ドラえもんのいないドラえもん  ~超劇場版大戦 地球は何回危機に遭う~   作:ルルイ

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 感想及び誤字報告ありがとうございます。
 大変励みになっております。

 鉄人兵団変ですが毎日更新を頑張っていますが、かなりぎりぎりで気力を尽くしています。
 書き上げて即投稿していますので誤字が多くなってしまうのは申し訳ないです。

 今後も出来る限り毎日投稿を続けていこうと思いますが、すべての感想の変身をするには余力がありません。
 返信出来なくても感想は執筆の原動力になっているのでチェックしておりますので、どしどし送ってください。
 励ましの言葉だけでなく、何らかの質問があるようであればお答えしたいと思っています


真・鉄人兵団3

 

 

 

 

 

 この太陽系に人間が住むと言われている星は地球のみであるが、ドラえもん世界では地球以外にも住んでいる話がいくつか存在している。

 そしてこの星はかつて種を蒔く者によって心を持った植物たちの為の星として育まれ、今は星の植物たちに受け入れられた故郷を失った者達で作られた銀河漂流船団の人々の降り立った安住の地でもある。

 ハジメはこの地の植物たちと共存するために活動している、銀河漂流船団のまとめ役である評議会議員たちに会いに来ていた。

 

「お久しぶりですハジメ殿」

 

「ええ、皆さんもお変わりなく。

 星への移住計画は順調ですか?」

 

「はい、ユグドの木を介してこの星の木々たちと話し合いを続けております」

 

 この星の木々は意志を持ってはいるが、地球の植物たちと同じように自由に動き回る事は出来ない。

 その為人間たちと共存するには住居などの建物を作る関係で土地が必要になり、木々が立ち並ぶ場所を配慮してどう暮らしていくか協議しているらしい。

 

「順調そうで何よりです。 それで今回の要件ですが少々厄介なことが起こったので、もしかしたら巻き込まれるかもしれないと念の為にお伝えに来ました」

 

「厄介な事ですと?」

 

 ハジメは現在、地球を狙って侵略を開始しようとしている鉄人兵団の存在を大まかに伝える。

 

「そ、そのような事が!? ハジメ殿の住む地球は大丈夫なのですかな」

 

「既に先遣隊のロボットたちを捕らえ、後に来る本隊も迎撃する作戦を準備しています。

 戦力も想定済みですので、僕らが負ける事はないですよ」

 

「それを聞いて安心しました。 ハジメ殿は我々をここへ導いてくれた大恩あるお方。

 何かあったら一大事ですからな」

 

「大袈裟ですよ。 ですが地球が現在狙われているのは事実です。

 ここは地球からほど近いので、もしかしたらこちらの方にもメカトピアのロボットがやってくるかもしれません。

 ですのでそちらの方でも警戒をしておいてほしいんです」

 

 この星は種を蒔く者によって張られたバリアーに守られ、存在を知っている者達にしかたどり着くことの出来ないように隠されている。

 メカトピアのロボット達に見つけ出す事は出来ないだろうが、万一があるのでハジメは注意を呼び掛けに来たのだ。

 

「わかりました、皆に伝えておきましょう。

 ほかに何か我々に出来る事はありませんか?

 微力ながらお力になれればと」

 

「大丈夫です、皆さんが戦いに疎い事は知っているので巻き込むわけにはいきません。

 ですがメカトピアから襲来するロボットたちに宇宙で遭遇する可能性もあるので、宇宙少年騎士団のような外に出て活動する者たちに宇宙航行の自粛を呼び掛けてください」

 

「手配いたします」

 

「あと遠くないうちにやってくる敵の軍勢は、ここから数光年離れた宙域で迎撃するつもりですので、巻き込まれないように気を付けて下さい」

 

「わかりました。 必要無いかもしれませんがハジメ殿の勝利をユグドの木に祈っております」

 

「ありがとうございます。 皆さんも星への移住計画頑張ってください」

 

 

 

 

 

 ところ変わって、ここはメカトピアのロボットを閉じ込めておくために作った専用の監獄。

 実質リルルの為の監禁場所だが、交渉役のハジメが改めて話をするために部屋にやってきた。

 今回はいきなり攻撃されることもなく、リルルは椅子に座って大人しくしていた。

 

「さて、改めて話をしに来たんだけど、本はしっかり読んでくれたかな」

 

「時間をたっぷりくれたからすべて読みきる事が出来たわ」

 

 本棚を埋めきる量の本を用意しておいたのだが、リルルはすべてを読み切ったらしい。

 時間を与えたと言っても前回から一日も経過していないので、普通の人間ではとても読み切れる本の量ではない。

 その辺りはやはり処理能力の高い電子頭脳を持つロボットというわけだ。

 

「あなたの言ったように歴史の本も読ませてもらったけど、あれは一体なんなの?

 あれが本当にこの星の人間たちの歴史だというの?」

 

「そうだ、実に興味深いだろう。 僕らも独自の調査でメカトピアの歴史を一通り確認してみたが、似たようなきっかけの戦争の記録が数多くある。

 理由はどうあれやっていることはどちらも変わらない、争いばっかの歴史だ」

 

「ロボットと人間を一緒にしないで。

 ロボットは神によって選ばれた崇高な種族なのよ!」

 

「争いを繰り返してきた人間の僕が言うのもなんだが、メカトピアの歴史を見直して自分たちが本当に崇高な種族なのだと本気で思えるのか?

 地球の人間もそういった驕りを持った人たちが数多くいるが、少なくとも僕は僕たち人間が崇高な存在ではなく過ちを繰り返す愚かな種族だと思っているよ」

 

「あなた、自分の種族をそんな風に思っているの?」

 

 リルルは自分の種族をこき下ろすハジメに驚いた表情を見せる。

 

「種族としてはね。 それでもすべての人間がそうだとは思わない。

 間違いを改めて正そうとする人はいるし、他人を思いやれる人だって大勢いる。

 人それぞれなんだ。 君たちの星のロボットはどうなんだ?」

 

「………私たちロボットにも傲慢で非道な者もいれば、心優しく皆を思いやり正しく導いてくれる素晴らしい方もいるわ」

 

「地球の人間と在りようは変わらないな」

 

「本当に人間は私たちロボットと同じような生き方をしているの?」

 

「僕からすればロボットが人間と同じような文化を栄えさえている方が不思議なんだけどね」

 

 ロボットが心を持つことをハジメは不思議に思わないが、すべてのロボットが人間の様に良いところも悪いところも再現して文明を築いている事に酷く違和感を感じる。

 まさに出来が良すぎる人形劇(・・・)の世界を見ているようだ。

 

「君等は人間の事をよく知らなかったようだね」

 

「伝承で人間は神が見放した存在としか書かれていないわ。

 地球に住む人たちについても、人間が私たちより劣った文明を築いているとしか調査報告がなかったわ」

 

「いくら自分たちが崇高な存在だと思っていたからって、人間の事を見下し過ぎてもはや何も見ていないじゃないか。

 君らが人間を労働力にしようとしているらしいが、ロボット奴隷の代わりを務められると本気で思っているのか?」

 

「どういうこと?」

 

 ハジメはリルルにロボットと人間の違いを簡単に説明する。

 人間は生き物であり生きる為に食物を取らねばならず、ケガをしたら治療したり自然に治るのを待たねばならない。

 また人間の身体能力はロボットと比べるまでもなく、物理的な労働力としてはあまりにも効率が違い過ぎる。

 そのような事をリルルに教えたところ、目を見開いていたのでまるで知らなかったようだ。

 

「なんてこと。 それじゃあ人間なんて奴隷にしても意味のない役立たずじゃない」

 

「それなら、その役立たずに捕まっている君はポンコツなのかな?」

 

「むっ、誰がポンコツよ」

 

「現状を見て人間が無能と決めつけられるなら、ポンコツ以外の何物でもないだろう。

 人間は確かに非力だが知恵を使ってあらゆる道具を作り出してきた。

 その中にはロボットも含まれている」

 

 ハジメは護衛として両脇に立つジム達を見せつけるように両手をかざす。

 

「人間がそのロボット達を作ったというの!?」

 

 リルルが本気で驚いたといった様子で叫ぶ。

 

「そこが一番驚くんだね。 僕らからすれば人間がロボットを作るのは全然おかしなことじゃないんだけど。

 やっぱり君にはまず、人間の事をよく知ってもらった方がいいみたい。

 このチョーカーを首につけてくれ」

 

 ハジメは黒いチョーカーを取り出してリルルに見せる。

 

「それはなにかしら?」

 

「君の本国との通信を妨害する装置だ。 同時に僕らに通信を繋げる事が出来る装置でもある」

 

「そんなものを着けさせて何がしたいの? それが無くてもここでは仲間との連絡が取れなくなっているわ」

 

「通信妨害は当然の措置だからね。

 それを着けてほしいのは、君には一度人間の社会をその目で見てきてほしいと思っている。

 そのチョーカーは君に不用意な行動を取らせない為の正に首輪だ。

 一度着ければ僕達でなければ取れないようになっている」

 

「私をここから出そうと言うの? こんな首輪があったって逃げ出すわよ」

 

「逃げても行く当てはないだろう? 君がこの星に来た時に使った小型宇宙船も、隠してあった場所からこちらで既に回収している」

 

「…本当に最初から私たちの事を監視していたようね」

 

 いくらロボットとはいえ、単体で宇宙空間をワープして地球にやってくるのは効率が悪すぎる。

 ロボット単機にワープ装置を取り付けるなど無駄が多いし、ワープの衝撃を人型ボディで直接受けるのはダメージが大きい。

 なのでロボットでもワープ航行をするには宇宙船がないと不便なので、ハジメはリルルが宇宙船に乗ってきたと確信しさっさと見つけ出していた。

 

「僕らが用意した本だけでは信憑性を得られないだろう。

 君はもともと人間の中に潜り込んで諜報活動するために人間の姿になったみたいだから、その姿は都合がいい。

 一度外に出て人間の生活を見てくるといい。

 人間がどういう風に生きているか確認したら、チョーカーの通信機能で呼んでくれれば迎えに行く」

 

「私が他の人間たちに危害を加えるとは思わないの?」

 

「それは非効率的で大したメリットもないし、ちゃんと監視もしている。

 もしも人質を取ろうなんて禄でもない手段に出るなら、君を見限るだけだ」

 

「見限る? 仲間でもないのにその言い方は変じゃないかしら?」

 

「今はね。 だけど君にやってもらいたい事があると前に言っただろう。

 メカトピアの為になるなら君も協力するはずだ」

 

「そんなことを言っていたわね。 私に何をさせようとしているの?」

 

「仲介役だよ。 戦争には落としどころが必要だ。

 それが無ければ。どちらかが最後の一人を倒すまで戦いが続く殲滅戦になる」

 

 対話をしようにもまずメカトピアとこちらでは交渉ルートと言うものがない。

 こちらの意志を伝えるには結局顔を合わせる必要があるが、メカトピアは文化的に人間を下に見過ぎている。

 そこでリルルには人間をよく知ってもらってから仲介役になってもらい、人間の事を相手側に押して交渉の席についてもらうよう説得してもらう。

 以上の理由だが、ハジメとしてもリルルをあまり壊したいとは思えなかったので、生かす手段を極力提示したという理由もある。

 

「メカトピアの軍は決して弱くないわ。 簡単に勝てるとは思わないで」

 

 ハジメは勝つことを確信しているが、リルルも自分たちの軍勢が簡単に負けるとは思いたくなかったので反論する。

 

「まあそのあたりは本隊の鉄人兵団がこちらに向けて進軍してきてからにしよう。

 僕らの予定では侵略軍はこちらに誘導して真正面から殲滅する予定だ」

 

「誘導ですって! どういう事!?」

 

「ジュドのシグナルコードを偽装して偽の情報を本隊に流している。

 地球での前線基地作成の工作は順調に進んでいる。 いつでも本隊を迎え入れる準備は出来ているとね」

 

「本隊を罠にかけて返り討ちにしようというの?」

 

「今真正面から殲滅すると言っただろう。 戦力差をはっきりさせるためにその戦闘を記録しメカトピア側に送り付けてやるつもりだ。

 君にもどれほどの戦力差があるか、戦闘の様子を見てもらう事になる」

 

「そんな簡単に倒される鉄人兵団ではないわ」

 

「どうなるかはその時が来たらはっきりする。

 今はとりあえず君の本来の役目である、人間に紛れての諜報活動をしてくるといい。

 そのチョーカーを着けたら案内しよう」

 

「………」

 

 リルルは少し考えた後、囚われている以上不自由でも外の情報を得られるなら構わないチョーカーをつける事にする。

 装着すると首にぴったりフィットし、どんなに引っ張っても取れなくなった。

 チョーカーに出来るのは、付いているボタンを押してハジメ達と通信する事だけだ。

 

「では行こうか」

 

 ハジメが先頭でドアから出て、続いて護衛達が外に出ると開きっぱなしの扉がリルルを待っている。

 本当に簡単に外に出そうとしていることに逆に警戒心を刺激され、リルルは恐る恐るといった様子を見せながらハジメの案内で外の世界に出ていった。

 尚この監獄は鏡面世界にあるので、リルルに気づかれないように鏡面世界の扉の鏡をくぐらせている。

 

 

 

 

 

「ジュドの信号を使った偽の通信の様子はどうだ?」

 

「問題ない。 先遣隊の工作が順調なように見せかけるために、ジュドたちが予定していた工作作業の工程を演出している。

 必要物資もジュドの声で要請して転送させることで作業の不自然さをなくしている」

 

「一度リルルはどうしているかと質問されたが、諜報活動として人間の中に潜入していると返事をしておいた。

 リルルがいるように見せかけるための工作も必要かもしれない」

 

「リルルの信号は流石に調査してないからわからないからな。

 まさか捕虜にしている状況でジュドみたいに分解する訳にもいかないからな」

 

 今回のハジメ達の議題はメカトピアに送っている偽の報告通信だ。

 ジュドの振りをして通信を行い、いずれ来る鉄人兵団の動きをある程度誘導するのが目的だ。

 普通の軍ならこんな杜撰なやり方では何らかの真偽を確認する手段を複数用意して偽装できないようにすると思うが、人間たちを侮っているメカトピアのロボットたちはそのような対策を一切用意せずにシグナルコードの確認だけで判断していた。

 

「それなんだけど、ジュドの事はどうする?

 リルルに電子頭脳を分解したと説明した時に、それを人間に置き換えて考えてみたらかなり残酷な事だったんじゃないかと気づいてな。

 一応修復出来ないこともないが、直すべきだと思うか?」

 

「いや、やめとくべきだ。 たぶんメカトピアのロボットたちにとって電子頭脳はポンポンいじったり直したりしていい物じゃないんだろう。

 ジュドは既に殺した。 いずれやってくる鉄人兵団もほとんど殺してしまうんだから直せるからって区別するべきじゃない」

 

 メカトピアのロボットたちは機械だが人間と同じように考え行動している。

 既にハジメ達は敵を人間と同じように扱い、敵対する人として彼らを扱いあえて殺すという言い方を使った。

 

「まあジュドの存在は後はこの誘導作戦くらいにしか使えないから、どちらでもいい。

 それより鉄人兵団はあとどれくらいでこちらに向かってくる予想だ。」

 

「先遣隊の作業工程が順調に進んでいると見せかけたことで、最も早い作戦工程で準備が進んでいるらしい。

 メカトピアで間もなく兵の編成が整い、五日後には予定の宙域で接敵する事になるはずだ」

 

「五日後か。 十分対処出来るが向こうの動きが早いな」

 

「地球の軍じゃたぶん数か月とかかかる軍事作戦なんじゃないか?」

 

「まあ戦争なんて長々とやりたいものじゃない。

 初戦は前哨戦だ。 さっさと終わらせてメカトピアに逆侵攻をかける。

 負ける可能性は戦力的に皆無だが、気を引き締めていくぞ!」

 

「「「了解」」」

 

 

 

 

 

 

 

 


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