遊戯王UA   作:akc

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第28話-閃光の一撃!ロンゴミアント!

ゴーシュ

 

・LP500

・手札1枚

・(モンスター)《No.86 H-C(ヒロイック・チャンピオン) ロンゴミアント》(ATK1500)

・(魔法・罠)なし

 

ノックス

 

・LP3500

・手札1枚

・(モンスター)《ワールド・フォース・オブザーバー》(ATK2200)/《怒れる類人猿(バーサークゴリラ)》(ATK2000)/《ダーク・エルフ》(ATK2000)

・(魔法・罠)《ダメージ・コミッション》(∞)/《聖なる輝き》(∞)

 

 

 

まだ夏場なので、陽が長いはずだが、不思議と夜を迎えそうにない。それは間違いなく、この紅い空が、そう思わせるのであろう。

 

結局ハートラント中央公園の給水場で涼み、情報を共有したナンバーズクラブと遊士は、鬱蒼とした雰囲気の中、今後どうすべきかも考えられずにいる。

 

「これからどうにゃっちゃうキャット?」

「とどのつまり、わかりません。」

 

「遊馬。」

「鉄男…」

「辛いのはわかるけど、バリアンを倒すしかねえんじゃねえのか。バリアンを倒せば、きっと徳之助だって戻ってくる!それを信じて戦うしかねえ!俺たちも戦う!俺たちも、ナンバーズクラブなんだぜ!」

 

命を賭けての戦い。そう聞けば、いくら友人であろうと、頷くことは難しいのが一般論。だが中学生の年齢の子だからか、それとも彼との絆がとても強く結ばれているからか、小鳥、委員長、キャッシーはすぐに迷いなく、大きく頷いた。

 

「とどのつまり、僕も力を貸します!」

「もちろんキャット!!」

「うん!そうよ!私も最近、デュエル覚えたんだから!」

 

「みんな…」

 

「あっ。そうやって遊馬くんに近づこうと…!!」

「そういう訳じゃない!何よこの化け猫娘!」

「カッチーン。」

「おいおいやめろよ2人とも!!」

 

夏の暑さも忘れそうになるほどのキャットファイトが始まろうとしていたが、さすがにそのような雰囲気ではないことを察したか、2人は、「ふんっ!」と言って、そっぽを向くだけにした。

 

「みんな…ありがとな。」

 

力なく遊馬はそう彼らに言った。彼の目からは闘志が感じられない。遊馬は仲間たちのことを信じてはいる。しかし、巻き込みたくないからか、また誰かが犠牲になるのを見たくからか、ナンバーズクラブでバリアンと戦う作戦を立てる気配がない。それは…一人で何とかしようとする姿勢そのものだと、遊士は今の彼の姿からそう思った。

 

遊士はなおも小さないざこざの絶えない小鳥とキャッシーを他所に、遊馬に話しかけた。

 

「遊馬。一つだけ聞いていいか?」

「あ、はい。遊士さん。」

 

敬語か。調子狂うな。

 

「お前、自分一人で何とかしようとしているだろ。」

「…」

「誰も巻き込みたくないのか?」

「…」

「別に否定してる訳じゃねえよ。俺だって、どっちかっていうと群れるタイプじゃねえから。俺も遊矢たちとは別れて、こっちに一人で来た訳だし。一人でも何とかなるものだろ。多分。おっといけねえ。お前にはアストラルがいるから、2人だったな。」

「…」

「けど、お前の中にもし不安があって、ナンバーズクラブにも何とかして欲しいって思うなら、頼んでみても良いかもしれないぜ。」

「ナンバーズクラブに…けど、頼めることと、そうでないことがある…」

「んなの当たり前だろ。それが嫌なら、キッパリ言ったらどうだ?お前らには何もできねえって。俺ならそれくらい言っちまうかもな。ハハハ。」

 

学園生活の中で、遊士は人を頼ることをしないできた。自分の自信のあることでも、ないことでも。その時、自信のないことについては、人に頼った方が良いかもしれない、と思った場面はあったのだ。

 

今は無論人に頼れるなら頼っても良いかもしれないが、頼れないなら一人でしていいかな、くらいに思っている。なぜなら彼にはデュエルの自信があったからだ。

 

 

この時は。

 

 

------

 

 

「ナ…ナンバーズだと!?」

「そう。俺はカイトにこいつを渡すために、ここに呼んだんだ。お前の偶然が重なったのはやばいノリだと思ったが、このターンでケリをつけるから問題ないぜ!」

 

ゴーシュの目の前には、一本の槍を持つロンゴミアントが立っている。白と金の配色の鎧に身を包んでいる。またその手にある槍は、キリストに対して放たれた槍を彷彿とさせる。

 

「だが攻撃力は1500しかねえじゃねえか。それじゃ俺のワールド・フォース・オブザーバーどころか、バーサークゴリラやダーク・エルフすら倒せねえぜ!」

 

ノックスのその言葉を聞いたゴーシュは、鼻で笑って、得意そうに状況の説明を始めた。

 

「ヘッ。まずは、《H・C エクストラ・ソード》のモンスター効果を発動!このカードがオーバーレイユニットになった時、そのモンスターの攻撃力を1000ポイントアップさせる。」

 

 

《No.86 H-C ロンゴミアント》:攻撃力1500→攻撃力2500

 

 

「そして、ロンゴミアントは、オーバーレイユニットの個数によって、効果を得る。1つ以上あれば、戦闘では破壊されない。2つ以上あれば、攻撃力と守備力が、1500ポイントアップする!」

 

 

《No.86 H-C ロンゴミアント》:攻撃力2500→攻撃力4000

 

 

「攻撃力4000だと!?」

「まだだ!3つ以上あれば、他のカード効果を受け付けなくなる!さらに4つ以上あれば、相手はモンスターの召喚・特殊召喚ができない!」

「なに!!俺のモンスターの召喚・特殊召喚を防ぐだと…!?」

「そして…!!!」

 

そこまで言うとロンゴミアントが手に持っている槍を天に掲げた。サブアリーナなので何も起こらないが、外でこの効果を使うと、稲光が走りそうだ。

 

さらにロンゴミアントはゆっくりと振りかぶり、まさに槍を投げようとしている。

 

「オーバーレイユニットが5つある場合、1ターンに1度、相手フィールドのカードを全て破壊する!!くらえ!!」

 

ロンゴミアントが投げた槍はサブアリーナ上部に投げられ、そこで収束した光から、5本の槍となってノックスのフィールドに降り注いだ。それらは《ワールド・フォース・オブザーバー》、バーサークゴリラ、《ダーク・エルフ》、《ダメージ・コミッション》、《聖なる輝き》を容赦なく貫き、破壊した。

 

「うおおおっ!」

「すげえっ!」

「いいぞ、ゴーシュ・ザ・スターマン!!」

 

思わぬ逆転劇に、子どもたちは歓喜の声をあげている。ハルトの顔にも笑みが浮かんでおり、興奮を隠せない様子だ。

 

「これでノックスのフィールドは丸裸だ。」

「ああ…。」

「勝てるね、兄さん!!」

 

 

「バトルだ!ロンゴミアント!奴に止めを刺せ!」

 

今度は目の前に槍を突き出し、槍の先端から放たれた閃光が一瞬でノックスを貫いた。ノックスは物凄い風圧に吹き飛ばされたようにして大きく後方に飛び、後転して、うつ伏せになって倒れた。

 

「やった!!」

「ゴーシュ・ザ・スターマンが勝った!」

 

 

ノックス:LP3500→LP1500

 

 

ゴーシュは自身のデュエルパッドに映る相手のライフポイントの表示が1500で止まったのを見て、反射的に「なにっ!?」と言った後、目の前に倒れているノックスがゆっくりと立ち上がるのを睨んでいた。

 

「お前…どうして!?ロンゴミアントは如何なるカード効果も受けないんだぜ。」

「知らなかったのか?《ダメージ・コミッション》は、フィールドを離れたターン一度だけ、自身が受けるダメージを半分にする効果がある。こいつは何もロンゴミアントに対して使用する効果じゃない。これで俺のライフは残ったという訳だ。」

「チッ。そういうことか。だがそのノリじゃ、いつまでも持たねえぜ!俺はこれで、ターンエンド!(1)」

<ゴーシュ:伏せなし ノックス:伏せなし>

 

ゴーシュが先ほどそうすることもできたように、ノックスもこのターンは、モンスターの召喚・特殊召喚ができなくとも、セットを行うことはできる。ノックスの場の《聖なる輝き》がなくなった以上、ノックスは壁モンスターを用意することができるのだ。

 

たった今ターンを終了したゴーシュは手札の1枚、《H・C 夜襲のカンテラ》をじっと見ている。夜襲のカンテラは、相手の守備表示モンスターを攻撃した時、ダメージ計算を行わずに破壊できる。そのカードテキストのような言葉が脳裏で再生され続けている。

 

「でもさ、ゴーシュのロンゴミアントは、ずーっとエクシーズ素材が5つのままなのかな?それだと強すぎない?」

「そんなこと言っている場合じゃないだろ!ゴーシュライフ500しかないんだから。」

 

「そうだな、そういえば言い忘れていたな。ロンゴミアントは、相手ターンが終わるごとに、オーバーレイユニットを1つ取り除く効果もある。もう次の俺のターンには、破壊効果は使えねえよ。」

 

それを聞いていたのか聞いていなかったのかはゴーシュにはわからなかったが、自身のシャツの埃を自分の手で払ったノックスが、自分のデッキの一番上のカードに指を添えた。

 

「いくぜ、俺のターン!(2)」

(引いたカードは…《ジャイアント・レックス》か。攻撃力2000、守備力1200のデメリットのあるモンスター。こいつをセットしておけば、次のあいつのターンを凌げるかもしれない。だが、あいつが次引くのがモンスターだったら…いやそれ以前に、あいつの手札1枚がモンスターだったら…俺の負けは決まる。)

 

「最後の…ヘヴンカード。」

 

手札にあるそのカードをじっと見つめていると、そのカードを通して、何者かが彼の脳に直接語り掛けて来る。

 

『どうしたのかね?君はゴーシュに勝ちたいのだろう?君がまだ生きていた頃、彼もまた、君をパニック障害に追いやった人物の一人だろう。』

(そ…そうです。しかし彼は人ならざる力を持っている訳ではありません。このカードは…)

『よく見ると良い。持っているではないか。彼のフィールドにいるモンスターは何だ?』

(ナ…ナンバーズ。)

『そう。ナンバーズは、あってはならない存在だ。あれを我々が奪えば、アストラルは消滅する!気が進まないかね?最低限、それが言い訳になるではないか。』

 

ヘヴンカードで止めを刺すということが、どういうことか、ノックスにはわかっていた。眠りにもつけず、目覚めることもできないあの空間での出来事。目の前には子どももいる。ゴーシュが自分のようになったら、目の前の子どもたちもどれほど嘆き、悲しむだろうか。

黙っていると、ノックスに対し、その声の主、ヘヴンはさらに口調を強めた。

 

『ならば問うが、なぜ君はゴーシュにデュエルを挑んだ?カイトの顔を君は覚えていたはずだ。君がしていることは、いわば道草を食うということだ。自分から道草を食いにいったものを、そこで決着をつけることをしないほどの無責任な者に、私はこの任務を与えたというのかな?』

(確かに、俺はこいつを倒したい思いで、デュエルを…!!だったら…その結末は!)

 

「魔法カード、《Heaven's Ritual》を発動!」

『そうだ。それで良いのだ。』

 

「また…ヘヴンズと名の付いたカードか!」

「これは、自分のフィールドにモンスターが存在しない場合、ライフポイントを半分払い、このカードを用いて召喚することができるモンスター1体を自分のデッキ、エクストラデッキから特殊召喚する!このカードの発動ターン、モンスターの通常召喚はできず、この効果以外でモンスターを特殊召喚することはできない。」

 

 

ノックス:LP1500→LP750

 

 

ノックスの目の前には魔法陣が現れ、それを7、8個の燭台が取り囲み、白い炎が灯っている。カードの発動に成功したという演出だろうか。だとすると、それはゴーシュにとっても、周囲のデュエリストにとっても驚くべきことだった。

 

「どういうことだ!ロンゴミアントの効果で、お前は特殊召喚できないはず!」

「残念だが、ヘヴンカードは、ヘヴンカードでしか無効にはできない。このカードの発動と効果は無効化されず、このカードによる特殊召喚も無効にはできない!そして、特殊召喚を封じるカード効果を受け付けない!」

「何だと!?」

「ヘヴンズ・リチュアルのテキストに従い、俺が特殊召喚するモンスターを相手に見せる必要がある。俺はエクストラデッキのエクシーズモンスター、《Heaven's Fourth Lioness》を見せる。そしてその素材となるモンスターを手札またはデッキから選んで、そいつらを素材にエクシーズ召喚を行う!俺はデッキから、レベル10の《絶対服従魔人》2体をエクシーズ素材として、オーバーレイ!!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

 

(ちから)(ちから)(ちから)!万物を薙ぎ払う力よ、万物を屈服させる力よ!気高き野獣の牙となりて、天が導く運命を示せ!《Heaven's Fourth Lioness》!!

 

 

魔法陣から溢れ出た光が一つに集い、天空に向かって柱が立つと、その柱の先から四足歩行のたてがみを持つ獣を顕現させた。外見は名前の通り、ライオンであるが、たてがみはオーカー色。体毛はベージュ色、その瞳は茶色と黒のオッドアイであった。

 

 

《Heaven's Fourth Lioness》:攻撃力4000

 

 

「これこそが、俺の持つ、力の象徴!」

「大したモンスターのようだが、攻撃力4000じゃ、俺のロンゴミアントと互角の攻撃力。俺のロンゴミアントがバトルで破壊されない以上、一方的に破壊されることになるぜ。」

 

体長約2メートルのライオン、いや、力の象徴が、ゴーシュとロンゴミアントを見下ろした。大きく見開き、ゴーシュたちを獲物と捉えたその瞳からは、血肉に植えた野獣だと感じさせる。

 

「ライオネスの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、このカードの攻撃力は、このカード以外のフィールドの全てのモンスターの攻撃力を合計した分だけ、アップする!」

 

 

《Heaven's Fourth Lioness》:攻撃力4000→攻撃力8000

 

 

「攻撃力8000だと!?」

「これが…これが!俺の力だ!《Heaven's Fourth Lioness》で、ロンゴミアントを攻撃!」

 

もはやロンゴミアントは、オーバーレイユニットを使って巨大化したライオネスの敵ではない。ロンゴミアントを押さえつけることのできるほどの前足でロンゴミアントを捕らえ、そのまま真上に放り投げると、ライオネスがその牙で砕くまでもなく、ライオネスを一飲みした。

 

「何だと。」

 

 

ゴーシュ:LP500→LP0

 

 

ライオネスは呆然と立ち尽くしているゴーシュと目が合うと、口を大きく開け、身の毛もよだつほどの雄たけびを上げた。

 

「ぐわああああっ!」

 

ゴーシュは空中で一回転し、仰向けになってその場に倒れた。直接頭を床に打ち付けた際にできた外傷も気になるところではあるが、それ以前に、彼の様子は少しおかしかった。

 

「…」

「おい、ゴーシュ!!」

 

「フフフ…ハッハッハッ!ゴーシュ・ザ・スターマン!!俺の勝ちだ!」

 

敢えてそう言ってみせたノックスは、腕を広げてゴーシュの元に近寄ろうとする子どもたちの前に立ちはだかった。先陣を切った男の子に、その場にいる子どもたちが聞こえるほどの大きさの声で、耳打ちをした。

 

「おいおい!ダメだ!ゴーシュはな、負けちゃったけど、あれは、演技なんだよ。」

「演…技?」

「そうそう!ああやって、負けたプロデュエリストってのは、倒れていないと、ダメなんだ。」

「ダメって、何がダメなんだよ!」

「いや、ほら、ダメなものはダメなんだ!すぐにムクッと立ち上がったら、緊張感ないじゃんか。」

「じゃあさっき大きく吹っ飛んだのも、ゴーシュの兄ちゃんの演技なの?」

「そう!」

「え~?」

 

子どもたちは明らかに納得が言っていない、だがそうやって彼らを説き伏せているノックスの真意に気が付いたドロワは、ノックスの真横に立った。

 

「そうだ!仕方ない。私が教えてやろう。ゴーシュは、レスリングのスタイルでもデュエルするって知っているだろう?その時の癖だ。ここからは、私が講座の続きを行う!」

「あ…はい。」

「こっちだ。みんな、忘れ物とかないか?ついてきてくれ。」

 

ゴーシュの方をチラチラと見つつ、ドロワに率いられて、子どもたちはその場を後にした。ハルトは自分も行かなければならないと、その一団に戻ったが、カイトには、「後でね!」と伝えていた。

 

カイトは横たわっているゴーシュを引き起こし、人の目につかない控室のベッドに寝かせると、再びアリーナに戻った。その間彼がやっていることを、ノックスはじっと見ることもなく、背を向けていた。

 

「おい、貴様!!どういうつもりだ。貴様の狙いは俺だったはずだ!」

「あぁ。だがあいつは俺がデュエルに勝てばカイトの居場所を教えると言ってきた。そんなことを言われれば、デュエルを断る理由もない。」

「ふざけるな!貴様も、奴がカイトでないことはわかっていたはずだ!貴様とゴーシュに何があったのかは知らんが、個人的な恨みで、ヘヴンとやらの力を使い、ゴーシュを…意識不明に…!!貴様…許さん!!」

「何と言われようと、あれが俺の下した決断だ!…カイト。ならばデュエルだ。俺はお前を倒すために来た。お前の持つギャラクシーアイズ。そしてナンバーズ。全てを消し去る。…確認だが、お前はギャラクシーアイズを俺に手渡すつもりはないんだよな?」

「愚問だな!!貴様らに俺のギャラクシーアイズを渡すつもりなどない!」

「そうか。ならばデュエルを行おう。ここは少し狭いな。屋上で行おうか。」

 

 

------

 

 

バリアル・フォーゼを解いた状態で、ギラグとアリトは2人でハートランド中央公園付近を歩いていた。彼らはちょうど狭い路地に入ったところである。バリアン七皇はナッシュが本部に戻り次第集められ、常に二人以上の一組で行動するように言われたのだ。当然その理由は、ベクターがドルベを吸収したからであった。

 

「クソッ。この格好じゃやりにくいな。」

「仕方ねえだろ。バリアル・フォーゼは必要な時に使う程度にしておかないと、ヘヴンの野郎に見つかる可能性が高くなる。俺たちから先手を打つ!」

「なんだよそれじゃ、俺のカウンター戦法とはミスマッチじゃねえか。」

 

実はこの2人は以前にドン・サウザンドの力を受け、ベクターおよびドン・サウザンドの傀儡となってしまったのだが、時間が経ったためかその影響が薄れてきていた。

 

同時に、彼らの良いところであろう、肩の力を抜いて行動することが多いところが、よく見えるようになってしまったのだが。

 

仕事中であれば、常に注意を払っておく必要がある。プロならば、そうだろう。ここでのプロが、何かの立場に所属している、という意味なら、なおのこと。

 

「うっ!」

「っ!?どうした、アリト!!」

 

いきなりアリトがその場に崩れ落ちるようにして倒れた。ギラグが周囲を見つつ、アリトの肩を揺する。

 

「くそっ。背中をやられた。痛っ!!誰だ…?」

「おい、出てこい!!ヘヴンの野郎!!」

 

「ヘヴン…?だからてめえらは間抜けなんだよ!!」

 

2人の間に入ったのは、既にバリアンの姿となっているベクターであった。

 

「てめえ、ベクター!」

「どうやらドルベをやったらしいな。この裏切り者が!!」

 

(ほう。どうやらこれじゃ、こいつらの洗脳は完全に解けちまっているみたいだな。)

 

目の前にいるバリアンのことも眼中になく、そう考えていると、ベクターは自身の体が後方に吹き飛び、ビルの壁に背中が当たったことがわかり、直後に痛みも覚えた。

 

「うっ!て、てめえ。」

「目を覚ましたか!アリトにこんなことしやがって!」

「やりやがったな、ギラグ。」

 

ベクターが仁王立ちで2人の前に立つと、その背後から、巨大な影が伸びることを2人は感じた。

 

「なっ!」

「これは…!」

 

『フフフ。アリト、そしてギラグ!!我が名は、ドン・サウザンド。バリアン世界の神。』

 

「ドン・サウザンドだと!?」

「どうして、ベクターから出て来るんだ!?まさか、ベクター!てめえ!」

 

「そうよアリト。俺はな、このバリアンの神様と契約したんだよ!さぁ、今一度、お前らには働いてもらうぜ!!」

 

影の存在であったドン・サウザンドが実体化すると、両腕を伸ばしてアリトとギラグの首を掴み、そのまま真上に楽々と持ち上げた。

 

「ぐぁっ!」

「くっ!はな…せ!このっ!」

 

『お前たちには我が手足となって働いてもらう!我が力と引き換えにな。』

 

「ぐああああっ!」

「うわあああああ!!」

 

2人は自分の体の中に、カードのようなものが入り込んでいく感触を覚えた。以前にも味わったような痛みだったが、思い出すまでもなく、彼らは自分の目つきが変わったのがわかるほど、視界が狭くなったことを感じた。

 

「よぉし!これでてめえらは、俺の操り人形だぁ!じゃあ、そうだな。ギラグ!てめえはまず…ン?」

 

2人で話している最中であったが、ビルの陰から、白衣を着て眼鏡をかけた華奢な男性が現れたのをベクターは捉えた。

 

「誰だ…?」

「バリアン七皇か。これだけ大きな声で話していれば、すぐにわかる。この世界も、かなり閑散としてきたようだからな。」

「ヘヴンズ・サードか。ちょうどいいぜ、だったらギラグ!この野郎をぶっ飛ばせ!」

「一部始終は見させてもらったが、そのような操り人形に、私が倒せるとでも?私は、かつて科学者だったのだよ?」

「肩書きなんて関係ねえ!俺たちバリアン七皇とのデュエルではな!」

 

ギラグと、その白衣の男性が同時に構え始めたのを見ると、ベクターは今度はもう一つの駒を動かす準備をしようとしたが。

 

 

「アリト!てめえは……あれ?アリト?あれ?おい、どこいった!?」

 

「私は待ったのにな。私と話す前に、もう一人の七皇とも話しておくべきだったな。」

「くそっ!おい、ギラグ!ちょっと待ってろ!アリトを…」

 

 

「バリアル…フォーゼェェェェ!!」

「おい、ちょっと待てって!」

 

「彼は君の言ったことにしたがっただけだと思うがな。」

「黙れこの白衣野郎!!いちいちいちいち、うっせえんだよ!」

「私の名前はアフタン。覚えておいてくれ。」

「聞いてねえよ、ンなこと!」

「名前で呼べという意味だ。」

 

「チッ。どいつもこいつもめんどくせえ野郎だ!!」

 

ベクターはバリアンの姿となったギラグ、そして彼のデュエルを見ることとし、狭い路地のビルの壁に寄り掛かった。

 

 

------

 

 

サブアリーナとメインアリーナは繋がっており、屋上も繋がっているため、かなり広いスペースとなる。ドロワはゴーシュのするはずだった講座を何とか繋いでおり、ハルトもそこにいるため、屋上には今はカイトとノックス、そしてオービタル7のみ。

 

「カイト様!」

「余計な心配はいらん。黙ってデュエルを見ていろ。ドロワにメールでも送っておけ。」

「カシコマリ!」

 

「随分と便利な相棒だな。俺が勝ったら、オービタル7!お前もいただくぜ!」

「貴様ごときに負ける俺ではない!いくぞ!フォトン・チェンジ!!」

 

カイトの服が光を放つかのように白くなり、同時に彼のデュエルディスクが起動すると、それを合図としたのか、ノックスもデュエルパッドを展開し、構えた。

 

 

「デュエル!!」

 

 

天城カイト:LP4000

ノックス :LP4000

 

 

「カイト、先攻はもらうぜ!」

「好きにしろ。」

「俺のターン!《ゴブリンエリート部隊》を召喚!」

 

 

《ゴブリンエリート部隊》

効果モンスター

レベル4/地属性/悪魔族/攻撃力2200/守備力1500

➀:このカードは攻撃した場合、バトルフェイズ終了時に守備表示になり、次の自分ターンの終了時まで表示形式を変更できない。

 

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ。(3)」

<カイト:伏せなし ノックス:伏せ1枚>

 

「俺のターン!(6)俺は、《フォトン・サイキッカー》を召喚!」

 

 

《フォトン・サイキッカー》

効果モンスター

レベル3/光属性/サイキック族/攻撃力1200/守備力1000

このカードの召喚に成功した時、自分フィールド上の表側表示モンスターが、「フォトン」と名の付いたモンスターのみの場合に発動することができる。相手フィールド上のレベル4以下のモンスター1体のコントロールをエンドフェイズまで得る。この効果を使用したターン、自分はバトルフェイズを行うことはできない。

 

 

「このモンスターは召喚に成功した時、相手モンスター1体のコントロールをエンドフェイズまで得ることができる!」

「なっ…」

 

藍色のマントに身を包んだスマートなマネキンのようなモンスターが光を放つと、釣られるようにして《ゴブリンエリート部隊》がカイトのフィールドへと移った。

 

「エクシーズ召喚か?だがレベル3とレベル4では、レベルが合わないな。」

「安心しろ、すぐにこいつは使ってやる。さらに手札から魔法カード、《フォトン・ブースター》を発動!」

 

 

《フォトン・ブースター》

通常魔法

トークン以外のフィールド上に表側表示で存在するレベル4以下の光属性モンスター1体を選択して発動する。選択したモンスター及びフィールド上に表側表示で存在する同名のモンスターの攻撃力は、エンドフェイズ時まで2000になる。

 

 

「このカードにより、《フォトン・サイキッカー》の攻撃力は2000となる!」

 

 

《フォトン・サイキッカー》:攻撃力1200→攻撃力2000

 

 

「俺は攻撃力2000以上の2体のモンスターをリリース!!」

 

そこまで宣言すると、彼の手には、赤色の十字架の形をした物体が現れ、それをその場で彼は真紅色に染まりつつある虚空と投げた。

 

 

闇に輝く銀河よ。希望の光となりて、我がしもべに宿れ!光の化身、ここに降臨!現れろ、《銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)》!!

 

 

「これが…ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン。」

「《フォトン・サイキッカー》の効果により、バトルフェイズは行えない。俺はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ!(2)」

<カイト:伏せ1枚 ノックス:伏せ1枚>

 

 

「俺ではなく、自身の都合で、ゴーシュを狙った貴様は許さん。このデュエルで、俺が貴様に懺悔をさせてやる!!」

「面白い。やれるモンなら、やってみろ!」

 

 

(次回に続く)

 




<今日の最強カード>
《No.86 H-C(ヒロイック・チャンピオン) ロンゴミアント》(小説版)
エクシーズモンスター
ランク4/闇属性/戦士族/攻撃力1500/守備力1500
戦士族レベル4モンスター×2体以上(最大5体まで)
➀:このカードは「No.」と名の付いたモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。
➁:このカードは自分のライフが500以下でなければ攻撃宣言できない。
➂:相手エンドフェイズ毎に発動する。このカードのエクシーズ素材を1つ取り除く。
➃:このカードが持っているエクシーズ素材の数によって、このカードは以下の効果を得る。
●1つ以上:このカードは戦闘では破壊されない。
●2つ以上:このカードの攻撃力・守備力は1500アップする。
●3つ以上:このカードはこのカード以外の効果を受けない。
●4つ以上:相手はモンスターを召喚・特殊召喚できない。
●5つ以上:1ターンに1度、自分のメインフェイズに発動することができる。相手フィールドのカードを全て破壊できる。


<次回の最強カード>
《Heaven's Fourth Lioness》



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