます。


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