インフィニット・ハンドレッド~武芸の果てに視る者 作:カオスサイン
Sideイチカ
「『もうホントに心底怒りが湧いてきたよ!
まさかアイツが脱走してまで織斑家を燃やしに行ってただなんて…』」
春が記憶を無事に取り戻しこれ迄の日常が戻ってきた翌日、あの元愚兄が織斑家を白昼堂々放火した事は瞬く間に他の目撃者から拡散されてニュースでも取り上げられた。
流石に轡木理事長もこれ以上あの愚か者を学園に在籍させる訳にはいかないとIS委員会に強く進言した事であの馬鹿を庇う者は学園内には誰一人としていなくなりようやく退学処分の上で逮捕され連行されていった。
まあアイツの性格上、一切の反省もしていないだろうがな…。
ハッキングで様子を見ていた束さんも怒りを爆発させていた。
「奴の処分はどうなると思います?」
「『ん~?い・ち・お・う腐ってもアイツもIS男性操縦者ではあるし良くて研究所送り、悪ければISを強制的に使わせた上で紛争地域送りとかかな?』」
「妥当な所ですね…ですが後者の方は…」
「『大丈夫、大丈夫!娘達にそんな事させようものなら束さんが直々にオ・ハ・ナ・シするだけだから!』」
「それもそうですね」
少々気になる事はあったがその心配はなさそうだ。
だがまだ何か嫌な予感はするんだよなあ…。
そういえば、随分会っていないけどアイツ等元気かな?
その頃、Side春季
「…」
忘れかけていた記憶をも取り戻し無事に退院出来た俺は少しのリハビリがてら音六を連れて久し振りにある場所を訪れていた。
それは…
「よお!誰かと思えば久し振りじゃねえか春坊!元気にしてたか?」
「ええ、そういう厳さんもまだまだ現役でいけてるようですね。
弾達はいますか?
それと五反田スペシャル二つお願いします!」
「ヘイ!ってン?…そうかそうか春坊にも遂に春が…ってギャグじゃないぞ?」
「はは…」
「?…」
そう、俺やイチカ兄さんにとって数少ない友達といえる人達が経営する食堂「五反田食堂」だ。
俺達が店に入るなり店長である五反田 厳さんが声をかけてきた。
音六にも御馳走しようと思い店のメニューを頼みながら他の人達はいるかと聞くと、厳さんが俺と音六を見て茶化してきたので俺は苦笑いを浮かべ、音六の方はよく理解出来ていないのか首を傾げていた。
「ほい!五反田スペシャルお待ち!
弾と蘭なら二人で買い出しに行って貰っている。
もうすぐ帰ってくると思うからそれまでそのお嬢ちゃんと食っておきな!」
「はい」
「にゅ…いただきます!…」
件の友人達が帰ってくるまでの間、俺達は二人食べながら今後の事を話していた。
「そういえばもうすぐ学園祭だって聞いたけど音六のクラスは一体何をやる予定なんだ?」
「コスプレカフェ…」
「なんだ、こっちのクラスとほぼ被っているな…という事は合同でやる事になるよな…」
クラスメイト皆、メイド・執事喫茶をやりたいとか言ってたな。
しかし…ね、音六の色んなコスプレ姿はなんというか…い、いかん!まだこういうのは早い!早いですぞ!
思い切りアレな水着にノックアウトした自分がいうのもアレだけど…。
「?どうしたのはーくん…」
「い、いやなんでもないよ…」
「そう?…」
彼女は自然体だから良いけどこっちは理性との戦いをなんとか制していかねば…危ない危ない…。
「春季?…お前久し振りだな!」
ようやく帰ってきた友人の一人が俺に気が付いて話しかけてきた。
五反田 弾。彼が数少ない俺やイチカ兄さんを苦しめていた嫌がらせに対応してくれた親友だ。
「うん、弾の方は相変わらずのようだね」
「そうだ…ってそっちのお方は?…」
「ああ、彼女は…」
「はーくんは私の大事な人…」
弾に紹介しようとした矢先、音六が嬉しそうな表情で腕を組んできた。
「は…はああああー!?」
弾の絶叫が木霊する。
「お兄、ちょっとうるさいんだけど!ってえ?春君だよね久し振り!」
「うん、蘭さんもお久し振り」
弾の絶叫に驚いた彼の妹である蘭も俺に気が付き二度驚く。
「悪ィ悪ィ…にしても驚いたぜ…こんな可愛らしい美少女が!…」
「ま、まあ一応はそんな所かな…」
「一応ってまさかお前…」
「…」
俺の様子を察した弾は呆れ果てていた。
奥手で悪かったな!
「そういえば聞いたぜ?お前ん家があの馬鹿に燃やされたって…」
「え?…それ本当なの?」
「ああ、残念ながら本当の事だよ…」
「…」
元兄貴が放火した件を弾は既に耳にしていたようで怒りを見せていた。
一方の蘭は知らなかったのか顔を伏せながら驚いていた。
「ったくアイツめ!どこまで他人を見下せば…そのせいで一夏は!…」
「…」
「…」
弾は悔しそうにテーブルをだんと打ちつける。
蘭も悲しそうな表情になっていた。
俺は正直迷っていた。
一夏兄さんが名を変えて生きているという事を彼等に話して良いのかを。
「いーくんならいるよ?…」
「え!?…」
「ちょ!?音六!」
「?…」
俺が迷っている間に音六が呟いた。
その呟きに今も一夏兄さんに好意を持っている蘭が持ち運んでいた買物袋を落としてしまい驚く。
「ほ、本当なのかそれは?!」
「うん!IS学園にいるよ…」
「…」
弾も驚き詰め寄る。
なんともいえない空気になる。
「そうかそうか、アイツ生きていたんだな…」
「だ、弾?…」
ゴゴゴと効果音が付きそうな勢いで弾はそう呟く。
「今此処に呼び出せるよな?」
「え?い、一応聞いてみないと…」
「頼む!」
「私からもお願いします!」
「わ、分かったよ…」
彼等に懇願されたので俺は諦めてイチカ兄さんに連絡を入れる。
だがな…弾はともかく蘭の方は…なんとか悪化しないように俺達がなんとかするしかないか。
Sideイチカ
「「…」」
春から連絡が入ったので足を運んだまでは良いが…本来ならば久方振りの涙の再会といきたい所なのだが…そういう空気ではなさそうだ。
「それで?ほうほう…」
「一夏さんそんなあー…」
「蘭を泣かせて俺を心配させた罰だ!一発殴らせろ!」
「おおう…いいぜ…」
これまでの話せる出来事を話したら弾は少し怒り、俺に好意を持っていた蘭は俺とカレンとの関係を知ると途端に泣き出してしまった。
こればかりは仕方無いとばかりに彼等の一喝を受け入れたのだった。