ドラえもんのいないドラえもん ~超劇場版大戦 地球は何回危機に遭う~ 作:ルルイ
執筆のとても良い励みになりました。
また、誤字報告をしてくださった方々もしっかりミスを発見するほど見ていただき感謝の限りです。
今回も誤字の確認に手をかけれなかったので、ミスが多いかもしれませんがご容赦ください。
文字数も短めになりますが、書き上がったら順次投稿していこうと思うのでよろしくお願いします。
またこの映画『鉄人兵団』は旧作を題材にしており、新作の設定は一切考慮しておらず、未設定のところを独自解釈でストーリーを構成しています。
無駄な設定が多くなるかもしれませんがよろしくお願いします。
ですのでピッポなんて存在しません。 犠牲になったミクロスなんてもっと存在しません。
俺の名はジュド。
鍍金族の超大型工作用ロボットだが、かつては地金族の奴隷として金族銀族にこき使われ虐げられていた。
金族銀族は俺達の星の王族貴族ロボットであり、鍍金族で平民地金族は生まれながらの奴隷としての宿業を背負わされていた。
それが変わったのがメカトピアで百年前に始まった奴隷解放戦争だ。
多くの地金族と鍍金族、そして一部の銀族が奴隷解放運動を始めたことがきっかけに火種は拡大。
共和派と王政派に分かれて長きに渡る戦争が起こり、最終的に共和派が勝つ事で俺達奴隷は自由を手にした。
戦争で俺も共和派として王政派の軍と幾度も戦い、多くの戦果を上げつつも最後まで生き残ることが出来た。
戦争初期から多くの同族と共に戦場に立ったが、最初から最後まで残った知り合いは一人もいなかった。
生き残りつつ戦果をいくつも上げた俺は、嘗ての地金族の間では英雄視されている話も耳にしている。
だがそれも狭い界隈の話で、解放戦争の英雄と呼ばれている奴らは別にいる。
大将軍アシミーと聖女シルビアだ。
奴らは元から銀族出身の貴族階級で、戦前から共和制を推し進め共和派の軍を勝利に導いたと言われる鍍金族地金族の希望の星だった。
戦後聖女シルビアは一線を退いたが大将軍アシミーは評議会議員として活躍しており、鍍金族元地金族限らず平民たちの人気が高い。
彼らこそ正しくメカトピアの英雄と多くのロボットに認められているが、俺は奴らを認めてはいなかった。
奴らは確かに地金族を奴隷から解放するのに導いたが、戦争で戦ったのは兵である俺達であり奴らじゃない。
大将軍アシミーも前線で戦い多くの戦果を上げているのを戦場で目撃しているが、俺だってそれに負けないほどの戦果を十分挙げてきた。
もっと評価され元地金族の英雄として奴らを同じくらいに歴史に名を連ねてもおかしくはない筈だ。
このままじゃ終われない。 そう思っていたが戦争を終えて久しく、評価されることなく元地金族達からも俺の名が忘れられ始めるくらいだ。
平和な時代を迎えたメカトピアに新たに名を上げるような場所も無く燻っていたが、新たなチャンスが巡ってきた。
人間を新たな労働力として奴隷とするために遠い星に侵略に行くという話が上がり、そのための新たな徴兵をすると政令が出て俺はすぐに参加した。
その中で俺は一刻も早く戦果を上げるために先遣隊に志願し、更に試験運用段階だという工作用超大型ボディへの電子頭脳の換装術を受ける事にした。
超大型ボディへの換装は電子頭脳への負荷が大きくまだ十全ではなかったらしいが、侵略目的を兼ねたテスト運用でタダで受けられたため、強くなるチャンスを逃すまいと賭けに出て無事に成功しより強靭な体を手にした。
そして同じく諜報員として情報を集めるために人間の姿に改造したリルルという女と顔を合わせて、人間が住む星地球へ向かうことになった。
単独ワープでは今の俺の体だと不可能だとかでせっかくのボディーをバラされて、向こうで再度組み立てられなければならない事になったが構わない。
俺は英雄と呼ばれ議員になっているアシミーやシルビアなんかよりもっと大きな名声を手にし、元地金族初の評議員になって見せる。
そこまでいけば今のメカトピア政府のトップの座、評議会長になることだって夢ではないはずだ。
その為にも必ず、この戦争で大きな戦果を上げて見せる。
「以上が北極に到着したボーリングの玉みたいなザンダクロスと呼ばれるはずだったジュドの頭脳から引き出した独白だ。
自身のボディパーツを全てワープアウトしたのを確認してからそれらを全て回収し、頭脳からメカトピアに関する情報を全て引き出している。
電子頭脳に干渉すると自壊するような機能もあったが、それも無効化して問題なく情報を引き出して今も精査している」
「ジュドがどういう生き方をしてきたか解ったが、鍍金族とか地金族ってのは何だ?
金族銀族っていうのから何となく予想は付くが」
「メカトピアのカースト制度のような物みたいだな。
金族がメカトピアのロボットの始祖アムとイムの直系の子孫に当たる、いわば王族で金色のボディーを持つことが唯一許されるらしい」
「いやまて、ちょっと質問。 ロボットなのに子孫とかあるの?」
おかしな疑問にハジメの一人が話を中断するように手を上げて質問する。
「その理由は後に回して先に他の身分について説明するぞ。
金族に続いて銀族だが、名前からわかるように銀のボディカラーを持つことが許される身分で貴族に当たり金族より多くいる。
系譜としては王族の分家だったり過去に功績を残した平民階級から成りあがった者たちの子孫だね。
それで次は鍍金族で平民の階級。 こっちは金銀以外の色で体を塗装する事が許される階級らしい
そして地金族だが何となく予想がつく通り奴隷階級で、ボディに色を塗る事すら許されない素の金属ボディの色で、地金族同士の子供は生まれながらに奴隷として扱われ続けるらしい」
「確か今は解放戦争で奴隷階級はなくなったんだよな」
「奴隷だった地金族は塗装が許されて今は元地金族、鍍金族として平民の扱いになっているらしい。
更に金族銀族も一族としては形が残っているものも多いが、一応同じ平民として扱われているらしい。
それでも金族と一部の銀族は一定以上の権限と資産を持っているから、社会的に高い立場を持っていることが多いのだとか」
「ふーん、それでロボットなのになんで一族とか子孫という概念が成り立つんだ?」
階級制度の説明がひと段落し、先ほどの質問をぶり返す。
「それなんだが、メカトピアのロボットたちは面白い社会性というかシステムで、同胞を作り出しているみたいだ」
メカトピアのロボットたちの仕組みについてまとめた情報が提示される。
メカトピアの神と呼ばれる科学者が作った最初のロボットアムとイムは人間に似せた男性型女性型であり、人の生態に似せた制約が決められていた。
人間の男と女のようにメカトピアのロボットは男性型と女性型が揃わなければ同胞のロボットを作ってはいけないという制約だ。
女性型のみが新たなロボットの電子頭脳の本体を作成でき、男性型のみが新たに作られた電子頭脳にシステムを入力し起動する事が許される。
まさに人間のように父親母親として子供を作る工程がロボット式に再現されている。
また新たに作成されたロボットと言えども子供の成長を再現する制約から、事前に特定の情報をインプットしておくような事は出来ず、初期状態の人工知能としてまっさらな状態から学習を開始して情報を蓄えていく。
電子頭脳なので一度覚えたことはデータが消失しない限り忘れる事はないが、学習工程は人間と同じように知覚で習得していく。
ロボットなのに生まれる前以外は情報を直接読み込むことが出来ない制約になっているらしい。
「なかなか面白い生態というかメカトピアのロボットたちのルールだな」
「ほかにもまだまだ神がロボットたちに決めた制約はたくさんあるが、どれもロボットたちが人間のように、あるいは生き物に似せて活動するように仕向けたものばかりだ。
神は人間に愛想をつかしてロボットの楽園を作ろうとしたらしいが、そのロボットたちには人間らしい生き方を求めたみたいだ」
「矛盾しているみたいだが、何となくわかるな。
誠実で従順な嘘をつかないロボットは確かに信用できるが、生きている者の温かみというか心を感じることが出来ない。
常に正しく行動し、それでいて温かい心を持ったロボットを作りたかったんじゃないか」
「神はメカトピアのロボットたちに理想の人間像を求めたんだろうな」
ハジメ達は神と呼ばれることになった科学者の心が何となく理解できた。
自分達も今ではロボットを作る人間になっており、作るのであれば完璧でありたいと思うのが当然だ。
ならば理想の世界に住むロボットには、人間のように過ちを犯す事のない正しく優しい存在になってほしかったのだろうと。
「だが正しいロボットに理想の人間を求めたことが矛盾だったんだろうな」
「人間の心の在りようは一見法則性はあれど矛盾だらけ。
それを正しくあろうとするロボットに再現させたことで、正しく人間の歴史によく似た社会様式となってしまったわけだ」
「その果てが鉄人兵団の人類奴隷化計画。
まあ地球を守る事に変わりはないけど、人の心を持ったロボットたちの侵略となるとやりにくいよね」
「ロボットでも心があるなら道具と僕らは断じれないからね」
心を持ったロボットの代表であるドラえもん型ロボットのドラ丸に視線が集まる。
「む、確かに拙者は殿に心を持って作られたでござるが、その役目は刀にござる。
殿の前に立ち塞がるものを切るための道具として使い捨てられるのであれば本望でござるよ」
「そんなかっこいいこと言ったって、実際に切り捨てられるわけないだろ」
「確かにドラ丸は僕たちを守るためにも作ったけど、僕たちの相談に乗って支えてもらうために生み出したパートナーでもある。
大事な相棒を使い捨てになど出来ないよ」
「と、殿! 拙者はうれしいでござる」
ホントに感動した様子で目元を隠すドラ丸に、ハジメ達は苦笑してしまう。
三文芝居の様なセリフだが、大事な相棒であることは嘘ではないのだ。
「こちらを攻撃してくる以上、人間だろうがロボットだろうが容赦は出来ない。
ただ機械的に襲ってくるのではなくメカトピアという星の民族として襲ってくる以上、返り討ちにした後は落としどころを決めないと、最終的にはメカトピアを殲滅する事になってしまう。
そうならない為にも交渉の席を作るための仲介役が必要になる訳だが…」
「その役にリルルがなってくれると助かるが、うまくいくかどうか確証がないからね」
「映画のように簡単に仲間になってくれるわけじゃないからな」
「彼女の様子はどうだ?」
「脱出出来ない専用の個室を用意してそこに寝かせてある」
諜報員として地球に降り立ったリルルとは別に降り立ったジュドを探していたところを、不意打ちの【ショックガン】で気絶させて確保した。
ロボットの彼女にショックガンが効くかという疑問も○×占いで確認していたが、気絶するという生き物らしいところも再現するあたり、メカトピアロボットの電子頭脳も無駄に生き物の再現性に優れている。
作戦部長のハジメが情報端末から状況の進展を確認する
「…ふむ、どうやらリルルが目を覚ましたらしい。
さっそく交渉役として用意したコピーに接触を図らせる」
「そうか。 では会議の続きはリルルとの対話に進展があってから再開しよう。
それまで持ち場に戻って各自の作業に取り組んでくれ」
「「「了解」」」
こうして会議は終了し、ハジメ達は各々の部署に戻ってそれぞれの役割をこなしていった。
リルルは気が付くと見覚えのない部屋のベットで眠らされていた。
すぐさま事態を確認するために周りを見渡すと、部屋はそこそこ広いが外を確認できるような窓が存在せず、出入り口のドアが一つあるだけで後は調度品が一通りあるだけだった
自分は突然の襲撃を受けて気を失い気が付くとここにいたと再確認すると、直ぐに脱出を図るべくドアを開けようとドアノブを回すが、案の定鍵がかかっており閉じ込められていることを認識する。
力づくで開けようとしてもロボットのリルルの力でもドアはビクともせず、ひとまずドアからの脱出を諦める。
何かないかと部屋の中を再確認しながら考えていると、カメラを見つけ監視されていることに気づく。
いったい自分の身に何が起こっているのか混乱していると、ドアの鍵が開く音が聞こえた。
リルルは混乱の中で自身を捕らえた敵と判断して指先をドアに向ける。
そしてドアが開き入ってきた人物に対し確認することなく、フィンガーレーザーで攻撃した。
―バチュン!―
フィンガーレーザーの着弾の音はしたが、入ってきたハジメは無傷でありリルルはより警戒を強めて身構える。
「っ!? びっくりした! まさか問答無用でいきなり攻撃されるとはね」
ハジメも攻撃されることは予想していたので、当然自身の安全のための準備は済ませてある。
どのような攻撃からも身を守る【バリヤーポイント】と更に攻撃を抜けてきた場合の為に【四次元若葉マーク】を準備していた。
この様子ならいつまた襲ってきてもおかしくないので、服の下で早速張り付けて使用した。
これでリルルはハジメに攻撃どころか触れる事も出来なくなった。
防御は万全だが、一応飾りの護衛として連れてきたモビルソルジャーのジムが後に続いて入ってきて、ハジメの両脇を固めてリルルを威圧する。
ハジメもその間に攻撃されてびっくりした心臓を落ち着かせる。
「…私を捕らえてここに閉じ込めておいてよく言うわ。 当然の返礼よ」
「それならこれは僕ら地球人の歓迎の証だ。 人間を奴隷にするためにメカトピアからはるばるやってきたロボット達へのね」
「!? なぜそれを知っているの!」
「その質問には答えられないが、メカトピアからくる鉄人兵団の軍勢への対策は既に完了している。
先遣隊である君達は拘束させてもらった」
「君達? まさかジュドも…」
リルルは自分よりわずかに先に到着している同胞の事を思い出す。
「あちらはむき出しの電子頭脳のままだからもっと容易だった。
既にあれからはメカトピアの情報をあらかた引き出して、今後の資料にさせてもらっている」
「なっ! 電子頭脳から直接情報を引き出したというの!?
それはメカトピアの神が定めた制約を破る最大の禁忌よ!」
「それはメカトピアのロボット達にとっての話で、地球人の僕らには何ら関係のないことだ。
それに君たちは地球人に危害を加えようとしている異星からの侵略者。
手心を加えてもらえるとは思わないでほしい」
「くっ」
リルルは自分たちが加害者側であるという自覚もあり、地球人たちの反撃への正当性を否定出来ない。
地球人の軍事力は自分たちよりはるかに劣ると推測されていたが、それは大きな間違いだったのではないかと危惧する。
捕らえられておそらく脱出も容易ではない自分に何が出来るか必死に考える。
「…どうやら落ち着いて話をするには少し時間を置く必要がありそうだ。
時間をおいてからまた来る。 それまでに頭の中を整理して覚悟を決めておいてほしい」
「私を一体どうする気」
「あなたはまず捕虜として扱わせてもらう。
いろいろやってもらいたいことはあるが、まずは落ち着いて話を済ませてからだ」
「何をさせたいか知らないけど、私は同胞を裏切る気はないわ」
「そこまで求めちゃいないさ。 ただ従った方が君たちの為になると思うよ」
「ふざけないで。 人間に従う気なんかないわ」
捕らえられた身で仕方ないとはいえ、聞く耳を持たないリルルにハジメはため息をつきそうになる。
「…まあまずは情報交換から始めよう。 そこにある本棚に地球の一般的な情報が書かれている。
地球の文字は理解できるか?」
「…諜報の為に言語のいくつかを習得しているわ」
「それはよかった。 そこにある本は地球で幅広く使われている英語で書かれているから読んでみるといい。
特に歴史に関する本を薦めておく。 メカトピアの民の貴方にはきっと面白い物に映るはずだ」
「敵に情報を与えようなんて、何がしたいの?」
「別に大した情報じゃないし、地球の一般社会で誰でも知っているようなことばかりだ。
機密情報なんて全くないから安心して読んでみてくれ」
そしてハジメは一度対話を改めるべく、リルルを閉じ込めている部屋から出ていく。
リルルも警戒しているのか、ドアが開いた隙に抜け出そうなどとはせず、出ていくハジメをにらみ続けるだけだった。
リルルとの初対面を終えたハジメは、睨みつけてくるリルルのプレッシャーから隠していた冷や汗を流す。
「はあぁぁ、疲れた。 わかっていたとはいえ、これすっごい嫌な役だよ。
捕虜の尋問なんて、きつ過ぎ」
『そういうな、結局は僕らの中の誰かがやらないといけないことだ。
役職を持ってる奴は大抵何かの仕事をやってることが多いし、それなら新たな役職のコピーを一人用意した方がいい』
カメラの向こうから様子を窺っていた作戦部長のハジメが、新たな尋問役のハジメの愚痴に返事をする。
「そうは言うけど、仕方ないとはいえジュドの電子頭脳を解体したことで相当恨まれているよ。
メカトピアのロボットからしたら生きたまま脳味噌引きずり出して、そこから情報を引き出すためにいじくり回しているようなもんだからじゃないか?」
『確かにそれは地球の倫理的にも思いっきりアウトな案件だな』
「だろう? 映画でジュドの電子頭脳を改造したドラえもん達が何でリルルの協力を得られたかわからない。
そこは怒っておくところだと思うんだけどね」
『まあ映画の話の穴を突いても仕方ない』
「そうだな。 まあ種は蒔いた。
次回はもう少し建設的な話が出来るといいんだが」