よって、《No.104 仮面魔踏士シャイニング》には、オーバーレイユニットが2つあります。
ドルベ
・LP2750
・手札3枚
・(モンスター)《No.102
・(魔法・罠)2枚
ベクター
・LP3000
・手札4枚
・(モンスター)《No.104
・(魔法・罠)1枚
ミスト
・LP2000
・手札5枚
・(モンスター)なし
・(魔法・罠)《モンスター・モンタージュ》(∞)
ホワイト
・LP4000
・手札2枚
・(モンスター)なし
・(魔法・罠)2枚
「いってぇな。」
「遊士さん!!気が付きましたか!?」
「あぁ。俺は…確かあいつに。」
零児が借りたビジネスホテルの一室であった。九十九遊馬の家に滞在することになるのかと思った遊士であったが、部屋のキャパシティも足りないのだろうと、自分なりに解釈することにした。
血の気の多い遊士が、静かにしているところを見ると、よほど彼らとのデュエルに負けたことがショックであったのか。今はハンガーにかけられ窓際にある彼の着ていた学ランも、心なしかくたびれているように見える。しかし遊矢はあえて放っておくことはしなかった。
「ゆ、遊士さん。そんなに落ち込まないでください!」
「落ち込んでねえよ、別に。」
「…」
会話が続かないことにもどかしさを覚えた遊矢であったが、遊士が続けた。
「仕方ねえんじゃねえか。あんな強いカード使うんだから。」
「遊士さん。」
「それにさ、よく考えてみたら、ユキがこの次元にいるのかもわかんねえんだぜ。何だかさ…面倒くせえことに首突っ込んじまったよな。」
「遊士さんがそんなんでどうするんですか!!」
「……うっせえな。」
突然耳元で大声を出した遊矢に、遊士は舌打ちをして睨みつけた。彼が高校生であることもあり、遊矢はすぐにすくんだが。
「ごめんなさい、いきなり。でも。ユキさんは、必ずこの次元にいます!」
「根拠はあんのかよ?お前、根拠もないのにそんなこと言ってんじゃねえぞ。」
「根拠は、あの光に吸い込まれたっていう…」
「んなことは俺だって思ってたっつうの!けど、手掛かりがねえじゃねえか!何も!」
「だから、ナンバーズを…」
「けどあいつらと、九十九遊馬にアストラルに接触しても、何もなかったじゃねえか!じゃあ何か、お前ら?俺に、あのバリアン七皇ってのと戦えって?ヒーローごっこをやれって?んなことしに来たんじゃねえ!!!」
「俺は別にそんなことを…!!」
「うっせえ!!」
遊士はその場にあった枕を遊矢に思い切り投げつけた。顔面に当たり、思わず彼は尻餅をついた。遊矢は顔を赤くしながら、その場ですぐに立ち上がった。反撃をするのかと思ったのか、権現坂と柚子が大慌てで入ってきた。
「2人とも!やめて!!遊士さん!!遊矢!!」
「落ち着け!!」
2人になだめられた遊士と遊矢は呼吸を荒くしたものの、手をあげることは止めた。沈黙が続いている中、今度はその部屋に零児が入ってくる。
「確かに、これほど手掛かりがないことは、彼にとってモチベーションが下がる原因ではあるな。」
「零…児。」
ふと周囲を見渡すと、ベッドにいる自分を4人がじっと見つめている状況に置かれていることに気が付き、いたたまれなくなった遊士は、咄嗟に学ランを乱暴に取った。その時のハンガーが地面に落ちた際に出た大きな音は、しばらく彼らの耳に残った。
「遊士さん、どこに!?」
「散歩だよ!!ガキじゃねえんだ、夜には戻るよ!」
遊矢は追いかけようとするが、零児が彼の前に立ちふさがった。
「遊矢。」
「零児!!どけよ!」
「わからないのか!彼は今苦しんでいるんだ。」
「えっ?」
「君は先ほど言ったな。遊士さんがそんなことでどうする…と。おそらく彼はわかっている。自分がやらなければ、誰がユキさんを救えるのか。ということを、考え込んでいるんだ。」
遊士がいなくなったのを確認すると、権現坂は零児に尋ねた。
「では我々を当てにしていないというのか?」
「そうではない。我々を当てにしてはいけないと思っているのだ、おそらく。」
「当てにしてはいけない…?」
「我々がここに来た理由は、エクシーズ次元の仲間を対融合次元のデュエリストの控える基地、『前線基地』から集め、融合次元へと旅立つためだ。
別に遊士に協力する義理も、バリアンを倒す義理も、ヘヴンズ・チルドレンを倒す義理もない。」
そこまで言い切る零児に、今度は柚子が尋ねる。
「じゃあ、私たちは、遊士さんとは目的が違うから、遊士さんに力を貸す必要はないっていうの?」
「そうだ。今までは『前線基地』がどの辺りにあるのか見当がつかなかったから、我々も動けずにいたが、おおよその目星をつけることはできた。我々は動ける。彼には《ディメンション・ムーバー》も渡してある。いざとなれば、自分の次元に戻ることもできるだろう。もっとも、彼が我々と行動を共にしたいと言った場合、話は別だがな。」
「冷静に考えてみれば、俺たちはランサーズ。遊士はランサーズという訳ではない。」
誰もが零児が遊士と旅をするつもりがないと解釈し、沈黙した瞬間であった。
「一点だけ気になるのは…彼の、そして彼の持つライジング・ソードの力だ。」
「あっ。そういえば。」
「あの力からは何か特別なものを感じる。確かにそれは気がかりだが…今のところその不確定要素が、遊士と行動を共にする必要条件ではない。」
------
ぼんやりと、声が聞こえてきた。誰か、男の人2人が、私の目の前で言い争っている。視界がおぼろげだ。確かに自らの足で立っている。確かに前を見ているのだが、声が出ない。いや、喉が痛いとかじゃない。声を出す気にならない。
何かを忘れている。自分が何者なのか、そういえばそれも忘れている。けれど、それですらどうでも良い。
「返すべきです。」
「いや、この子は必ず覚醒する。断言できる。」
「なぜそう断言できるのですか!!」
まるで水中から2人の会話を聞いているみたい。なんだろう、この感じ。
「私の
「しかし、恐れながら申し上げますが、仮にそうだとしても、今のこの状態で、覚醒していない状態で、我々にプラスになるとお思いですか?」
お…この銀髪の人、私のことを指差しているぞ。ひょっとして、覚醒していないのは…私?ってか、もう一人の人、白いフード被っていて全然顔が見えない。金髪っぽいけど。
「相変わらず君は楯突くのが好きだね。」
「楯突くだなんて…私は…」
「いや、冗談だよ。確かに君の指摘はごもっともだ。だから私は彼女にデュエルをしてもらおうと思ってね。きっと彼女は使いこなしてくれる。このカードを。」
あ、デュエルモンスターズのカードだ。この人たちも、デュエルするんだ。
「それは…エクシーズ次元で使うべきカード!!」
「そうだよ。だが誰に持たせるかを考えていてね。せっかくだから、彼女に使ってもらおう。」
え、これ、私にくれるの?
「そう。これは君にあげる。さあ、このカードを使い、思う存分暴れるが良い。そのカードがあれば、アストラルも、バリアンも、怖くはない。」
------
(あれ…今のは?あっ、そうか。私、デュエル中だ。)
目の前ではベクターの使う、マスカレード・マジシャンシャイニングが、宙を舞っていた。不意に彼女の視線は腕組みをしているクラウダーと合ったが、彼は特に何も言わなかった。
《No.104 仮面魔踏士シャイニング》:ORU2→ORU1
「さあ、くらえ!800のダメージをな!」
「だったら僕は、シャイニングのモンスター効果に対して、《ソウル・ミスト》の効果発動!このカードを墓地に送り、(4)バトルフェイズ中に発動したモンスター効果を無効にする!」
「甘いんだよ!マスカレード・マジシャンシャイニングの効果発動!さらにオーバーレイユニットと一つ使い、バトルフェイズ中に発動したモンスターの効果を無効にする!」
《No.104 仮面魔踏士シャイニング》:ORU1→ORU0
「じゃあ僕は…《ホール・ミスト》の効果を発動しようかな。」
「なにっ!?」
シャイニングのオーバーレイユニットが切れてしまったところで効果を発動され、狙いが今のカードの発動であることに気が付き、動揺するベクターであったが、もう遅い。
「このカードの効果はチェーン3以降にしか発動できないけど、このカードを手札から墓地に送り、(3)バトルフェイズ中に発動した同一チェーン上のモンスターの効果を全て無効にして、バトルフェイズを終了させる!」
「チェーン3以降だと!?」
「1つのカード効果の発動に対して、別のカード効果が発動されることを、チェーンと呼ぶ。シャイニングの効果を、2回も使ってくれたからね。チェーン数が溜まったってことさ。」
チェーン1:《ヴァニティ・ミスト》
チェーン2:《No.104 仮面魔踏士シャイニング》
チェーン3:《ソウル・ミスト》
チェーン4:《No.104 仮面魔踏士シャイニング》
チェーン5:《ホール・ミスト》
「バトルを回避されたか。」
「まさか、そのために効果を使った訳じゃないよ。《ホール・ミスト》は、このターンに無効にした効果ダメージ分だけ、相手にダメージを与える。」
「このターンに無効にした効果ダメージっていうと…シャイニングの効果2回分、1600ポイントか。」
「それだけじゃない。」
そこまで黙って聞いていたドルベが突然口をはさんだ。
「そうか!!《ヴァニティ・ミスト》は特殊召喚時に、攻撃力の半分の、2000ダメージを相手に与える。つまり、3600ポイント!!」
「そういうこと。そしてベクター。君のライフポイントは残り3000ポイント。とりあえず君はここで、ゲームオーバーね。」
「んだとぉ…!!!」
青白い光がベクターに向かって進んでいく。彼は自分よりも7歳は年下であろう少年のようなデュエリストにしてやられてしまったという思いに呆然としていて、何かを発動するようには見えない。
「ベクター!!くっ!罠カード、《リデュース・ダメージ》!!」
「ド…ドルベ!?」
「自らのモンスターの攻撃力を、100ポイント単位で下げることで、効果ダメージを無効にする!私は、グローリアス・ヘイローの攻撃力を、2500下げる!」
《No.102 光天使グローリアス・ヘイロー》:攻撃力2500→攻撃力0
「まぁいいや。これで3600ポイントから、2500ポイントのダメージが引かれて、1100ポイントのダメージだね。」
「ぐっ。」
ベクター:LP3000→LP1900
「ベクター!!大丈夫か!?」
「余計なことをしやがって!!」
「どんな言い方をされようが、お前は私と同じく、バリアン七皇の一人だ!仲間は、守らなければならない!!」
「な…仲間…だと?」
ベクターがドルベから目を逸らすと、ミストがその様子を見て、話しかけた。
「仲間に助けられたね。」
「うるせぇ!調子に乗んなよ!!今のはたまたまやられただけだ!まだ俺のターンは終わってねえ!シャイニングの効果発動!1ターンに1度、相手のデッキの上からカードを1枚墓地に送る!さあ墓地に送れ、ミスト!」
「いいよ別に。1枚くらい。」
「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ!」(3)
<ドルベ:伏せ1枚 ベクター:2枚 ミスト:なし ホワイト:2枚>
再び沈黙のデュエリスト、ホワイトがカードを1枚ドローする。彼女の手札は3枚。このターンも、何の動きもなくターンが終わるとしたら、いつのタイミングで終わるのか、それをドルベは測っていたが…
ホワイトの目の前に、小さくてかわいらしい白い羽の生えたバレリーナのようなモンスターが現れた。
「おい、黙ってモンスターを召喚するなよ。」
《
「ブリザード・スピリットか。」
「からのぉー、やっぱりな。《レベルアップ!》を使ってきたか!」
《レベルアップ!》
通常魔法
フィールド上に表側表示で存在する「LV」を持つモンスター1体を墓地へ送り発動する。そのカードに記されているモンスターを、召喚条件を無視して手札またはデッキから特殊召喚する。
《
突然目の前にいたブリザード・スピリットが口から吹雪を吐き出し、グローリアス・ヘイローに浴びせた。
「なにっ!?グローリアス・ヘイロー!!」
「何も喋らないとわかんないかもしれないから教えてあげるよ。ブリザード・スピリットLv.3は、相手モンスター1体の効果を無効にして、攻撃を不能にする効果があるんだ。今はそれを使ったんだよ。」
「効果が無効!?では、ナンバーズから以外でも、破壊されてしまうのか。」
「だらしねえなドルベ!ナンバーズが、攻撃力1000のモンスターにやられちまうなんてよ!」
先ほど助けてもらった者が言う言葉ではないと思ったドルベだが、ドルベはベクターを気にしている場合ではない。
ブリザード・スピリットが、自身の羽で羽ばたくと、量としてはさほど多くはないが、吹雪が舞い、グローリアス・ヘイローを取り囲んだ。
「ええい!罠カード、《ライジング・エナジー》を発動!」
《ライジング・エナジー》
通常罠
➀:手札を1枚捨て、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで1500アップする。
「手札を1枚捨て、(2)グローリアス・ヘイローの攻撃力を1500ポイントアップ!!迎え撃て!ライトニング・クラスター!!」
《No.102 光天使グローリアス・ヘイロー》:攻撃力0→攻撃力1500
グローリアス・ヘイローの放った槍が吹雪を散らしたが、ブリザード・スピリットは自身の羽から出たバリアで身を守った。小爆発が起こったが、プレイヤーであるホワイトは動じていない。
ホワイト:LP4000→LP3500
「何!?あのモンスターは、バトルで破壊できないモンスターなのか!?」
「知らないの?残念だねえ。ブリザード・スピリットは、自身の効果を使ったターンは、戦闘でも、カード効果でも破壊されないんだよ。」
《No.102 光天使グローリアス・ヘイロー》:攻撃力0
「ドルベのグローリアス・ヘイローの攻撃力が0に戻っちまった。」
「大丈夫だ、ベクター。我々には、彼らにはない、七皇だからこそできることがある!」
「七皇だからこそできること?」
公園のジャングルジムにもたれかかって聞いていたクラウダーが小さくつぶやいたを、ドルベは聞き逃さなかった。
「そう。七皇全員が揃った時、その時にこそ覚醒する我々の力だ!ゆくぞ!!私のターン!」
バリアンズ・カオス・ドロー!!
「私が引いたカードは、《RUM-
「あぁ、そうか!そのカードがあったな、ドルベ!!」
「ザ・セブンス・ワン?」
「ミスト!ホワイト!!見るが良い、このカードの力を、発動せよ、ザ・セブンス・ワン!!自分フィールドのナンバーズ1体を、カオスナンバーズへと進化させる!私は、グローリアス・ヘイローで、オーバーレイ!!1体のモンスターで、オーバーレイネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!!」
《RUM-
通常魔法
自分のエクストラデッキ・フィールド上・墓地の「No.10X」と名のついた モンスターエクシーズ1体を選択して発動できる。(Xは1~7の任意の数値)
選択したモンスターがエクストラデッキ・墓地に存在する場合、 選択したモンスターを召喚条件を無視して自分フィールド上に特殊召喚する。 この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。 その後、選択したモンスターよりランクが1つ高い「C」と名のついたモンスターエクシーズ1体を、 自分のエクストラデッキから、選択したモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚できる。
来るが良い!《CNo.102
《CNo.102 光堕天使ノーブル・デーモン》:攻撃力2900
「へぇ、これが、カオスナンバーズ。」
「ノーブル・デーモンの効果発動!カオスオーバーレイユニットを1つ使い、相手モンスターの攻撃力を0にし、効果を無効にする!!これで、ブリザード・スピリットの効果は無効となり、攻撃力は0!!」
《CNo.102 光堕天使ノーブル・デーモン》:CORU4→CORU3
《吹雪の精霊Lv.3》:攻撃力1000→攻撃力0
「ゆけっ!ノーブル・デーモン!!」
ダークネス・ピアース!!
槍と共に手のひらにのるほどの老婆の姿をした悪魔がブリザード・スピリットに向かい、闇に飲み込まれたブリザード・スピリットはその場で大きく吹き飛ばされ、同時にホワイトも大きく吹き飛ばされた。
ホワイト:LP3500→LP600
(えっ、うそ!宙に浮いてる!?ちょっとちょっと!!なにこ……あいたっ!!!)
仰向けになり、地面に頭を打ち付けたホワイトだが、彼女の様子に変化はない。
「女子供に情けをかけるのかと思っていたが、心配して損したぜ。意外とやるんだな、ドルベ!」
「我々の未来のためだ!私はこれで、ターンエンド!(2)」
<ドルベ:伏せなし ベクター:2枚 ミスト:伏せなし ホワイト:伏せ2枚>
「僕のターン、ドロー!(4)あぁ…」
「引きが悪かったのか?だったらとっとと俺のターンに回しやがれ!」
「そんなカッカしないでよ。僕のとっておきを見せざるを得ない手札なんだからさ。」
「とっておき?」
「魔法カード、《融合》を発動!手札の2枚の《ヴァニティ・ミスト》を融合!」
虚構の存在よ。人には見えぬ姿を重ねて、
《
融合モンスター
レベル10/風属性/ドラゴン族/攻撃力?/守備力?
?
「デス・ミストバレー・ドラゴン?」
霧に包まれた龍と言われると、常人には触れることが許されない崇高なモンスターに聞こえるものの、「死霞」の文字が示すように、不気味な気配を漂わせており、紫色の煙のようなものが胴体を覆っている。その上その胴体はどうやら骨のようであり、骨でできた龍が、紫色の煙を纏い、時より骨を見せている、といった感じか。
「このモンスターは、お前のエースなのか!?」
「まぁ、そうだね。まずこのモンスターの融合召喚時、1000ポイントのダメージを受けるけど、《モンスター・モンタージュ》の効果でダメージは0。そして、このモンスターの攻撃力と守備力は、このカードの融合素材となったモンスターのレベルの合計に、300を掛けた数字となる。ヴァニティ・ミストはレベル10のモンスターだった。ということは、いくつかなぁ?」
わざととぼけたふりをしたミストに、ベクターは舌打ちをし、ドルベはすぐに答えた。
「20×300、つまり…6000!!」
《
「別にカオスナンバーズを持っていなくても、勝てるのさ、デュエルには!バトル!!デス・ミストバレー・ドラゴンで、ノーブル・デーモンを攻撃!」
「なにっ!!」
ドルベは高を括っていた。ノーブル・デーモンには、オーバーレイユニットを2つ取り除くことで、破壊を無効にする効果があったからだ。ミストやホワイトの使う除去カードは切り抜けられると、思っていたのだ。
デス・ミストバレー・ドラゴンが大きく息を吸い込んでいる時に、ベクターと目が合った。
「なぁドルベ。一つ聞いていいか?」
「…?」
「俺かお前のどちらかでも、このデュエルに勝つことが大事なんだよな?」
「そうだ。」
「だったら俺のカードでお前のライフが0になっても、最終的に俺が奴らをぶっとばせれば良いか訳か?」
仲間のことを気にかけている。いつもは自己中心的なメンバーにも関わらず、バリアン七皇としての自覚が芽生えたのか、とドルベは思っていたに違いない。彼ははっきりと言い放った。
「当然だ!!彼らを倒さなければならない!私の屍を越えてゆけ!!」
「そうか。だったら罠カード、《イービル2》!!」
《イービル2》
通常罠
このターン、以下の効果を2つもしくは3つ選んで適用する。このカードを発動した次の自分のスタンバイフェイズに、フィールド上に存在するカード1枚を選択して発動する。そのカードを破壊する。
●モンスター同士の戦闘によって発生する戦闘ダメージは半分になり、お互いのプレイヤーが受ける。
●モンスターが戦闘で破壊された場合、そのモンスターのコントローラーはそのモンスターの攻撃力分のダメージを受ける。
●戦闘によってモンスターが破壊された場合、バトルフェイズを終了する。
「こいつでお互いのプレイヤーは戦闘ダメージを山分けする!」
「戦闘ダメージを山分け!?」
「つまりドルベ、ミスト!!てめえらはこの戦闘で発生する3100ポイントのダメージを山分けし、1550ポイントずつダメージを受ける訳よ!」
ドルベ:LP2750→LP1200
ミスト:LP2000→LP450
「そして確かお前のデス・ミストバレー・ドラゴンには、モンスターの戦闘では破壊されない効果を無効にする効果があったよな?」
「へぇ、よく知っているね。そうさ、この効果で、そのままノーブル・デーモンを破壊する!!」
「何だと!?」
デス・ミストバレー・ドラゴンの毒々しい色のブレス攻撃がノーブル・デーモンを包み、破壊した。
「《イービル2》の効果で、戦闘で破壊されたモンスターのコントローラーに、攻撃力分のダメージを与える!ドルベ、わりぃな。」
「ぐあああああっ!」
ドルベ:LP1200→LP0
「へぇ、君がパートナーの息の根を止めるとはね。デス・ミストバレー・ドラゴンの攻撃を凌いだとしても、攻撃力は6000ポイントのままだし、防戦一方という感じになりそうだよね。僕はこれで、ターンエンド!(1)」
<ベクター:伏せ1枚 ミスト:伏せなし ホワイト:伏せ2枚>
「いくぜ!俺のターン!(4)」
(何…?ベクターはここで、通常のドローだと?バリアンズ・カオス・ドローではないのか!?)
「俺は、《イービル2》の効果発動!発動した次のスタンバイフェイズに、フィールドのカードを1枚破壊する!!俺はお前の、デス・ミストバレー・ドラゴンを破壊!!」
ベクターは自らの右手から紅い光線を放ち、おどろおどろしいそのドラゴンを破壊した。
「あっ。僕のモンスターが!!」
「その様子だと…まだ何かありそうだな、俺は魔法カード、《オーバーレイ・リジェネレート》を発動!こいつの効果で、シャイニングにオーバーレイユニットを1つ増やす!」(3)
《No.104 仮面舞踏士シャイニング》:ORU0→ORU1
「バトルだ!くらえ!!シャイニングで、ダイレクトアタック!!」
「あーあ。そんなカードがあったんだ。……だったら、少しでもオーバーレイユニットを使わせて、ホワイトが戦いやすいようにしないとね。墓地の《死霞の谷の龍》の効果発動!融合素材モンスターを手札に戻して、そのモンスターの効果を使う!」
「させるかよ!シャイニングの効果発動!!オーバーレイユニットを1つ使い、バトルフェイズ中のモンスター効果の発動を無効にし、800ダメージを与える!!」
「うわああああっ!」
ミスト:LP450→LP0
「いいぞ、ベクター!!」
「ヘッ。あとはてめえだけだ、ホワイト!!カードを1枚伏せて、ターンエンド!」(2)
<ベクター:伏せ2枚 ホワイト:伏せ2枚>
いつ彼女のターンが始まるのか、そう思った矢先、不意に彼女の目の前にある罠カードが開いた。
「なんだ!?今度は黙ってトラップカードの発動か!?」
「《エクシーズ・ピクシー》。あれは、罠モンスター。」
《エクシーズ・ピクシー》
永続罠
このカードは発動後モンスターカード(魔法使い族・闇属性・星1・攻0/守0)となり、自分フィールド上に特殊召喚される。このカードはリリースすることはできず、シンクロ素材にもできない。「エクシーズ・ピクシー」2体を同時にエクシーズ素材にする場合、そのうち1体を2体分のエクシーズ素材として扱うことができる。
蝶の胴体に音符の形をした杖を持った小柄な女性のようなモンスターがホワイトの目の前に現れた。
気が付くと、もう1体《エクシーズ・ピクシー》が現れている。
「なに!?」
「もう1枚発動したのか!?しかもあれ、エクシーズ・ピクシー同士でエクシーズ召喚すると、2体分のエクシーズ素材になるんだったよな!」
ドクン、と心臓の鼓動を彼女は感じた。エクシーズ素材が揃ったフィールドを見ると、彼女はエクストラデッキから1枚のエクシーズモンスターを取り出した。
「これ…私が出すべきモンスター。私は…」
ブツブツと話しているのがドルベたちに聞こえたのか、ドルベはその言葉に反応する。
「ン?」
「お前、しゃべれんのか。」
(おっ。目覚めたのかな…?)
「私は、《エクシーズ・ピクシー》の効果により、2体同時に《エクシーズ・ピクシー》をエクシーズ素材とする場合、そのうち1体は、2体分のエクシーズ素材にできる!!レベル1の《エクシーズ・ピクシー》3体分で、オーバーレイ!!3体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!」
天空より舞い降りし運命の王よ。戦いの記憶を破壊し、この地に新たなる夜明けをもたらせ!《破数王-ヌメロン・バスター》!!
《破数王-ヌメロン・バスター》
エクシーズモンスター
ランク1/闇属性/悪魔族/攻撃力100/守備力100
レベル1モンスター×3
?
まさに死神のようなモンスターという言い方がふさわしいのか、身長は180センチほどの高さで、華奢な体に、その2倍ほどの大きさの黒いマントを着用し、目元まで覆うダークグレーの兜を被ったモンスター。胸元には血のような暗みが含まれている赤色のスカーフが見え、右手には身長と同じくらいの高さの大鎌が握られている。
クラウダーは咄嗟に腕組みを解き、驚愕の表情で目の前に現れたヌメロン・バスターを見つめ、口を開いた。
「ヌメロン・バスター…彼女は、覚醒したのか!?」
「僕はヘヴンズ・チルドレンよりも下のヘヴンズ・サードだからわかんないけど、しゃべれるようにはなったみたいだよ。」
「破数王?」
「ヌメロン・バスターだと?」
「このモンスターは、ナンバーズを抹殺するために作られたカード。」
(次回に続く)
<今日の最強カード>
《RUM-
通常魔法
自分のエクストラデッキ・フィールド上・墓地の「No.10X」と名のついた モンスターエクシーズ1体を選択して発動できる。(Xは1~7の任意の数値)
選択したモンスターがエクストラデッキ・墓地に存在する場合、 選択したモンスターを召喚条件を無視して自分フィールド上に特殊召喚する。 この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。 その後、選択したモンスターよりランクが1つ高い「C」と名のついたモンスターエクシーズ1体を、 自分のエクストラデッキから、選択したモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚できる。
<次回の最強カード>
《破数王-ヌメロン・バスター》
エクシーズモンスター
ランク1/闇属性/悪魔族/攻撃力100/守備力100
レベル1モンスター×3
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