ドラえもんのいないドラえもん  ~超劇場版大戦 地球は何回危機に遭う~   作:ルルイ

38 / 49
 感想、及び誤字報告ありがとうございます
 番号振ってきましたがもう17ですか。
 簡潔には20を超えてしまいそうですね。
 25までには終わりそうですが、最後までご拝読お願いいたします



真・鉄人兵団17

 

 

 

 

 

『アシミー議員の申し出により一時停戦を了解した。

 しかし現在そちらの軍を攻撃している者の中に奪われた我々の主力機がいる。

 そちらの軍の戦力では強奪された機体の戦闘力に対処出来ない。

 こちらの一部の部隊の参戦を同意願いたい』

 

 ジャックバグに襲われ、更にヤドリに操られているゼータに攻撃を受けていたメカトピア軍に、地球軍のハジメ達からの通信が入った。

 司令達は困惑したが、直後にアシミーからの指令が入り、突然ではあるが地球軍との停戦がなったことを認める。

 どのような過程で停戦の合意がなったか知らないが、地球軍に対応するために動かせなかった部隊を転戦させてジャックバグの対処に当たらせた。

 

「どのように停戦がなったかわかりませんが、これでジャックバグに全軍で対処出来ますな」

 

「しかしそれでも状況がわずかに好転しただけだ。

 これで地球軍が一時停戦を破棄すれば我々は終わりだ」

 

「司令は地球軍が約束を破ると御思いですか」

 

「…いや、地球軍にその気があったら我々は疾うの昔に全滅している。

 待機戦力を投入する前でも、こちらが攻撃を受けたら我々は対処しきれなかっただろう。

 地球軍はなぜか知らないが我々に手加減し、その上配慮までしてくれている」

 

「では返答はどうなさいます」

 

 ゼータはヤドリに操られることで火力を全開にメカトピア軍に対して大暴れしている。

 それはハジメ達の指示である程度加減をしていた戦闘での比ではなく、恐ろしい機動力と破壊力で軍の損害を増やしていた。

 

「現状で地球軍が介入すれば混戦になる可能性が高い。

 だが我々の戦力ではあのロボットを抑えることは難しい」

 

「このままでは被害が増える一方です。

 混戦になる事を覚悟してでも、地球軍に対処してもらうのも一考かと」

 

 最初の戦場から地球軍に手加減されているのがよくわかり、メカトピア軍のメンツは疾うの昔にボロボロだ。

 ならば今更地球軍の厚意に甘えた所で失うモノなどないのかもしれない。

 

「…情けない限りだ。 栄光あるメカトピア軍がこのような様とは。

 だが無様でも国を守るため最後まで戦わねばならんか。

 全軍に通達。 操られた地球軍の指揮官機に地球軍が対処する。

 混戦を避けるために可能な限り操られた指揮官機から退避し、参戦してくる地球軍への攻撃を禁じる。

 我々はジャックバグの対処にのみ専念する」

 

 

 

「メカトピア軍から返信が来ました。

 要求を受け入れ、ゼータの対処を任せるとの事」

 

 オペレーターがメカトピア軍のメッセージを報告する。

 

「よし分かった。 ウイング聞こえるか?

 ムラサメに指示を出しゼータの対処に向かわせろ」

 

『了解しました』

 

 ゼータが抜けた高機動部隊の指揮官の穴を、ウイングガンダムのモビルソルジャーが埋めていた。

 ウイングを選んだ理由は同じ可変型MSであり、戦闘形式も似ているからだ。

 ヤドリに寄生される可能性があるので、ウイング自身は戦艦の中から命令を出す。

 

『ですがマイスター。 ムラサメではゼータを抑えるのは無理ではありませんか?

 指揮官クラスのモビルソルジャーを相手取るには、同格の我々でなければ難しいのでは?』

 

「確かにそうだが、ヤドリがどこに潜んでいるかわからない現状では、指揮官機を前線にはだせん。

 ゼータの二の舞になれば状況は悪化する。

 まずは量産機をヤドリにぶつけて様子を見る」

 

『了解しました、ムラサメ部隊発進させます』

 

 ウイングが命令を受け取ると、展開している高機動部隊のムラサメ二十機ほどがゼータが交戦している場所に向かって戦闘機形態で飛び出した。

 

『メカトピア軍と混戦にならぬよう、まずは二十機ほど出しましたがよろしいでしょうか』

 

「まあ、まずはそんなところだろうな。

 真空ソープは持たせているんだろうな」

 

『はい、ですがゼータに当てることが出来る保証はありません』

 

「だろうな」

 

 ウイングの言葉に隊長のハジメも同意する。

 

「それはどうしてだ? 確かにムラサメではゼータとは戦闘力に開きがありすぎるが、当てられればヤドリから解放できる可能性は十分あるんじゃないか?」

 

 メカポリスからどこでもドアで戻って来た工作員のハジメは、旗艦の船でリルルとドラ丸と共に戦況を見守っていた。

 ヤドリの支配はソープ銃で撃ちだす真空ソープを当てれば解除できる。

 ムラサメでも数で当たればゼータに当てられる可能性は十分あると工作員のハジメは思っていた。

 

「確かに行けるとは僕も最初は思ってたんだが、モビルソルジャーの戦闘時の動きは非常に激しい。

 武器として採用しているビームライフルやサブマシンガンなら当てられる可能性は十分にあるが、ソープ銃は言ってしまえばただの水鉄砲なんだ。

 射程が短いうえに動きの激しい戦闘中では風圧に負けて拡散してしまう。

 敵のヤドリがゼータを奪った時のように動きを止められれば当てられるだろうが、そう簡単にうまくいくか…」

 

「なるほど、それなら確かに難しいかもしれない」

 

 ソープ銃は本来武器ではない。

 そう考えれば実際の戦場で高い機動力を持つゼータ相手に当てるのは難しいと納得する。

 

「ねえ、ハジメさん」

 

「なに、リルル? 何か気づいたことがある?」

 

「そうじゃないんだけど、あそこにいる人間ってハジメさんとそっくりなんだけど、人間にも同型の外観があるの?」

 

「あー」

 

 リルルにはコピーの事は話しておらず、工作員のハジメのみがリルルと応対していたので、二人以上同時にあったことはない。

 

「説明するとややこしくなるか簡単に言うけど、あそこにいる隊長も同じ僕なんだ。

 僕らの組織は人手不足で、僕のコピーを何人も作ってその問題を解消している。

 役割が違うだけで同じ僕だから、あまり気にしないで」

 

「よくわからないけど、あの人もハジメさんなの?

 人手不足で同じ自分を作れるなんて、地球の人間はすごいわね」

 

「こんなことできる人間は殿だけでござる」

 

 人間だからでとりあえず納得するリルルに、ドラ丸の鋭いツッコミが入る。

 

「ムラサメ部隊、ゼータと交戦に入ります」

 

 オペレーターの報告に全員が一斉にモニターに目を向ける。

 

 モニターにはムラサメ部隊が交戦禁止命令が行き届いたメカトピア軍の間をすり抜けて、暴れ回っているゼータに向かって牽制のビームを放つ。

 メカトピアのロボット相手にビームサーベルを振るい続けていたゼータはビームを受けるが、大したダメージを受けず、その攻撃を放ってきたムラサメの存在に気づく。

 

「あのロボット、あのビームを受けてもダメージを受けないの!?」

 

「指揮官機のモビルソルジャーは量産機とは比べ物にならない性能を備えた特別製だ。

 量産機のビーム出力じゃあ大したダメージにならない。

 だからこそヤドリに操られたのが痛いんだ」

 

 故に量産機ではゼータに勝つ事は出来ないから、ムラサメを向かわせたのは牽制以外の何物でもない。

 ゼータは向かってくるムラサメに標的を変えてビームサーベルを構えて向かっていく。

 ムラサメ部隊は正面からでは分が悪いために一撃離脱で回避行動を取るが、ゼータのビームサーベルがムラサメを一機切り裂いた。

 

「一機やられたわ!」

 

「仕方ない。 ゼータを量産機で相手取るなら消耗戦になるのは想定内だ」

 

 ムラサメを一機斬ったゼータは離脱したムラサメを追うべく戦闘機形体に変形して飛び立つ。

 戦闘機形態の機動力もゼータが高く、離脱したムラサメ部隊の後方に追いつく。

 そして戦闘機形態のままビームを連射し、あっという間にムラサメを三機撃破した。

 

「ウイング、戦力が減ったらその分だけ追加投入しろ。

 ゼータを釘付けにして抑えるんだ」

 

『了解』

 

 ムラサメ部隊は追われれば逃げ回り、注意が反れればビームライフルを撃って牽制しゼータの注意を引き付ける。

 数が減れば待機戦力から参戦させて、ゼータを抑える戦力を減らさないようにする。

 その結果、ゼータによるメカトピア軍への被害は抑える事に成功した。

 

「それで隊長、この後どうするんだ。

 ゼータを引き付ける事には成功したが、量産機では止められない以上千日手だ。

 量産機がいくらでもあるといっても、無駄に消耗させるのは好ましくない」

 

「それはちゃんと考えている。

 そもそもゼータを解放するだけなら、手段を選ばなければいくらでもやりようはあるだろ」

 

「まあ、確かに」

 

「そうなの?」

 

 リルルはゼータの戦闘能力に脅威を憶えているようだが、いくら秘密道具で強化されたロボットと言っても秘密道具の力を備えているわけではない。

 そういう意味では最もヤドリに操られてはいけないのはハジメ達とドラ丸だが、そこは当然警戒している。

 ひみつ道具を使えば操られたゼータに真空ソープを当てて解放する事は可能だ。

 

「問題はヤドリの寄生の隠蔽性だ。

 見ての通りゼータはヤドリに操られているが、外観からじゃ操られているのかわからない。

 メカトピアのジャックバグのように頭にくっついているという事も無いからな」

 

「確かに。 ヤドリは誰かに憑りついていても見た目では気づかないのが脅威だ。

 ヤドリが僕らのロボットに寄生を繰り返して、いつの間にか近くまで来ていたなんてことになったら恐ろしい」

 

「だからヤドリが憑りついている分析データが欲しいんだ。

 今、ゼータの観測データを情報課に送って解析してもらっている。

 今必要なのは情報を分析する時間だ」

 

「そういうことか」

 

 隊長の作戦に工作員のハジメは納得がいった。

 

「どういうことなの、ハジメさん」

 

「つまりヤドリに操られているかいないか判別出来るようにしたいんだ。

 だれが敵に操られているかわからないというのは、軍なんかの集団行動を行なう人たちにとってはとても脅威だ。

 その上ヤドリは近くの相手に乗り移る事も出来る。

 操られている奴を倒したと思ったら、他の奴に憑りついているなんてこともありえる。

 敵の中に潜り込んで引っかき回すのなら、これほど恐ろしい敵はいない」

 

「………」

 

 リルルはジャックバグとは比べ物にならないヤドリの恐ろしさを理解する。

 操られているものを倒しても、近くの存在に乗り移ってしまい、更にはそれがとても分かり辛いなどジャックバグの比ではない脅威だ。

 

「僕らは聖地に乗り込むつもりだ。

 そこには大量のヤドリがいるはず。

 ヤドリに操られないようにする対策が必要不可欠だ」

 

「そうね、操られてしまったらシルビア様の仇も討てないわ」

 

 ヤドリの厄介さは承知のうえで、ハジメとリルルは聖地に乗り込んでこの戦いに決着を着けるつもりだった。

 

「…本当にいくのか?

 対策が出来てからモビルソルジャーに任せた方が無難だぞ」

 

「ああ、僕が乗り込んでも大して意味がないのかもしれないけど、気が高ぶってるんだ。

 あの人の敵討ち……いや、あの人の為にこの手で何かをしたいという思いが溢れてくるんだ。

 そういうわけだから悪い、バックアップを頼む」

 

「…まあお前も僕なんだ。

 僕がお前の立ち位置だったら、きっと同じことをするんだろうってことくらいわかってる。

 対策が揃うまでは待ってくれよ」

 

「もちろんだ。 気持ちが急かされても無謀な事をするほど焦ってない」

 

 隊長のハジメも同じ自分として、工作員のハジメがシルビアを思って行動を起こす事に寛容だ。

 そもそもコピーは人手不足の解消のほかに、オリジナルを危険に晒さない為のスケープゴートの意味合いもある。

 無駄に死なせるつもりもハジメ達にはないが、多少の危険に飛び込むことは考慮されている。

 コピーとはいえ同じ思考のハジメが望むのなら、リスクを考慮した上で全力でサポートする事もやぶさかではなかった。

 

 工作員のハジメが聖地に乗り込むことを決め、どのように攻略するか考えていると、戦場の方に動きがあった。

 

「マイスター、メカトピア軍のロボット兵団の一部がこちらに向かってきています」

 

「なに?」

 

「観測しますと多くの者がジャックバグを頭部に確認でき、操られた状態と判断できます」

 

「どういうことだ?」

 

 ジャックバグに操られたからと言って、メカトピアのロボットの性能が上がるわけではない。

 これまでのように簡単にモビルソルジャーの戦力で撃退できるだろう。

 ジャックバグに憑かれた者は電子頭脳を破壊されているので、ハジメ達側としては手心を加えず殲滅する事に躊躇する必要もない。

 

「一部ジャックバグが頭部に見えないロボットもおります。

 更に申し上げます! 集団の中にヤドリの円盤を確認しました!」

 

「なに!? …そうか、やはり乱戦狙いか!」

 

 隊長はヤドリがジャックバグに操られたメカトピア兵に紛れてこちらを攻撃し、隙を見てこちらのモビルソルジャーを乗っ取ろうとしてるのだろうと判断した。

 

「数はどれくらいだ」

 

「操られたメカトピア兵が約100ほど。 円盤は50ほどです」

 

「ジャックバグのついていないメカトピア兵はヤドリに操られていると見るべきだな。

 数もそれほどではない。

 それなら………ジムを200出して対応させろ。

 ただし出したジムは戦闘が終わっても帰還させるな。

 ヤドリに憑かれて従っているフリをするかもしれない」

 

「了解、ファーストに厳命させます」

 

 隊長の命令はすぐに伝達されて、接近していた敵にジム部隊が対応して動き出した。

 

「従っているフリ、そういう可能性もあるのね」

 

「僕らはヤドリに操られる可能性を非常に警戒している。

 内部に潜り込まれて最悪の事態を想像すると、恐ろしくてこれくらいの事は想定しておかなきゃいけない」

 

 ヤドリの能力を考察したらこれくらいの事は出来ると、ハジメ達は戦慄した。

 原作の映画はアニメとはいえ生温過ぎる被害だったと思える。

 

 そうして話している内に、ジム部隊とヤドリが紛れ込んだ部隊が衝突して交戦状態になった。

 戦力自体は圧倒的で、操られているメカトピア兵は圧倒間に半数が落ちていく。

 

「ヤドリの円盤を落とすのにソープ銃を無理に使う必要はない。

 接近され過ぎないように、ビームライフルかバルカンで対処しても問題ない」

 

「まあ、倒せば結局同じだからな」

 

 ソープ銃で撃たれてもビームライフルで撃たれても、ヤドリの小ささであれば直撃した時点で死ぬだろう。

 どんどん敵を落としていく中で、それはやはり起こった。

 

「マイスター、ジムが数機ファーストの指示に従わず味方へ攻撃を始めました。

 ヤドリに憑かれたと判断します」

 

「そうか」

 

「ねえ、だいじょうぶなの?」

 

 ヤドリに憑かれたと聞いてリルルは焦る。

 

「こちらのロボットを操って同士討ちを狙って暴れるなら想定よりもマシだ。

 さっきも言ったように憑かれたのに操られてないフリをされる方が厄介だ」

 

「確かにそうなんだけど…」

 

「メカトピア兵とヤドリの円盤には攻撃を継続。

 操られたジムには牽制による時間稼ぎを行なえ。

 ソープ銃を使って解放する必要はない」

 

「え、どうして?」

 

「ゼータと同じだよ。 ヤドリの着いているデータが欲しいんだ」

 

 ヤドリがロボットを操るのに何か目印になるようなものはないか確認するには、比較対象は多い方がいい。

 ゼータだけでなく、あえてジムの一部を奪わせることでヤドリのデータをハジメは集めようとしていた。

 

「こちらの主力機をこれ以上奪われるのはまずいが、量産機なら替えはいくらでも効く。

 多少奪われても同じ量産機なら動きを抑える事は難しくない。

 ヤドリが操れる体は一匹につき原則一体だ。

 別の体に乗り移られても数が増える訳じゃないから、捕捉していれば対処は難しくない」

 

 これでバイオハザードの様に感染して増える様なら悪夢でしかない。

 そんな想像がハジメの頭によぎり、そうなったらもう手段を選んでる場合じゃないだろうなと思う。

 

 操られたメカトピア兵とヤドリの円盤はあっという間にジム部隊に殲滅され、操られた数機のジムは乗り移られないように距離を取り牽制するジム部隊に抑え込まれ時間を稼いでいる。

 その後も何度かジャックバグ付きのメカトピア兵の部隊と、それに紛れたヤドリの円盤が攻め込んでくるが、ジム部隊のみで対処しヤドリのデータを観測を続ける。

 操られるジムが増えてくれば隙を見てソープ銃で解放し、うまくヤドリの動きをコントロールし続けた。

 

『隊長、情報課だ。

 ヤドリに操られた者の情報分析が完了した』

 

「よし! ジム部隊に操られたジムを解放するように指示を出せ。

 ゼータももう遠慮する事はない。

 全部隊の半数を出してゼータを力ずくで抑え込みにかかれ。

 動きを封じて真空ソープを当てるんだ」

 

 くしくもゼータがヤドリに憑かれた時と同じように、力づくで動きを封じる方法で解放されようとしていた。

 隊長の指示で操られていたジムはすぐに解放されて、残っていた操られたメカトピア兵やヤドリの円盤もすべて破壊された。

 下された命令により、戦艦を守るように展開していた半数のモビルソルジャーが、ムラサメによって時間稼ぎをされていたゼータに向かって一斉に向かっていく。

 火力主体の重武装ザク部隊が無数の小型ミサイルを発射してゼータの周囲を爆発の嵐に変える。

 更に遠距離武器の集中砲火で動きを鈍らせ、そこへジム部隊ムラサメ部隊が接近して遠慮なく攻撃を繰り出していく。

 ここまで無遠慮に攻撃を繰り出すのも、ゼータの耐久力を想定しているからで、これだけやっても機体ダメージが小破になるかならないかといったところだ。

 

 ゼータもビームサーベルを振り回して量産機相手に正に無双していくが、どんなにやられようと量産機は気にせず向かっていく。

 量産機に高度な知性や感情は搭載されていないので恐れて躊躇する事などない。

 だが、意思を封じられているゼータ本体はともかく、憑いているヤドリはこの一斉攻撃に恐怖していた。

 つい先ほどまで向かってくるムラサメを相手に一方的に倒し続けるだけだったが、その10倍以上のモビルソルジャーが一斉にやられることを恐れず襲い掛かってくるのだ。

 寄生生物でも生き物で感情のあるヤドリが恐れない理由がなかった。

 

 更にゼータのボディは頑丈だが、くっついているヤドリは当然攻撃に晒されればすぐに死ぬ。

 ヤドリ自身も憑く場所は当然考えているが、全身を攻撃に晒されれば死ぬ可能性がある。

 そう考えたヤドリはゼータを抑えようと飛びかかってくるモビルソルジャーを力尽くで振り払い、瞬時に戦闘機形態になって包囲を離脱した。

 ゼータの機動力で逃げられれば量産機では追いつけず、聖地の方へと逃亡していった。

 

「逃げたか。 出来ればここでゼータを取り戻したかったが…」

 

「まあ、欲張りすぎてもしょうがないだろう隊長。

 情報部、ヤドリについていろいろ分かったんだろう。

 対抗策はすぐに用意できそうか?」

 

『コピー達を総動員させて対策武器の開発を既に始めてる。

 一日で仕上げるから、それまでもうちょっと待っててくれ』

 

「わかった。 リルルもそれでいい?」

 

「もちろんよ。 私の力だけじゃ聖地に乗り込んでも操られるだけで、あなた達に頼るしかないもの。

 私も一緒に連れて行ってくれるだけで十分よ」

 

「アシミーさんにももう一度話を通しておかないとな」

 

 モニターの向こうではメカトピア軍もジャックバグの対処に一区切りつき、戦闘を終えようとしていた。

 ハジメ達のメカトピアでの戦いも終盤に差し掛かろうとしていた。

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。