Double Commanders In Chief.   作:一人っ子

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第5話

「警務隊長入室します」

許可を得て無駄に重厚なドアをくぐった彼はいつも通りの無表情、まるでロボットの様にキビキビした動作で目的の人物に立つ、いつ見ても胡散臭い見た目の老人だ、性格がここまで顔に出るとはどんな人生を送っているのだろう?

「はいご苦労様でした、報告を」

「指定通り高速戦艦2隻を確保、任務完遂致しました」

「いつもながら良い腕前です、私の作戦も上手く行きました、あの手の輩は地位を確保できる可能性を匂わせてやればいとも簡単に屈伏してくれますねぇ」

「…はい」

しまった返事が一瞬遅れたか?

「あのような騙し討ちじみた作戦は気に入らないかな?」

くそ、やってしまった、隊長はその様なことはありません、任務に個人の感情は不要ですから、失礼します。

と踵を返した。実際あの老人、『海軍司法局長』を殴り殺しそうになるほどの怒りが彼を満たしていた。

結局、高速戦艦 榛名と霧島を『次の海域攻略に高速戦艦が必要である事が判明したため、一時的に大規模な鎮守府に異動』という名目で確保した後、件の提督は目を覚ました関西弁が絞め落として拘束している。

事前の捜査によれば、彼は完全な悪人ではなかった、評判自体悪いものではなく、作戦の成功率も高かったようだ。ただ一点だけ狡猾な老人に付け入る隙を与えてしまっていた。警務隊が2日前に逮捕したクズ提督にわずかな期間ではあるが指揮下に入っていた時期があり、高速戦艦を保有していた。そこに目を付けられた、局長がどこからか調達してきた戦艦や正規空母を配備させ、鎮守府の資材消費を加速させる、更に工作員が調査2課から派遣され資材のカウントをずらしていった、あの提督がドア付近に立っていた警務隊員と『先任が不慮の事故で重症を負ったため、穴埋めとして6カ月前に着任した資材管理部門の人当たりのよい大尉』が同一人物と知る機会はもう無い。そして資材が苦しくなってきたのを見計らって、先に逮捕した元上官のクズ提督に別の工作員が情報をもたらした。

『あなたの部下だった男が困っているようですよ』と、以前から横領を行っていたヤツは案の定すぐに食いついた。そして帳簿に載らない資材の対価として何を受け取ったか等を全て撮影した上で警務隊に命令が下った、下準備の半年以上ずっと保護された古鷹達、艦娘に行われているおぞましい行為を知りながら警務隊は何も出来なかった。悪人を捕らえるための存在であるにも関わらず、だからこそだろう、あの日のすぐに手が出る関西弁はいつもよりはるかに大暴れしていた。

クズ提督から艦娘を保護するのは簡単だ、ガラの悪い部下の言葉を借りれば

あ『行って、しばいて、パクって帰る』だけだが理由もなく目を付けた時点で『まだ』潔白だった提督から主力級の艦娘を引き抜くのは手間が掛かる。当然上層部からの正式な通達など出ていない、艦娘が異動を不審に思い大淀あたりの事務官に『お伺い』を立てられてしまえば警務隊の、いや司法局長の明らかな越権行為が明るみに出る、それを避けるために提督は罠に掛けられた。関西弁がその場にあったクリスタル灰皿を使わず、普段から『めんどくさい』とほざいている『絞め落として拘束』などという比較的、穏便な手段を使ったのは彼なりに思う所があったのかもしれない、殴ってはいたが。

なぜ局長がが高速戦艦を欲したかは知らない、知りたいとも思わない。ただその2人の戦艦の為に半年以上古鷹達は生き地獄を味わい続けた。これのどこが警務隊だ。皮肉にも隊長が抱いた思いは嵌められたとも言える提督が関西弁に対して抱いたものと多少の差異が有れどもほとんど同じだった。

『まだだ、動いてはいけない』

廊下を歩く隊長はまたもや言葉を呑み込んでいた。上階の階段から関西弁が手摺にもたれ掛かって見ていることには気付きもしなかった。

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