ドラえもんのいないドラえもん  ~超劇場版大戦 地球は何回危機に遭う~   作:ルルイ

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真・鉄人兵団16

 

 

 

 

 

「くそ、キリがない。

 一体どれだけいるんだ!」

 

「殿、無理をしないでくだされ。

 有象無象でも集まれば危険でござる」

 

 ハジメとドラ丸はまるで大量発生したイナゴの様に群れるジャックバグを相手に、孤軍奮闘を強いられていた。

 ジャックバグ一体一体は弱く唯一の武器のレーザーニードルもハジメ達の装甲を貫くことはないが、武器の相性から長期戦を強いられていた。

 

「こんなことならゴッドガンダムじゃなくてフリーダムにでもしておけばよかった」

 

「今更言ってもしょうがないでござるよ」

 

 ゴッドフィンガーの爆炎を放射する事でジャックバグを纏めて吹き飛ばし、ドラ丸は猫又丸の刃の長さを伸縮自在に伸ばしてまとめて切り裂いているが、焼け石に水だった。

 ドラ丸は戦闘能力を武器の猫又丸に集中させているが為に近接主体で、ハジメの乗るゴッドガンダムも近接戦闘中心で牽制のバルカンくらいしか射撃武器はない。

 一度に大量の敵を倒す火力が不足していた。

 

「ドラ丸、何かまとめて吹き飛ばせるような火器を持ってきてなかったか?」

 

「拙者の袴に入っている遠距離武器はせいぜい空気砲くらいでござるよ。

 後は強力なものとなると………【地球破壊爆弾】でござるか?」

 

「それって改修済みの奴か?」

 

「でござる」

 

「市街地で使えるか!」

 

「でござるよな」

 

 地球破壊爆弾はなんで子守ロボットのドラえもんの四次元ポケットに入ってるんだ、というツッコミの入る秘密道具だ。

 ドラえもんがテンパった時に使われそうになったりするが、実際に名前通りの破壊力があるわけではない。

 実際爆発したこともあるが大したことはなく、故障していたとか見せかけだけのコケ脅しともいわれていた。

 ハジメの四次元ポケットにも入っていたがそのままでは実際に役に立たないので、実際に威力のある爆弾に改修したのだが、メカポリス都市内で使えば大きな被害が出るほどのものになっているのでやはり使えなかった。

 

 対多数の攻撃がないために埒が明かない戦いが続いていたが、ハジメ達の敵は既にそれだけではなくなっていた。

 

―ドンッ!―

 

「うわっ! こいつは!」

 

「殿!?」

 

 ジャックバグを纏めて吹き飛ばす事に意識を向けていたために、背後からのタックルに対応出来ずハジメは吹き飛ばされた。

 タックルを仕掛けてきたのは兵士ロボットではないジャックバグに操られた一般のロボットで、ゴッドガンダムの胴体にしがみついてハジメの動きを封じていた。

 

「この、どけ!」

 

―ガンッ! ガンッ!―

 

 蹴りを放ってしがみついたロボットを引き離そうとするが、操られたロボットは自身が壊れる事も構わずしがみつくことをやめない。

 動きを止めたゴッドガンダムにジャックバグが好機と判断して集り始める。

 ジャックバグにはゴッドガンダムの装甲を貫けず、メカトピアのロボットではないので操られることはないが、集られるハジメにはたまったものではない。

 

「このっ!」

 

―ドォンッ! ドォン!―

 

 爆炎でジャックバグを吹き飛ばして対応するが、身動きが取れない為に逃げることが出来ず迎撃が追い付かなくなる。

 

「殿、今そちらに行くでござる」

 

「急いでくれ!」

 

 ハジメを助けに行こうとするが、ドラ丸の前にも操られたロボットが飛びかかってくる。

 

「邪魔でござる!」

 

 一断ちで操られたロボットをジャックバグごと両断するが、それに続くように操られたロボット達が集まってくる。

 ジャックバグの被害が広がり、巻き込まれて操られたロボット達が多数出てきたのだ。

 操られたロボットは仲間を増やすように操られていないロボットの動きを封じて、ジャックバグに憑りつかせようとしてくる。

 こうやってジャックバグの被害は広がっていくのだ。

 

「退け退け退け退けー!」

 

 猫又丸を滅多矢鱈に振り回して周りの邪魔なものを全て切り裂く。

 

「殿ー!」

 

 切り裂いてスクラップになった残骸の山を乗り越えてハジメの元へ向かう。

 ハジメの周りには更に操られたロボットにしがみ付かれて動けなくなっている。

 ドラ丸はしがみ付いているロボットを斬るために猫又丸を振りかぶろうとしたときに、蛇の様にうごめく光がハジメを拘束してたロボット達の頭をジャックバグごとたたき割った。

 

「ハジメさん、今の内にそこから逃げて!」

 

「リルルか! よし!」

 

―ドドォン!―

 

 操られたロボット達に憑いていたジャックバグが破壊されたことでハジメを捕らえようという動きが止まっている。

 ハジメは体の間に両手を差し込んで、そこでゴッドフィンガーを使って爆発を起こし、まとわりついていたロボットを纏めて吹き飛ばした。

 衝撃は受けたがボディに大したダメージはなく、身動きが取れるようになったハジメはゴッドガンダムを立ち上がらせた。

 その横に空から降りてきたノーベルガンダムの外装のリルルは、ハジメの横に降り立つ。

 

 操られたロボットの頭を叩き割ったのは、ノーベルガンダムの主武装のビームリボンだった。

 流石にビーム兵器を最初からリルルに渡していたわけではなかったが、この緊急事態にドラ丸の四次元ポケット(袴)に入れておいたのを渡していた。

 

「大丈夫だった?」

 

「ああ、ダメージは大したことないが数が厄介だ」

 

「…呆れた頑丈さね。

 普通のメカトピアのロボットだったらジャックバグに穴だらけにされてるわ。

 シルビア様のお体は安全なところに運んでもらったわ」

 

「そうか…」

 

 リルルは亡くなったシルビアの体を戦いに巻き込まないために、安全な場所まで運ぶためにこの場を離れていた。

 ハジメもあれ以上シルビアを傷つけたくなかったので、なにも文句はなかった。

 

「ハジメさん達は十分戦ってくれたわ。

 この辺りの人々もだいぶ避難が済んでいるわ。

 逃げ切れなかった人たちは残念だけど、私達もこの場を離れましょ」

 

 ジャックバグに憑りつかれたが故に倒すしかなかった一般のロボットの残骸を見て、悲しみながらリルルは逃げるように言う。

 

「だが、このままにしておいていいのか?」

 

「よくはないけど、私達だけじゃ手に負えないわ」

 

「殿、リルル殿の言う通り、ここは引く時でござる」

 

 シルビアをジャックバグに殺された衝動でハジメは暴れまわるように倒しまわっていたが、それなりに落ち着きは取り戻していた。

 このまま戦っていても手が足りず倒しきれないと分かっていた。

 

「…わかった、一旦逃げよう」

 

「それならついてきて。 今衛士の人たちがジャックバグの侵攻を抑える防衛線を張ってるそうだから」

 

 リルルの先導でハジメは歯がゆい思いをしながらドラ丸と共に、シルビアの演説会場だった広場を後にする。

 無数のジャックバグの残骸と、操られてハジメ達に止めを刺されたロボット達がその場に残った。

 

 

 

 

 

 リルルの誘導にハジメ達がついていくと、衛士や憲兵ロボットがレーザーでジャックバグを迎撃している防衛線に到着した。

 車などを横倒しにしてバリケードを張り、ジャックバグに操られたロボット達の侵入を防いでいる。

 

「君達か! 早くこっち側へ!」

 

「はい! ハジメさん、ドラ丸さん、早く!」

 

 リルルが憲兵の指示に従ってバリケードを飛び越え、ハジメとドラ丸も続いて飛び越えた。

 憲兵たちもハジメとドラ丸が先ほどまで戦っているのを見ていたので、味方と判断していた。

 

「リルル、バリケード簡単に飛び越えられたけど、大丈夫なのか?」

 

「確かに簡単に飛び越えられるのでは柵の意味がないでござる」

 

「少なくともジャックバグに操られた一般のロボットには有効よ。

 空を飛ぶための反重力ジェネレーターは兵士達しか装備してないから飛ぶことが出来ないの。

 レーザーなんかの武器も普通は装備してないから、飛んでくるジャックバグにだけ気を付ければいいわ」

 

 即席のバリケードではあるが、ジャックバグに対する対策は出来ていた。

 おそらく過去の戦争での経験から生かされたのだろうと、必死にジャックバグを打ち落としている憲兵や衛士を見た。

 

「それでハジメさんはこれからどうするの」

 

「シルビアさんに頼まれたんだ。 このまま放っておくつもりもない。

 僕らは船に戻ってから、元凶を倒すために聖地に向かおうと思う」

 

「殿がいくなら当然お供するでござる」

 

 ハジメは自身で直接聖地に乗り込むつもりだ。

 本来ならそんな危険を冒さずに部下のロボットに任せるところだが、今回ばかりは自分が直接行って戦いを終わらせたかった。

 シルビアの残した思いが、熱い衝動としてハジメを突き動かしてた。

 

「私も一緒に行くわ。

 シルビア様との約束を絶対に守らなきゃいけない。

 連れていってくれるわよね」

 

「…まあここまで一緒だったんだ。

 最後まで付き合ってもらうよ」

 

「ありがとうハジメさん」

 

 善は急げと、ハジメはどこか隠れる場所を探して、そこからどこでもドアで自分たちの船に戻ろうとした時だった。

 

「よろしいでしょうか? ハジメ殿、ドラ丸殿、リルル殿であられますか?」

 

 衛士のロボットがハジメ達の名を確認して呼び止めてきた

 

「え、はい、そうですが」

 

「それはよかった。 アシミー様がお探しになられています。

 ご同行いただきたい!」

 

 頼んでいる喋り方だが有無言わさずといった様子の衛士に、ハジメは少し困惑する。

 

「…リルル、どうする」

 

「アシミー様には一言伝えておいた方がいいと思うわ。

 それに私達を探しているという事は、何か用事があるはずよ」

 

「なら、会っておいた方がいいな。

 アシミーさんに会いますので案内してもらえますか?」

 

「了解しました、こちらです!」

 

 

 

「三人とも無事だったか。 シルビア様の事を聞いてこちらに向かう途中、ジャックバグの群れに襲われていると聞いていたがよかった」

 

 バリケードの後方に作られた仮の指揮所にアシミーは衛士を連れて来ていた。

 

「私たちは大丈夫です。 ですがシルビア様が亡くなられて」

 

「話は聞いている。 シルビア様を狙ったのは敵があの人望を警戒しての事だろう。

 必ず仇を取らねばならんが、君たちのせいでは無い」

 

 アシミーもシルビアの死に憤りを感じていたが、そうしてばかりはいられないと奮起している。

 

「君から預かった武器だが役に立った。

 議会でハジメ殿の言っていたヤドリに襲われた」

 

「大丈夫だったんですか?」

 

「ああ、議員はほぼ無事だが、この騒動も始まって混乱してしまっている。

 俺も直接現場に行って動いた方が早いと飛び出してきた」

 

「無茶苦茶しますね」

 

「やはり俺は椅子に座っているよりこっちの方が向いているようだ」

 

 嘗ての戦争で武功を上げ大将軍と呼ばれたが故に、前線に立つ方が性に合っているとアシミーは言う

 

「アシミーさん、僕らは仲間に合流して敵を討とうと思っています」

 

「そうか、だが待ってくれ。 現在聖地を防衛していたメカトピア軍がジャックバグの襲撃を受けている。

 軍は地球軍とも相対しているために全力で対処が出来ないでいる。

 無理を言うようだが、一時的にでも停戦の了解を地球軍に取ってもらえないか」

 

「そうなんですか?

 ちょっとすいません…」

 

 軍の方の襲撃は初耳で、そこへ地球軍を指揮する隊長から情報の補正が入る。

 先ほどまで戦闘に集中していたので、こちらのハジメへの報告を控えていたのだ。

 

「アシミー様、彼らは一体?」

 

「…混乱を避けるために今はあまり広めてくれるな。

 彼らは停戦交渉を進めるために、私に接触してきた地球側の使者だ」

 

「なんと!」

 

 衛士たちはアシミーの説明に驚きハジメ達に警戒を示す。

 

「やめよ、今は緊急事態だ。

 一時的にでも停戦の約束を得られねば軍が動けずメカトピアが滅びる」

 

「ですがこの騒動が地球の仕業だとしたら!」

 

「それならジャックバグの襲撃と同時に地球軍も侵攻してきているはずだ。

 俺もすべての状況を理解しているわけではないが、この騒動はメカトピア内部の問題によるものだ」

 

 アシミーが衛士たちを説得している内に、ハジメもメカトピア軍の状況を隊長から聞き終えた。

 

「向こうの状況も今確認が取れました。

 一時停戦に問題はないです。

 ただ奪われたうちの指揮官機がヤドリに操られて暴れているので、それを止めるために参戦の同意が欲しいそうです。

 その諸々(もろもろ)をメカトピア軍に宣言するために、アシミーさんの名前を使わせてほしいんですがいいですか?」

 

「かまわん、じゃんじゃん使ってくれ。

 軍の方には私の方からもすぐに連絡を入れる」

 

「アシミー様、大丈夫なのですか!?」

 

 衛士がこれまで戦っていた地球軍を信じてもいいのかと心配する。

 

「全責任は俺が持つ! メカトピア軍は地球軍との交戦を停止しジャックバグの処理に当たらせる!

 時間が惜しい! 私が軍の司令に直接命令を出す!

 通信機をここへ!」

 

「ハッ! 了解しました!」

 

 物言わさずに力尽くで事を進めるアシミーに、衛士たちはきびきびと命令に従い通信機の用意を始める。

 

「じゃあ僕らは一度船に戻ります」

 

「待ってくれ、出来れば君達との連絡手段を持っておきたい」

 

「そうですね。 ドラ丸、通信機の予備をアシミーさんに渡して」

 

「わかったでござる」

 

 手持ちでモニター付きの携帯電話のような通信機をドラ丸はアシミーに渡す。

 

「それで僕らと連絡が取れます」

 

「ありがたい」

 

「では僕らは行きます。

 ドラ丸、どこでもドアを」

 

「承知」

 

 どこでもドアを使ってハジメ達は前線で待機している船の中へ戻った。

 地図がインプットされてないところでは使えないどこでもドアも、自分達の船に戻る分には問題なかった。

 

 

 

 

 

 


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