遊戯王UA   作:akc

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第24話-白き力の行方

ベクター

 

・LP1900

・手札2枚

・(モンスター)《No.104 仮面魔踏士(マスカレード・マジシャン)シャイニング》(ATK2700)(ORU0)

・(魔法・罠)2枚

 

 

ホワイト

 

・LP600

・手札2枚

・(モンスター)《破数王-ヌメロン・バスター》(ATK100)(ORU2)

・(魔法・罠)なし

 

 

「ヌメロン・バスターだと…?」

「このモンスターは、ナンバーズを倒すために生まれたカード。」

「だが、攻撃力たかだか100のモンスターで、どうやって倒すっていうんだよ?」

「私は、ヌメロン・バスターのモンスター効果を発動!1ターンに1度、ナンバーズを破壊して、その攻撃力分だけこのカードの攻撃力がアップし、その効果を得る。」

「なにっ!?」

 

ヌメロン・バスターが手に持つ大鎌でマスカレード・マジシャンシャイニングの胴体を真っ二つに引き裂き破壊、さらに破壊された時に出た白い光のようなものを、ヌメロン・バスターは吸収した。

 

 

《破数王-ヌメロン・バスター》:攻撃力100→攻撃力2800

 

 

「まずいぞ、ベクター!!このままだと、ヌメロン・バスターのダイレクトアタックを受けるぞ!」

 

「ヌメロン・バスターで、ダイレクトアタック。」

 

覚醒はしたもののまだ寝ぼけまなこなのか、そう一人呟くと、ヌメロン・バスターは勢いよく大鎌を振り上げた。

 

「そうはいかねえよ!罠カード、《ダメージ・ブラックアウト》を発動!」

 

 

《ダメージ・ブラックアウト》

通常罠

自分または相手ターンのダメージ計算時に発動することができる。その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージを0にする。その後、フィールド上にエクシーズモンスターが存在する場合、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「この効果により、戦闘ダメージを無効にし、モンスターエクシーズがいれば、1枚ドローできる!!(3)」

「1枚カードを伏せて、ターンを終了。」(1)

<ベクター:伏せ1枚 ホワイト:伏せ1枚>

 

「チッ。少しはやるじゃねえか。だが、俺のターンだ!(4)」

(《グローリアス・ナンバーズ》か。こいつを使えば墓地からシャイニングを復活させられる。あいつのモンスター効果を使われれば、結局次のターンに破壊されちまうが…その前に利用するまで!)

 

 

《グローリアス・ナンバーズ》(小説版)

通常魔法

自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分の墓地の「No.」と名のついたモンスターエクシーズ1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。その後、自分はデッキから1枚ドローする。

 

 

ドルベはベクターのカードによってチームのための敗北をした訳だが、彼は地に手をつきながら、ベクターをじっと見ている。

 

(おかしい。先ほどのターンも、このターンも、バリアンズ・カオス・ドローを使わなかった。今の状況、彼女は覚醒し、もはや余裕と言える状況ではない。それはベクターの顔を見ればわかる。)

 

『ベクター!!ベクター!!』

(あん?なんだよ。うるせえな。お前は引っ込んでろ!)

 

『聞け、ベクター!!このままだと…』

(安心しな。確かにヌメロン・バスターには面喰ったが、別に手がねえ訳じゃねえ!)

 

周囲には聞こえていない。彼の内なる声が、ベクターに言う。

 

『そうではない!ドルベだ。いつまでもお前がバリアンズ・カオス・ドローを使わないことに、疑問を持っているのではないか?』

(あぁ…それか。確かに、ザ・セブンス・ワンは、七皇への忠誠の証。ドン・サウザンド。あんたと契約しちまった俺には使えねえ。怪しいとは思うよな。あいつだって、俺のカオスナンバーズの力は知っているだろうし。)

 

ベクターがちらと後ろに目を向けると、ドルベは何か俯いてぶつぶつと話しているように見えたが、ベクターにはそのしぐさは気にならず、ドルベにどういうアクションをするかを考えていた。

 

(バリアンズ・カオス・ドロー!なんて恥ずいことをして、引いたカードが、ザ・セブンス・ワンじゃなかったら、突っ込まれそうだしな。まぁ…考えておくか。)

『呑気すぎるぞ、ベクター!!』

(まぁ慌てんなドン・サウザンド。とりあえず、このターンはこのターンのショーを楽しもうぜ。)

 

「おい!!どうした!?サレンダーするならそう言え!」

 

クラウダーがジャングルジムに腰掛けながら声を張り上げてそう言うのを聞くと、ベクターはその言葉で我に返った。

 

「慌てんじゃねえ!俺は手札から、《グローリアス・ナンバーズ》を発動!俺の場にナンバーズがいない時、墓地からナンバーズを復活させ、カードを1枚ドローする!(4)復活しろ!シャイニング!」

 

 

《No.104 仮面舞踏士シャイニング》:攻撃力2700

 

 

「さらに、手札から、《RUM-クイック・カオス》を発動!(3)」

「クイック・カオス…。」

 

ドルベがどのような反応を取ったのか、気になったベクターはドルベの方に目を向けたが、ドルベはまだ時よりぶつぶつと話している。

 

(…?まぁいい。)

 

「シャイニングをエクシーズ素材として、カオス・エクシーズ・チェンジ!!」

 

 

現れろ、CNo.104!混沌より生まれしバリアンの力が光を覆うとき、大いなる闇が舞い踊る。《仮面舞踏士(マスカレード・マジシャン)アンブラル》!!

 

 

《CNo.104 仮面舞踏士アンブラル》:攻撃力3000

 

 

「アンブラル…」

「まずは、アンブラルの効果を発動!エクシーズ召喚に成功した時、フィールドの魔法・罠カードを1枚破壊する!お前の伏せカードを破壊!!」

 

 

デストロイ・ステップ!!

 

 

アンブラルが自身の持つ杖の先から黄色の波動を繰り出し、ホワイトの場に伏せられていたカード、《エクシーズ・コート》を破壊した。

 

 

「《エクシーズ・コート》か。対象モンスターエクシーズの破壊を無効にするカードな。残念だったな!」

「ヌメロン・バスターの効果発動。相手のナンバーズを破壊し、その効果を得る。相手ターンにこのカードの効果を使う場合、オーバーレイユニットを1つ使う必要がある。」

 

 

《破数王-ヌメロン・バスター》:ORU1→ORU0

 

 

「相手ターンでも使えるのか。だが…そうはいかねえんだよ!俺は、アンブラルの効果発動!カオスオーバーレイユニットを1つ使うことで、相手フィールドで発動されたモンスターの効果を無効にして、相手のライフポイントを半分にする!!」

 

 

ダーク・プランダー!!

 

 

《CNo.104 仮面舞踏士アンブラル》:CORU1→CORU0

 

 

アンブラルが宙を舞い、上空から黒い波動をヌメロン・バスターとホワイトに浴びせた。

 

「…っ!!」

 

初めて苦悶の表情を見たところを見たクラウダーは、彼女のところに駆け寄った。

 

「大丈夫か!!」

「ヘヘヘ!!お前が女の格好をしていようが何だろうが、ヘヴンズ・チルドレンなら、俺の敵には変わりねえんだよ!わりぃな。」

 

 

ホワイト:LP600→LP300

 

 

「ヌメロン・バスターの攻撃力は2800。そしてアンブラルの攻撃力は3000!この一撃で、ヌメロン・バスターをぶっ飛ばしてやるぜ!!」

 

 

くらえ!ラスト・ダンス!!

 

 

アンブラルの一撃をまともに受けたヌメロン・バスター。その場から動こうともせず、大鎌で身を守ることもしなかったのは、モンスターであり、感情など持つはずがないとベクターが思ったからであったが、煙がはけると、大鎌を持った状態で仁王立ちしているヌメロン・バスターが見え、その考えは覆った。

 

 

ホワイト:LP300→LP100

 

 

「なにっ!?」

「ヌメロン・バスターは、ナンバーズとのバトルでは破壊されない。」

「なっ…!!ナンバーズとのバトルでは…だと!?」

 

「そうだ。お前たちが使うナンバーズは、ナンバーズとの戦闘以外では破壊されない効果を持っている。ならば必ずお前たちの切り札は、その強力な効果を持ったナンバーズになるはず!!そうお考えになったヘヴンが、作られたカード。それが、ヌメロン・バスター!!」

 

「チッ。まぁいい。カードを1枚伏せて、ターンエンド!(2)」

<ベクター:伏せ2枚 ホワイト:伏せ1枚>

 

 

------

 

 

「そりゃ、俺だってユキを探さなきゃいけねえのはわかってるけど、いくら何でも手掛かりがなさすぎるだろ。確かにあのヘヴンとかいうやつも、ユキについて何か言っていたけど、それだけだし…ちくしょう、どうすりゃいいんだよ!」

 

ビジネスホテルから徒歩10分ほどのところにあるダウンタウン地区。そこを歩く遊士は地面から自分の手のひらに収まるほどのサイズの石を拾い上げて、地面に勢いよく叩きつけた。

 

ここはハートランドの中でも特に人気のない場所。石の転がるコロコロという音が響くなと遊士は思っていたが、よく聞くと、爆発が起きたような音がする。

 

「ン…デュエルか!?公園の方か!?」

 

遊士は学ランを着たまま、前方の公園に向かって走っていった。

 

 

------

 

「私のターン。(2)」

 

彼女の体が小刻みに震えていることに、近くにいたクラウダーが気付く。若干過呼吸のような感じが見受けられ、時折口を大きく開いて大きく息を吸い込んでいる。

 

「ふぅ…はぁ。」

「ホワイト。」

 

(…?どうしたんだ、あの姉ちゃん。)

 

「私は…まだ戦える。私は、ヌメロン・バスターの効果を発動。アンブラルを破壊し、攻撃力と効果を得る。」

(息が苦しい。一体何この感覚?けど、もう少しでこの気持ち悪い人とのデュエルに勝てる。そうよ、私…あんまり覚えていないけど、色々な物事をガッツ出して、乗り越えてきた!そんな気が…この手足がそれを覚えている。)

 

再びヌメロン・バスターがその大鎌を振るい、オーバーレイユニットを持たないアンブラルを破壊し、オーラを吸収した。

 

 

《破数王-ヌメロン・バスター》:攻撃力2800→攻撃力5800

 

 

「ヌメロン・バスター。ダイレクトアタック!!」

 

発汗症状が現れている。おそらくこれで最後の一撃だとするホワイトが力を振り絞ってベクターをにらみつけた時に、彼女の着ている白いパーカーのフード越しの顔に、それが見えた。

 

『ベクター!!もうあのカードを使うしかないぞ!』

(そのようだな!)

 

「永続罠、《イービル1》!!こいつは戦闘ダメージがいくつだろうと、ライフポイントを1にすることによって、その戦闘で発生する自分へのダメージを無効にする!」

 

 

ベクター:LP1100→LP1

 

 

「そ…そんな!!」

 

 

《イービル1》

永続罠

 

 

「その顔、どうやら何としてもこのターンで倒したかったみてえだな!わかるぜ。お前、そのカードを使うと疲れんだろ!?ヌメロン・バスター…恐ろしい力を持ったカードなら、普通、使い手には相当な負担がかかるもんだ。それを知っていながら、そのカードをお前に与えて、自分は高見の見物とは、良いご身分だなぁ、ヘヴン様よぉ!!」

 

ベクターはヘヴンが見ているのかは知らなかったが、夕日に染まりつつある虚空に向かって吠えた。

 

その行為を止めようと一歩前に出かけたクラウダーだったが、彼は目の前にいる汗だくになりながら、過呼吸の状態にあるホワイトを見ただけで、何かをベクターに対して言うことはなかった。

 

「さらに俺は、自分のライフが減ったことで、罠カード、《クレイジー・コープス》を発動!俺のライフが減った時に、墓地のモンスターエクシーズを復活させる!!蘇れ、《CNo.104 仮面舞踏士アンブラル》!!」

 

 

《CNo.104 仮面舞踏士アンブラル》:攻撃力3000

 

 

「ま…まだ決着にならないの…?」

「あぁ。まだまだ楽しもうぜぇ、姉ちゃん!そして、次の俺のターンのスタンバイフェイズ、《イービル1》の効果で、場のカードを1枚破壊できる!これで今度こそお前のヌメロン・バスターは終わりだ!」

 

ホワイトはそのベクターの説明をあまり聞けていなかったが、ヌメロン・バスターに自身が食われていく、そんな気がしてきた。

 

(あぁ…もうダメ。耐えられない。こうなったら…)

「魔法カード、《ブラック・ホール》を発動!(1)」

 

 

《ブラック・ホール》

通常魔法

フィールド上に存在するモンスターを全て破壊する。

 

 

「なんだと!?自分のヌメロン・バスターごと、俺のモンスターを破壊するのか!」

 

突如として出現したブラック・ホールに飲み込まれたヌメロン・バスターとアンブラル。誰もいない公園、という雰囲気か。突如として静かになった。

 

「あいつのフィールドには伏せカードがある。最悪《イービル1》でそいつを破壊すれば良いが…クソッ!!《クレイジー・コープス》の効果で蘇ったモンスターがフィールドを離れた場合、エクストラデッキに戻っちまう。もう俺の墓地には、アンブラルはいねえ。」

<ベクター:伏せなし ホワイト:伏せ1枚>

 

ベクターの手札にある2枚のカードは逆転のカードではない。この状況を打破するためには、何を引けば良いのか。今までは下級モンスターで攻撃を凌ぎつつ、カードを待つなど悠長な考えを持ち合わせていたが、ベクターは自身の心臓の鼓動が少し早くなったことを考えると、焦っているのは自分でもわかった。

 

「俺のターン!!」

 

さきほどまでの癖のようなものか、不意にベクターが後ろを振り向くと、そこには座った状態のドルベがいる。ベクターは『こんなことを思いつくなんて罪深い』と思うことは少しもなく、いやむしろ、『こんなことを思いつくなんて自分は天才に違いない』とさえ思っていただろう。

 

彼にとっては、取っておいたおやつを食すようなものなのか。彼はドルベに歩み寄った。

 

「なぁ、ドルベ。お前言ったよな?」

「…?」

「私の屍をこえてゆけって。」

「あぁ、確かにそう言ったが。」

 

「だったらお前の力、俺によこせよ。」

「なに?」

「バリアン七皇はよぉ、元々ドン・サウザンドに取り入れられるべきなんだよ!」

「ドン・サウザンド!?バリアンの神か!!何をいきなり…!!お前も、バリアン七皇の一人ではないのか!!」

 

「そうだぜ?だが俺はこいつと…契約したんだよぉぉぉぉ!!」

 

突如としてベクターの背後にベクターの身長の3倍ほどある影のような存在が、ドルベを見下ろした。

 

「あ…あなたが…!」

「今、ベクターがいったことは事実だ。我はベクターと契約した。そしてお前たち七皇は、我に吸収されるべきなのだ!」

「っつう訳で…あばよ、ドルベ!!」

 

「ベクター!!くっ、やはりお前は…!!」

 

 

ベクターが手から放ったピンク色の波動を受け、ドルベは自身の体が光の粒になったのを感じる間もなく、消滅し、その粒はベクター、そしてドン・サウザンドに取り込まれてしまった。

 

 

「お前…仲間を!」

「仲間ぁ?ちげぇな。こいつらは俺からすりゃムカつくんだよ、全員!!」

「だがお前のしたことは、他のバリアン七皇にも知れているはず!!だとすれば、お前もただではすまないぞ!」

「そんなことに気付かない俺じゃねえよクラウダー。バリアン七皇はバリアン本部の力を使って、バリアンズ・ヴィジョンを出し、他の七皇が戦っているところを見ることができるが、そいつはもう既にドン・サウザンドによって遮断してきた!要は、回線切断ってことよ!!ついでに、ドルベがいなくても、俺がドルベをやったって疑われることはねえ!!なぜなら…俺はもう…」

 

 

バリアンズ・カオス・ドロー!!

 

 

「引き当てたぜ!!《RUM-七皇の剣》をよ!」

「なにっ!?お前、先ほどからそれをしないのは、バリアンズ・カオス・ドローが使えないからではなかったのか!?」

「ちげぇよ!七皇の剣が使えなかったのよ、こいつは、七皇に忠誠を誓う必要がある!俺にはそんな気はさらさらねえからな!!発動しろ!ザ・セブンス・ワン!!まずは墓地から、シャイニングを特殊召喚する!」

 

「…」

 

「そしてこいつをエクシーズ素材として、カオス・エクシーズ・チェンジ!!三度現れろ、《CNo.104 仮面舞踏士アンブラル》!!」

「また、アンブラル。」

「そうよ!アンブラルのモンスター効果は、相手フィールドの魔法・罠カードを1枚破壊する!!お前の伏せカードを破壊させてもらうぜ!!」

「あっ…」

 

彼女はそわそわしていた気がするが、そんなことはベクターにはどうでも良かった。

 

「さあ、これで終わりだ!アンブラルで、ダイレクトアタック!!」

「くっ…!!」

 

 

ホワイト:LP100→LP0

 

 

「ヘッ。手こずらせやがって。さあ、おねんねの時間だぜ。まずはヘヴンズ・チルドレンの一人目だ!!」

 

ホワイトがその場で蹲ったのを見ると、ベクターはすかさず手を前に翳し、ホワイトに狙いを定める。

 

すると、彼らの目の前に、空中に浮かぶ映像のようなものが映し出された。

 

「な…なんだこりゃ!?」

 

「ヘヴンに仕える者、ならびに我々に抗う者に大事なお知らせをする!」

 

「この声…ヘヴン。」

「あ…私にカードをくれた人。」

 

目の前には、4人の人影が写っている。3人が男性、1人が女性という感じ。

 

「このお知らせは、わかりやすく言うなれば我々と敵対する者に対して、我がヘヴンのこのエクシーズ次元に対して出した戦力がどれほどのものかを教えるためのものだ。」

 

「戦力がどれほどかって…ヘヴンズ・チルドレンは6人全員でかかってくるんじゃねえのかよ?」

「違う。この次元以外にも、我々は管理する必要がある次元がある。可能な限りの人材を一か所に注ぐのは、間違っている。」

「ヘッ。」

 

「まず我が子、ヘヴンズ・チルドレンだが、この次元ではクラウダー、そしてホワイトに担当してもらう。」

「ハッ!」

「…」

 

「そして、選び抜かれたヘヴンズ・サードの精鋭たち4人が、まずはこの次元で君たちを倒す存在となるだろう。ナイト、ノックス、ラニット、アフタン!!」

 

まるでどこかのチームの紹介のようにして、彼らの名前が読み上げられる。しかし彼らの姿がその映像に映し出されることはない。映像にあるのは、ヘヴンの姿のみ。相変わらず素顔は見えないが。

 

「彼らがデュエルをする際には、名前を伝えるようにも言っている。映像まで君たちに見せる義理はない。」

 

すると、その映像に向かって声を荒げている者が目の前にいた。ミストである。

 

「あ…ど、どうして!?どうして僕の名前がない!?」

「そうだ。思い出した。何名かをエクシーズ次元に派遣し、ヘヴンズ・サードの中でも見込みがあるのかを試したが、君たちはそれには及ばなかった。お疲れ様。今後の活躍を、祈っているよ。」

 

「そんな…そんな!!僕は、まだ…死にた…うわああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

祈られた者-ミスト-は、その場で喉がかれてしまうのではと思われるほどの声で叫んでいたが、その叫びはすぐになくなった。気が付けば、目の前にミストの姿もなかった。

 

「さて…改めて言うが、人間は人間が定められた枠組みの中でのみ生活することを求められている。しかし君たちは違う。その能力…常人のそれを逸している。ナンバーズ、その存在も然り。良き力か、悪しき力かではないのだよ。これを見れているということは、その対象になった人だ。その力を全て失うつもりがあるのであれば、ヘヴンズ・チルドレンでも、ヘヴンズ・サードでも、伝えてくれ。そうすれば無益な戦闘は行わないことを約束する。だが、そうでないとこちらが判断した場合は、その後の君たちの安全については、保障しかねる。では…始めよう!!」

 

ヘヴンがフィンガースナップをすると、ホワイトの頭の中で、何かが切れた音が聞こえた気がした。ぼやけていた視界がはっきりし、水中から出てきたような気がする。

 

「あ…何か、健康体になった気がする。」

「ヘヴンの合図で、目覚めたというのか。」

「あなたは…確か、クラウダー…さん?」

「私の名前、憶えているのか?」

「あ、はい。だって、ヘヴンって人とも話してましたし。」

「別に寝ていた訳ではなかったんだな。」

「あぁ~。感覚としては寝てたっていうのに近いですけど…」

 

クラウダーが年上だと判断し、敬語を交えた流暢なセリフにぎこちなさを覚えたクラウダーであったが、目の前には手の平をホワイトの方に再び向け始めているベクターがいる。

 

「おい!シカトこいてんじゃねえ!お前を倒したってことは…もうお前は終わりだろ!さっきのが始まりの合図だなんて、俺は認めねえ!第一そんなこと聞いてねえ!」

「彼女は覚醒していなかった!」

「お前らの都合なんて聞いてねえ!……って、おい!」

 

ベクターがそう叫んだのは、ホワイトに対してであった。ホワイトはベクターがいる方向ではなく、真後ろに振り返ったからだ。

 

「どうした?」

「何か、声が…」

 

確かに、耳を澄ますと、「何が始まりだ、ふざけんじゃねえ!」という青年の声が聞こえて来るのがわかる。公園に向かう一本道の奥にその声の主らしき人物が小さく見える。まだ80メートルほど先にいるその青年は、黒っぽい服装で、ベクターと同じようなことを言っているが、どうやら彼は不思議なことに虚空に向かって叫んでいるようだ。傍から見ると、恐ろしくて近寄りたくなくなる存在だ。

 

「誰かこっちに来やがるのか!」

 

「何もないところに叫んでいる。我々と同じく、今の映像を見た人か!」

「ってことは、私たちの仲間?」

「いや違う。仲間なら、つまりヘヴンズ・サードということだが、どんな者かは、私にもわかる!」

「えっ。仲間じゃないの?」

 

敬語で話すこともできなかったホワイト。怖がってパーカーのファスナーの部分を掴んで自らの顔を半分ほど隠し、クラウダーの肩をぺちぺちと叩いている。

 

「七皇の仲間でもなさそうだな。あんな黒い格好の人間体の奴はいねえ。」

 

(なに?七皇でもないのか!?とすると…)

 

60メートル、59メートル、58メートルと近づきつつある彼を目を凝らして見ていると、クラウダーはあることを思い出した。

 

(…あれは…学ランのようだが…まさか、奴は!!!本当にここまで来ているとは!だとすると…これはまずい!)

 

ふとクラウダーが後ろに目を向けると、ベクターが赤い波動を繰り出しているのを察知した。

 

「くらえ!」

 

「くっ!」

「きゃっ!」

 

咄嗟にホワイトを抱きかかえるようにして庇い、その場で2人ともがうつ伏せに倒れた。

 

「チッ。外したか!」

『ベクター。しばらくは我が力を使ったハントは使えないぞ!』

「はぁ!?どういうことだドン・サウザンド!!」

『ドルベを吸収するのに力を使ったからな。』

「使えねえな!」

 

「大丈夫か、ホワイト?」

「クラウダーさん、ごめんなさい。」

 

その場に倒れた2人が顔を同時に前にあげると、そこには、先ほどの黒い学ランの青年-草薙遊士-が2人を見下ろして立っていた。

 

「……!!」

 

遊士は自分の目に映るものを疑い、目を大きく見開いた。その学生服のスカートに見覚えがある。学友会活動(部活動)やその他学校代表者の大会応援には、制服を着用することが義務付けられている。目の前にいる女性、自分を見上げる女性と最後に会った日、パーカーこそどこで手に入れたか不明であったが、彼女はその服装だったのだ。

 

「…ユキ。」

 

その呟きが、彼女の耳に入ったのか定かではなかったが、ユキと言われた女性は、遊士を見たまま、顔を斜めに傾けた。目を見開いた訳でもなかったその様子が、何を示しているのか、彼には容易に理解できた。

 

「え…?」

 

彼が視線を右に向けると、彼はクラウダーを視認した。それと同時に、彼の脳裏にはヘヴンズ・チルドレン、ナンバーズ、CDT…と数十、いや、数百もの単語が浮かび、シナプスが結合されていく気がした。

 

「あの会場でサニーと一緒にいたてめえがここにいて、その横にユキがいるってことは…おい、てめえ!!クラウダー。どういうことか説明しろ!!」

 

顔を真っ赤にして彼を引き起こした後彼の胸倉を掴んだ。あまりの突然の出来事にユキと言われた女性は、目の前の現象を抑えるべく、遊士の手を振り払おうとした。

 

「ちょっと、やめてくださいっ!!」

「ユキ!お前…くそっ!!」

 

遊士はクラウダーを突き飛ばし、彼は少しよろけた。襟をくつろげた後で、クラウダーは落ち着いた口調で遊士に言った。

 

「お前は…何も知らなくて良い。」

 

「な…なんだと…」

 

「とりあえずデュエルの報告をする必要がある。戻ろう、ホワイト。」

「あ…はい。」

 

クラウダーはホワイトのパーカーのフードを彼女の頭にかぶせ、遊士に対して背を向けるようにし、顔を合わせないようにしてそのまま2人はワープしたように、姿を消した。

 

 

「ユキ…お前はホワイトなんかじゃねえ。ユキなんだ。ユキなんだ!!いつもお節介な奴で、うるさくて…俺にとっては…大切な奴なんだよ!!ユキを…ユキを…ユキを返しやがれえええええええぇぇぇぇぇぇっ!!!!」

 

陽が完全に落ちてはいたが、多少の残照がある空に、その咆哮は虚しく響き渡った。

 

 

(次回に続く)

 

<今日の最強カード>

《破数王-ヌメロン・バスター》

エクシーズモンスター

ランク1/闇属性/悪魔族/攻撃力100/守備力100

レベル1モンスター×3

このカードは「No.」と名のついたモンスターとの戦闘では破壊されない。1ターンに1度、相手フィールド上に存在する「No.」と名のついたモンスター1体を選択して発動することができる。選択したモンスターを破壊して、そのモンスターの攻撃力分だけこのカードの攻撃力をアップし、その効果を得る。この効果は相手ターンでもこのカードのエクシーズ素材を1つ取り除くことで発動できる。

 

 

<次回の最強カード>

《自爆スイッチ》

通常罠

自分のライフポイントが相手より7000ポイント以上少ない時に発動する事ができる。お互いのライフポイントは0になる。

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