遊戯王UA   作:akc

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第25話-裏切りのベクター!裁きのカオス・ナンバーズ!

遊士の咆哮は、目の前にいるベクターももちろん聞いていた。おおよその事情がわかったベクターは目の前で崩れ落ちる遊士に対して手を差し伸べる訳でもなく、その場から黙って立ち去って好きなだけ泣かせてやる訳でもなく、彼を嘲笑した。

 

「ハッハッハッ!!残念な奴だなぁ!!恋人に振られちまったかぁ。」

 

「は?誰だてめえ。見てたろ。俺は気が立ってんだよ!!」

「おおっ、怖いねぇ、草薙遊士。」

 

自分の名前が呼ばれると、遊士は我に返った。

 

「お前…誰だ?その格好。バリアン七皇って奴か?」

 

バリアン七皇という言葉を聞いたベクターは一瞬躊躇ったが、自己紹介を始めた。

 

「そうよ。俺はベクター!お前、ギラグを倒してたよな。ナンバーズを使って。普通の奴がナンバーズを使って戦うと、心の闇が引き出される。だがお前は違ったな。ナンバーズを操って、戦っていたな。俺から聞かせてもらいてえのは…草薙遊士。お前こそ何者だ?」

「何者って…」

「お前からは怪しい感じがするんだよ。あの、ライジング・ソード。あいつはどこで手に入れた?」

「てめえに教える義理はねえ!」

「だったら力づくで聞くまでよ!お前のその力、俺がもらい受ける!バリアンズ・スフィア……」

 

「そこまでだ、ベクター!!」

 

バリアンズ・スフィア・キューブを手に持ち、振りかぶった状態で声をかけられたベクターは、慌てて声のする方へと振り向いた。慌てたのは…その声に、聞き覚えがあったからであるが。

 

「ナ…ナッシュ!!なぜお前が!!」

「ベクター。よくも勝手な真似をしてくれたな。」

 

「ン…あいつもバリアン七皇の一人か?」

 

先ほどクラウダーが腰をかけていたジャングルジムから、一歩ずつゆっくりとナッシュが近づいてくる。ベクターは体を彼に方向にすぐ向けたものの、慌てて一歩後ずさりをした。

 

(こいつは一体どういうことだ、ドン・サウザンド!!)

『お前のしたことが…気付かれたのではないか?』

(んだと?)

 

「ナッシュ。なぜここに。別にお迎えなんかなくったって一人で帰れるぜ。」

「お前…ドルベはどうした?」

 

いきなりの核心を突いた質問に、ベクターはほんの一瞬だけ目を泳がせたが、その仕草はナッシュにとっては十分すぎた。

 

「あ…あいつなら、やられたよ。ミストって奴に。まぁ、ミストも、ホワイトも、俺がぶっ倒したがな!」

「ドルベはどうしたって聞いているんだ!」

「お前さぁ、やられた奴のその後を聞く奴がいるかよ。察しろよなぁ?」

「なるほど。」

 

ただの偶然が彼をここで運んだのかと思いかけたベクターだったが、彼のその思いはすぐに覆った。

 

「お前が吸収しやがった…そういうことだな?」

 

「な…何を言ってやがる。ナッシュ!!ドルベは俺たちの仲間だぜ?」

「ドルベは、デュエルに負けた後で、俺に通信を寄越した。バリアン七皇のリーダーである俺とだけは、他のバリアンは連絡を取り合うことができる。ドルベには俺がヘヴンズ・チルドレンの一人と戦った後に教えたが、お前、知らなかっただろ?お前はとっとと本部から立ち去ったからな!」

「そんなことが…そうか!!だからあの時!!」

 

ベクターが思い出したのは、まさにドルベが俯きながらぶつぶつ言っていたあの時であった。

 

「通信時にはデュエルログも表示される。貴様、ドルベに守ってもらった分際で!」

「守ってもらった…《リデュース・ダメージ》のことか?」

「あぁそうだ!あれがなければお前は!!」

「ふざけんな!!そんな話持ち出しやがって!!奴は、お前にデュエルに負けたから通信していたってことは、俺のことを信用してなかったってことじゃねえか!!」

「俺が言ったからな。」

「てめえ…ナッシュ!!!」

「被害者面してんじゃねえ!!お前は俺が消す、ベクター!!」

 

「上等だナッシュ!!てめえも、七皇も、全て俺が手に入れてやる!!」

 

その瞬間、公園全体を檻のようなものが取り囲んだ。格子状になっており、その隙間からはせいぜい顔を覗かせることができるほどで、とても人が出れるスペースはない。

 

遊士は、その檻はベクターが呼び起こしたものだと思ったが…

 

「今決着をつけようってのか、ナッシュ!」

「当然だ!このままお前を放っておく訳にはいかない!構えろ、ベクター!」

 

(正直早すぎるな。こいつとのデュエルは。2人分の七皇の力でも十分勝機はあるが、舞台は整えたいところだ。)

『ならばどうする、ベクター?』

(俺にもちゃんと策はある。安心しな、ドン・サウザンド。)

 

「デュエルするのは構わねえが、デッキを変えさせてもらうぜ。七皇とやり合うためのデッキとな!」

「好きにしろ。」

 

ベクターは自分のデッキをその場で光の粒にして消してみせ、新たなデッキが彼の何もない手の中に収まった。

ナッシュは彼のデッキが入れ替わっている間に、遊士を一瞥して言う。

 

「お前には恨みはねえが、すぐにデュエルは終わる。そこで大人しく見ていてくれ。」

「あ…あぁ。」

 

「いくぜ、ベクター!!」

「ぶっとばしてやるよ!」

 

 

デュエル!!

 

 

ナッシュ:LP4000

ベクター:LP4000

 

 

「俺の先攻だ!《アンブラル・グール》を攻撃表示!(4)」

 

 

《アンブラル・グール》

効果モンスター

レベル4/闇属性/悪魔族/攻撃力1800/守備力0

1ターンに1度、自分のメインフェイズに発動できる。このカードの攻撃力を0にし、手札から攻撃力0の「アンブラル」と名の付いたモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する。

 

 

「《アンブラル・グール》は、1ターンに1度、攻撃力を0にすることで、手札から攻撃力0のアンブラルを特殊召喚できる!来い、《アンブラル・アンフォーム》!!」

 

 

《アンブラル・グール》:攻撃力1800→攻撃力0

《アンブラル・アンフォーム》:攻撃力0

 

 

「レベル4のモンスターが2体。来るか!」

「レベル4の2体のアンブラルで、オーバーレイ!!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

悪意の淵より目覚めよ!漆黒の闇へと誘う、狂気の霧霞!!《アンブラル・コンシャス》!!

 

 

《アンブラル・コンシャス》

エクシーズモンスター

ランク4/闇属性/悪魔族/攻撃力2000/守備力2000

闇属性レベル4モンスター×2

このカードは1ターンに1度だけ、戦闘またはカード効果では破壊されない。自分のバトルフェイズ中にこのカードと自分フィールド上のこのカード以外のモンスター1体をリリースして発動することができる。3体のレベル4モンスターを素材として必要とするエクシーズモンスター1体を自分のエクストラデッキからエクシーズ召喚扱いで特殊召喚する。その後、このカードのエクシーズ素材になっていたカードを、この効果で特殊召喚したエクシーズモンスターの下に重ねてエクシーズ素材とすることができる。

 

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ。(2)」

<ナッシュ:伏せなし ベクター:伏せ1枚>

 

「いくぜ、俺のターン!!ベクター。お前だけは許さねえ。お前はこのターンで倒させてもらう!!」

 

 

バリアンズ・カオス・ドロー!!

 

 

「なにっ!?いきなりかよ。」

「なんだ、あのドロー。」

 

遊士は紅い弧を描いたそのドローを見ると、ライジング・ソードがフィールドに出た時の自分のドローを思い出した。無意識のうちに、彼は自分のドローと、バリアンのドローの関連性を探し出している。

 

見透かされたように、ベクターは遊士の方に振り返り、不気味な笑みを浮かべながら言った。

 

「あぁそういやお前も、バリアンズ・カオス・ドローが使えるんだよな!?」

「なっ。」

「…それは本当か?」

「まぁ俺のは、バリアンズ・カオス・ドローとはちょっと違う気がするけどな。」

「まぁいい。お前の話はこいつを片付けた後だ。俺は手札から、《RUM-七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)》を発動!(5)オーバーハンドレッドナンバーズを、エクストラデッキから特殊召喚する!」

 

 

No.101!満たされぬ魂を乗せた箱舟よ。光届かぬ深淵より、浮上せよ!S・H・Ark Knight(サイレント・オナーズ・アーク・ナイト)!!

 

 

「早速オーバーハンドレッドナンバーズのお出ましか!」

「そしてこいつを、ランクアップさせる!」

 

 

CNo.101!満たされぬ魂の守護者よ。暗黒の騎士となって、光を砕け!S・H・Dark Knight(サイレント・オナーズ・ダーク・ナイト)!!

 

 

《CNo.101 S・H・Dark Knight(サイレント・オナーズ・ダーク・ナイト)

エクシーズモンスター

ランク5/水属性/水族/攻撃力2800/守備力1500

 

 

「こいつは…何だ?」

「ダーク・ナイトの効果発動!相手の特殊召喚されたモンスター1体を、この下に重ねてカオスオーバーレイユニットとする!」

 

 

ダーク・ソウル・ロバー!!

 

 

漆黒の槍の先から出た赤い光を受けた霧霞、アンブラル・コンシャスはそのままひし形の物体となって、ダーク・ナイトの近くに置かれた。おそらくはこれが、カオスオーバーレイユニットであろう。

 

 

《CNo.101 S・H・Dark Knight》:CORU1→CORU2

 

 

「なにっ!俺のモンスターが!」

「《アンブラル・コンシャス》には、1ターンに1度、戦闘では破壊されない効果があるが、これなら無意味だ!そして俺は手札から、《スピア・シャーク》を召喚!」

 

 

《スピア・シャーク》:攻撃力1600

 

 

「この2体の攻撃が通れば、お前のライフは尽きる。これで終わりだ!」

「1ターンキルか…!」

「いけぇっ!《スピア・シャーク》で、ダイレクトアタック!!」

 

 

スピニング・ピアース!!

 

 

「ぐああっ!」

 

 

ベクター:LP4000→LP2400

 

 

「そして、サイレント・オナーズ・ダーク・ナイトで、ダイレクトアタック!!七皇の思いを受けて、消え去れ、ベクター!!」

 

 

セブンス・ジャッジメント!!

 

 

サイレント・オナーズ・ダーク・ナイトが黒い槍の先端から、黒い波動を繰り出し、ベクターの元へと向かっていく。ところがそれは、ベクターの発動した罠カードによって、防がれてしまう。

 

「そうはいかねえよ!罠カード、《アンブラル・ギフト》!!お前のモンスターの攻撃力の合計分だけお前のライフを回復させ、バトルフェイズを終了させる!そして、カードを1枚ドローする!(3)」

「俺のライフを回復させる…だと?」

 

 

ナッシュ:LP4000→LP8400

 

 

「ふざけんなよナッシュ。俺とお前の戦いを、この程度で終わらせてたまるかよ。」

「カードを1枚伏せて、ターンエンド。(4)」

<ナッシュ:伏せ1枚 ベクター:伏せなし>

 

「あれが…カオスオーバーハンドレッドナンバーズ。すげえ気迫だな。」

 

遊士が学ランの襟をくつろげながら呟く。彼の目は同時に、ナッシュのことも捉えていた。

 

「いくぜナッシュ。俺のターン!(4)俺は手札から、《貪欲で謙虚なように見えて実は強欲な壺》を発動!(3)」

 

 

《貪欲で謙虚なように見えて実は強欲な壺》

通常魔法

自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に発動することができる。自分のデッキの上からカードを5枚めくってお互いに確認し、相手はその中から1枚を選ぶ。選んだカードを自分の手札に加え、その後、残ったカードをランダムに1枚選んで自分の手札に加える。「貪欲で謙虚なように見えて実は強欲な壺」は1ターンに1枚しか発動できず、このカードを発動したターン、自分はバトルフェイズを行えない。

 

 

ベクターの目の前には宝石でできた歯にだらんと垂れた長い舌を持つ貪欲さを見せる表情、そしてその裏側に目を閉じているのか、目元は水平の一本の線のようになっている穏やかで、謙虚な表情の壺がプカプカと浮き始めた。その壺をじっと見ていると、時折真緑色の《強欲な壺》そのものになっている時がある。貪欲なのか、謙虚なのか、はたまた強欲なのか、と考えさせる壺であった。

 

カード名を宣言された時に、ナッシュは動じなかったものの、遊士はベクターの言っていることがわからないという感じに、眉間に皺を寄せた。

 

「なんだその長ったらしい名前は…?」

「こいつは、俺のデッキの上から5枚をめくってお互いに確認し、お前が1枚を選び、そのカードを俺の手札に加える。そして残りの4枚からさらにランダムに1枚が選ばれ、それも俺の手札に加えられるってカードさ。」

「つまりお前は、2枚のカードを手札に加えられるってことか。」

「そうよ!さあ、ナッシュ!!この5枚だ。選べ!!」

 

ベクターがデッキの上から5枚を親指、人差し指、中指で引き抜くと、それを天に掲げた。ナッシュの目の前には、それらの5枚が大きく表示される。遊士は偶然ナッシュの後ろに移動していたので、彼からも、その5枚のカードは見えていた。

 

(なるほど。《トリック・バスター》、《アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ》、《ナンバーズ・テンポラリ・ドキュメント》、《自爆スイッチ》、《ダメージ・ブラックアウト》の5枚か。)

 

しばらくの間、ナッシュが動くことはなかった。5枚のカードから、ベクターの策略を暴くことに集中している。

 

 

《トリック・バスター》

通常罠

自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、相手モンスターの攻撃宣言時に発動することができる。相手フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスターを全て破壊する。この効果で破壊したモンスターの数×300ポイントダメージを相手ライフに与える。

 

 

《アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ》

効果モンスター

レベル1/闇属性/悪魔族/攻撃力0/守備力0

このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、このカード以外の自分のフィールド上・墓地の「アンブラル」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。このカードのレベルは選択したモンスターのレベルと同じになる。また、フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、このカードを破壊したモンスターを破壊する。

 

 

《ナンバーズ・テンポラリ・ドキュメント》

通常魔法

自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に発動することができる。自分のエクストラデッキから「No.」と名の付いたモンスター1体を守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、エンドフェイズに自分のエクストラデッキに戻る。このカードを発動したターン、自分はバトルフェイズを行うことはできない。

 

 

《自爆スイッチ》

通常罠

自分のライフポイントが相手より7000ポイント以上少ない時に発動する事ができる。お互いのライフポイントは0になる。

 

 

《ダメージ・ブラックアウト》

通常罠

自分または相手ターンのダメージ計算時に発動することができる。その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージを0にする。その後、フィールド上にエクシーズモンスターが存在する場合、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「さあ…どうするナッシュ?」

 

彼は再び《トリック・バスター》から順番に視線を移してカードを1枚ずつ見ていくが、《自爆スイッチ》を見た時に、彼の視線はそこで止まった。

 

「おいベクター。《自爆スイッチ》だと?お前、このデュエルを引き分けにしようとしてやがるんじゃねえだろうな?」

「さぁな?」

 

ベクターは手のひらを真上に向け、顔を傾け、肘を少しあげてとぼけて見せた。その挑発に乗る訳でもなく、ナッシュは冷静だった。

 

(あいつはまだドルベの力を手に入れたばかりだ。一度体制を整える必要があるかもしれない。もし本当に引き分けを狙っているんだとすれば、奴の狙いは、《自爆スイッチ》。奴のライフポイントは残り2400。俺のライフは8400。現時点で6000ポイントの差がある。《自爆スイッチ》発動のために必要なライフポイントの差は…7000ポイント。この差を大きくしないためには…)

「《ダメージ・ブラックアウト》をお前の手札に加えろ!」

「りょーかい。そしてもう1枚をランダムに1枚、手札に…加えるぜ!!(5)」

 

4枚のカードが壺に入れられ、そこから1枚を引き抜くと、壺はその場で破壊された。

 

 

手札に加えたカード:《ダメージ・ブラックアウト》、?

 

 

「3枚カードを伏せて、ターンエンドだ!(2)」

<ナッシュ:伏せ1枚 ベクター:伏せ3枚>

 

(伏せカードだけか。あいつの手札には、《アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ》は加わっていないな。もしあれば、俺の攻撃力1600の《スピア・シャーク》に自爆攻撃をすることで、ライフを800にできたはず。仮に手札に《自爆スイッチ》がなくとも、セットすることで、壁モンスターにはなったはずだ。)

「俺のターン!!(4)よし。俺は速攻魔法、《サイクロン》を発動!(3)フィールドの魔法・罠カードを1枚破壊する!!俺は真ん中のカードを破壊!」

「なにっ!!《ダメージ・ブラックアウト》が!!」

「これでお前のカウンターカードはなくなった!!《CNo.101 S・H・Dark Knight》で、ダイレクトアタック!!」

 

 

セブンス・ジャッジメント!!

 

 

「チィッ。罠カード、《トリック・バスター》!お前のモンスターを全て破壊し、1体につき300ポイントのダメージを与えるぜ!」

 

2本の巨大な矢がイラスト部分より飛び出し、ダーク・ナイトの放った光線を分散させ、ダーク・ナイト、そしてスピア・シャークを貫いた。

 

 

ナッシュ:LP8400→LP7800

 

 

「そうか。もう1枚ランダムに手札に加わったカードは、そいつか。」

「仕方ねえから発動してやったぜ。だがこれでお前のカオスオーバーハンドレッドナンバーズはいなくなった!」

「それはどうかな?」

「なに?」

「カオスオーバーレイユニットを持った状態のダーク・ナイトが破壊された時、俺の墓地にアーク・ナイトが存在すれば、墓地からこのカードを特殊召喚できる!」

 

 

リターン・フロム・リンボ!!

 

 

ナッシュの目の前に黒い魔法陣が描かれ、そこから黒い槍を振り回しながらダーク・ナイトが特殊召喚された。

 

「そしてこの効果で特殊召喚した場合、このカードの攻撃力分だけ俺のライフを回復する!!うおおおおぉぉぉぉ!!」

 

 

ナッシュ:LP7800→LP10600

 

 

「バトルフェイズ中に特殊召喚されたダーク・ナイトには、まだ攻撃の権利が残っている。覚悟はいいな、ベクター?」

 

首を垂れ、地面を見つめるベクターに対し、静かだが熱さのあるその言い方で、ナッシュはベクターに伝えた。

すると突然、彼の肩が小刻みに揺れるのがナッシュには見えた。そして、それと同時に、ナッシュが何かを言うよりも前に、「クックックックッ…」という不気味な声が聞こえてきた。

 

「アーッハッハッハッハッ!!!何が覚悟だよ!!覚悟すんのは、てめえだ、ナッシュ!!罠カード、《自爆スイッチ》!!」

「何!?」

「あれ…さっきの壺で手札に加えたのか?」

「違うんだなぁ遊士。《貪欲で謙虚なように見えて実は強欲な壺》を発動した時には既に手札にあったんだよ!!《自爆スイッチ》がな!!だから俺にとっては《自爆スイッチ》は選んでほしくなかったんだよ。手札でダブついちまうからなぁ!そしたらお前は真面目な顔して考えに考えた後、《ダメージ・ブラックアウト》を手札に加えさせた訳だぁ!!」

「あのカードは…2枚目の《自爆スイッチ》だったのか。」

「《サイクロン》を使われた時は少し焦ったがな。あそこで《自爆スイッチ》を破壊されたら俺は結構ピンチだったぜ。さあ、お喋りはここまでだ!!」

 

ソリッドビジョンなのかは不明だが、ベクターの目の前には、彼の腰の高さまである金属製の台が地面から現れた。もちろんというべきか、そこには赤いスイッチがあった。

 

「くっ。ベクター!」

「慌てんなよナッシュ。俺たちの決着は、もっと別の場所でつけようぜ!!じゃあな!!……おっと、お前も伏せな、危ねえぜ、草薙遊士!!」

「あぁ、言われるまでもねぇ…」

 

彼が笑いながらボタンを押すと、公園全体を包み込むほどの大爆発が起こり、デュエルが終了したことによって、ナッシュの仕掛けた檻は崩れ去った。

 

 

ナッシュ:LP10800→LP0

ベクター:LP2400→LP0

 

 

バリアンの力を使ってデュエルはしていたものの、周囲には破壊行為をもたらすこともなく、煙幕が出ただけのようであった。

 

「ベクター。遊士と言ったな。他の七皇が心配だ。俺は本部に戻る。お前の話は今度聞かせてもらう。」

「ちょっと待てよ。」

「…?」

「お前らバリアン七皇同士でやり合っているのは何となくわかった。何があったかは知らねえけどな。けど、ヘヴン。あいつらとはどうなんだ?」

「俺たちの望みを妨げるのであれば、俺は容赦はしない。あいつらとも、やり合うつもりだ。…お前も、訣別した方が良い。」

「訣別だと…」

 

遊士の肩に手をあてたかと思うと、七皇の一人であるナッシュはそこから姿を消した。周囲を見渡すと、残照もなくなり、すっかり夜の闇に包まれていた。

 

ビジネスホテルに戻った彼はまっすぐ自分の部屋に向かって行った。数部屋取っているのだが、遊士の部屋が一番広いためか、遊矢たちはそこに集まっていた。

 

「遊士さん!!」

「どこに行っていたんですか!?」

「心配したんですよ!」

 

「あ…悪い。遅くなった。」

 

「随分と長い散歩だったな。メッセージの一つでも返して欲しいものだ。行方が知れないのは困る。」

 

遊士がポケットにしまってあったスマートフォンを見ると、不在着信が2件、遊矢や零児からのメッセージが数件溜まっていた。

 

「あ、ごめんみんな。さっきは。実はさ…」

 

明らかに様子がおかしい遊士だったが、自分の方から話し始めた。主に公園で会った女性のこと。もちろん、先ほどのデュエルも話したが、それはオマケのようなものであった。

 

「ユキさんが…」

「そんな。」

「だが、ユキさんは、遊士さんのことを忘れていたって?」

 

「多分、あいつらに操られているんだ。ふざけやがって。だから俺は決めたんだ。俺は…ユキを取り戻すためにも、ヘヴンと戦う!!」

「遊士さん!!」

 

「一人でか?」

「え…?」

 

「我々の使命は、あくまで融合次元にいる赤馬零王を倒し、次元戦争を止めること。君に手を貸し、ユキという人物を探すことではない。」

 

遊士がいない時も、同じようなことを言った零児の冷静な態度に、遊矢が前かがみになって言い寄った。

 

「零児!まだそんなことを!!」

「我々は、一刻も早く前線基地に向かう必要がある!」

「だが…!!」

 

権現坂の言葉に重ねて柚子が「でも…」と言った瞬間、さらにそれに言葉を重ねたのは遊士であった。

 

「いいんだ!」

「遊士さん?」

「零児の言う通りだ。さすが社長だな。どんな時でも、何をしなければいけないかがわかっているってことだろ。」

 

遊士は遊矢とは8センチほど身長の差があった。遊士は遊矢の背の高さまで視線を落とし、まるで大人が小学生に対して話をするように、同じ視線で彼に話をした。

 

「いいか遊矢。お前のエンタメデュエル。そいつで、笑顔をもたらすんだろ?相手は6人だろ?中坊の時には俺は喧嘩じゃ負けなしだったんだぜ?でかい退屈しのぎだ、まったく。だから、お前は、いや、お前らは自分のしなくちゃいけないことをしろ。」

 

そう言いながら、遊士は柚子、権現坂と、視線を移していった。

 

「けれど、一人じゃ勝てないわ!こういう言い方は良くないけど、遊士さんは…」

「わかるぜ。ヘヴンズ・チルドレンに一度負けてるって言いたいんだろ?でも、それはサシのデュエルじゃなかったからだ。サシなら負けねえよ。それに、目的を同じくしてる奴を…俺はすでに知っている。ナンバーズを探し求めている奴をな!」

「あのアストラルというデュエリストか。」

「あぁ。あいつの相棒もな。っつう訳で、湿っぽいのは辞めだ、辞め!今日はカツでも食いに行こうぜ!景気づけによ!」

 

「ええっ、私、ダイエット中なのに…」

「何言ってんだ。誰も柚子のスタイルが良くなったかとか、気にしないよ!」

「もう、遊矢ぁ!!」

 

パシ~ン!!

 

「いたぁ…そんなんだから…」

「ホント、デリカシーがないんだから!」

 

そんな何ということのないやり取りを見て、笑えていることを遊士は実感した。大丈夫、たとえ一人で戦うことになろうとも、今の心の持ちようなら、負けることはない、と論理的ではない根拠により、自信を得ていた。

 

この時は…

 

(大丈夫、もし一人で戦うことになるとしても、何とかなんだろ。)

 

 

翌朝、チェックアウトを済ませた遊士たちは、ハートランドのモノレール駅まで向かった。遊士が手掛かりとする、ナンバーズを所持する九十九遊馬の家と、零児たちの目指す『前線基地』とは途中までは同じであったのだ。

 

彼らとは車内で別れの挨拶をし、二駅目で遊士は降りた。ハートランド中央公園という名の駅だった。

 

遊士は零児より旅先で必要となるものも出て来るだろうからと、ショルダーバッグを受け取っていた。そのショルダーバッグを肩から担いで歩いている。

 

(あぁ…早かったな。あいつらと別れるのも。)

 

 

こうして、草薙遊士は目的を同じくする者を尋ねに一人路地を進んでいった。

 

 

(次回に続く)

 

<今日の最強カード>

《自爆スイッチ》

通常罠

自分のライフポイントが相手より7000ポイント以上少ない時に発動する事ができる。お互いのライフポイントは0になる。

 

 

<次回の最強カード>

《バトル・ストッパー》

通常罠

このカードが相手ターン中に墓地に送られた場合、そのターンのバトルフェイズをスキップする。このカードがバトルフェイズ中に墓地に送られた場合、バトルフェイズを終了する。

 

 

 

 

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