インフィニット・ハンドレッド~武芸の果てに視る者 作:カオスサイン
Sideイチカ
「…なんでアンタも出撃してんのよ!?」
「…」
俺と春を傷付けた張本人である愚兄も出撃していた。
その事に対し鈴だけでなく箒以外の皆も不満を漏らしていた。
「こればかりは仕方無いだろう。
織斑先生が戦力を遊ばしておくのは忍びないと言うのではな…」
勿論、鈴達が愚兄の動きをしっかり監視するという条件付きの上でだ。
「コイツが頼りになるなんて全く思えないんだけど?…」
「なんだと!?」
「何よ?その通りでしょう!
味方を犠牲にしようとした卑怯な手しか使えないアンタの自業自得でしょうが!
それでよくもまあ自分は天才だなんて言えるわね!」
「ぐっ!?…チッ!…」
「鈴、その天才(笑}に何を言っても時間の無駄だ。
もうすぐ目標地点に着くぞ?」
「ご、ごめん…」
鈴の物言いに愚兄が逆切レしてくるが彼女も反論し返す。
目標にもうすぐそこまで迫っていたので俺が仲裁してその場はなんとか治まった。
「まずは事前の手筈通りにいくぞいいな?!
後は各自の判断で行動してくれ」
「「OK!」」
まずはオルコット嬢がレーザーライフルの援護射撃で道を切り開く。
「あ、貴方達は?…」
「IS学園から貴方方の救援に駆け付けた次第です。
此処は危険ですから怪物の事は俺達に任せて貴方方は早くお下がり下さい」
「嫌よ!
男性操縦者だかなんだか知らないけれど貴方達なんかに任せられるものか!
私はまだやれるわよ!」
「貴方ねえ!…」
見るからに深手を負ったであろうに自衛隊員の一人がそう言ってくる。
オイオイこんな時にまで女尊男卑思想を持ち込まないでくれ…。
「アンタの勝手な一人よがりのくだらないプライドなんかを保とうとするんじゃない!
アンタだけでなく他の隊員まで無駄死にさせるつもりか!?」
「ぐっ!?…わ、分かったわよ!…
全隊員帰投するわよ」
俺が一喝入れてやって自衛隊員を撤退させた。
「さてと…」
「ぐわっ!?……」
「秋彦!?」
「なんだ!?」
「よもや再び貴様に邪魔されるとはな剣崎イチカアァー!」
「くっくっく!…今度こそ私はこの世界で成り上がるのです!」
「なっ!?…お前達は!?…」
自衛隊の撤退を確認した後サベージの出現地点へと目を向ける。
すると愚兄が背後から何者かに不意打ちを喰らい早々に気絶させられたのを見た俺達は急いで回避した。
愚兄は箒に抱えられている。
すると二度と会いたくないと思っていた奴等が武装を纏いこれみよがしにいた。
「イチカさんこの方達は?…」
「剣崎ハジロー、それに己の地位を保つ為にギリウスと共謀し国に謀反を働こうとしたブラット元首相…俺が二度と会いたくないと思っていた奴等の内の二人だ…」
「剣崎!?それじゃあアイツはイチカの…」
「嫌、此奴は分家の人間だった奴だ。
ある一件が原因で追放されたんだがまさか此処に現れるとはな…」
疑問を感じた鈴達に説明し向き直る。
「貴様に受けたこれまでの屈辱今こそ返させて貰うぞ!」
「我等の力思い知るが良い!」
ハジローとブラットの片目は黄金にだが霞がかった暗い闇を放っていた。
「またギリウスに同調し奴の誘惑に乗って人工ヴァリアントの力を得たか…だがな!」
彼等は攻撃を仕掛けてくるが俺は容易に回避する。
「何ッ!?…」
「ギャアッ!?…」
「アンタの汚れた技などこの身に受けてやるつもりはない!
<残影斬>!」
残影斬のカウンターを二人に喰らわせる。
元々権力に擦り寄ってるだけで武を持ち得ていなかったブラットは気絶し、ハジローも大きく吹き飛ばされる。
「馬鹿な!?…我等は力を得た筈だ!なのに何故!?…」
「その力は所詮は紛い物に過ぎないんだよ!
戦場で傷付き散っていった武芸者、そして義父さんやトウカの痛みと苦しみを理解しようとしなかったアンタ達にその力を扱う資格は無い!」
力が通用しない事に狼狽するハジローに俺はトドメをかけようと再び構えの態勢を取ろうとした…だがその時…
「ぐうっ!?…ならば!…」
ハジローが俺から距離を取ったかと思うと急上昇していく。
「一体何を?…まさか!?…」
俺はすぐに嫌な予感を感じ急いで奴を追いながら叫んだ。
「不味い!篠ノ之箒!今すぐそこから離れるんだ!」
「え?…な、何!?…」
「まずは不慣れそうなそこの女を先に狙ってやる!」
「させるか!」
やはり奴は未だ紅椿の運用に不慣れな箒に狙いを絞って攻撃を加えようとしていた。
彼女は俺の警告を聞いてはいたが体は動いていなかった。
あの馬鹿野郎!
「喰らえぇー!」
「し、しまった!?…」
箒は回避する間も無くハジローの刀撃の直撃を受けてしまうのだった。
が…そこで俺達にも予想外の事が起こるのだった。
Side箒
「秋彦、お前は…」
敵の不意打ちを喰らい気絶させられてしまった秋彦を背負いながら思案していた。
彼はとんでもない事件を引き起こしてしまった…今迄私が縋っていたものは一体何だったのだ?
彼の尋問の後、束姉さんに言われた一言が頭の中をぐるぐる廻っていた。
秋彦は集団を率いる才を持っていると彼女は思っていた。
だが彼の腹の裏には自分の手を汚さず邪魔な人間を排除し、尚且つ自身の存在を際立たせようと他人を利用するだけの卑劣極まりない薄汚い男であったのだ。
仮にもし自分があの時あの場で戦っていたとしたら彼は自分を壁扱いしようとしたという事になる。
自身が縋ろうとしていたものが盲信的な間違いだという事に今更気が付かされて箒はどうすれば良いのか分からずに迷いを生じていた。
「私は…」
「篠ノ之箒!今すぐそこから離れろ!」
「え?…」
イチカの声が聞こえ箒は自身に刃を向く敵の存在に気が付くが己に迷いが渦巻いていたせいで体が反応してくれなかったのだ。
「しまった!?…」
だが彼女に届く筈の凶刃は…
Sideイチカ
「ば、馬鹿な!?私の一刀がこんな素人同然の小娘如きに掻き消されただと!?…」
「?な…なんともない?…」
箒へと向けられたハジローのセンスエナジーの刀撃は彼女に触れた瞬間武装毎砕けたのだ。
攻撃を加え、加えさせられた当人達はこの事態に戸惑っていた。
「篠ノ之箒、もしやお前は!…」
俺はその現象に唯一一つの心当たりがあった。
どうやら彼女はトウカと同じヴァリアントウィルス無効化体質らしかった。
よもやこんな形で判明するとはな。
だけど待てよ?…俺が彼女を攻撃した時は効いていたな…もしやサベージからのウィルスで目覚めたのか?
「クッ!?…こんな馬鹿な事があって堪るかああー!」
咄嗟にアウターや装甲への被害を防ぐ為に後退していたハジローだが性懲りもなく再び刀を生成し箒にまた刀撃を加えようとする。
「無駄な足掻きだな…」
「ば、馬鹿なああああああこの私がああああー!?」
箒の特異体質のおかげでセンスエナジーを介したものは全部無効化された事でハジローはハンドレッドを強制解除させられ海に真っ逆さまに落ちていった。
「い、一体何だったのだ?…」
「今は気にする事じゃない。
どうやら本命がおでましのようだ」
ポカンとする箒に俺はそう言い構えていた。
「ウウ!…」
「!?なんだこの感じは!…まさか!?皆あのサベージには攻撃するな!」
出現した超弩級型サベージに違和感を感じた俺はこの事をすぐに皆に通達する。
この違和感を感じさせたであろう奴の方へと向く。
「ギリウスお前は!…もしやキナ・サヴェビッチを!…」
「え?…」
「皆!…アレ元は人間だよ!…」
「なんですって!?…」
彼女の名前が出た瞬間唯一知る鈴は驚き、セラフィーノが他の皆に説明すると皆驚く。
「流っ石ご名答!
あの超弩級型は俺が誘拐し実験台となってもらった愚かな少女なのだよ!」
「貴様!…」
平然とそう答えるギリウスを俺は激しく睨みつけた。
「あ~後ついでにもう一つ説明するとね!
君達が相手をしてもらっていた俺が操っていたサベージの正体は何だと思う?」
「なっ!?…」
ギリウスの言葉に俺は驚愕を隠し得なかった。
もし俺の仮説が正しければ奴はとんでもない手段を用いた事になる!…
「そういう事だったのか…」
「ど、どういう事?」
「奴が言いたいのは正確にはサベージを操るシステムの正体だ…」
「そ、それってまさか!?…」
「ああ、恐らくカレンが思っている通りで間違いないだろう」
俺がギリウスの問いかけの謎の答えに辿り着くとカレンも思い当たったのか鈴達に説明する。
「もしかしたら私達が相手にしていたサベージには幼い子供達の脳波が搭載られていたのかもしれません!…」
「「ええ!?…」」
カレンの立てた推測に皆驚きを隠せない。
「ThatsLight!
俺は誘拐し実験に使っていたはいいが人工ヴァリアントの力に適応出来ずに死んだ子供の処分に困っていた。
だがある時閃いたのさ!
その子供達の脳波を使えば人工型ではないサベージをも操れるシステムが構築出来るのではないかと!
そしてその実験は成功し確立に至ったのだよ!」
「な、なんて事を!…そんな死者への冒涜の様な真似を…」
「酷い!…」
「貴様!何処まで外道に堕ちれば!…」
またも平然とそう答えるギリウスに俺達は吐き気を催す。
あのヴィタリーでさえそこまで外道で非人道的な手段は使わなかったというのにこの男は!…
「…」
「心配するなカレン。
もう怒りに身を委ねはしないさ」
「は、はいそうですよね!」
心配そうな顔をするカレンに俺はそう言いギリウスへと突撃しようとする。
「おっと!?剣崎イチカ
今のお前の相手は俺じゃないぜ?」
「何?…」
「コイツとかどうかな?」
ギリウスの背後からまたも何者かが現れた。
「お前は!…何故此処にいる!?…」
「喰イタイ…モット力ヲ喰ワセロ!…」
またも因縁の深い相手でリトルガーデンの皆の協力を得ながら俺とハヤトが最終的に殲滅した筈の人工型ヴァリアントのホムンクルスが現れたのだった。
次回、ギリウスに操られた親友を救うべく戦うイツカ、そして傷付けられた過去があるもののサベージ化を施されてしまったキナを救いたいと願う音六、己の掲げる信念を貫き通そうとする者達の戦いの火蓋がきって落とされる。
一方、ギリウスの手によって復活・強化された人工型ヴァリアント、ホムンクルスの猛攻にイチカとカレンは追い詰められてしまいそうになる。
「臨海学校と陰謀PARTⅩⅢ」