ドラえもんのいないドラえもん  ~超劇場版大戦 地球は何回危機に遭う~   作:ルルイ

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原作登場キャラ

・ポセイドン
 海底鬼岩城に登場するアトランティスの防衛コンピュータ。 核ミサイルに相当する鬼角弾を打ち出すトリガーを握ってるが、海底火山の活動を敵の攻撃と勘違いする。 映画でもあまり性能が良くないと言われるほどのポンコツ。

・ティオ
 太陽王伝説に出てくるのび太そっくりの王子。 王子だけあって自尊心が高いのだが、空気が読めなさ過ぎて周囲から浮いてしまっている。 レディナの呪いで眠らされている母親の代わりに立派な王になろうとした結果の空回りなのだが、のび太達との交流でかなり性格がマシになった。

・レディナ
 太陽王伝説に出てくる敵役の魔女。 女の敵役はとても珍しい。 呪いを掛けたり相手の体を乗っ取ったりと、魔界大冒険でも活躍しそうな勢い。 戦いに負けると老婆の姿に代わって城を崩壊させた後はどうなったかわからない。

・フー子
 ふしぎ風使いで登場する台風の子供。 敵の操る怪物の一部だが、のび太と出会ってとても仲良し。 最後は敵の怪物と相打ちになって消えるのがとても泣ける最後。

・ウランダー
 ふしぎ風使いで登場するフー子の元となった怪物を作り出した呪術師。 幽霊なので実体がないからスネ夫に取り付いて操り様々な不思議な力を使う。 最後は黒幕の時間犯罪者に四次元ペットボトルで吸い込まれてどうなったかはわからない。

・恐竜人(地底人)
 竜の騎士で登場する地底で恐竜から進化した人種。 進化せずそのままの姿を残した恐竜達が地上へ出ないように管理している。 タイムマシンまで作っちゃう位の技術力はあるが、武装は中世の戦争を思わせるくらい古い。


この世界はジャンルがカオスすぎる(海底鬼岩城・太陽王伝説・ふしぎ風使い・竜の騎士)

 

 

 

 

 

 大魔境の一件が終わってからは、まずは容易に解決出来る事件を優先して終わらせていった。

 

 

 ポセイドン。

 遥か昔に栄え滅んだ海底人の国アトランティスに今も残っている防衛コンピューター。

 アトランティスは軍事国家として栄え多くの兵器を開発していたようだが、兵器実験の失敗によって国民は全滅し兵器とそれを操るポセイドンのみが残った。

 指示を出す人間がいなくなってもポセイドンは予め決められていた命令に従い、人がいなくなったアトランティスを守り続けた。

 

 それとは別に海底人の国ムー連邦が同じ時代から存在し今も栄えているが、動き続けるポセイドンの反撃を恐れて滅んだアトランティスに手を出そうとはしなかった。

 アトランティスには世界を滅ぼしかねない兵器がまだ残っており、ポセイドンがその引き金を握っていた。

 更にアトランティスの周りには強力なバリアーが張られていて、誰も近づく事すら出来なかった。

 ムー連邦はポセイドンを刺激しないように、海底の平和を守っていた。

 

 だがそうも言っていられなくなった。

 アトランティスの近くで海底火山が活動を始め、ポセイドンがそれを攻撃と認識して活動を始めた。

 更に悪いことに、ポセイドンの外敵への迎撃方法は地上兵器での核ミサイルに相当するもの。

 それがアトランティスのバリアーの外側にあるもの全てを滅ぼそうとする攻撃だから始末に負えない。

 ムー連邦の海底人達も何とかしようとしていたようだが、バリアーを越える手段が見つからずに手をこまねいて見ているしかなかった。

 

 

 

 

 

「投入した爆弾の起爆を確認。

 ポセイドンの停止確認よろしく」

 

「ポセイドンの破壊でアトランティスの兵器はすべて止まった?」

 

 ○『ピンポーン』

 

 ○×占いの○のマークが上がると緊張から解放されて、僕達はホッと安堵の溜息を出した。

 事前確認を何度も行って失敗の無い様に事を進めていたとはいえ、失敗すればとてつもない被害になると知っていたから最後まで気を抜くことが出来なかった。

 

「すぐにアトランティスの兵器の回収作業に入れ。 ムー連邦もすぐに動くだろうからあまり時間はないぞ」

 

「了解、会長」

 

 作戦部長に指示を出して待機していたロボット達をアトランティスに派遣する。

 動かなくなったアトランティスの兵器を回収するためだ。

 

 今のは海底鬼岩城の事件を解決するための作戦で、もうそれも終わり後片付けに取り掛かった所だ。

 

 

 海底鬼岩城の話は、ドラえもん達が海底にキャンプに行くと海底人に遭遇。

 そこでポセイドンの暴走を知り、核ミサイルの発射を阻止するために倒すのがおおよその話の流れだ。

 

 大魔境では犬人族と接触して助けたが、今回海底人達とは接触せずに直接的にポセイドンを倒すことで解決した。

 海底人に接触しなかったのは、ドラえもん達が最初に接触した時は歓迎されることなく捕らえられる事になったからだ。

 交流のない地上の人間と接触してしまったのなら、警戒をしてそうなるのは普通だろう。

 大魔境の時のように簡単に協力し合えるようになる方が珍しい。

 

 捕まった後にドラえもん達はその人徳で対話に成功し海底人とのアトランティス攻略に協力することになるが、僕には捕まることを覚悟の上で対話で解決しようとすることは出来そうにない。

 信用出来ない人達に捕まればひみつ道具を奪われる可能性があると思ったからだ。

 大魔境のクンタック君たちの場合は助ける必要があったのと外の世界と繋がりが無いから知られても広められることはないので問題なかったが、海底人の場合はそんなリスクの大きいことをしてまで直接接触する理由は特にない。

 なので海底人に接触することなくポセイドンを攻略することにした。

 

 と言っても攻略法自体は今の僕には容易だった。

 原作では鬼岩城に忍び込んで【水中バギー】がポセイドンの中に突っ込むことで破壊したが、僕らはタイムホールをポセイドンの中に直接つなげて爆弾を投げ込むことで倒した。

 ひみつ道具の中にはまともな威力の出る爆弾が無かったのでハツメイカーで作ることになったが、どの程度の威力が必要なのかは○×占いで確認した。

 更に何かの拍子にポセイドンが核ミサイルを発射しないか○×占いで随時確認しながら作戦を決行し、成功した。

 

 ポセイドンの破壊に成功した後はアトランティスの機械を可能な限りの回収することにした。

 核ミサイルなんてあっても困るが、ムー連邦の手に渡ってしまうのも危ないかもしれないと思ったからだ。

 それにそれ以外にも使えるモノがあるかもしれないし、殺傷能力のある武器はひみつ道具の中にはないので技術収集が目的でもある。

 

 この世界の事件がドラえもんの物語のように誰も死なない展開になればそれでいいが、実際に命の危険はたくさんあるし戦争規模になればひみつ道具では攻撃力が不足になりがちだ。

 殺傷能力のある武器で誰かを殺したいわけではないが、映画のように相手を傷つけずに倒せば済むような展開になるとは思えない。

 なのでひみつ道具とは違う威力のある武器の入手を考えていた。

 

 ハツメイカーでも爆弾は作れたのでアトランティスの武器は無くてもいいが、技術チートも目指してる僕としては別の所の技術というのも確保しておきたい。

 そういった理由もあってアトランティスに残った兵器を可能な限り回収しようとロボット達を遣わせた。

 アトランティスの異常におそらく気付くだろうムー連邦が調査に来るまでがタイムリミットだが…

 

「無事に終わってよかった」

 

「ああ、○×占いが成功を約束してくれていたとはいえ、一歩間違えば世紀末だからな」

 

「映画の要素としてなら問題ないけど、実際に核ミサイルが飛びかねないのは怖すぎる」

 

 ミサイルが飛ぶことは覚えていたが、核ミサイルだとは映画の再確認をするまで忘れていた。

 今回の事件の解決は簡単だったが、間違えればシャレにならない事態になることには違いなかった。

 今後の事件は解決難易度が更に上なのだから、先が思いやられる。

 

 

 

 作戦終了後、僕らは集まって結果報告と今後の事を話し合う会議を開いた。

 精神的に疲れている気もするが休むのは会議が終わってからだ。

 

「アトランティスの兵器の回収状況は?」

 

「ロボットを可能な限り投入したので、鬼岩城内のものであれば一日もあれば大よそ終わる予測です。

 ただし鬼岩城外やバリアーの外の鉄騎隊やバトルフィッシュは放置しています」

 

「まあ問題はないだろう。

 同じものが複数あっても意味はないし、危ない兵器の回収が出来れば後は技術収集に必要な分だけがあればいい」

 

「バリアーが消えてもムー連邦は警戒してすぐには動かないようだし、数日もすれば海底火山の噴火でアトランティスの痕跡も消える。

 そうすれば誰が何をしたかなんてわからないだろうし」

 

 作戦を決行したのはアトランティスが海底火山の噴火で消える数日前。

 映画ではポセイドン破壊の直後に噴火してすべてが消えてしまったので、数日の猶予をもって作戦を決行した。

 そのお陰で停止したアトランティスの兵器を回収し技術収集が出来るわけだが、ムー連邦の存在を警戒はしていた。

 アトランティスを守るバリアーが消えたことはすぐに気付くだろうから、こちらの作業が終わるまでに調査が来て鉢合わせになる懸念があった。

 

 だがまだ警戒しているのか調査に来ないようなので、ロボット達の回収作業は十分間に合う。

 終わった後に調査に来ても数日後にはすべて消えるので、それ以降の調査は出来ない訳だ。

 僕らの存在にたどり着くとは思えないが、関わらない以上痕跡は極力残したくない。

 

「これでようやく五件目か。

 まだ楽な方だとはいえ、今回は失敗が恐ろしかったから肝が冷えた」

 

「確かにそうだな。

 だけどまだ地球圏内の事件で、解決法も映画通りで通用するから簡単な方なんだよな」

 

 大魔境の一件が終わってから鬼岩城の件までに比較的に容易な方の事件を三つ解決している。

 今回は対処法が容易でも失敗時が恐ろしかったので、全員参加でタイムテレビのモニターを見ながら事件の行く末を見守っていた。

 それ以外の三つの事件は主に作戦部と実行部隊に大よそ任せられた。

 その三つの事件は、太陽王伝説、ふしぎ風使い、竜の騎士だ

 

 

 

 

 

 太陽王伝説。

 

 映画ではのび太がタイムホールを壊し異常を起こしたことで繋がったマヤナ国を救う物語だ。

 その国の王子ティオはのび太にそっくりで、立派な王になるためにのび太たちと交流を始めた。

 その後、のび太たちと協力して国の支配を狙う魔女レディナを倒すのが大よその話の流れだ。

 

 タイムホールの故障で繋がったのなら時間移動で行ける範囲だろうと、マヤナ国の存在する時間を調べた。

 ティオ王子のペットのポポルが地球上に存在しない謎生物のような気もするが、この世界の未知や秘境の数を考えたら別にいても可笑しくないと割り切れた。

 案の定過去に存在した国だったようで、ドラえもん達の代わりにこの国の危機を救うべく作戦を練ることになった。

 

 この国の問題は魔女レディナが国の支配を狙い、ティオ王子を狙うこととその母を呪いで眠らせ続けてることだ。

 映画ではドラえもん達との交流でティオは成長をするが、僕等ではまともに話を聞いてもらえるかわからない。

 

 ドラえもん達と交流する前のティオは、王子だけあって我が強く人に従うような性格ではない。

 その為あまり人の話を聞こうとせず自身の意に従わない者に敵意を向けることもあるので、向こうにとって不審者である僕達は力ずくでもないと話をすることも出来ないだろう。

 そして力ずくでは意固地になって話を聞こうともせず、交流による成長もあり得ない。

 

 ドラえもん達が話し合えるきっかけになったのは、のび太が自身にそっくりで驚いたことがきっかけだ。

 そこから交流を始める事でドラえもん達の人徳でティオは成長するが、僕等ではそのきっかけすらなく彼を成長させるような人徳もありそうにない。

 人の成長を意図的に導くのは身近な人間でなければ出来ないので、ティオ自身に接触することを諦める。

 ぶっちゃけ気難しい性格のティオを相手して、人としての成長に手を貸すのはややこしくてめんどくさかった。

 マヤナ国の危機の原因は魔女レディナの存在にあるので、そちらをさっさと対処することにした。

 

 魔女レディナの目的は魔術によりティオの体を乗っ取ることでマヤナ国を支配する事。

 そしてこれまでの行いでティオの母を呪いで眠らせ続ける罪を犯している。

 ならばレディナがティオを害する前に捕まえて国に突き出せばいいだけの話だった。

 

 問題はレディナが原理のわからない魔術を使うことだ。

 レディナの前に姿を現せば気づかない内に何らかの魔術を掛けられる懸念があった。

 なのでひみつ道具で姿を隠して、奇襲で一気に襲い掛かって捕らえる事にした。

 

 魔界大冒険でもないのに魔術を使えるという要素は気になるが、聞きだしても僕らに益のあるものになるとは限らないので詮索するのは諦めた。

 魔術による罠がレディナの周りに仕掛けられている可能性もあったが、そこは○×占いで安全確認。

 タマゴコピーミラーも人手不足の解消に非常に役に立つが、どんなことでも確実に正解を導き出せる○×占いがひみつ道具の中で一番役立っていた。

 

 対策を万全にしたらさっさと襲撃してレディナを捕らえてマヤナ国に突き出しておいた。

 そこで気になったことが、おそらくレディナは処刑されるだろうという事。

 この時代にちゃんとした裁判はないだろうし、王族に危害を加えたのなら死刑になる可能性が高いだろう。

 罪人とはいえ間接的に人を殺すことになったのがすこし後味が悪くなった。

 タイムテレビでその後を確認することは出来るが、見てはいない。

 

 ドラえもんは子供向けのアニメだ。

 映画とはいえ人の生き死にが出るようなことは殆ど無いし、後味が悪くなるような話はそんなにない。

 レディナも映画では最後はドラえもん達に負けて生死不明でどうなったかわからないが語られなかっただけだ。

 そんな映画の事件の中で誰かを殺すことになったのが、ドラえもんの話を汚すようで少し嫌だった。

 

 とはいえ僕にとっては現実なので、映画の中では描かれなかった後の出来事もこの先の事件で見る事になるだろう。

 現代社会に影響のない事件とはいえ、少しばかり考えさせられる事件になった。

 

 

 

 

 

 ふしぎ風使い。

 

 物語はのび太が台風の子供、フー子を見つけたことから始まる。

 仲良くなったフー子を遊ばせるためどこでもドアで広い草原に出たら、外界と全く交流の無い風の力を借りて生活する風の民の村に出た。

 そこでは風の民と争う嵐族が呪術師ウランダーの封印を解き、同じく封印された嵐の化身マフーガを復活させようとしていた。

 のび太と出会ったフー子はマフーガの封印された一部であり、復活の儀式で取り込まれてしまうがのび太の働きでマフーガから分離させられる。

 フー子を分離された分小さくなったマフーガは尚も猛威を振るうが、のび太を助けるために迎え撃ったフー子と相打ちになり共に消えて話は終わる。

 

 この事件の脅威は大災害を引き起こすマフーガの存在だが映画では復活に時間犯罪者の暗躍があった。

 この世界では時間犯罪者は存在しないが嵐族自体は存在しており、手順は違えど同じようにマフーガは復活するらしい。

 マフーガは台風の化身で放っておけば大災害になる事件だ。

 

 ただマフーガを生み出したのは呪術師ウランダーで、風の力を操る風の民の村は外界と繋がりの無い秘境だ。

 魔術だの呪術だの魔境だの秘境だのと、科学の発達した現代社会では珍しすぎる。

 それに対処したのが未来の科学の結晶であるドラえもんなんだから、考えてみると節操のない世界観である。

 そのうちドラえもんの映画とは関係のない脅威が地球を襲っても可笑しくない気がする。

 

 映画では呪術師ウランダーの封印が解けた時にフー子の卵は日本へ飛んでいった。

 フー子が日本までやってきた時に確保することに成功したが、マフーガ復活を阻止するためにも嵐族のいる風の村へは連れて行かないようにする。

 そもそも映画では偶然どこでもドアがつながった先がフー子の最初にいた場所というのは、物語の流れの上で仕方がないとはいえご都合主義の限度を超えていた。

 ともかく危険度が上がる要素であるフー子はこちらの本拠地で世話をし、その間にウランダーと嵐族を対処するために隊長達が風の民の村に向かった。

 

 ウランダーは復活したと言ったがそれは幽霊としてだ。

 幽霊の特性なのかウランダーは人や動物に乗り移ることが出来、映画でもスネ夫が取り憑かれて敵に回ることになる。

 風の民の村に向かう隊長達が取り憑かれるのも問題だが、より問題なのが取り憑かれた者の記憶をウランダーが見ることが出来る事だ。

 ひみつ道具という秘密を抱えている僕等にとってコピーが実質的に裏切らせられるのは非常に不味いことになる。

 前回の魔女レディナとは比べ物にならない危険度なので、有無言わさず問答無用で確実に退治することにした。

 既に幽霊なんだから殺すとか殺さないとかは気にならなかった。

 

 まず風の民の村にいったら【タイムベルト】でウランダー復活の時間に移動する。

 その時フー子ともう一個の卵も飛び出していくがそれは放置しておく。

 ウランダーの幽霊が現れた瞬間に【ウルトラストップウォッチ】で時間を止め近づいたら【透明マント】と【石ころ帽子】の併用で姿を隠して時間停止を解除する。

 その直後に映画で未来人がやったように【四次元ペットボトル】で吸い込んでウランダーを無力化した。

 四次元ペットボトルはドラえもんが使った描写がないが、それでもポケットから出てきた。

 

 ウランダーを無力化したら嵐族自体は大した脅威ではない。

 元の時間に戻ってフー子と一緒に飛び出した卵の回収に向かった。

 タマゴのある場所は映画でも出てたのですぐにわかったが、回収直後に卵が孵ってしまった。

 危険そうならウランダーと同じように四次元ペットボトルで吸い込もうと思ったが、フー子と同じように無邪気にじゃれついてきたので心配なさそうだ。

 映画ではあくどい感じの描写だったがウランダーに従っていたからだろう。

 最後に封印されているマフーガの玉さえ関わらなければフー子とも接触しても大丈夫だったと思うので、この台風の子もタイムホールでフー子と一緒の所へ送り出した。

 

 後の懸念はマフーガが封印されている最後の玉だが、復活させられるウランダーも無力化したし欠片のフー子たちも抑えたから放っておいてもマフーガが復活することはない。

 だがフー子たちの今後の予定は住みやすいだろう風の民の村に預けようと思っている。

 僕達で飼ってみたいと思わなくないが、まだまだやらなければならないことがあるので断念する。

 

 万一にマフーガの復活が無い様にマフーガの最後の玉はさっさと処分しておく。

 四次元ペットボトルに封じ込めたウランダーと一緒に太陽かブラックホールにでも【空飛ぶ荷札宇宙用】で送り込んで処分すれば問題ないだろう。

 この処分方法は別の映画からの流用だ。

 

 処分が終わった後にフー子たちに映画と同じようにぬいぐるみを着せてから風の民の村に預けた。

 最初はフー子達の正体を伝えて戸惑われたが、最後の封印を処分したので問題ないこととフー子達の無邪気な様子から引き受けてくれた。

 残りの嵐族がちょっかいをかけてくる可能性もあるが、大したことは出来ないだろう。

 

 最後に余談だがフー子の初出はこの映画ではなく原作漫画の短編で登場しているドラえもんのひみつ道具の【台風の卵】から生まれている。

 つまり持ってるんだよね、フー子になるひみつ道具の台風の卵。

 原作版と映画版のフー子を比べられるわけだが、それはまたの機会に…

 

 

 

 

 

 竜の騎士。

 

 【どこでもホール】という地底洞窟に繋がるひみつ道具で遊びに出掛けたのび太達だが、そこでスネ夫が行方不明になってしまい、探しに行こうとするがどこでもホールが壊れてしまう。

 わずかな手がかりを頼りに地底への洞窟を見つけ出すが、地底は絶滅したはずの恐竜と人のように進化した恐竜人の住む世界だった。

 恐竜人に保護されていたスネ夫と合流出来たが、そこでのび太が地上の侵略を匂わせる怪しげな会話を聞いてしまう。

 ドラえもん達は地底世界から逃げ出そうとするが捕まってしまい、船に乗せられて連れていかれたのは6500万年前の地球。

 恐竜人たちは地上から恐竜がいなくなった理由を調べるためのタイムマシンの船を開発していた。

 そこでドラえもん達と恐竜人達は巨大彗星の衝突による災害を目撃し、地上の恐竜たちが滅びる理由を知る。

 ドラえもん達は【ポップ地下室】で作った空間に生き残った恐竜達を避難させることにした。

 それが後の恐竜人たちの祖先となることを知った恐竜人達は、これが天命なのだとこれからも地上ではなく地底で暮らしていくことを誓った。

 

 この事件には明確な敵というものがいない。

 ドラえもん達は恐竜人達と一時的に衝突することになるが、恐竜人達が戦おうとしていたのは過去の地上の恐竜を滅ぼす要因だった。

 それ以前にドラえもんがいない以上、僕らが過去に行って恐竜を救わなければ恐竜人達も存在しないことになる。

 

 恐竜人達が自分たちで祖先の恐竜を地底世界に逃がす可能性もあるが、それでは本来生まれない筈の子孫が死ぬ筈の祖先を救うというややこしいタイムパラドックスになる。

 タイムマシンで祖先を救わなければ恐竜人達は存在しないが、最初に過去の恐竜を救う者がいなければタイムマシンを作る恐竜人が存在しないことになる。

 このややこしい矛盾が放っておいたらどうなるかがわからないので、とりあえずドラえもん達と同じように過去の恐竜達を地底世界に逃がそうと思っていた。

 ドラえもん達も恐竜人に会わなければ過去の恐竜を救うことはなかっただろうが、言い出したらきりの無い矛盾なのでもう考えないことにする。

 

 やるのは過去の恐竜達が生き残れる地底世界の環境作りだが、タイムマシンで過去に来た恐竜人たちと話をつけておかなくてはいけない。

 恐竜人達は地上の恐竜を絶滅させた存在と戦おうとしていたが、そうして絶滅を食い止める事で地上の恐竜を繁栄させようとしていた。

 それで現代の地上人を滅ぼすことを狙っていたかもしれないので、地上と争う可能性を無くすためにも話をしておかなきゃいけない。

 

 実行部隊長に恐竜人がタイムマシンでくる時間の少し前に行って恐竜人達を迎える準備をさせる。

 準備が終わった後に恐竜人達のタイムマシンの船が来ると、すぐこちらに気づいて敵意をあらわに包囲してきた。

 映画にちなんで相手にわかりやすいように【風雲ドラえもん城】を出していたのだが、彼らは恐竜を絶滅させた要因と戦いに来たようなのでこちらを疑うのは当然だし想定していたことだ。

 問答無用で襲い掛かってくれば無力化するために隠れて配置しておいた機械兵で戦うことになるかと思ったが、姿を見せていたのは隊長と護衛のドラ丸だけなので、捕らえられることになったが話の出来る機会はあるようだった。

 

 まず説明したのは自分達もタイムマシンで来たことと、恐竜人達の目的も大よそ把握していること。

 そして地上の恐竜の絶滅が巨大彗星の衝突であることを告げると、恐竜人達は当然困惑して信じようとしなかった。

 だがこの時すでに彗星は肉眼で見えるほど近づいてきているのを、その目で目撃して愕然としていた。

 何とか止める手立てを模索したようだが恐竜人達はそこまでの力は持っておらず、僕らにも協力を求められた。

 

 僕等なら巨大彗星をどうにかするくらいひみつ道具で出来ないこともないが、それをすることは出来ないと正直に答えた。

 恐竜人達はこの時代の恐竜を見捨てると言われて激高したが、落ち着かせて最後まで話を聞いてもらった。

 

 歴史を変えることは大きな矛盾を生む。

 もし僕ら地上人がこの時代の恐竜を救って地上で恐竜人が繁栄すれば、未来の地上人である僕等の存在は消えてしまい、僕等がいなくなれば恐竜を救ったという事実も消えるので地上の繁栄も当然無くなる。

 この終わらない事象の矛盾を説明すると、恐竜人達はどう答えたらいいのかわからなくて黙り込んだ。

 タイムマシンを作っておきながら歴史の改変の限界を想定していなかったらしい。

 

 流石に彼らも恐竜を救う代わりに存在を消してくれとは言えず、僕はそのまま黙って彼らはなんとかする方法を議論し続けた。

 議論はぎりぎりまで続いたが彗星は待ってくれず、地球に衝突して地球全体に及ぶ大災害となった。

 それを目にして恐竜人達はどうしようもなかったのだと認めたところで、僕は本来の目的を告げた。

 恐竜が生き残る地底世界作りだ。

 

 それが後に恐竜人達が聖地という場所になると教えると、彼らは進んで協力をしてくれた。

 そこからはドラえもん達がやったことと全く変わりない。

 災害で生き残った恐竜達をポップ地下室で作った地底に連れて行き、そこで生きるのに困らない環境を整えて暮らせるようにしただけ。

 

 自分たちの祖先の始まりを目撃した恐竜人達は、映画のドラえもん達のように僕等を神の使いと呼んだが、僕はそれを否定した。

 歴史の矛盾を作らない為とはいえ恐竜を見殺しにしたと言われたことが響いていて受け入れ辛く、あくまで恐竜人達が生まれなかったら歴史が変わるから手を貸したのだと答えた。

 歴史がそれほど大事かと聞かれたらそうだとしか言えないのだが、どうすることも出来ない生き物の大量絶滅を目撃したのは僕等も歯がゆい思いを残していた。

 

 自分たちの祖先の運命を受け入れた恐竜人達は、これからも地底で繁栄していくと話して元の時代に帰っていった。

 大よそ映画と同じ結果になったが、気持ちだけはドラえもん達と違いすっきりしない結果になった。

 

 

 

 

 

 報告書を確認したら、少々憂鬱な気分を抱えてコピー達を見渡す。

 皆も憂鬱そうな顔をしており、直接動いていた隊長は特に顕著だった。

 

「映画みたいにすっきりした終わり方じゃないな」

 

「現実だからな。 見たくないところまで見えてしまうのは仕方ない」

 

「鬼岩城のは敵が機械だけだったから、気分的にはむしろ楽な方だったんだな」

 

「海底人にも接触する必要はなかったから、人間相手はめんどくさいってことだな」

 

「だからボッチなんだよ」

 

「ボッチって………言われてもいいや」

 

 誰も彼も憂鬱な気分で意気消沈してしまっている。

 オリジナルの僕もそうなのだが、直接関わっていた隊長と統合すればもっと気は重くなるというのに… 

 

「隊長は大丈夫か?」

 

「生まれてきてごめんなさい」

 

「ネタに走れるだけの余裕はあるか」

 

「気の重さが一周して少しハイになってるよ。

 まだまだやることがあるってのに落ち込んでいられないって」

 

 空元気を見せるくらいだが、客観的に見るとやることが空回りしそうに見える。

 誰かが見てないと危ないだろうと思うあたり、コピーとはいえ仲間がいることはいいことだ。

 それでもコピーでは補えないものもあるので、人恋しい気持ちになる。

 

「この会議が終わったら一度統合するぞ」

 

「いやまだいいだろう。 もうちょっとくらい僕に頑張らせてくれ」

 

「僕に頑張らせてくれというあたり、大きく負担がかかっている証拠だ隊長。

 コピーでも僕であり仲間なんだから、負担を一人に押し付けるわけにはいかない」

 

「初めに決めていたことだろ『皆は一人の為に、一人は皆の為に』って」

 

「いや、そんなカッコイイ誓いはしてない。

 一人に負担を押し付けたら裏切られそうだからって理由だったはずだ」

 

「自分を裏切らない忠誠心なんてありっこないからね」

 

「自分が一番信用できん」

 

「でも頼れるのが自分だけという矛盾」

 

「拙者もいるでござるよ!」

 

 自分達だけで喋っていたところに割り込むドラ丸。

 

「どうにも殿達が自分で自分を貶めてるように聞こえたので、割り込ませてもらったでござるよ。

 従者としては僭越かもしれないが言わせてもらうでござる。

 殿達のやっていることは誰かを救うことでござる。

 もっと自信をもっていいんでござるよ!」

 

 ドラ丸は僕らが落ち込んでいるのを見て励まそうとしてるらしい。

 僕等は話し出したら延々と続くし、自己嫌悪し出したら延々と負のループが続きそうな気もする。

 現にそうなりかかってたのでドラ丸のストッパーが利いたことは事実だ。

 

「あー…うん、自信を持てと言われて持てるとは思えないけど、止めてくれたことは助かったよ。

 負のループで自縄自縛に陥りそうだった」

 

「喋りだしたら僕ら止まらないから、自分で落ち込みだしても止まらないのか」

 

「やっぱり僕ら以外の誰かが必要なわけか。

 そういう意味でドラ丸を作ってたのは正解だな」

 

「助かったよドラ丸」

 

「いえ、殿のご迷惑でなかったのであれば幸いでござる」

 

 サムライの設定にしたとはいえ、こういう時少し硬すぎる気がする。

 まあそれも一種の個性なんだと思えば面白いものだ。

 ドラ丸のおかげで沈んだ空気もだいぶ楽になってきたし。

 

「気分も落ち着いてきたところで会議に戻ろう。

 これまでの件で思い通りの結果になっても、気分の良い結果になるとは言い切れなくなった。

 それを心して今後の事件に対応していこう」

 

 気持ちを切り替えるように告げた僕の言葉にコピー達とドラ丸が頷く。 

 

「それでは次の予定の作戦会議に入る。

 これまでとは違って大きな戦闘に参加する事になるだろう。

 議題の事件は宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)だ」

 

 

 

 

 


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