シンクロ次元 ~戦慄~ 作:僕だ!
「遊星!キミは僕の希望だ!アクセルシンクロは光をも超える。光を超えて未来を切り開くんだ! 行け!遊星!!」
「ブルーノ!ブルーノ!」
遊星…
「ブルーノ!!」
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僕はブラックホールに飲み込まれ消滅し、僕と連動していた『遊星ギア』は停止して、道が開かれる……
その光景を幻視しながらも 僕が最後まで目に焼き付けたのは、幼い頃からの憧れだった過去の存在であり、絶望の中に出会った仲間であり、僕を仲間だと言ってくれた 世界の希望…………赤いDホイールに乗った『英雄』の姿だった
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光さえ抜け出すことのできない空間に消滅したはずの 僕の視覚器官が、何故か 光を感じ取り、どういうことなのか確かめるために重い瞼を押し上げる
ブラックホールに飲み込まれて、本来 あるはずの無いカラダの感覚を確かめながら体勢を起こす
「うぅ……ここは…? …!?これは…どういうことだ!?」
少し古びた 見知らぬ部屋の一角、そのソファーの上に僕は寝かされていたようだ
しかし、その時点でおかしい。全てを飲み込み、破壊するブラックホールに飲まれた先に、こんな空間があるはずが無い
あの世というものなのか……?いや、それも違うだろう
…そもそも、記憶と人格のコピーである僕が あの世などに縁があるはずもない
そう、もう一つ不明な点がある
それは、今の自分の姿格好が「ブルーノ」であった際のものであり、僕自身が「アンチノミー」であり「ブルーノ」であることを自覚していて、その双方の記憶を保持していること
つまり 今の僕は予備などではなく、間違いなく『アーククレイドル』の出現後 消滅した
いったい、どういうことなのだろう
Z-ONE…もしくは別の何者かが あのブラックホールから僕を救い出したとでもいうのだろうか
そんなことを考えているさなか、部屋のドアが開かれ 誰かが入ってきた
「おっ、気がついたみたいだな」
ライダースーツを着た青い短髪の青年は 僕を見て安心したように言った
「どうしたっていうんだ?あんな道のど真ん中にぶっ倒れてたが」
「まったく、見つけたのが俺たちだったから良かったが…」と続けて言う青年だったが、僕は 「道のど真ん中にぶっ倒れてた」という部分が気になってしかたがなかった
……わからない。ブラックホールからどこかの路上まで移動した経緯が全く見えてこない…
「見たこと無い顔だが……お前、まさかとは思うが『トップス』じゃないだろうな」
「『トップス』…?」
「知れねぇのか!?」
一応 知っているには知っている。『ネオドミノシティ』の中心区、そこに住んでいる一部の人間を指す言葉だ
だが、僕は違和感を感じた。それは、青年が『トップス』という言葉を口にする時、隠しきれないほどの敵意をこめていたからだ
「『トップス』ってのは俺たち『コモンズ』を虐げ続けてきた あのクソみたいな連中だ!なんで 知らねぇんだ!?」
今度は『コモンズ』という言葉。こっちは完全に知らない言葉だ
予想はしていたが、やはりここは『ネオドミノシティ』ではないようだ
しかし、そうなると 僕はどういう立場に立てばいいのだろうか?
前は実際に記憶喪失をしていたので、そういう
……そうだ。情報を得る意味も込めて、こういうのはどうだろう?
「ゴメン。実は 僕、遠くの街から 旅をしていて、たまたまここにたどり着いたんだ。 もといた街は『ネオドミノシティ』っていうんだけど……知ってるかな?」
「『ネオドミノ』…?わりぃ、聞いたことがないな。……そうか、だから何も知らねぇのか…」
納得したように頷く青年。そして、何かを思い出したようにハッとした顔をした
「まだ名乗ってなかったな。オレはシンジっていうんだ。これも何かの縁だ、よろしくな!」
そう言われ、少し名乗る名に悩んだが 僕も言葉を返すことにした
「僕はブルーノ。こちらこそよろしく」
「ブルーノ、か。憶えたぜ」
「ヘヘッ」と軽快に笑うシンジ。……だけど、その口から信じられない言葉が出された
「オレ以外に クロウとデイモン、トニーが外にいるんだが…」
「クロウ…!?それって、『チーム5D's』の!?」
「『ファイブディーズ』…?聞いたことないが……たまたま、同じ名前だったんじゃねえか?」
つい出てしまった言葉を シンジにそう返され、僕は少し冷静になり 改めて 考えてみる
よくよく考えてみれば、僕の知っているクロウがいるのであれば シンジだって『ネオドミノシティ』を知っているはずだ。……ちょっと先走ってしまった自分が 恥ずかしく思えた
「それで、その人たちは 外で何をしたるんだい?」
「それは アレよ。道で倒れてたブルーノをとっさに避けた時に クロウのDホイールのどっかが壊れたみたいでな。それを修理してるんだ…………どうも著しくないようだけどな」
僕は曲がり角を曲がった先にでもいたのだろうか……と、そんなことを考えても意味は無い。今すべきことは…
「もしよかったら、そのDホイール 僕に修理させてくれないかい?故障した原因は僕なんだし……それに、こう見えても 機械には強いんだ」
「本当か!? そいつはありがてぇ!」
そう言ってシンジは「ついて来てくれ」とドアを開けて 部屋の外へと駆け出した。僕も ソファーから立ち上がり、追うように外に出た
外に出た僕は、複数人の声がする方へと歩いていく
途中から その複数人の声が聞き取れてきた
「―――のブルーノってヤツが本当に直せるのか?」
「そう代わりのきく物じゃねぇから、直るなら 俺としては嬉しいんだが」
「嘘を言ってるようには見えなかったし、きっと大丈夫だと思うぜ。っと、来た来た」
黒を基調としたDホイールの周りには、シンジの他に 背の高めのモヒカン頭の青年、小太りの青年、そして……
「よう!元気そうで何よりだぜ。俺はクロウっていうんだが……本当に俺のブラックバードを直せるのか?」
僕の記憶の中にある『クロウ』と そう違わない存在が目の前にいた
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あの、僕の知っている『クロウ』とは異なる存在である『クロウ・ホーガン』との出会いは、僕に大きな衝撃を与えた
その衝撃を 自身の奥底に隠しながら、僕は 彼のDホイールを修理したのだが、そこで色々なことがわかってきた
この世界には『モーメント』が存在しない
Dホイールの構造は基本的に変わりなかったが、モーメント機関が組み込まれていた部分は 別のものとなっていた
『モーメント』の消滅。それは僕らが…Z-ONEが 絶望の未来を回避できる可能性のひとつとして示唆されていたものだ
ならば、それがなされた未来が ココなのだろうか?
いや、それは 僕を知らない『クロウ・ホーガン』の存在が否定している
もし、最後の手段として決行された「『アーククレイドル』を『ネオドミノシティ』に落し 『モーメント』を消滅させる」作戦が
ここで、僕の思考の中に ある言葉が思い起こされた
『
もしかしたらありえたかもしれない 可能性の世界
僕らが 『破滅の未来』を回避する手段を模索した際に、
時を超えて過去を改変することで『破滅の未来』を回避することは、もしかししたら 『平行世界』を生み出すだけで、僕らがいる世界は 決して救われることが無いのではないか…………そういう話が 一時期 僕らの中であった
「『破滅の未来』が回避できる未来が生まれるのであれば…」という意見もでた
また、僕たち自身は影響を受けず 他のものだけの過去を改変することが出来る方法が示されたことで、『平行世界』への意識は薄れていった
……まあ、『
話を戻すが、今 僕がいる世界は『平行世界』の一端なのだと思う
『モーメント』の開発者・不動博士が存在しない……いや、『シグナー』が過去改変の影響を受けないことを考えると、もしかしたら もっと昔……『シグナー』と『ダークシグナー』の因縁そのものが存在しない世界なのではないだろうか?
しかし、こればっかりは 調べる手段の無い今 考えても仕方のないことだ
だけど、何故 僕はここにいるのだろうか?
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今の僕が持つ 僅かな繋がりは、僕を拾った クロウやシンジたちとの繋がりだ
僕の持つメカニックとしての腕は この世界でも通用するとわかり、僕は フリーの技術者として仕事を始めた
そこで得た収入で、僕は クロウやシンジたちと共に『コモンズ』の子供たちに 色々と買い与えるようになっていった
僕の仕事は 忙しくなっていく一方だった
『コモンズ』のDホイールを中心に 色々と機械類を扱っていたのだが、どこからどう話が入ったのか ある『トップス』デュエリストから直接仕事を頼まれたのを期に、そのデュエリストが常連となり、その人を中心に 何度も『トップス』から仕事が来るようになっていった
『トップス』から直接仕事を請け負っていることを知ったシンジが 何とも言えない表情をしていたが、クロウが間に入って「子供たちに満足にメシをやるには金がいる。『トップス』からの仕事だって受けるしかないだろ!」と言ってくれたので なんとか事なきをえた
そして ある時、僕のもとに大きな仕事が入ってきた
「今度開催される『フレンドシップカップ』 その整備班の一員として加わってほしい」というものだった
報酬は普段とは比べものにならないもので、断る理由も無かった
だけど、僕には 別の意味もあった
『コモンズ』出身の『キング』ジャック・アトラス
『フレンドシップカップ』優勝者が戦える王者であり……僕の知る『ジャック』とよく似た存在
だが、彼は『コモンズの英雄』でありながら『コモンズの裏切り者』とも呼ばれていた。僕の記憶の中では仲間であるクロウからも『裏切り者』と……
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『決まったー!危なげも無く勝利を飾ったのは 『キング』ジャック・アトラース!! フレンドシップカップ優勝者であろうと キングの前では弱者であるということかー!?』
スタジアム内のガレージから中継に目をやると、ハイウェイで倒れるDホイールとフレンドシップカップ優勝者……僕のお得意様だった『トップス』デュエリストが映し出されていた
だが そんなのは僕にとっても 他の人にとっても、些細なことでしかなかった
他の人たちは惜しげも無く拍手喝采を勝者に浴びせる
それは 勝者がまだスタジアムに戻ってきていなくとも そんなことは関係は無い。ただ『キング』の強さに酔いしれた自分たちが満足するためのものなのだから
僕が目を向けるのは、敗者の後に映し出される 勝者の顔だった
悠然と構える『キング』らしい顔……しかし、それは違うのだと 『ジャック・アトラス』を知る僕は感じていた
あれは満たされていない顔だ
飢えに、乾きに
かけがえのない仲間と同じ存在が ひとり苦しんでいるのが、僕の目に映った
僕に何ができるだろう
僕の奥底で 何かがうごめいた
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「おーい、『便利屋』。そろそろシメの仕事が始まんぞー……って、アイツどこ行った?便所か?」
整備班の班長が ブルーノを探していたが、彼はそう時間をかけることも無く「まあいいか」と自分の仕事へと戻ったのであった