ドラえもんのいないドラえもん  ~超劇場版大戦 地球は何回危機に遭う~   作:ルルイ

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その名はドラ○

 

 

 

 

 

 タマゴコピーミラーによって補うことが出来た人手のおかげで、劇場版事件の対策準備は順調に進んだ。

 対策案を考える作戦部は順調なようだし、情報統括課のタイムテレビによる諜報活動による調査結果で、原作との違いは未来人がいないことによる差異以外は特に見られないらしい。

 

 そしてオリジナルである僕が主に活動しているのは、技術班の事件対策に必要な道具作りだ。

 ひみつ道具の種類は無数にあるが殆どは一種類に付き一つみたいなので、多用する道具などを【フエルミラー】などで数を増やして他の管轄に回したり予備を確保している。

 ひみつ道具で補えないような道具以外も、技術班が開発することで他の管轄に提供している。

 

 新しい道具開発には主に【ハツメイカー】【天才ヘルメット】などのどんなものでも作れて改造出来るひみつ道具が多用された。

 ハツメイカーを持っていたのは原作ではドラミちゃんだったが、四次元ポケットの中にあった。

 この秘密道具は作りたい物の内容をリクエストするとそれを作るための設計図が出てきて、セットになっている【材料箱】から必要な道具が全部出てくるというものだ。

 これで原作では頭の悪いのび太でもいろんなものを作り出すことが出来た。

 【天才ヘルメット】は宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)でスネ夫の戦車のプラモデルを改造して、最終的には宇宙空間を飛んでリトルサイズとはいえ実際の戦場の戦いにも耐えられるほどの性能を発揮していた。

 

 この二つの道具だけで作れないものはないという気がしてならない。

 だけどドラえもん達のいない状況では、原作と違ってどのような対応が必要になるかわからない。

 なので思いつく限りの必要そうなものは、片っ端から作りまくっていた。

 

 現在技術班はタマゴコピーミラーの僕のコピー達だけでなく、作業を補佐してくれるロボット達を用意して作業の拡大を行っていた。

 道具開発の場所を作ったら作業を手伝ってくれる大中小のロボットの開発。

 手数が増えたら作業・開発場所を広げて、補佐をするロボットの大量生産を行う。

 それを繰り返したことで技術班の作業場所は巨大な研究所と工場が出来上がり、他の管轄に比べて極端に規模が拡大してしまった。

 

 それでも技術開発班の作業は減速していない。

 劇場版では文字通り戦争になるような事態が多いから、戦力は過剰だろと言うということがあっても問題ない。

 準備をしている拠点は鏡面世界なので武器の置き場所に関しては全く困らないし、四次元ポケットのようないくらでも収納することが出来る道具は他にもあるので持ち歩きにも全く困らない。

 

 

 

 そんな成長著しい技術班でまた新しい道具の開発が終わろうとしていた。

 今回はちょっと特別な代物だ。

 

「班長、完成したのか?」

 

「ああ、会長。 少々時間はかかったがようやく完成した。

 企画から製作に移してから三日もかかった」

 

「普通なら異常な開発速度なはずなんだけど、ハツメイカーを使っているなら時間がだいぶ掛かっている方なんだよね」

 

「本体だけならともかく、いろいろなオプションがあったからな。

 企画を纏めるのに会議までしたから、ハツメイカーに要望を伝えるのにも時間がかかった。

 要望を事細かにリクエストしただけあって、製作するために【材料箱】から出てきた部品もこれまでよりややこしかった気がする」

 

「一応僕等待望の作品だ。 作る以上妥協をしたくなかったしね。

 ところでいろいろ作っただろうけど、原理は少しはわかった?」

 

「さっぱり。 現代の物理法則とやっぱり違うみたいでまるで理解できない。

 ひみつ道具に頼らないひみつ道具並みの道具開発は当分無理そう」

 

 あらゆる道具の開発をひみつ道具に頼るのもいいが、構造をすべて理解したうえでの開発が出来ればいいなと思っていた。

 とはいえ直に出来るモノではないとも思っていたが、少しくらいはひみつ道具の理解を深められないかと技術班に期待していた。

 

「科学チートは一朝一夕ではやっぱ無理か」

 

「出来るようになるにしても、当分はひみつ道具の頭脳を借りなきゃいけないだろ。

 コピーの統合による学習効率の向上だけじゃなくて、何か学習系のひみつ道具はいいのはないか?」

 

「いくつかは見つかっているけど、科学力を伸ばすようなのはまだ見つかってない。

 見つかった使えそうな学習系の道具も、コピー達に使わせて能力アップを図ってる」

 

「やっぱり自分の力でも開発してみたいしな」

 

 そう話しながら、今度完成した作品の前に立つ僕達。

 僕たちの目の前にはまだ起動していないロボットが作業台の上に横たわっていた。

 全体的に青い色の表面に白い顔をした二頭身のロボット。

 ドラえもん型のロボットだ。

 

「それで後は起動するだけか」

 

「ああ、必要な知能や情報なんかはちゃんと入ってるはずだ。

 後はこのボタンをポチっと押すだけで起動する」

 

 班長に起動するためのスイッチを渡される。

 

「なんで髑髏マークのスイッチなんだ。 自爆しないよな」

 

「お約束だ、特に意味はない。

 会議で決めた通りの規格だから自爆装置は入ってないよ。

 停止装置は用意してあるけど、どちらにしろ使うことにならないことを祈る」

 

「初めて作る完全自立思考型ロボット。

 ドラえもん型にしたのも思い入れからだからな。

 まさかの暴走なんてことにならないでほしい」

 

「もしもの話はやめよう。

 これ以上はフラグになりかねない」

 

「そうだな」

 

 このドラえもん型ロボットは言った通り自立思考型。

 つまり原作通りに自分で考えて行動をして感情もある、ドラえもんと同じ人工頭脳を持っている。

 これまで作った作業を補佐する為のロボット達は、頭脳が簡易型で命令に従うだけの物。

 しかしこのドラえもん型ロボットは、自分で考え経験を積み思考する明確な意思のあるロボット。

 起動すれば僕のコピー達以外で事件に対して考え意見の出来る協力者になってくれるはずだ。

 

 僕と僕のコピー達では思考ががほとんど同じなので、考え方が偏ってしまい何かの失敗につながりかねない。

 そう思った僕たちは別の考えが出来る人物がほしいと思っていたので、それなら作ってしまおうとこのドラえもん型ロボットの製作を決定した。

 

 しかしドラえもんの姿そのままではつまらないと、特徴を付けるために様々なオプションを要求した。

 その結果製作に少し時間を掛ける事になったが、容姿を多少変えたドラえもん型ロボットが完成した。

 原作でのドラえもんズや、コスプレをしたドラえもんみたいな容姿だ。

 

 コンセプトはサムライのイメージで。容姿はちょん髷を頭につけて袴を着ており刀を装備している。

 自分で考えて僕達の補佐をしてもらい、さらに刀を装備しているのだからと護衛として戦えるだけの機能も持たせた。

 着ている袴の懐を四次元ポケットの代わりの収納機能を持たせたり、武器になる刀はひみつ道具【名刀電光丸】をベースにいろいろな改造した品だ。

 少なくともバッテリー切れを起こさないようにしてある。

 ちなみにドラえもんには無くなっていた耳はちゃんとついている。

 

「じゃあ起動させようか」

 

「ところで会長、どんな名前に決めたんだ?

 会議では完成までに会長が決めておくはずだったろ」

 

 名前を決めるのは僕の仕事になっていた。

 サムライをモチーフにしたのは、自分たちが作るロボットという点からコロ助がイメージできたからだ。

 なので名前もドラえもんとコロ助を併せて、ドラ助にしようかとも思ったが何となく別の名前に変更した。

 

「もちろん考えてある。 こいつの名前はドラ丸だ。

 ポチっとな」

 

 名前を宣言しながら僕は起動スイッチを押した。

 すると周囲の機械が起動音を出しながら青白い電気を発して、ドラ丸の体も帯電していく。

 少しでも近づくと感電しそうな勢いだ。

 

「この放電は!?」

 

「特に意味はないが起動するならやっぱり演出も必要かと思って、目に見える放電が出るように仕込んでおいた。

 実際に感電することはないから、心配しなくていい」

 

「何か失敗したのかと思ったわ!」

 

 班長はこの放電現象の中で淡々と落ち着いて説明をしたので、本当に大丈夫なんだろう。

 コピーのやったことだから自分もやりそうなことだと思う半面、驚かされる側の僕としてはそこまでいい気分になれない。

 結局は同じ自分やったことなのだと、自業自得といった言葉が思い浮かんでしまうので自分に戒めておく。

 一度コピーと統合してからまたコピーをすれば、コピー達も覚えているので同じような悪戯もほどほどに控えるだろう。

 それくらいの学習能力は自分にはあると思いたい。

 

 自分たちで漫才をしていると、放電も次第に収まってきた。

 放電が完全に収まると、作業台に寝ていたドラ丸が目を開けて体を起こす。

 

「おはようでござる、殿」

 

「「やっぱりござる口調か」」

 

「殿ってのはやっぱり僕達の事か?」

 

「そうでござる」

 

 コピーの自分で作っただけあって、サムライのイメージからしゃべり方も何となくそうなるのではないかと思っていた。

 僕達を殿と呼んだことには予想していなかったが、班長もどうやらござる口調になるのかは確信していなかったらしい。

 

「ござる口調なのは予想していたけど、班長は作る段階で気づかなかったのか?」

 

「ハツメイカー任せだから情報の入力も設計図通りにやっただけ。

 要望は設計図を作る段階で言ったけど、実際の性格は起動して確認するまではわからなかったんだ」

 

「やっぱりそうなるか…。

 だから自分たちで作る物の仕組みくらい理解したいんだよな」

 

 ひみつ道具は時々予想しない問題が起きたり融通の利かない時がある。

 バッテリーが切れるくらいならいいが、扱いを誤って暴走したりするものがあるのだ。

 こういう時構造など理解出来ていれば、その欠点を補うことが出来ると思うんだ。

 だからこそ自分たちでひみつ道具を作れるようになるのが、事件対策以外の目標でもある。

 まあ、事件解決が最優先なのでそれはまだまだ先の話になるだろう。

 

「ところで拙者の名前は何なのでござる?

 拙者の頭脳にはまだ未定となっているのでござるが…」

 

「お前の名前はドラ丸だ。

 ドラ丸が作られた理由はわかっているか?」

 

「もちろんでござる。

 殿達は世界のために大きな戦に向かわねばならぬのでござろう。

 それを手助けするのが拙者の役割でござろう」

 

「その通りだ、役割の認識に関しては問題なさそうだな」

 

 もう少し様子を見ないといけないかもしれないが、問題なく起動しているようだ。

 突然暴走するという危険性もないとは思うが、どういう人格なのか確認するためにも様子を見たほうがいいだろう。

 危険性に関しては後で○×占いで確認してみればいいだけか。

 

「じゃあ、これからよろしく頼むぞドラ丸」

 

「承知でござる。

 それで拙者は誰を斬ればいいのでござるか?」

 

「「いきなり物騒だな!?」」

 

 さっそく問題が発生した。

 必要があればそうなるかもしれないが、いきなり物騒すぎる考え方だ。

 ネタだったらいいが動き出していきなり冗談は言わないだろう。

 僕等じゃあるまいし。

 

「どうしていきなりそういう思考になったんだ!?」

 

「おそらく殿のイメージから来た知識でござるよ

 サムライは何でも斬れば解るし解決出来ると」

 

 僕らのネタだった。

 しかもなんかいろいろなネタが混ざり合った結果の代物みたいだ。

 ドラえもんの姿でサムライをやるドラ丸はなんちゃってサムライといった感じだったが、知識までなんちゃってサムライになるとは思わなかった。

 

「どこから僕達のイメージがドラ丸に流れたんだ?」

 

「そこまでは拙者にもわからないでござる。

 起きたばかりなので拙者には初めからあったとしか」

 

「もしかして【ハツメイカー】にはリクエストする以外に使用者のイメージが補正されるのかも」

 

「なるほど、それならあり得るか。

 これからはイメージもしっかり意識しながらリクエストしたほうがいいな」

 

 これもひみつ道具の理解が及ばない欠点なのかもしれない。

 応用が利くひみつ道具もあれば、予想だにしない効果を発揮することもある。

 僕自身すべてのひみつ道具を覚えているわけではないから、使いこなせているというわけでもない。

 ひみつ道具の予想だにしない影響で事件に発展した劇場版の話もあるのだから。

 

「とにかくいきなり斬りにいくとかはやめてくれよ。

 基本は護衛と相談役が目的で作ったんだから」

 

「それは承知しているのでござる。

 突然誰彼斬るようなことは絶対にしないでござる。

 斬っていいのは斬られる覚悟のある奴だけでござる」

 

「またネタ知識か」

 

 どうやらこのドラ丸の頭脳は僕らのネタ知識が満載なようだ。

 本当に大丈夫だろうか。

 

「ですが早めに戦場に赴きたいでござる。

 拙者の刀が血に飢えてるでござる。

 つまらぬものを斬ってしまいたいでござる~」

 

 これ、だめかもしれない。

 

 

 

 

 

 


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