Double Commanders In Chief. 作:一人っ子
龍驤の友情と心情、一つまみの愛情
なんでやねん…いやまぁ、しゃぁないけどもやな、元々同行しよおもてたからえぇねんけどな、なんやねん『連行』て、爆撃したろかホンマに…いや、もうしたけどな、爆撃…君らそうでもせな怯えてる古鷹の前で死ぬまでどつきおうてたやん、だからかるーくちょこーっとだけ『ええかげんにしなさいや』てやっただけやん、せやのにこのワッパなんやねん!?昨日まで『任意同行です』言うてたやん?せやのにワッパやで?こんな見目麗しい乙女の手首にこんな事してまうの?あいたたた……痛いわー鉄食い込んで痛いわー乙女の肌に傷ついてるわー。なんなんや?そう言う趣味かいな?怖いわー、ストレスとかなんや色々下品なモン溜まってもてるオッサン怖いわー、ウチにあんな事やらこんな事やらしたろおもてんねやろ?
はぁ、まぁ、予測つくけどな、どーせ長門がいちゃもん付けて行きよったんやろ?アイツはホンマにもぉ~…
ウチはどないでもかまへんけどな、ちゃんと古鷹達のトコつれてけよ?あの子等になんもすんなよ?約束反故にされた関西人は怖いねんで、分かってるやんな?特に関西弁のキミィ?分かってるやんな?
これ以上あの子等、傷付けたらそん時はホンマに、ホンマに
……いてまうで?
関係無さそうでありそうな話、『高速』無名のライダー
よぅ、俺は今第2神名高速道路ってトコをかっ飛ばしてる。わざわざ後付けしたアナログメーターは320km/hにへばりついて動かない、まぁ『公道最速の疾風屋(はしりや)』ってヤツさ、高速から峠、サーキットに至るまで全国のアスファルトはおれのホームコース、負け知らずのな。
コイツは俺の愛するフルカスタムGSX-1300R『隼』まごうことなき最強のバイクだ。ホワイト/ブルーに身を包んだ官能的なワガママグラマラスボディのサイドカウルにドデカイ『隼』の文字、知ってっか?隼は鳥の中でも最速なんだぜ?この前はポリ公のバイクをチギってきたぜ、あんなだっせぇ白黒葬式カラーのホンダは俺の排気ガスでも喰らってな。その前は群馬県の峠に豆腐屋を探しに行ってきた、成果はなかったが5台程エキゾーストを嗅がせてきた、走りのメッカ、榛名山の奴らときたらお話にもならなかったぜ全く、あんなヘボに跨がられるバイクが可哀想だったぜ、『私はこんなに遅くない!』ってな。コーナー手前でフルブレーキどこまで突っ込めるかがコイツの性能を余すとこなく使いきれるライダーだぜ!ガードレールに肩が擦れそうな程のバンク、レーシングスーツのニーパッドで路面にフレンチなキスをプレゼントして立ち上がる、こっからは全開区間一気にスロットルを絞り上げてやると簡単にフロントタイヤは万有引力に逆らって地面にサヨナラしちまう、ナポレオンの肖像画見たことあんだろ?あんなカンジだ。ここでパワーに振り回されるようなチェリーボーイはド三流以下だぜ、ママチャリに補助輪でもくっ付けて乗ってるんだなな。全開区間はあっという間だ、名残惜しいが冷静に次の右コーナーに備えてフルブレーキだ、きっちり減速きっちり全開、最速への近道だぜ?この右はちょいと意地悪なコーナーだ、出口手前に路面の荒れた部分と補修された部分がパッチワーク状になってやがる上に最後の最後で僅かだがアールがキツくなる、油断して全開が早すぎるとアウト側のガードレールがお出迎えだ。だから240kmまで減速、サードギアからゆっくり開けていくんだ。
お??バックミラーになんかいやがるな、けっ!目障りだ!コーナー2つでミラーから消してやる!!行くぜ相棒!
なんだこの野郎は!?徐々にミラーを埋めて来てやがる気がする!ふざけやがって…ちょっとトサカにキたぜ、気に入らねぇが次のストレートで置いていくぜ、ほらやっぱりな?スロットル1吹かしでどんどん離してやれる、ちょいと遊んでやっただけさ、次の左コーナークリッピングポイントを目一杯奥にとってやりゃ突っ込みでサヨナラだ、立ち上がりで俺を見失うだろうよ。もうミラーには何も写ってねぇ、ま、当たり前だがな。あばよ、少し面白かったぜ。俺の勝利を確信した時、ソレは来やがった。
クソッたれ!!アウトから!?いつからミラーの死角に入りやがった!?こんだけ突っ込み重視でターンインした俺より明らかにオーバースピードで!?アウトラインで!?リアタイヤからうっすら煙上げながらカウンターステアで車体を限界ギリギリでコントロールしてやがる!!自殺行為でしかないぜ、そんなのは!!その先は連続したコーナーの続く難所だ、『急カーブ注意』の標識が見えてねぇのか!?クソクソクソッ!!目の前で木っ端微塵になられたら夢見が悪くなるってモンだぜ!!
あり得ねぇ、俺を、俺を、オーバーテイクしやがった!!SHOUEIフルフェイスのシールド越しに視界を掠めたライムグリーン、あんなぶっ飛んだカラーを使いまくるメーカーは世界に1つしかねぇ、俺の一等嫌いなメーカー、『カワサキ』か…何が『漢のバイク』だ!!何が『Ninja』だ、ふざけやがって!!俺の前に出たのは認めてやるが、もう許さねぇ…よくみりゃGPZ-900R、ポンコツじゃねぇか!!ライダーも身体のほっそい女みたいな体型でシルバーのロン毛がヒラついてる、大方チャラ男か、屈辱だぜ、骨董品のケツを拝むなんてな、俺の『隼』はコーナーもダンチだって事を教えてやる!!
離されてる!!???全くもって認めたくねぇ!!ストレートで差は縮まるが複合コーナーの後にほんの少しずつヤツは小さくなってる、しかもこっちは連続したブレーキングでフロントディスクが真っ赤になってんだ!!止まれねぇバイクは曲がれねぇ。
完敗だ、最悪の気分だった。タイヤまでタレだしたリッターバイクは言う事を聞かねぇ。だがな、俺のポディウムは見つけたぜ『神戸 ·867』のGPZ覚えてやがれ、近いウチにリベンジマッチだ。
「また人様に迷惑な行為をしましたね?」
「い、いえ榛名は大丈夫で…」
「榛名!」
「ひっ!」
「あざとく可愛い声をあげてもこの霧島の目は誤魔化されませんよ!髪の毛にヘルメットの跡が残っている上に後ろ髪が普段より7.4度後方に跳ねています!私の計算によればそれは平均時速318kmで52分間風圧を受けたものです!!」
「大丈夫ですっ!榛名は接触もインからのオーバーテイクもしていません!」
胸を張って眩しい笑顔で答えた彼女の頭頂部に霧島謹製『マイクチェックOne-Two/揺らす観衆/毎週毎週喰らわず喰らわす『BB』/光る菊花の紋章/一生共に輝く勲章』とパンチラインの掘り込まれた鋼材製のハリセンが炸裂し、見た目とはかけ離れたハードコアなメタルサウンドを奏でる。
金剛型姉妹のみならず全ての艦娘が畏れる久々にキレちまった霧島の懐から飛び出す燻し銀のそれは『BB』戦艦霧島のパワーを持って、イタズラの発覚した懲りない駆逐艦から駆逐艦にイタズラをしようとした懲りない馬鹿者に至るまで等しく猛威を振るう。榛名は覚悟を決めた、霧島の説教は始まったばかりだ、二日連続はまずかったのでしょう、今日は特にアツくなっているみたいです。これが終わるとき私は大破で済んでいるでしょうか?まだ見ぬ二人のお姉様、先立つかもしれない榛名の不孝を御許しください、カワサキ産まれの榛名はやっぱりカワサキが大好きでした。荒ぶるトルクにライダーの事を二の次にしたようなサスペンション、評判にすらならない固めのシートその全てが榛名の、榛名の…
「聴いていますか?」
「あっ、なんでしょう?」
その夜三度目のメタルサウンドが鳴り響き榛名が大破した時、鎮守府内のスピーカーが聞き覚えの無い男の声を吐き出した。
『戦艦 霧島および戦艦 榛名両名は執務室へ出頭願います』
感情の無い冷えた声、霧島は少しの警戒心を保ちながら自らがシメた双子の姉を担いで呼び出しに応じる事にした