ドラえもんのいないドラえもん  ~超劇場版大戦 地球は何回危機に遭う~   作:ルルイ

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宇宙世直し行脚(アニマルプラネット・ブリキの迷宮)

 

 

 

 

 

 小宇宙戦争(リトルスターウォーズ)の戦いを終えて地球に帰還した僕等は情報整理後、宇宙船開発を営んだ。

 ピリカ星で入手したクジラ型の巨大戦艦を解析し宇宙航行に最も必要なワープ装置を主に調べ、他にも利になりそうな情報も蓄積していった。

 

 宇宙船を望んだのは残る映画の事件が宇宙に関わるものが多いからだった。

 宇宙救命ボートというひみつ道具があるが、別の星まで自動で飛んで行くフルオートなので融通が利かない。

 解析しようにもひみつ道具はブラックボックスが多いので主要機能を理解することが出来ない。

 同じひみつ道具による改造は出来るが、結局機能を理解出来るわけではないので極力行わなかった。

 

 それに比べて、これまで入手してきた技術は地球ではオーバーテクノロジーだが、ひみつ道具よりもまだ理解が及んだ。

 ひみつ道具を理解出来ずとも応用するためにいろいろ弄ってきたので、相対的にこれまで手に入れた技術が簡単に見えたので習得が楽に感じた。

 お陰でひみつ道具の力を借りなくても宇宙船を開発出来るくらいにはなったが、それでも当然タマゴコピーミラーによる人海戦術と記憶統合による学習効率の向上が必要だった。

 

 宇宙船開発を優先しているが、他にもピリカ星で使ったMSの改良もひみつ道具無しで行っている。

 こちらはどちらかというと趣味が優先してしまっているのだが、ピリカ星で使えなかったガンダム系のMSを完成させるためにビーム兵器の開発を進めていた。

 クジラ型巨大戦艦の武装からヒントを得られたことでビーム兵器の開発は順調に進み、ガンダム系だけでなくあらゆるMSの再現が実現可能になった。

 ひみつ道具に比べたら玩具に違いないが、人材がどうしても少ない僕等の役に立つロボットとして有効利用出来るだろう。

 ピリカ星で学んだ宇宙を含めた戦場での経験は、他の宇宙に出る映画の話で後に大いに役立つことになる。

 

 宇宙船はMS戦闘を想定した大型戦艦と、パピ君が乗っていたような個人運用が可能な小型で速い物を開発した。

 もちろんどちらもピリカ星の人に合わせた小さいサイズの物でなく、地球人サイズの物を作ってワープ機能も備えている。

 それに加えてMSも地球人が乗り込むような実物大サイズも開発されたが、ピリカ星人が乗り込めるサイズのMSも開発し続けた。

 

 ピリカ星で使ったMSのサイズは、地球では人間サイズのロボットになる。

 これはそのまま機械兵として使うことが出来たので、白兵戦用機械兵として運用開発を続けた。

 人員、技術、経験が揃ってきた事で僕等の活動もだいぶ安定してきたのだった。

 

 

 

 

 

 僕等が運用する小型の宇宙船が完成したら、地球外の事件にそれぞれ取り掛かった。

 宇宙船が完成するころにはビーム兵器も完成しており、戦力について申し分なかった。

 というより、一機開発すればフエルミラーで数を揃えられるので数についてはどうとでもなる。

 

 今回も各部署の代表のコピー達の集った会議で、映画事件に関する討論が行われていた。

 

「量産機はやっぱりザクだろ!

 由緒正しき量産機の代表にして幾度とリメイクされてるガンダムシリーズの伝統だ。

 これをメイン量産機にしない手はないだろ!」

 

「ジムタイプだって負けちゃいないぞ!

 ガンダムの量産機にして角張りつつもスマートなフォルム、少ない特徴故に対した活躍も見られない量産機の宿命。

 ほどほどに役立って消えていく、エースが乗ることによって活躍を見せるザクとは違う完全なやられ役。

 ザクとは違うのだよ、ザクとは!」

 

「それ、言いたいだけだろ!?

 量産機だからって役に立たないもの作ってどうするんだ。

 どうせいろいろ作ってるんだから、適当に配備すればいいんじゃないか?」

 

「仮にもMSは戦闘で使われる軍事兵器だぞ。

 軍事兵器らしく形を揃えないと見栄えが悪い。

 同じ種類のMSが並んでるのは壮観だが、バラバラの種類が並んでるとゲリラ軍かテロリストの戦力に見えないか?」

 

「僕等、軍でもテロリストでもないんだけどね」

 

「量産機はザクやジムだけじゃないぞ。

 ドムのジェットストリームアタックは後世に残り続ける立派なネタじゃないか」

 

「ドムのホバー移動はいいよね。

 人型でありながら足を動かさないあの動きには、魅せられるものを感じる」

 

「ここはやっぱり用途別に分けて配備するべきじゃないか?」

 

「例えば?」

 

「ガンダム系は各地形オールマイティだけど量産機はそうじゃないだろ。

 海陸空宙それぞれに合わせた量産機を配備するべきじゃないか?」

 

「それだ」

 

「じゃあ陸はドムに決定だな。陸戦兵器なんだし」

 

「いや待てザクだって地上でも活躍できるぞ

 ホバーはないけど様々な武装が可能な汎用兵器だ」

 

「それならジムだって」

 

「海ならゴッグかアッガイか?」

 

「初見はダサいと思うんだけど、あれはあれで味があるんだよな」

 

「それを言ったらジオン系列のMS全部味があると思うんだけどな

 初登場のジオングも未完成なのに、あれはあれでいい感じだもんな」

 

「足なんて飾りです!偉い人にはそれがわからんのです!」

 

「言いやがったな、おまえ!」

 

「先越された!」

 

「なんかアニメ見たくなってきた」

 

「主力量産決めるための参考に鑑賞会でもしようか。

 全話見るのは流石に辛いし劇場版で」

 

「それじゃ準備するわ」

 

「お菓子とジュース持ってくる」

 

 そして始まるガンダム鑑賞会。

 

 

 

 

 

 鑑賞が終わって全員が余韻に浸る。

 感想は全員変わらない物だった。

 

「やっぱどれもいい機体だよな」

 

「ザクは代表的だけどマイナーな機体も味がありすぎる」

 

「やっぱり全種類作るか?」

 

「作るだけならいいんじゃないか?

 必要になったのなら数はいつでも増やせるんだし」

 

「けど性能が被るものが多いから仕舞っておいたらそうそう使う機会がないんじゃないか?」

 

「そうかもしれないけど一度は全部作っておきたいな」

 

「一回作れば満足しそうだしな」

 

「とりあえず全部作って扱いやすいのを主力量産機にしよう」

 

「会議もだいぶ長引いちゃったしここで一度解散だな」

 

「じゃあこれで劇場版事件報告会を終了する。

 お疲れさんでした」

 

「「おつかれさまでした」」

 

 挨拶を終えて各々が席を立つと会議室を出ようとドアに向かっていく。

 会長の僕も今回の会議のために用意し机の上に並べた資料を纏め始めた所で、はっと気づく。

 

「って、事件報告について全く話してないぞ!」

 

「「あっ!」」

 

 僕の声に会議室を出ようとした全員が立ち止まって思い出す。

 

「しまった、MS談義を始めたら完全に話がそれてた」

 

「事件解決よりもMSの働きが目覚まし過ぎるのがいけないんだ」

 

「なんでだれも止めなかったんだよ」

 

「僕ら趣味に走り出すとどうしても止まらないからな」

 

「今後の主力量産機の話にすり替わっていても、結局話はまとまらなかったし」

 

「極めつけはガンダムアニメの鑑賞会になるんだもんな」

 

 本来は宇宙船が完成した後に解決した地球外の事件の報告会が、この会議の目的だった。

 なのに事件で活躍したMSに見惚れて、今後どのようなMSを作るかを考える談議になってしまった。

 全員が同じ趣味に走るので、止めるモノがいなければ直に脱線してしまう。

 毎回の会議の反省点なのだ。

 

 

 

 仕切り直して、事件の報告会を再度始める。

 僕等の話の脱線を止める役に今度はドラ丸を呼んできてある。

 

「なにをやっているのでござるか、殿

 会議が長引いているのかと思えば、話を脱線させて無駄口ばかりとは…」

 

 忠義に厚いドラ丸も今回ばかりは流石に呆れてしまっている。

 

「いや、悪い。 MSの話を始めたらどうにも止まらなくてね。

 ドラ丸だってブルードラゴンの改良を楽しみにしてたじゃないか」

 

「確かにそれは気になるでござるな。

 拙者のガーベラ・ストレートVol.2改はどうなったでござる?」

 

 ブルードラゴンとはドラ丸の機体の事であり、元となった機体がアストレイレッドドラゴンでパーソナルカラーをドラ丸と同じ青にしているのでそう呼び変えた。

 ガーベラ・ストレートはレッドドラゴンが使う刀型の武器で、改と呼ぶのはドラ丸の猫又丸と同じひみつ道具機能を付けてるから。

 そしてVol.2は刀型の武器ではあるが、そのサイズが全長150MというMSが使うと思えない大きさだからだ。

 原作でも当然普通では使うことが出来ず、宇宙空間で且つ腕部を強化された機体でなければ振ることも出来ない代物。

 それを運用することも想定に入れてブルードラゴンは改良していた。

 

「持ち運びに関しては宇宙船に船の横に取り付けるつもりだけど、四次元ポケットや【取り寄せバッグ】の機能でどこでも出せるようにしようとも考えている

 振う為の腕部はひみつ道具の機能も使うから問題ないだろう。

 いっそ地上でも使える様に刀本体に反重力エンジンを付けて、浮かせることで振り回せるようにしようかとも考えてる」

 

「おお、それは楽しみでござるな。

 完成はいつ頃になるのでござる?」

 

「Vol.2改は大きい分耐久力をしっかりさせてれば容量がかなり出来る。

 その分改造は楽になるからそんなに時間はかからないはずだ。

 ブルードラゴン本体も技術の蓄積に合わせて、外観はそのままでも中身は丸々入れ替えるように改造しているから性能はどんどん上がってる。

 腕力を強化するひみつ道具機能を搭載したら、もうリアルロボットじゃなくなるだろうな」

 

「そうか、別にMSに拘らなくてもスーパーロボット系を作ることが出来るのか」

 

「ひみつ道具を使うという前提が必要だろうけどね」

 

「じゃあ量産機はMSにして僕等が乗る専用機はスーパーロボットにするのはどうだ」

 

「それはいいな、ひみつ道具の機能を加えれば物理法則の無視なんて簡単に出来そうだ。

 リアル系もいいけど熱血のスーパー系も使えたら面白そう」

 

「じゃあ、どういうのにするんだ?

 僕はやっぱり合体系のロボットを作りたいが…」

 

「ゲッターロボとか?」

 

「ゲッターは再現難しいだろ。

 合体機構はもちろんゲッター線なんて意味不明」

 

「もうちょっと新しい方が再現しやすいか?」

 

「アクエリオンかグレンラガンが理想かな」

 

「アクエリオンも大概だけど、グレンラガンは厳しいんじゃないか」

 

「再現どころかひみつ道具を使っても勝てる気がしない」

 

「スーパー系はロボットが惑星一個くらい救ったり滅ぼしたりするのが当たり前だからな」

 

「ひみつ道具の機能を一体のロボットに集約させてみるというのはどうだろう。

 それで新しいオリジナルなスーパーロボットを作るのは」

 

「それは面白いかもしれない!」

 

「ひみつ道具機能を集約させた万能ロボットか。

 ムネワクだな」

 

「でもそれって巨大なだけのドラえもんじゃないか?」

 

「言われてみれば確かに…」

 

「つまりドラえもんはスーパーロボットだったんだよ!」

 

「なんだってー!!」

 

「殿、また話が脱線してるでござる!!」

 

 話の流れがだいぶ離れた所でドラ丸のストップがかかった。

 また話が脱線してしまったようだ。

 

「すまんドラ丸、止めてくれて助かる」

 

「それはいいでござるが、いつもこんな調子なのでござるか?」

 

「いつもはもう少し順調に進むよ。

 それでも脱線は免れないんだけど…」

 

「はぁ、では拙者が会議の進行を務めるでござるよ。

 それなら殿達も話の脱線がし辛いでござろう?」

 

「ああ、それで頼む」

 

 今後の会議の進行はドラ丸に任せる事にする。

 初めからこうしてればよかったのでないかとも思うが、自分同士で駄弁るのが楽しくて頼みにくかったのもある。

 ドラ丸の事件の結果をまとめた資料を手渡す。

 

「では、事件結果の報告を順番に言っていくでござるよ。

 まずはアニマルプラネットからでござる」

 

 会議室の大型モニターに事件内容を纏めた情報が提示される。

 

 

 

・アニマルプラネット

 原作では地球に偶然繋がったどこでもドアと同じ働きのどこでもガスで、のび太が別の星に迷い込むことから始まる。

 そこは動物達が人間のように進化したとても平和で豊かな世界だった。

 のび太たちはそこで友を得る事になるが、どこでもガスの燃料切れで一度は交流を途絶する。

 だがアニマル星が襲撃されたと知ったのび太たちは、宇宙救命ボートで再びアニマル星に友達を助けに向かうことになる。

 そこで襲ってきた者たちと戦うのがこの話の流れた。

 

 舞台となるアニマル星は実は月のような衛星で、母星と呼べるより大きい星が存在している。

 襲撃者はその母星に住む人間で、その星は環境汚染で荒廃しておりまともに生活するのが難しい環境だった。

 アニマル星の進化した動物達は、遥か昔に一人の人間の科学者によってどこでもガスでその星から逃がされた動物の子孫だった。

 母星の人間はアニマル星の綺麗な環境を知ると、それを手に入れるべく侵攻したのが今度の敵の目的だった。

 

 ここで気になったのは母星の人間がアニマル星を知ったのは、ジャイアン達がどこでもガスの装置を弄って母星とアニマル星を繋いでしまったことが原因だ。

 母星の人間がアニマル星の事を知った事で襲撃される要因になったのだが、僕等は事件を再現するためにそんなことをするつもりはない。

 では襲撃は起きないのかと思ったが、○×占いでは結局襲撃は起きると出た。

 

 どうやらどこでもガスで二つの星が繋がらなくても、襲撃時刻がずれるだけで大差が無いようだった。

 アニマル星の存在がどこでもガスによって発覚してから襲撃まで大した時間が無かったので、もともと準備があったんだろうと推測。

 ならばそれを撃退するのが僕等の役目になるのだろう。

 

 まず地球と繋がっているどこでもガスを見つけ出す。

 それからアニマル星に行きどこでもガスの発生装置と、同じように隠された星の船と呼ばれる小型宇宙船を地中から回収する。

 この星の船はアニマル星に動物人間の祖先を連れてきた人間の科学者が乗っていたものらしい。

 映画ではこれにのび太が乗って人質救出を行っていた。

 

 回収した後はこの星の宇宙座標を割り出してから、制作した新しい宇宙船で一度地球に帰還した。

 ガスの発生装置はアニマル星側にしかないので、どこでもドアのように潜り抜けた先で装置を回収することが出来ないから、持ち帰るには宇宙船に乗って帰るしかなかった。

 地球に帰ったら研究材料としてどこでもガス発生装置と星の船は技術班に提出しておき、記録しておいた宇宙座標から今度は自作の個人宇宙船でアニマル星に再び向かう。

 今度は母星の人間の襲撃を撃退するためだ。

 

 襲撃時間を割り出して壁紙格納庫に仕舞っておいた大小のMS部隊を配備し、攻撃が開始したのを確認したらすぐさま迎撃にMS部隊を出撃させた。

 今回はピリカ星で使った人間サイズのMSを機械兵として出撃させ、人間相手でも白兵戦を挑めるようにし、敵の宇宙船対策に原寸大のMSも数機配備して敵の船を落とす役割を担った。

 小宇宙戦争(リトルスターウォーズ)での無数の熱線に耐えたザクの装甲は今回も効果を発揮し、母星の人間が使う攻撃にことごとく耐えて逆に撃墜していった。

 ただしやり過ぎてしまったという失敗があった。

 

 敵は母星の人間だが、正確には一部の過激派の集団でコックローチ団という組織だ。

 ピシアのような正規の軍人でもないので大した数はいなかったのだが、武装しているが生身の人間ばかりだったので同サイズでもMSと戦えばただでは済まなかった。

 それがぶつかった事で敵はあっという間に蹂躙されて猟奇的な殺人現場になってしまった。

 敵の船も原寸大MSの攻撃ですぐに爆散してしまったので生き残った者はいなかった。

 あっけなさよりも血生臭さに吐き気を覚えてしばし取り乱してしまった。

 

 ピリカ星で無人兵器を相手にする感覚でやってしまったのが、今度の失敗だろう。

 無人兵器なら人の生死を気にせずに戦えたが、戦争というものは本来血生臭い物だとすっかり失念してしまっていた。

 敵を撃退するだけに留めるつもりだったのだが、想定の甘さが一方的な殺戮に代わったのは非常に不味い結果となった。

 僕自身の気分も最悪に陥ったが、その後のアニマル星の人々との交渉のとっかかりが非常に難しかった。

 

 敵を撃退することで味方であることを印象付けようと思ったが、MSによって生み出された惨劇に皆がドン引きというより恐怖に駆られてまともに話が出来なかった。

 遠くから代表者を求める声を発し続ける事で相手が落ち着くのを待ち、返答がくるまでは敵の死体処理をすることにした。

 殺してしまった時もショックだったが、MSの手でやらせているとはいえ死体を処分する光景は相当堪えた。

 自業自得とはいえ、一般人では生涯見る事のない光景をまじまじと見せられて、再び吐き気を覚えるが耐えるしかなかった。

 ここで対人兵器における非殺傷の武器の開発を推進すると報告書に書かれている。

 

 我慢しながら死体処理を終わらせた頃に代表の人(オランウータンだが)が出てきて話を進められた。

 僕等は通りがかりの宇宙人で、襲われているのを見たから攻撃したがやり過ぎてしまったのだと説明し、終始警戒され続けたがどうにか敵ではないことは理解してもらえた。

 アニマル星の人々を襲ったのは母星の人間で、これから僕等が今後襲ってこないように話を付けに行くと約束した。

 後で母星の人間と話し合うことになるだろうと説明し、了解を得てから僕等は迎撃のための戦力を残して敵の母星に向かった。

 

 襲ってきたコックローチ団だが、母星にいるのは彼らだけではない。

 むしろ奴らは少数派で、荒廃した惑星の再生に尽力を尽くしている者の方が断然多いらしい。

 そんな彼らの代表であり映画でも最後に登場して話を纏めてくれた連邦警察の元に直接向かった。

 本来なら映画知識のみを当てにして知らない組織に向かうことはなくもっと慎重に行動するのだが、自分でやってしまったスプラッタの影響が残ってなかばヤケクソ気味に突撃してしまった。

 

 重武装のMSを率いていたので、攻撃はされなかったが連邦警察にもかなり警戒された。

 それでも憂鬱な気分を吹き飛ばそうと、かなりテンション高めで終始押せ押せムードでアニマル星の事を話しまくった。

 そっちの星の馬鹿が襲ってきたぞとか、こっちの星の人間がだいぶ迷惑してるとか、通りすがりの僕等としても非常に遺憾であるとか言って、連邦警察を半分脅かすように文句を言って対応するように呼びかけた。

 かなりのテンションで話しまくってたので自分でも何を言っていたのかいまいち覚えていないが、連邦警察は直ぐに動いてこちらに生き残っているコックローチ団を捕らえてくれた。

 

 コックローチ団は映画でも連邦警察にマークされていたので、行動に移した証拠があるのならすぐにでも逮捕可能だったらしい。

 やり過ぎてアニマル星を襲ったコックローチ団を僕が殺しにしてしまった件は、出来れば捕らえてほしかったと言われただけでそれ以上咎められることはなかった。

 僕等が止めなければアニマル星の人々が犠牲になっていたのは事実なので連邦警察も強く言えなかったのだろうが、今回のような失敗は二度としたくないので教訓として自戒することにした。

 オーバーキルなんて現実でやるとろくなことにならないと。

 

 コックローチ団の残りを引き渡した後は、アニマル星に連邦警察の代表と共に戻って話し合いで解決した。

 連邦警察もアニマル星の存在については知っていたが、その美しさを人間の手で壊さないように不可侵が母星で義務づけられていた。

 過去に母星の環境を壊してしまったのは人間なので、同じことを繰り返さないためにまずは自分たちの母星を再興するまでは関わらない決まりだったが、コックローチ団がそれを破ってしまった。

 そこで改めて母星とアニマル星で不可侵を取り決めるべく連邦警察が条約を提示したが、アニマル星の人々が母星の環境を知って環境改善の技術提供を打診してきた。

 

 アニマル星の環境対策は映画でもドラえもんが22世紀の技術を上回ってると言わしめるものだった。

 それを使えば母星の環境改善に役立つだろうと、代表はアニマル星の人々の優しい気質から提案した。

 連邦警察の代表も環境改善が進むならと喜んで受け入れたがったが、彼はあくまで不可侵の取り決めのために来ただけなのでその場で返答することはなかった。

 

 そこからは完全な不可侵ではなく一部交流を行うことで話が進められていった。

 連邦警察の代表も一度母星に戻って仲間と相談する事になり、アニマル星の人々も交流に向けて前向きに話し合っていた。

 ここまで来れば僕が手を出す必要もなく、彼らに別れを告げて地球に帰ることにした。

 アニマル星の人達も話し合いが進んで、終わるころにはそれほど怯えられることも無くなっていた。

 

 終わってみれば僕等がコックローチ団を倒すのではなく、彼らの橋渡しをするだけでよかったのではないかと思ったが、人を殺してしまった失敗はある意味尊い経験として忘れる事の出来ないものになった。

 

 

 

 

 

 報告書を読み終えると全員が難しい顔をして眉を顰めていた。

 

「人間サイズのMSによる虐殺かぁ」

 

「元が玩具みたいなマシンガンでも、ひみつ道具の改造で本物と大差ないからな」

 

「相手が防護服を着ていても、生身なことをすっかり忘れていたか」

 

「敵の船も原寸MSのビームライフルで一撃か」

 

「映画では空気砲で落ちてたよな。 そりゃあ過剰火力にもなる」

 

 戦果が想定以上なのは問題ないが、過剰な犠牲は望んでいない。

 敵とは言え虐殺ともいえる光景を作ってしまったのは、まだまだ一般人の感性が抜けない僕等には少々辛いものがあった。

 

「報告書にも書かれていた通り、白兵戦用の非殺傷武器の開発は急務かもな」

 

「ひみつ道具の武器は非殺傷の物ばかりだろ。 それを流用できないか?」

 

「【ショックガン】だと防護服にすら通じないのは映画でもわかってるんだよな」

 

「やっぱり【空気砲】を流用するのがいいんじゃないか?」

 

「【フワフワ銃】なんてのも人間相手なら使える」

 

「ひみつ道具の武器でも、人間相手ならほとんど非殺傷じゃないか」

 

「人間相手にMSを差し向けたのが失敗だったな」

 

 散々MSの開発で遊んでいたが、実際に人を殺せる兵器だと再認識して全員頭が冷えていた。

 無人機などのロボット相手なら何とも思わないが、やはり生身の人間をスプラッタにした事実は堪えたのだ。

 

「今回の失敗はクるものがあったが、同時に僕等にはいい経験だったのかもしれない。

 僕等は玩具の様にMSを作れるようになったけど、実際には人を殺せる兵器なんだと思い知った。

 今後はそれを自戒して行動しよう」

 

 会長の僕の言葉に皆が神妙な心持ちで頷いた。

 

「MSの運用については今後も討論していくとして、次の報告に移ろう。

 ドラ丸、次を読み上げてくれ」

 

「わかったでござる、次の案件はブリキの迷宮(ラビリンス)でござる」

 

 

 

 

 

・ブリキの迷宮(ラビリンス)

 

 この話も舞台は地球を離れたチャモチャ星での事件になる。

 その星はロボットの科学者ナポギストラーが、人間に反乱を起こしてロボットだけの社会を作り上げたのが事件の始まり。

 それに対抗するために、協力者を探して宇宙に出た少年サピオはのび太達と出会い、共に戦ってくれることをお願いする。

 そうしてのび太たちのチャモチャ星での冒険が始まるが、序盤でドラえもんが敵に攫われるという事態に事件は難航するが、ドラえもんを取り戻してからはあっという間に解決に突き進むことになる。

 この頃の映画の話は、よくドラえもんが故障したり四次元ポケットが無くなったりすることで利便性を悪くして話を面白くするのが定番になっていた。

 

 この事件は解決方法がはっきりしているので特に難航することはなかった。

 

 まずは地球にきたサピオに、こちらから接触し協力を取り付ける。

 その時の説明はいつも通り予知でサピオ達が現れるのを知っていたからと説明し、事情もわかってるので地球に迷惑がかからないよう速やかに解決するために協力すると告げた。

 

 彼らの宇宙船は巨大な島そのもので、その地下には巨大な迷宮がありその一番奥に研究室が隠されていた。

 そこにはナポギストラーに対抗するために必要な品としてサピオの父が作ったウィルスディスクが保管されており、映画でもドラえもん達が活用したので僕もサッサと同じ方法で迷宮を攻略して回収した。

 このウィルスディスクをナポギストラーに打ち込めば、一緒に反乱を起こしているロボット達も同時に倒せる。

 一応戦力を用意したらサピオ君達と共にチャモチャ星に向かった。

 サピオ君達を追っていたナポギストラーの部下が地球に来ていたが、MS兵で瞬殺した。

 

 チャモチャ星に着いたら【自家用衛星】でチャモチャ星の首都メカポリスを探索しナポギストラーの居場所を探った。

 今回は用意した戦力で打ち破るのではなく、ひみつ道具を多用して相手に気づかれない内に事を済ませた。

 ピリカ星のように真正面から戦うことも出来たが、今回はチャモチャ星の人々が収容所に捕らわれているので乱暴な手段をとって人質にされるのを避けたかった。

 そこでウィルスを打ち込む予定のナポギストラーだが、【ウルトラタイムウォッチ】で時間を止めてその間にディスクを打ち込んで仕掛けた。

 仕掛け終わったらその場から離れて時間停止を解除すると、すぐに効果が出始めてナポギストラーを中心に全てのロボットが糸巻きの歌を歌いだして、最後には壊れた玩具の様にショートして動かなくなった。

 

 後は収容所に捕らえられていた人間を解放してこの事件は終わった。

 チャモチャ星の人達は解放されても意気消沈した様子で元気はなかったが、時間がたつと星の再建を始めた。

 ナポギストラーに従うロボットが全部壊れたので復興は人の手でやらなければならなかったので、MSを使って多少の復興支援をしてからチャモチャ星から地球に帰還した。

 

 事件は順調に解決したが、ピリカ星で見たような戦場となった都市の復興はそこに住む人たちにとって急務である。

 今後復興支援のための作業用ロボットの配備も報告書に提案しておく。

 

 

 

 

 

「ブリキの迷宮(ラビリンス)の報告書は以上でござる」

 

「ウルトラストップウォッチを使ったか」

 

「ギガゾンビでもない限り、大抵の敵はこれで簡単に倒せるしな」

 

 ギガゾンビは日本誕生に出る敵だが、同じ未来人であるために映画のドラえもんはウルトラストップウォッチの時間停止を解除されることになった。

 そんなひみつ道具と同じくらい理不尽な存在でもいない限り、時間停止による攻撃は防げないだろう。

 

「あっさり勝ってしまうからあっけなさ過ぎて使いたくない手だが、多くの人質がいたんじゃしかたないか」

 

「MSの戦力テストもピリカ星で済ませてるから、戦闘の必要はなかっただろう。

 同時進行させていたアニマルプラネットは失敗だったからな」

 

 戦力の充実化に伴い、簡単な事件であれば同時に解決しようとそれぞれの事件に一人ずつ僕のコピーを向かわせていた。

 

「失敗も一つの経験だ、今後に生かそう。

 それでチャモチャ星での成果は何かあった?」

 

「ナポギストラーが開発したイメコンが主な収穫だな」

 

 

 イメコンとはおそらくイメージコントロールの略で、チャモチャ星の人間が動かずに機械を操作する事の出来るシステムだ。

 ナポギストラーはこれを搭載した車いすのような乗り物を作り、一切動かずに生活できるようにすることで人間の弱体化と機械への依存を図った。

 彼の目論見は見事成功し、チャモチャ星の人間はほとんど抵抗出来ずに捕まったらしい。

 

「サイコントローラーと同じような効果だが、こちらは十分に解析可能な技術で出来ている」

 

「ひみつ道具との技術の置き換えが出来るのはいいことだな」

 

 同じ理論で解析出来れば、そこからひみつ道具のブラックボックスの解析に繋がる可能性がある。

 ひみつ道具の解析出来ない仕組みを理解するための研究も細々と進めている。

 

「後は戦後復興のための作業用ロボットの要望か」

 

「確かにピリカ星でも戦いが終わった後は復興が大変そうだった」

 

「平和な日本で暮らしてきた僕等は、戦争被害を受けた都市なんて見たことなかったしな」

 

「地震の被災地だって同じ日本でも見たことないし」

 

「大した労力でもないし作業用ロボットの配備は問題ないんじゃないか」

 

「そうだな、四次元ポシェットや壁紙格納庫ならいくらでも入るし」

 

「じゃあ作業用ロボットは今後用意しておくという事で」

 

 作業用ロボットの配備はこうして採用された。

 普通の会議であれば予算などの検討があるのだろうが全部ひみつ道具で解決なので決定するのが早い。

 

「この後の予定の事件は?」

 

「次は……ロボット王国(キングダム)の予定だな」

 

「課長、ポコは見つかりそうか?」

 

 情報統括課課長に視線が集まる。

 ポコとは映画ロボット王国でのび太達と友達になるロボットの子供だ。

 事故によって時空間に迷い込みこの世界にやってくるのだが、時空間から出てくるのにのび太たちの要因もあったので、こちらから探さないとそのままどこまでも時空間を漂流することになってしまう。

 

「時空間に漂流している存在というのは何時何処という概念がないから探し辛くてね。

 ○×占いに【なんでも分析機】、【時空間探索機】【時空震カウンター】なんかの調査に役立ちそうなものを使って調べてみたけど、かなりシビアだが見つけることは出来そうだと言っておく」

 

「どうやって見つけられるんだ?」

 

 課長の答えは歯切れが悪く、改めて見つける方法を尋ねる。

 

「特定の時間に特定の場所で時空間を調査すれば、その場所の近くの時空を漂流するポコを発見出来るはず」

 

「それはまた、確かにシビアだな」

 

「時空間は時間の流れの外にある場所で、そこでは時間の流れは無意味の筈。

 じゃあ何時ポコは時空間を漂流してるという謎はかなり難解だった、とりあえず○×占いで解決策を割り出した。

 時空間の中の時間の流れについてもある程度調査したから資料を纏めておく。

 まあ合体による情報統合があるから、あまり必要ないんだけどな」

 

 コピー達の蓄えた知識は、タマゴコピーミラーで増えたものを一つに戻すタマゴ逆転装置で情報統合出来る。

 それをすれば資料を見る必要はないのだが、知識を書面に残しておく必要はあるので何も問題ない。

 

「宇宙開拓史の方は何か手掛かりが出来たか?」

 

「正直ロボット王国に行く過程での観測結果に期待するしかないかな。

 宇宙開拓史の世界って絶対異世界だ。

 宇宙のどこかだからって時間の流れがずれてるのはいくらなんでも可笑しいし、時空間を越えたまったく別の宇宙としか考えられない。

 ロボット王国に行くみたいに時空迷宮を越えなきゃ行けないんじゃないか?」

 

「宇宙開拓史が異世界か、あり得るかもな」

 

 宇宙開拓史という名前からどこかの宇宙だとずっと思っていたが、異世界の宇宙の可能性にはこれまで気づかなかった。

 

「繋がったドアがタイムホールのように時間を歪めて繋がってる可能性もあるが、異世界の可能性もなきにしもあらずか」

 

「試しに○×占いで確認してみよう。

 異世界なんて可能性はまだ調べてなかったはずだよな」

 

「そうだな、会長○×占い出してくれないか」

 

「わかった」

 

 僕は服のポケットに手を突っ込み○×占いを探す。

 

「それで異世界に行くのにタイムマシンの改造は問題なさそうなのか?」

 

「天才ヘルメットで事足りるみたいだ。

 着いたとたんに壊れないように強度も高めてある」

 

「地底に秘境に過去に宇宙、そして異世界か。

 何度も思うがこの世界は節操がなさすぎる」

 

「もし宇宙開拓史が異世界ならロボット王国以上に調査が難航しそうだ」

 

「どっちも異世界なら同じ世界だったりして?」

 

 ○ ピンポーン!!

 

「「は?」」

 

 ポケットから出した○×占いを机の上に出した途端、マルのマークが反応して浮かび上がった?

 

「…何に反応した?」

 

「えっと…異世界の話?」

 

「まさかぁ…」

 

 突然の展開に流石に懐疑的な様子で戸惑っている。

 だがこうしてても仕方ないので再度確認をしてみるしかない。

 

「とりあえずもう一度質問してみるぞ。

 …宇宙開拓史とロボット王国の舞台は同じ世界?」

 

 ○ ピンポーン!!

 

 再び反応して浮かび上がる丸のマーク。

 

「「ええぇ……」」

 

 煮詰まっていた問題の突然の解決にこの場にいる全員が脱力せざるを得なかった。

 

 

 

 

 


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