インフィニット・ハンドレッド~武芸の果てに視る者 作:カオスサイン
Sideイチカ
不穏な予兆はあったものの遂に学園祭一日目を迎えた。
ハヤト達リトルガーデン組はまだ来訪していないようだった。
「御嬢様方お帰りなさいませ、では此方へ!」
「「キャアアァー!」」
俺と春の執事姿を見て女生徒達が黄色い声をそこら中で上げていた。
「む~!…」
「(^^;)」
アリス風のメイド服に着替えたカレンが嫉妬の念を向けていた。
後で埋め合わせしないとな。
Side春季
「春季君、二番テーブルへの配膳お願い!」
「あ、はい!」
結局五組との合同催しとなったおかげかお客さんが予想より多くごった返していた。
「ピーノはい!…」
「ニャニャニャー!♪~」
「おお~!」
「…」
音六は猫耳ゴスロリメイドコスに身を包んでせっせと接客しているかと思いきやいつの間にか仕込まれていたピーノの芸を披露させてお客さんを楽しませていた。
来てくれた弾と蘭も驚きながらも拍手していた。
「本音ちゃんのおかげ!…」
「どういたしましてえ~!」
まあいっか、改めて音六を見る。
うん!物凄く可愛いなあ!…おっといけない鼻血が…だがしかし…非常に頂けない事がある。
男性客の半数が明らかないやらしい視線で彼女達を見ていた。
それだけならばまだしもよかったのだが…
「へっへへ!イイじゃんかよ俺達と一緒にどっかに行こうぜほらあ!」
「は、離してよ!…」
「ン?ちょっと行ってくる!」
「気を付けてね!…」
性質の悪いナンパ目的の十人程の不良達が五組の子達をナンパしていた。
「ちょっと!人の恋人に手を出さないで下さい!」
「なんだあ~このガキ?」
「「ひぃっ!?…」」
五組の子達は皆天使な子ばかりなので既に彼氏持ちも多かった。
勇敢に立ち向かおうとした彼氏君だったがすぐにひるまされてしまう。
情けないとは思うが此奴等よりは遥かにマシだ。
さっさと対応しないと今後に支障をきたすな。
「あのお客様?そういった行為をされますとこちらとしては相応の対応を致しかねますので…」
「ああン?関係無い奴は引っ込んでいろよ!
野郎共やっちまえ!」
マニュアル対応では無論聞く耳持たずか…ならとっとと平和的な退場してもらいますかね。
不良達は一斉に俺に殴りかかろうとしてくる。
「はっ!」
落ち着いて一人、一人手刀で気絶させていく。
「なななっ!?…」
残った三人が驚愕の声を上げていた。
だが…
「こ、この野郎!…」
「チッ!?…」
「はーくん!?…」
諦めたのかと思われた一人が突然懐からナイフを取り出し俺に向けて投擲してきたのだ。
間一髪ギリギリで回避するが少しだけ掠ってしまい頬に傷が出来てしまう。
周囲から悲鳴が上がる。
「ん?…何処かで見覚えのある顔だと思ったら出来損無い君の一人か」
!此奴…元糞兄貴の腰巾着共か。
あんな事件を起こしたというのに腰巾着共の屑はまだアイツを擁護しているようだった。
「本当に救えない連中だな」
「なんだとテメエ!?こっちを見やがれ!」
「キャア!?」
「何ッ!?…」
「は、春季すまん!…」
しまった!退場させる事に気を取られ過ぎていたせいで音六達が奴等の人質に取られてしまったのだ。
彼女達は接客しているせいで現在機体を所持しておらず反撃も出来ない。
弾も持前の体術で対応してくれていたが蘭を人質に取られ動けないでいた。
「良いか、お前等動くんじゃねえぞ!少しでも可笑しな動きを見せたら…」
「くっ!?…」
奥義の使用を封じられ万事休すな事態をどうにも出来ずにいたその時だった。
1-5立て籠もり事件発生五分前、Sideイチカ
「イチカ君、春季君がまだ五組から帰ってきていないみたいなの。
ちょっと呼んで来てくれない?」
「分かった」
春が中々五組への手助けから戻ってこないとクラスメイトに呼んでくるように頼まれた。
仕方のない弟だ。
だがあんな事になっていようとは予想が付かなかった。
「!?…」
五組の教室に着くとふと違和感を感じ中の様子を覗いた。
すると見えたのは明らかな不良の男数人が他の客と生徒を人質にして立て籠っていた。
そのせいで春と客として来ていた弾は完全に動けなくさせられてしまっている。
しかしどうする?…このまま俺が突入した所で立て籠もり犯の逆上を煽るだけだ。
平和的解決を春が望んでいた為に警察の対応も遅れてしまっている筈だ。
ならば方法は一つ!…
「何処に行く気だ?イチカ」
「千冬姉…」
動き出そうと教室前から離れると織斑教諭に遭遇する。
俺は事情を説明しながら彼女を説得する。
「これも秋彦の犯した罪か…」
「時間が無い…千冬姉協力してくれ!」
「ああ、しかしどうする気なのだ?」
「あっちが手荒い事をしてくるならこっちも相応の対応をしてやるまでだ!
防災用のロープを持ってきてくれ」
「分かった!」
俺は千冬姉に必要な物を持ってこさせ急いで屋上へと向かい五組の教室までロープを垂らし二人駆け降りた。
Side春季
クソッ!…一体どうすれば良い!?…大切な人達が危険な目に遭っているというのに今は何も出来ない俺自身にも苛立ちと諦めを感じ始めていた。
だがその時…
「諦めるな春!」
「そうだぞ!」
「!イチカ兄さんに千冬姉さん!?」
パリィン!という音と共に声が聞こえてきて俺は思わず顔を上げた。
「な、なんだあ!?」
「遅い!」
「うべえっ!?……」
窓を割って強行突入してきたのか!
突然の事態に不良達はたじろいでいた。
「く、糞!こうなったら人質達を増やして…」
「させるか!」
「んなっ!?…ブリュンヒルデだと!?」
「これ以上悪足掻きはよせ!」
「ヒイッ!?…」
悪足掻きをしようとした不良だったが千冬姉さんの現役の殺気のオーラを受けて怯んだ。
「ふん!」
「ゲッ!?……」
千冬姉が何処からか取り出した出席簿の一撃で不良を沈ませる。
だが…
「な、何がブリュンヒルデだ…ISがなきゃ怖くねえ!」
「!」
逆上した最後の一人が千冬姉さんを背後から襲おうとした。
「鳳凰烈突破!」
「んなっ!?…」
それを目にした俺がすかさず奥義で奴のナイフを弾き飛ばした。
「兄さん!」
「ああ、よくやったぞ春!残影斬!」
「うわああああー!?」
イチカ兄さんに合図し、彼は奴の衣服だけを斬り裂き行動不能にした。
ようやく警察が到着し事件は収束した。
「皆ごめん!」
「…」
文化祭初日が終わった直後、俺は皆に謝罪していた。
ナンパ目的だったアイツ等は俺への嫌がらせへと変えてきたせいで事件が起きてしまい催しが台無しにされてしまったのだ。
このまま二日目を継続してやっても御客はグンと減ってしまうだろう。
「嫌々、春は悪くないぞ?」
「え?…」
「そうだよ…はーくんはあの怖いお兄さんに立ち向かってくれていた…」
「兄さん、音六…」
「そうだよ!春季君があの馬鹿な人達を抑えてくれていたからこそ皆助かったんじゃない!
店は滅茶苦茶で大変だけどさ…」
「そういう事だ。
お前ももう少しぐらいは自信をつけるんだ春季」
「姉さん、皆…あ、ありがとう!」
「さ、再設営に取り掛かろう!」
皆の気遣いに俺は涙した。
かくして成功とは言い難いが文化祭初日は慌ただしく終わった。