真夏のイタリアは最低気温がおよそ18度、最高気温がおよそ30度といった感じであり、日本の東京よりも若干涼しいという感じか。
カイトとオービタルが到着するよりも1時間ほど前、2つの闘志がぶつかるところであったのだ。
そこでは2人の男性と女性が楽屋のようなところをウロウロしながら待っている。どうやら10分後に出番らしい。
「ゴーシュ。最近こういうのが流行っているらしいぞ。注意した方が良い。」
「あぁ?何だドロワ。見せてくれ。」
褐色のジャケットの袖に腕を通しながら、ゴーシュという体格の良い男は、目の前の、ドロワという細身の白いジャケットに、タイトスカートを履いた女性が両端を抑えたタブレット端末の画面を見ている。
「児童館等の子どもが多く訪れる施設に…男が一人で、ある男の居場所を尋ねるって?何だそのノリは?」
「プライバシーの関係から、その男の名前は出ていないが、我々のところにも来るかもしれないぞ。」
「我々のって、ここは俺のビルじゃねえよ。俺はあくまでプロデュエリストで、まだジム経営者じゃねえ…」
「それはわかっている。しかしゴーシュ!」
「わかってるよ、ったくもう、お前は心配性だなぁ…」
「はぁ。忘れていないだろうなゴーシュ。今日は…」
「当たり前だ。あいつの弟がデュエルを見に来ることだろ?」
「そうだ。」
「元気になったのは良いが、いきなり海外に行かなくても…なぁ?」
「弟が切に願ったらしいぞ。兄の姿を見ていたら、自分も色々な人のデュエルを直に見てみたいと。」
「今日はマスクを被る日じゃねえのが、残念だがな。」
「好きなのか?レスリングの方が…頭を使うだろう。魅せプレイがより重要になる。」
「そっちのが俺には似合っている気がする、なんてな。」
突然壁にかかっている内線がけたたましい音を立てて鳴り始めた。タブレットを自分のバッグにしまった後で、ドロワは内線に飛びついた。
「はい。ゴーシュのマネージャー、ドロワですが。え?はい、わかりました。とにかく、すぐに。」
「おいドロワ。どうした…」
「いくぞ、ゴーシュ!!」
「は?おい、事情を説明しろって!!」
マネージメントする対象を置いて勝手にアリーナへと向かっていったドロワに慌ててついていくゴーシュ。ドロワは、説明していると面倒くさいということを知っていたのだ。
狭い通路の奥にあるドアを開けると、40畳ほどのサブアリーナであった。その建物はデュエルジムの一つであり、今日はゴーシュが彼と戦ったことのある相手のシーザーという男とデュエル講座を行い、最後に戦うという流れであった。ジムの管理人であるロベルトという人物がゴーシュを呼びに来る手筈だったのだが…
アリーナにはロベルトはいないが、筋肉隆々の頭を刈り上げている色黒の男が10人ほどの小学生のような子どもたちに何かを話しかけているようだ。
「おぉ、君。知っているな、その顔!!絶対ただの『知っている』じゃない奴だろ!」
「いや…」
薄青い髪の少年が、色黒の男に標的にされたと思われる場面であった。他の子どもをの間をずんずんと進み、彼は目の前まで立ち、見下ろす。
少年は必死に彼から目を反らすが、その行為は、色黒の男に確信を与える材料にしかならない。
「君は、聞いたことあるんだろう?天城カイトって名前を?」
「聞いたことは…あります。だけど…どこにいるかは知りません。」
「嘘をつくなよ!その動揺っぷり、ただ天城カイトの噂を聞いたってだけじゃ…」
色黒の男の太い腕が体育座りの少年の両肩を抑えようとしたその刹那、ゴーシュがその腕を抑え、少年に触れるのを防いだ。
「…!?」
「やめろ!!」
「ゴーシュ…!」
「ううう…。」
10人ほどの少年少女はすっかり怯え切っており、中には涙を流している者もいた。紫色の半袖のYシャツに黒いズボンといういで立ちのその男は、ゴーシュに掴まれた腕を振りほどき、鋭く睨みつけた。
一方ドロワは彼らを慰め、落ち着かせている。
「邪魔するなよ。」
「邪魔だと?お前誰だ?シーザーじゃねえよな。ここはな、お前みたいな野蛮なノリの奴が来るところじゃねえんだよ。」
「俺はな、聞きたいことがあってここに来たのよ。天城カイトって奴の居場所だ。」
「カイトだと?」
「お前、カイトのことは知っているだろう。WDCにも出場していたようだしな。そしてお前のマネージャーの、ドロワ、お前も!」
「マネージャー…」
確かにマネージャーだが、初対面の人が確信を持ってマネージャーだと言い当てることはそう簡単ではないはずだと、ドロワは不審に思い、スマートフォンの電源を入れた。
「そしたら、あの青い髪の子どもが、知ってそうだったから、ちょっと聞いただけだぜ。けど、答えてくれないんだよ。」
「子どもにあんな風に詰め寄ったら、ビビるに決まってんだろ!」
「ヘッ。そいつは悪かったなぁ。」
「てめえ、いけしゃあしゃあと!何だそのノリは!!その曲がった根性、叩き直してやる。デュエルだ!!」
「俺とデュエル…?こいつは…粋だが、そんな時間の無駄遣いはしねえ。」
「無駄じゃねえよ。俺に勝てたらカイトの居場所を教えてやるぜ。」
「なに?やっぱりお前知ってるんだな。もし嘘だったら、まぁいい。お前と戦うのも悪くはないな、ゴーシュ・ザ・スターマン!!」
「なっ。お前、その名前…」
「ヘッ。」
「えっ!ゴーシュのおじちゃん!それはダメだよ!」
「俺はおじちゃんじゃねえよ。」
ドロワはその返答を予想していたのか、腕を組んだまま黙っていた。内心、せめてマネージャーには相談しろと言いたかったかもしれないが。
(確かに私たちが何も言わなければ、あの男はまず間違いなく今日デュエルを見に来た弟の天城ハルトに詰め寄るはずだ。)
ドロワは青い髪の少年-天城ハルト-を見ている。同時に2人はデュエルパッドを取り付け、展開していた。
デュエル!!
ゴーシュ:LP4000
色黒の男:LP4000
「俺の先攻だ!手札から、《
《
効果モンスター
レベル4/地属性/獣族/攻撃力2000/守備力1000
?
色黒の男が召喚したモンスターは、火炎放射器のように炎を吐くことと、ドラミングをすることを繰り返しているゴリラである。
「パワフルだろぉ?なぁ?」
さきほどまで怯えていた子どもたちのうち1人が、ニコッと笑ったのを色黒の男は見逃さなかった。彼もまた笑みを浮かべたのだ。
「いきなり攻撃力2000のモンスターか。」
「さあどうするゴーシュ?まぁ、当然お前なら、エクシーズ召喚をして高い攻撃力のモンスターを呼び出すつもりだろうが、そうはいかねえ!手札から、永続魔法、《Heaven's Confinement》を発動!」
《Heaven's Confinement》
永続魔法
?
黒い沼地のようなイラストから煙のようなものが出て来てその永続魔法の前に漂う。
「何だ!?」
「モンスターの種類を宣言し、宣言された種類のカードが召喚された時、このカードとそのモンスターを破壊してゲームから除外し、カードをドローする!俺は当然、エクシーズモンスターを宣言!!」
「何だと!?」
「俺はこれで、ターンエンドだ。」(3)
<ゴーシュ:伏せなし 色黒の男:伏せなし>
「お前…俺の攻め方まで知ってるのか。お前、プロデュエリストだな?」
「ヘッ。ようやく気が付いたのかよ。だがお前は気が付いていないようだな。俺はお前に一度、負けたデュエリストだということを!!」
「俺がお前を倒している?」
「お互いマスク着けてたからわかんないのも無理ねえな。オーガーヘッド…覚えてねえか?」
「オ…オーガーヘッド…だと!!あの…パワータイプデュエリスト。彗星の如く現れた…って記事に書かれそうになったが、体格がゴツすぎて、彗星って書かれず、突如現れた…とか文才のない見出し記事になってめちゃくちゃ怒ったデュエリストか!」
「後半部分は余計だ。」
ゴーシュが驚いたのには2つの理由があった。一つは単純に、目の前の存在が、いわゆる般若の面を赤く塗ったようなマスクのデュエリスト、オーガーヘッドだとは思っても見なかったから。
そしてもう一つは…
「おい、ドロワ。確か…」
「ああ。」
二つ目の理由についてはドロワも同意見のようで、ドロワはその真相を確かめるべく、タブレット画面をオーガーヘッドに突きつけた。
「先程、私がゴーシュのマネージャーであることをすぐに言い当てた。予想はできても、マネージャーだと断言することは、丁寧な物言いの人間ならしない。」
「丁寧な物言いの人間でなくて悪かったな。」
「これはどういうことだ?」
「ん?」
タブレット画面には、「オーガーヘッド謎の死を遂げる」と書かれた記事があった。2年前のものだった。
「お前…」
子どもたちの手前、ドロワは死んだのではないのかとも聞けず、彼女はただだ黙ってタブレット画面をより彼の顔に近づけることをするだけ。彼女は目配せして子どもの目の前だから直接伝えられないことをオーガーヘッドに伝えると、オーガーヘッドはそれに答え、頷いてから答えた。
「あぁ。まぁ…色々あったのよ。今は訳あって、ノックスと名乗っているがな。」
「ノックスだと?」
「ゴーシュ。真相が知りたければ、俺をデュエルで倒してみろ。そうすりゃ全てわかるぜ。さあ、来い!ゴーシュ!!子どもたちも、デュエルを見たがっている!ゴーシュのデュエル、みたいよな!?」
ノックスは間をとったが…先程の不信感からか、ゴーシュのデュエルを見たくとも、「はーい」という返事は聞こえてこない。
「お前はさっきので、子どもたちをビビらせちまったんだよ。俺のターン!(6)俺は《
《
効果モンスター
レベル4/地属性/戦士族/攻撃力1600/守備力1000
1ターンに1度、相手モンスターの攻撃宣言時にこのカード以外の自分フィールド上の「ヒロイック」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。このカードの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで、選択したモンスターの元々の攻撃力分アップする。
「さらに魔法カード、《フォース》を発動!相手モンスター1体の攻撃力を半分にして、その数値を俺のモンスターに加える!これでお前のゴリラ野郎の攻撃力を半分にして、その攻撃力を加えるぜ!」
《怒れる類人猿》:攻撃力2000→攻撃力1000
《H・C スパルタス》:攻撃力1600→攻撃力2600
「なに?」
「くらえ、スパルタスの攻撃!」
ストレート・ジャベリン!
手に持つジャベリンの投擲により、ジャベリンがバーサークゴリラの体を貫通し、そのまま爆発した。
ノックス:LP4000→LP2400
「別にモンスターエクシーズだけが俺の戦術じゃねえ。油断したな。スパルタスの攻撃力はエンドフェイズに戻り、ターンエンドだ!(4)」
<ゴーシュ:伏せ1枚 ノックス:伏せなし>
《H・C スパルタス》:攻撃力2600→攻撃力1600
「この瞬間、《Heaven's Confinement》は、宣言されたモンスターが召喚されなかったことで破壊される。だが、このカードが破壊された時、デッキからヘヴンと名の付く魔法・罠カードを1枚手札に加える。俺が手札に加えるのは、《Heaven's Link》!そして俺のターン、ドロー!(5)」
今はノックスと名乗るデュエリストと戦った記憶が、ゴーシュの頭に少しずつ蘇ってきた。だが、彼の使うヘヴンというカードには引っかかった。そんなカードを使ったデュエリストは誰もいないはず。
「…」
「手札から、《ダーク・エルフ》を召喚!(4)」
《ダーク・エルフ》
効果モンスター
レベル4/闇属性/魔法使い族/攻撃力2000/守備力800
このカードは1000ライフポイント払わなければ攻撃できない。
「またレベル4で攻撃力2000か!」
「《ダーク・エルフ》は、ライフポイントを1000払わなければ攻撃はできない。俺はライフを1000払い、スパルタスを攻撃!」
ノックス:LP2400→LP1400
ダーク・ショット!!
目を閉じたまま人差し指と中指からの先端から出たレーザービームのような閃光の一撃がスパルタスの盾と胴体を貫き倒す。見た目が色黒の《ホーリー・エルフ》であるだけに、そのギャップが激しい。
「…うっ!」
ゴーシュ:LP4000→LP3600
「まだだ!装備魔法、《Heaven's Link》を発動!(3)自分のモンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した場合、そのモンスターよりも攻撃力が低いモンスター1体を自分のデッキから攻撃表示で特殊召喚して、このカードを装備する!」
「ってことは、《ダーク・エルフ》の攻撃力2000ポイントより低い攻撃力のモンスターを呼び出す訳か。」
「さあ来い!!《フィールド・パワー・マネージャー》!!」
《フィールド・パワー・マネージャー》
効果モンスター
レベル4/地属性/魔法使い族/攻撃力1900/守備力2000
通常召喚したこのカードは攻撃することはできない。特殊召喚したこのカードは以下の効果を得る。
●このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、お互いに攻撃力2000未満のレベル4以下のモンスターを召喚することはできない。
2人の目の前には、金髪に眼鏡をかけた、口うるさそうな女上司と言うのが妥当だと言えるモンスターが現れた。モンスターには見えない。秘書のような風貌になって金髪になった《ヒステリック天使》のようなカードだ。
「何だこのモンスターは!?ドロワよりも美人ってノリだな。」
「ゴーシュ!!」
「な…何も言ってねえよ!」
「こいつの前では、お前はどうすることもできないぜ。このモンスターがいる限り、お互いに攻撃力が2000に届かないレベル4以下のモンスターは表側表示で通常召喚できない。」
「何だと!?以前は確かただ単に攻撃力が高いだけのモンスターを入れたデッキだったが、こんなカードを使い始めたのか!」
「あぁ。お前に負けてからな。このデュエルは、お前へのリベンジマッチなんだよ!だからお前が、カイトの居場所を知っていても知らなくても、関係ない!」
ゴーシュが、ノックスの言った「リベンジマッチ」という言葉を一人呟くと、ドロワがそこで一歩前に出る。
「お前、カイトに会ってどうするつもりだ?」
「お前らには関係ない。知らない方が身のためだ。」
「会ってどうするのかもわからない奴に、カイトの居場所が教えられると思うのか!?ノックスと言ったな!ゴーシュとのデュエルを続ける前に、ターンを終える前に…カイトと会ってどうするのかを教えろ!」
体育座りで2人のデュエルを見守る子どものうちの一人が、ビクッと飛び上がったのがわかった。ドロワは少し声を荒げすぎたかと思ったが、ノックスは鼻で笑った。
「ヘッ。ゴーシュのマネージャーが子どもを驚かせてどうするんだよ。」
「…」
ノックスがため息をつくのと同時に、サブアリーナのドアが勢いよく開いた。ゴーシュたちも子どもたちも、一斉に音のする方へと視線を向けると、そこにはオービタル7を引き連れた、天城カイトが立っていた。
「カイト!!」
「兄さん!!」
子どもたちの、「カイトだ!」という声の中、一人、一際大きな声で兄さんと言ってしまったがために、青い髪の少年が、カイトの弟であることはすぐにわかられてしまった。
「えっ!?兄さん…!?カイト、お前の兄ちゃんなの?」
「いいなぁ!すげえ!ハルトも、フォトン・チェンジできるの~!?」
緊迫したデュエルの雰囲気が一気に崩れ、賑やかになってきた。ハルトは咄嗟にカイトのところへと走っていく。
「おおっ!ハルト様!ご無事でしたか!」
「ハルト。これは…出し物の最中……ではなさそうだな。」
サブアリーナの奥にいる、カイトの居場所を探していたノックスが気味の悪い笑みを浮かべて、カイトの方に歩み寄った。
「お前が天城カイトか。」
「そうだが…貴様は?」
「俺はノックス。お前なら、俺が誰だかわかるよな?」
「ノックス…だと!?遊馬からは聞いていたが、ヘヴンズ・サードの一人!!」
「お前も、聞いたんだろ?ヘヴンの宣戦布告を!」
「あの映像のことか。…あぁ、聞いた。俺にはヘヴンという奴と因縁はないが、降りかかる火の粉は振り払うタチでな。」
「そうか。だったらこいつとのリベンジマッチが終わったら、お前の相手をしてやる。」
緊張が解けてきた子どもたちからは、なぜカイトがここにいるのかという声が次々と聞こえる。彼らにとってはカイトは初対面なので、さすがに面と向かって聞くのは厳しかったのか。するとそれを察したゴーシュが、口を開いた。
「あぁ、カイトは、俺が呼んだんだ。」
「えっ!?」
「きょ…今日の特別ゲストだったんだよ。」
「へぇ~!すごいや、カイト兄ちゃん!」
兄ちゃんというフレーズが気に入らなかったのか、眉間に皺を寄せて鋭い眼差しで一人の子どもをカイトが睨みつけた。
「俺はお前の兄になった覚えはない!!」
「ひっ…!」
素っ頓狂な声を上げて尻餅をついた子どもを見たハルトは、カイトの腕を揺すった。
「俺の弟はハルトだけ…」
「やめなよ、兄さん。」
「なっ。ハルト!……フンッ。」
ノックスはカイトを一瞥すると、自分の立ち位置へと戻っていった。
(ただ過保護なだけでここに来たとは思えないからな。何か理由があったんだろう。何にせよ、俺にとっては好都合だがな。)
「デュエルを再開するぜ!!ドロワ。お前が止める理由ももうないからな!」
「くっ!」
「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!」(2)
<ゴーシュ:伏せなし ノックス:伏せ1枚>
「俺のターン!(5)《フィールド・パワー・マネージャー》の効果によって、攻撃力2000未満のレベル4以下のモンスターの召喚はできない。だったら…」
「セットってか?確かにモンスターのセットは召喚には含まれないからな。だが、そんなことはわかってるんだよ!永続罠、《聖なる輝き》を発動!」
《聖なる輝き》
永続罠
このカードがフィールド上に存在する限り、お互いのプレイヤーは、モンスターをセットする事はできない。また、モンスターをセットする場合は表側守備表示にしなければならない。
「このカードの効果で、お互いにモンスターはセットできないぜ。」
「何!?」
「下級モンスターで攻撃力が2000に届かない奴は召喚できない…だと?だったら…特殊召喚をするまでだ!手札から、《H・C 強襲のハルベルト》を特殊召喚!(4)」
《H・C 強襲のハルベルト》
効果モンスター
レベル4/地属性/戦士族/攻撃力1800/守備力200
➀:相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
➁:このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。
➂:このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時に発動できる。デッキから「ヒロイック」カード1枚を手札に加える。
「このカードは、相手フィールドにのみモンスターがいる場合、特殊召喚することができる!」
「さすがにやるな。ゴーシュ・ザ・スターマン。」
「俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド!(2)」
<ゴーシュ:伏せ2枚 ノックス:伏せなし>
苦い表情をしているのが子どもたちからも見えると、デュエルの先行きが不安になったのか、「大丈夫かなぁ。」や、「がんばれ~!ゴーシュ・ザ・スターマン!」という声が聞こえて来る。
「大丈夫だ。今こんなノリってだけだ!」
「強がるんじゃねえよ!俺のターン!(3)俺は手札から、《
《電動刃虫》
効果モンスター
レベル4/地属性/昆虫族/攻撃力2400/守備力0
このカードが戦闘を行った場合、ダメージステップ終了時に相手プレイヤーはカード1枚をドローする。
「今度は攻撃力2400かよ。」
「さらに永続魔法、《ダメージ・コミッション》を発動して、(1)《フィールド・パワー・マネージャー》で、強襲のハルベルトを攻撃!」
《ダメージ・コミッション》
永続魔法
?
ディモート・フォース!!
「うあっ!ハルベルト!!」
「これでお前のフィールドに壁モンスターはいなくなった!ライフポイントを1000払い、《ダーク・エルフ》で、ダイレクトアタック!!」
ノックス:LP1400→LP400
「させるか!罠カード、《ヒロイック・ブースト》を発動!自分のヒロイックモンスターがバトルで破壊されたターン、手札のヒロイックモンスター1体を墓地に送り、相手フィールドのモンスター1体の効果を、次の俺のターンまで無効にする!」
怖い顔をした《フィールド・パワー・マネージャー》の眼鏡がなくなり、金髪も黒髪になってしまった。効果が無効になったということだろうか。
「だが今更、《フィールド・パワー・マネージャー》の効果を無効にしても、もう遅い!」
「そして、《ヒロイック・ブースト》の効果で、カードを1枚ドローする!(2→1→2)」
ドローした直後、ダーク・エルフの一撃が、ゴーシュの目の前の地面に直撃し、その爆風でゴーシュは後方へと吹き飛ばされた。
「ぐあああっ!」
ゴーシュ:LP3600→LP1600
「これで止めだ!チェーンソー・インセクト!ゴーシュのライフを0にしろ!」
「ぐっ!!」
しゃがみながらチェーンソー・インセクトを睨みつけるゴーシュに、自身のチェーンソーの回転を速めながら突進していく。
やがて彼の目の前で爆発が起こり、その煙で彼の姿が見えなくなった。子どもたちは、「そんな!」と騒ぎ、カイトとドロワは腕を組んで煙の先を見つめている。
「ハッハッハッハッ!」
煙がはけて来ると、最初に声を発したのはハルトであった。
「あっ。」
そこにはゴーシュと、背中に無数の剣を背負った、一般的な戦士のイメージからは少し離れた、無数の剣によってゴツゴツした格好に見えるモンスターが立っている。
「俺は、《H・C サウザンド・ブレード》のモンスター効果を発動していた。こいつは俺がダメージを受けた時に、墓地から攻撃表示で特殊召喚できる。」
《H・C サウザンド・ブレード》:攻撃力1300
「《ヒロイック・ブースト》で捨てたカードか。だが、そいつの攻撃力は1300しかない。《ダーク・エルフ》の攻撃を受けて特殊召喚したとしても、チェーンソー・インセクトの攻撃を受けて、破壊されるはずじゃねえのか!?」
「《ヒロイック・ゾーン》も発動させてもらったぜ。このターン一度だけ、ヒロイックモンスターの破壊を無効にする効果と、もう一つ効果がある罠カードさ。そしてもう一つっていうのは…!!」
「なにっ!?」
「手札から、ヒロイック・チャレンジャーを特殊召喚できる効果だ!来い、《H・C アンブッシュ・ソルジャー》!!」(1)
《H・C アンブッシュ・ソルジャー》:☆1/攻撃力0
「だが!バトルでモンスターは破壊されなくとも、ダメージは受けてもらうぜ!」
ゴーシュ:LP1600→LP500
「だったら、チェーンソー・インセクトの効果によって、俺はカードを1枚ドローさせてもらうぜ!(2)ヘッ。お前のカードで、儲けたな!」
「永続魔法、《ダメージ・コミッション》の効果発動!攻撃力2000以上のモンスターがこのターンに自らの攻撃によって相手に与えた戦闘ダメージ分だけ、ライフを回復する!!お前に与えたダメージは、3100ポイント!」
ノックス:LP400→LP3500
(これでライフの面でも、俺の方が上回っている!俺たちヘヴンズ・サードには、ヘヴン魔法・罠カードを3枚までデッキに入れることが許されている。いざとなれば、このカードもある。とはいえ…ゴーシュにはこれを使いたくはないな。なら…)
「俺はメインフェイズ2で、チェーンソー・インセクトと、《フィールド・パワー・マネージャー》で、オーバーレイ!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」
この世に漂う力の渦よ、今ここに集い、地上の監視者を導くが良い!ランク4、《ワールド・フォース・オブザーバー》!!
《ワールド・フォース・オブザーバー》
エクシーズモンスター
ランク4/闇属性/悪魔族/攻撃力2200/守備力2000
「フィールド・パワー・マネージャー」を含む攻撃力2000以上のレベル4モンスター2体
このカードのエクシーズ召喚は、メインフェイズ2でしか行うことはできない。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手は攻撃力2200未満のレベル4以下のモンスターを通常召喚することはできない。
1ターンに1度だけ、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、自分の墓地に存在するレベル4以下で攻撃力2000以上のモンスター1体を選択して発動することができる。選択したモンスターを自分フィールド上に攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、このターン攻撃を行うことはできない。
また、自分フィールド上に存在するレベル4以下で攻撃力2000以上のモンスターを任意の数だけ選択して発動することができる。選択したモンスターの効果はエンドフェイズまで無効化される。
今度は銀髪の肌の浅黒い体格の良い強面の男性のようなモンスターがフィールドに現れた。このモンスターこそ、力の監視者のようだ。
「1ターンに1度、オーバーレイユニットを使い、墓地の攻撃力2000以上のレベル4以下のモンスターを呼び出す!蘇れ、バーサークゴリラ!!ターンエンドだ!(1)」
<ゴーシュ:伏せなし ノックス:伏せなし>
《怒れる類人猿》:攻撃力2000
「今度は何だ!?」
「このモンスターがいる限り、こいつの攻撃力未満の攻撃力のレベル4以下のモンスターを、相手は通常召喚できない。たとえ今《聖なる輝き》を破壊しても無駄だ。通常召喚には、セットも含まれる。」
「攻撃力2200未満だと!?」
「今度こそ終わりだ。ゴーシュ!!」
手に汗をかいたことは本人にはわかった。その手をゆっくりとデッキの一番上のカードに持っていこうとした時に、ドロワとカイトの声が聞こえた。
「ゴーシュ!!こんなところで負けることは許さんぞ!」
「ゴーシュ!お前に熱きデュエリストの魂があるのなら、この状況を…突破してみせろっ!」
「ヘッ。いいぜ。お前らも、子どもたちも、俺のデュエルを見てろよ!!俺の最強のノリを見せてやるぜ!!俺のターン!!(3)このスタンバイフェイズに、《H・C アンブッシュ・ソルジャー》の効果発動!このカードをリリースし、手札・墓地のレベル4以下のヒロイック・チャレンジャーを復活させる!蘇れ、《H・C スパルタス》、《H・C 強襲のハルベルト》!!」
《H・C スパルタス》:攻撃力1600
《H・C 強襲のハルベルト》:攻撃力1800
「そして、手札のヒロイックと名の付くカードを墓地に送り、《H・C サウザンド・ブレード》の効果発動!このモンスターを守備表示にし、デッキからヒロイックモンスターを特殊召喚する!来い、《H・C エクストラ・ソード》!!」
墓地に送ったカード:《ヒロイック・アドバンス》
《H・C エクストラ・ソード》:攻撃力1000
「これでヒロイックモンスターが4体…」
「まだだ!手札から、《H・C デビルズ・ハンマー》を召喚!(1)」
《H・C デビルズ・ハンマー》
効果モンスター
レベル4/地属性/戦士族/攻撃力2200/守備力0
このカードが攻撃宣言する場合、サイコロを1回振る。出た目が「1」だった場合、このカードの攻撃力はダメージ計算時のみ倍になる。出た目が「2~4」だった場合、このカードの攻撃力ダメージ計算時のみ半分になる。出た目が「5」だった場合、このカードの攻撃は無効になる。
「レベル4で攻撃力2200!!んなモンスター入っていたのか!」
「もっとも、こいつはエクシーズ素材だがな。」
「何だと!?今、お前のフィールドには…5体のモンスターが!」
「決着をつけさせてもらうぜ!俺は、5体のモンスターで、オーバーレイ!!5体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」
連なりし英雄たちの魂よ、今こそ信念を纏う閃光となり、閉ざされた門を突き破れ!《No.86
《No.86 H-C ロンゴミアント》:攻撃力1500
「こいつは…ナ…ナンバーズ…!!」
(次回に続く)
<今日の最強カード>
《フィールド・パワー・マネージャー》
効果モンスター
レベル4/地属性/魔法使い族/攻撃力1900/守備力2000
通常召喚したこのカードは攻撃することはできない。特殊召喚したこのカードは以下の効果を得る。
●このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、お互いに攻撃力2000未満のレベル4以下のモンスターを召喚することはできない。
<次回の最強カード>
《No.86
エクシーズモンスター
ランク4/闇属性/戦士族/攻撃力1500/守備力1500
戦士族レベル4モンスター×2体以上(最大5体まで)
➀:このカードは「No.」と名の付いたモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。
➁:このカードは自分のライフが500以下でなければ攻撃宣言できない。
➂:相手エンドフェイズ毎に発動する。このカードのエクシーズ素材を1つ取り除く。
➃:このカードが持っているエクシーズ素材の数によって、このカードは以下の効果を得る。
●1つ以上:このカードは戦闘では破壊されない。
●2つ以上:このカードの攻撃力・守備力は1500アップする。
●3つ以上:このカードはこのカード以外の効果を受けない。
●4つ以上:相手はモンスターを召喚・特殊召喚できない。
●5つ以上:1ターンに1度、自分のメインフェイズに発動することができる。相手フィールドのカードを全て破壊できる。