Double Commanders In Chief.   作:一人っ子

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第2話

隊長の事情 響の小さな間違い

 

翌朝からカウンセラーを交えた事情聴取と余罪の調査、証拠の押収が行われ、艦娘達は三時間に一回は取っ組みあいを始める警務隊長と関西弁の隊員に辟易していたが、『駆逐艦 響』がある事実を察した事が切っ掛けとなり、隊員達は思わぬ評価を得る、彼女曰く、

『隊長はあくまで軍人としての任務を遂行する事を第一に考えて行動している。艦娘の心情をおもんばかるより事件の解決を最優先して的確な仕事をこなす』

ー 彼が敵に居なくて良かったよ、ああいうタイプは味方ごと殺りかねない、人質は通用しない実に冷徹でソビエトロシア的、最前線の指揮官向きだね、兵士はキャベツ畑で採れるらしいから ー、と付け加えて先を続ける。

『関西弁は真逆だね、人道とか気持ちとか一見綺麗事にしか見えないモノを最優先してる、隊長の聴取に威圧された暁が泣き出した時、直ぐに、聴取を打ち切らせてキャンディを防弾ベストのマガジンポーチから出してたよ、まぁ1分後に殴りあってたけどね』

ー関西弁は実に情に弱く日本人的なんじゃないかな、全体の不利益を徹底的に排除して攻勢にでる司令官向きだね、敵にいれば真っ先に狙えるけどねー

 

古鷹と加古姉妹をはじめ複数の艦娘が保護され、何故か龍驤も付いて行くことになった。

鎮守府の切り札のたる龍驤を引き抜かれてはたまらないと長門は猛抗議したが、徒労に終わるのは目に見えていた。警務隊長は響の分析通り冷徹に切り返した。

『龍驤さんの同行について御納得頂けないなら彼女を連行します。理由は此方の内輪揉めとは言え、警務隊と被疑者を爆撃した罪状と言う事で十分です、我々の公務執行を妨害し、場合によっては被疑者を殺害し何らかの情報流出を食い止めようとしたとも考えられます』

返す言葉を失い、ただ隊長を睨みつける事以外に手段を持たなかった長門から彼は右足を引き、実に人間味の無い動作で背中を向けた、話は以上だと無言で告げた彼が響の評価には遠くかけ離れた感情を露にしている様子は長門には伺えなかった、任務に感情を交えてはならないから、自分はマシンを演じる人間足らねばならないから、かつて経験した出来事から限られた部下以外への感情を封じた隊長はそれを悟られないように、足早に鎮守府を去った。

 

『…申し訳ありません長門さん、任務である以上“最初から決まっていた”とは言えないんです』

口の中から出ること無い隊長の懺悔は彼の顔を酷く歪ませて再び飲み込まれて行き場を失った。

 

 

 

戦艦長門の眼力

 

…私に何人の男達が乗っていたと思う?1300人以上だ。いや、違う!そう言う意味ではない!乗組員の話だ。この長門を娼婦と纏めるとは良い度胸だ。

まぁいい、連合艦隊旗艦を務めた私は数え切れない程の人間を観てきたのだ。将官達のキナ臭い話から、士官の独り言、新米水兵達の泣き言に至るまで全部だ。この世で最も忌むべき光に焼かれ祖国から遠く離れた海底に座した私の船魂というべき一部は眠り続ける身体を離れ、今の『戦艦娘 長門』がある。この身体を得る迄はただの意識の塊のようなものだったと解釈してくれれば良い。

意識が艦艇から離れ漂いだした時、周りには沢山の塊がいたな。『酒匂』や『ぷりんす·ゆーじーん』は貴様達も知っているだろう?何?『プリンツ·オイゲン』??さて、どうだったかな?今度会ったら聞いてみるとしよう。

まぁ、彼女達の魂の他にアメリカの船魂も大勢いたが、私は何の怨みつらみの感情も沸かなかった、あくまで人間同士が憎みあっていただけで、兵器としての戦艦長門は大任を全うすることが存在意義だからかな。

私以外の魂達の中には未だに敵対しているものもいたのは事実だ。私は暫く世界の海を何人かの魂と旅をした、戦いの無い海を見て回りたかったんだ。『酒匂』や『ぷりんす』だけじゃない、人間達が船体を発見する60年も前に『武蔵』と再開も果たしていたんだぞ、今ほど日焼けしてないアイツは想像出来んだろ?他にも『ワシントン』や『サウスダコタ』『ぷりんす·おぶ·うぇーるず』なんてのもいたぞ、ん??やはり『ぷりんす』じゃないのか?あぁ、ドイツ語と英語の発音か!気にもしていなかったな。戦争に負けた事は無念だが終われば船魂同士人種も国境も無いからな。

ここで戦中より沢山の人間を観察した、こうして私達は知らず知らずに多くの経験を積んでいった。海に漂う人々の感情、信じられないだろうが、全ての生き物の『思い』は母なる海に流れ込んでいるんだ。見た目の幼い艦娘がいても甘く見ないことだ、艦娘に隠し事は出来ないぞ。

そうだ、先程立ち去った青年の事だ。

恐らく龍驤の引き抜きは決定事項だったのだろう。事前に上から複数パターンの台本を押し付けられているんだろう、私の抗議も想定してな。彼はよくやっている、あの若さであそこまで己を殺すのは容易ではない。

だがな、心はもう限界だった、子供の様に泣いていたよ。顔は隠せても心は隠せないんだ人間はな。

あの関西弁との取っ組み合いは彼の心の中を吐き出す限られた機会になっている。ギリギリのラインで拮抗しているんだよ、心が死んでしまうかどうかの瀬戸際だ。貴様は気づいていないだろうが、関西弁が隊長の背中をずっと見ているんだ、覆面越しにも良く解る友人を案じる目でな。

しかし、隊長には理由があるのだろう、自分を殺してまでこの任務にあたる譲れない理由がな、知っての通りこの鎮守府の提督はクズだった、あんな輩の手柄の為に誰も命を投げ出したくない。あの若き隊長程『滅私奉公』が似合う男はそう居まい、やはり私は古いのかな?どうもその手の言葉が似合う人物に惹かれるのだよ。ここは暫く開店休業になるだろう、戦艦長門ともあろうものが昼行灯では無駄飯喰らいの大荷物だ、古鷹と加古も心配だし、龍驤は文字どおり誰かが舵取りをしなければ、すぐストレスを溜め込んで『爆撃訓練』を始めてしまう。

もう私の意志は固まっているぞ、100発爆弾を受けても揺るがんぐらいにな、あぁ、そうだ。

あれほど崇高な心を持っている青年を見てしまった以上日和見なんぞ論外だ。『滅私奉公』『七生報国』

 

『私が戦艦長門だ、宜しく頼むぞ敵戦艦との殴りあいなら任せておけ!!』

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