アンジェロ岩と呼ばれる物体を消したあと、仗助さんの鉄拳が僕の頭に落ちた。それもそうだ、余計なことをすれば罰が下る。世の中の鉄則であり真理だ。
その日の晩、仗助さん、億泰さん、広瀬さんの三人にレストラントラサルディーに呼び出され飯をおごってもらった。事情は特には聞かれなかった。こういう人がいい大人と言うのだろうか。
「そういえばよ、お前住む家は決まってるのか?」
「まだ決まっていませんね。今のところはビジネスホテルに止まっています」
僕は仗助さんと同じ娼婦風スパゲティを食べながら答えた。
「あ~、そうか。君はまだこの街に来たばかりだもんね……。」
「ならよ~、俺の知り合いに一人泊めてくれそうな奴がいっからよ~。そいつに頼んでみるか」
広瀬さんのつぶやきに億泰さんが答える。仗助さんと広瀬さんが心配そうに見つめるがどこ吹く風で億泰さんは携帯をかけ始めた。ちなみに、億泰さんは電話の最中シェフに包丁を投げられていた。
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僕は億泰さんに連れられてとある一軒家に来ていた。2階建ての大きな庭付きの一戸建てだ。立派な車が2台もある。
「こいつはな~、俺の後輩の家でな~。こんなでかい家に一人で住んでるからよ、ちょうどいいと思ってよ~
億泰さんは笑顔を浮かべながらそう言う。後輩のことを自慢するのがよほど嬉しいのだろう、人の良さというものはこういう何気ない仕草などに現れてるのだと思う。
ふと表札を見ると矢安宮と書いてあった。どこかで聞いたことがある、それもつい最近。
そんなことを考えてる内に億泰さんがインターフォンを押し後輩さんを呼び出している。スピーカーから聞き覚えのある声が流れてくる。
「億泰さん!ちょっと待って下さい!あなたの後輩ってのは!」
玄関が開かれ特徴的な髪型を持つ小柄な人物がドアの影から現れる。
「なんだど~?おらに一体なんのようがあるんだど~?」
「やっぱりお前かよ!小銭泥棒!」
「そんなお前は!ケチンボ小僧!」
「なんだよ~、お前ら知り合いだったのかよ~。じゃあしげちーこいつをお前んちに下宿させてやってくれ」
僕とそいつが睨み合っている最中億泰さんは家に帰ろうとする。
「「ちょっと待って下さい(まつど!)」」
僕とそいつが億泰さんの襟首を掴み家の中へと引きずり込む。非常に不本意ながらそいつと僕との心が一致した瞬間だった。
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「ところでよ~しげち~、お前とこいつ一体どんな関係なんだよ~」
億泰さんはちびちびとコーラを飲みながら質問してきた。僕は焦らすようにオレンジジュースをゆっくりと味わい、そして答え始めた。
「僕とこの人、しげちーさんが出会ったのは今から一週間ほど前のことです」
「他人から見たら本当に些細な、どうでもいいことなんでしょうがこいつがスタンドを使い僕の落とした100円玉を奪おうとしたんですよ」
「いいや、おらは別に奪おうなんてしてないど。お前が落として放置しようとしていたお金を有効活用してやろうと思っただけだど」
「お前頭脳が間抜けか?飲み物を買ったらすぐに拾おうと思ってたんだよ。そんなことも想像出来てないのかよ!」
「なにぃー!おらはもう怒ったど!お前をボコボコにして謝らせてやるど!」
「そいつはこっちのセリフだ!そのドリアンみたいな頭を現代アートのように作りなおしてやるぜ!」
「お、おい。お前ら~、喧嘩はよせよ」
僕とそいつがヒートアップして今にも掴みかかろうとしてた最中、億泰さんが割り込んできた。そいつは納得行かないと表情におもいっきり出したまま乱暴に座った。
「しげちーもお前もよ~、これから共同生活をすんだからもちっと仲良くできねえのかよ~」
億泰さんの口から驚きの言葉が飛び出す。僕はとっさに億泰さんの方を向いた。対面に座っている奴も同じように億泰さんを凝視している。
「なんだぁ~そんなに驚くことかよ。ま、息がピッタリみたいだからよ~仲良くしろよな」
そう言って億泰さんはニカッと笑う。僕とそいつはお互いに顔を見合わせそして、同じようなタイミングで溜め息を吐き出しながら肩を落とした。