ネトゲの嫁ともっとイチャイチャできないと思った? 作:Losusu
◆アコ:――というわけで、わたしとルシアンの愛はより深いものとなったのです!
夜のLAの、いつもの酒場にて。信仰の勝利を確信した聖職者かなにかのように、アコはとうとうと今日の出来事を語った。酒場の向かいの席に座ったシューは、
◆シュヴァイン:あー、はいはい、ごちそーさん
とそっけないチャットで返す。自宅でのプレイなので確認はできないが、PCの前に座っている瀬川の、心底うんざりしたような顔が目に浮かんだ。
◆アプリコット:しかし結局はLAでデートを〆るとは、2人とも生粋のネットゲーマーだな
◆ルシアン:まあ、この2人だからな、なるべくしてこうなったってところだ
◆シュヴァイン:まったく、結局ノロケを聞かされるだけになるとはねー。大体、なに? 幸せにする? いやいや、それどう考えてもプロポーズじゃない
◆アコ:プロポーズ……? そういえば結婚したときのプロポーズはわたしからでした。ということは、これはルシアンからの返答! 完全にわたしを受け入れてくれたということなんですね!?
◆ルシアン:違うから。そういうjyにから
などとチャットをしながら、ついタイプミスしてしまう。慌てて、
◆ルシアン:違うから。そういうのじゃないから
と打ち直した。
◆アプリコット:ルシアンがタイポとは珍しい。どうやら、危惧したとおり戻れないところまでいってしまったのか?
◆シュヴァイン:は? 戻れないところって、ちょっとアンタたち、なにやってんのよ?
◆アコ:んんん……あの夕陽が沈む埠頭でのルシアンはとっても大胆でした///
◆ルシアン:おいこら、わざわざ誤解されるように言うのはやめろ!
ハートのエモーションを出しながらおかしな表現を使うアコに突っ込みを入れ、俺はルシアンをばたばたと動かした。シューやマスターがそれを見てからからと笑う。さすがに本気にしてたわけではない……よな?
でも、今日俺がアコに抱いた好きだっていう想い。これはきっと、本物だと思う。いまはまだ、はっきりと伝えられないとしても。
◆アプリコット:……さて、ではデートの報告もすんだところで、今日は新しい狩場へ向かうか。つい先日のアップデートで追加されたあそこだ。どうだろうか
◆シュヴァイン:おう、いいじゃねえか。ザコどもを俺の剣の錆に変えてやるぜ!
◆アコ:今日はルシアンから色々教えてもらいましたから、いつもよりがんばれると思います。行きましょう、ルシアン!
◆ルシアン:ああ、そうだな。よろしく頼むぞ、アコ
いますぐには、まだ少し勇気が足りない。でも遠くないうちに、アコに俺の本当の気持ちをぶつけよう。その結果、どうなるかの保障はないけど……絶対に、思いを伝えよう。らしくもない勇気を奮い立たせて、しかと胸に誓う。
そうして俺は、ルシアンにまだ見ぬ地への一歩を進ませるのだった。
―了―