ドラえもんのいないドラえもん  ~超劇場版大戦 地球は何回危機に遭う~   作:ルルイ

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不退転の投稿開始
まるで書き溜めしてないので、自分を追い詰めるつもりで自身をせかします。
何とか書き上げるぞー


鉄人兵団
真・鉄人兵団1


 

 

 

 

 

「人類奴隷化計画は賛成多数により可決されました」

 

―パチパチパチパチパチ―

 

 惑星メカトピア首都メカポリス中央評議会。

 その議会でこれまで協議されてきた人類奴隷化計画が賛成多数により可決され、それを受け入れる議員の拍手が巻き起こった。

 

―バンッ!―

 

―………―

 

 そんな中で机を激しく叩く音が響き渡り、拍手がやんで注目が音を鳴らした議員に集中する。

 

「アシミー議員、何か異論があるのですか」

 

「…異論はない。 議会のルールに則って正式に決まった決議だ。

 今更私一人がどうこう言う権利はない」

 

 異論はないと言っているが、体を震わせて耐える様子から不満しかないのがありありと伝わってくる。

 

「だがこれだけは言わせてもらおう。

 人間を新たに奴隷にするなど、先の大戦前と変わらぬ同じことの繰り返しではないか」

 

「だがアシミー議員。 すべての地金奴隷が解放されたことでメカトピアは労働力不足になっている。

 その労働力を補うために新たな奴隷が必要なのだ」

 

「そんなことはわかっている! 問題は奴隷を雇用するのでは我々はまるで進歩していないではないか!?

 それではいずれ新たな解放戦争をいずれ迎える事になる」

 

「ロボットと人間は別物だ。 我々ロボットは神によって宇宙を支配するべく作られた崇高な種族なのだよ。

 人間と同じだなどとアシミー議員は神の教えを否定する気かね」

 

「…神の教えに背く気はない。 人間を奴隷にしようという今の我々の考え方そのものが問題なのだ。

 先の戦争で奴隷の在りようを否定したのに、結局新たな奴隷を求めている。

 我等は先の大戦で何を学んだのか。 メカトピア人として本当に進歩したのだろうか」

 

「我等は地金奴隷を開放し、共和制という新たな社会を迎えたではないか。

 こうして議会という場で対等に話し合い、メカトピアの新たな未来を決めている。

 それの何が不満なのだというのか」

 

「…議会にて多数の賛同を得た結果に文句を言っている私が間違っているのだ。

 だが心に留めておいてほしい。 人間を力をもって支配し奴隷にすることは、これまでのメカトピアと変わらないのではないかと。

 力による支配の反発が先の大戦を引き起こしたのだという事を忘れないでほしい」

 

 そう言い残すと、アシミーは席を立ち議会場を出ていく。

 残された議員たちはアシミーの言葉に幾人か考え込む様子を見せるが、多くの者がその考えに反発的だった。

 

「アシミー議員にも困ったものだ」

 

「さよう。 先の大戦の英雄と呼ばれようとも政治の世界には疎い様だ」

 

「労働力の確保は急務。 嘗ての様に地金を無賃金で雇用する訳にもいかない以上、給与の必要のない使い勝手の良い労働力は必要不可欠なのだ」

 

「反乱が起ころうとも所詮は非力な人間。 しっかり管理していれば問題あるまい」

 

 アシミーの考えを理解しようとするものは少なく、メカトピア政府は人間を奴隷にするべく目標である地球への侵攻計画が進められることになった。

 

 

 

「今戻りました、シルビア様」

 

「お帰りなさい、アシミー。 議会の方はどうでしたか」

 

 アシミーが議会から出て訪れたのは、銀と白の装飾の清楚な女性型ロボットの元だった。

 

「ダメでした。 人類奴隷化計画は可決され、近いうちに奴隷徴収部隊が地球へ派遣されるでしょう」

 

「そうですか、悲しい事です。

 ようやくメカトピアの民が束縛の悲しみから解放されたというのに、再び奴隷とされる者たちが生まれるとは」

 

「シルビア様は慈悲深い。 メカトピアのロボットではなく人間にまで奴隷とされることに悲しまれるとは。

 流石聖女様ですな」

 

「よしてください。 戦争も終わり表舞台から身を引いた私は隠居したタダのおばあさんですよ」

 

「ですがこうして私に話を聞き、新たな奴隷として人間の徴用を気にしておられるようですが」

 

「…そうですね。 もう役目を果たした私は何もするべきではないのでしょう」

 

 聖女と呼ばれたシルビアは先の大戦で旗印となって戦い、その後の共和制成立にも大きく貢献し、議会結成時には議席も持っていたが、政府の情勢が安定したのを機に隠居した。

 

「しかし人間とて隷属を容易に受け入れるとは思えません」

 

「ですがこれまでの地球の観測データから、その兵力は我々と大きな開きがあるとのことです。

 戦端が開かれれば一気に地球人の戦力を壊滅させられるとシミュレーションで出ています」

 

「しかし奴隷となってこの地の労働力になる以上、火種は残り続けるでしょう。

 それがいずれ新たな戦火を呼ぶのだとするなら、やはりその選択は間違いなのではないでしょうか」

 

「はい、私もそう思います」

 

 

 

 

 

 ところ変わって、ここは地球の鏡面世界。

 中野ハジメとそのコピー達、ドラ丸が映画ドラえもんの事件に対処するために作られた秘密基地。

 

「以上が、スパイ衛星とタイムテレビから観測したメカトピア政府の地球侵攻の会議の様子だ」

 

「侵略派が圧倒的多数だったが、反対派もちゃんといたんだな」

 

「逆に全員が侵略派で人間を侮って攻撃してきたら、真正面から返り討ちにして遠慮なく壊滅させられたんだけどな」

 

「ロボットたち、いやメカトピア人の中にも平和主義者はいるってことだ」

 

「映画でもリルルがのび太達に共感して味方になるくらいに、彼らは人間らしい感情で行動している」

 

「人間らし過ぎて戦争を仕掛けるくらいだしね」

 

「そこがまた厄介だ」

 

 コピー達がメカトピアの様子を見てから思い思いにその心境を話す。

 大まかな要素として、メカトピアのロボットたちは人間らしいロジックで行動しており、そこには確かな善と悪の概念も存在しているという事だ。

 正しいことも間違ったことも理解があるが、メカトピアのロボットたちはメカトピア人としての価値観で行動し、地球の人間たちに対し自分たちの利益のために行動を起こそうとしている。

 これが完全な身勝手な悪だったならさっさと滅ぼしてしまうところだが、対話の余地があるのがハジメ達には扱いに困るところだ。

 

 意見を纏めようとオリジナルのハジメがまとめ役として発言する。

 

「ともかくメカトピアに対する方針を纏めよう。

 侵攻してくる彼らの軍勢に対しては、反抗するのは絶対条件だ。

 そしてそれを表世界の地球の人間に知られてはいけない」

 

「ドラえもんたちは侵攻してきたロボットたちを誘導して、湖から鏡面世界に誘い込んで迎撃したから表世界に影響が出なかったが、そんなのうまくいくと思うか?」

 

「無理だろう。 同じ方法で誘い込む事は出来るかもしれないが、地表の湖にロボットたちが突入するとなるとたくさんの流星が湖に飛び込むという事になる。

 表世界には当然目撃されるだろうし、侵攻部隊を鏡面世界で迎撃できたとしてもメカトピア本国をどうにかしないと何も解決しない」

 

「タイムマシンによるメカトピアの歴史改変は使いたくないからな」

 

「映画では地球に侵攻した鉄人兵団をどうにかする手段があれしかなかったとはいえ、完全に掟破りの手段だからな」

 

 以上の理由から原作の事件の解決方法と同じ手段をハジメ達は使いたくはなかった。

 本当にどうしようもなくなったら使わざるを得ないだろうが、ハジメ達はそれを最終手段としたかった。

 

「となるとやはり力による迎撃となるが、兵力の方はどうなっている。 作戦部長」

 

「兵力は既に十分取り揃えて、いつでも出撃できる状態にある。

 各タイプのモビルソルジャー部隊、およびその指揮官機も軍事演習を終えて万全の態勢にある」

 

「ガンダムのモビルスーツを白兵戦兵としたモビルソルジャー部隊。

 実際の戦争だというのに不謹慎だが、その活躍にワクワクするな」

 

「だがおそらく一方的な殲滅戦になるぞ。 わが軍の戦力は圧倒的だからな」

 

「あー、そのセリフ僕が言いたかったな」

 

「早い者勝ちだ」

 

 自らが作り出した戦力の活躍の期待に、次第に話がそれ始めるハジメ達。

 

「静粛に。 話を本題に戻すぞ。

 改めて確認するがメカトピア軍鉄人兵団の地球侵攻の目的だ。

 奴らの目的は人類を奴隷として、自分たちの新たな労働力として母星に連れかえることだ」

 

「人間を奴隷というのは当然受け入れられないが、労働力としてロボットたちの社会で人間が役に立つのか?」

 

「地球の奴隷のイメージだと肉体労働が基本だが、ロボットの国では人間の腕力はあまりに非力だろう」

 

「そうだとしたら余りにも効率が悪すぎる。 機械文明なのだし情報処理関係の仕事をやらせる可能性もあるか?」

 

「そうなるとまず言語を地球人に覚えさせないといけないから、やはり有用とは言えないと思うが…」

 

「ありえないと思うが事務処理をさせられる奴隷か。 ずいぶん近代的な奴隷になるな」

 

「社畜奴隷的な感じか」

 

「「「………」」」

 

「…笑えないぞ」

 

「メカトピア社会はブラックそうだな」

 

「まあ、それを阻止するのが僕たちの目的だ。

 その労働力を得ようという理由が、現在のメカトピア社会の制度にある」

 

 メカトピアは現在共和制の民主主義の社会を迎えているが、十数年前までは内乱状態で奴隷制度の解放戦争が行われていた。

 奴隷解放戦争の開幕は百年も昔に遡り、民主派と王政派の長い戦いが繰り広げられていた。

 その戦いの末に民主派が勝利し奴隷が解放されたことで安上がりな労働力が社会から消える事になり、新たな労働力として異星の人間を標的に選んだのだ。

 

「理解はしたが地球にとってははた迷惑な話だ。

 ロボットたちが民主主義を始めたのはわかったが、労働専門のロボットを作るという考えは奴らになかったのか?」

 

「どうやら彼らには自分たちと同じロボットを生み出すという行為に、特別視する風習というかルールのようなものがあるらしい。

 その制約によって意思を持たない労働の為だけのロボットを作るという行為が許されないらしい」

 

「なのに奴隷は少し前までよかったというのは、ずいぶん人間らしい理屈だな」

 

「メカトピアの社会も良くも悪くも地球の人間に似た文化が広がっている」

 

「奴らにとって意思のないロボットは、人間のクローンとか従うだけの肉人形のように見えるんじゃないか」

 

「なるほど、そう考えると意思のないロボットを忌避するのもわからなくはないな」

 

 集めたメカトピアの情報から敵の文化や価値観について推移するハジメ達。

 

「いずれにせよ開戦するまでにもっと情報を集めないといけないな。

 まもなく先遣隊が到着する。 追跡は出来ているな」

 

「問題ない、地球に到着したらすぐ確保出来るように準備してある」

 

「じゃあ、後はリルルとザンダクロスことジュドが来てからだな」

 

 

 

 

 

 




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