過去はバラバラにしても石の下からミミズのように這い出てくる。それがたとえ自分のものでなくても執拗に追跡し喉笛に喰い付くだろう。
僕は初めてそれを知った。たとえ同じ苦しみを背負っていてもだ。人間というものは不思議なもので、他人がほんのちょっと、どんなに些細な事でも幸福ならば嫉妬し、自分よりも下へと蹴り落とそうとしてくる。僕はそのことを軽く見ていた。見ていてしまっていたんだ……。
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あのいけ好かない小銭を集める貧乏野郎と同居し始めてから1周間がたった。最初はお互いにスタンドを出しあい牽制していたが今は小康状態を保っていると言ってもいいだろう。僕は地元の高校、ぶどうが丘高校に本格的に通いだした。
くだらないことを話す友達や、共通の趣味を持つ友人もできた。僕は過去最高に幸せになっていただろう。だから気づかなかったのだろう。奴の存在、鏡写しの僕の存在に。
学校が終わり昇降口についた時そいつは現れた。
「ちょっといいですかね~、新聞部のものなんですけどちょっと聞きたいことがあって……」
そいつの話を聞く限り新入生に対してアンケートを行っているらしい。幾つか質問が終わったあと、そいつは話の方向を180度転換させた。
「なああんた知ってるか?この街には今から約20年前アンジェロと呼ばれた凶悪殺人犯がいたってことをよ~」
「そいつが、どうしたんですかね?アンケート結果に何か影響でも?」
「そいつにはよ~、実は子供がいたらしいぜ。何を隠そう、俺がそうなんだからよ~」
「まさかお前!俺と同じ!」
「ビンゴッ!行け『サイレント』ッ!やつをぶっ飛ばしな!」
奴がスタンドを出した瞬間世界から音が消えた。いや、消えたというのは間違いだろう、自分の心音と呼吸音は正常に聞こえていたし、奴の能力だろうと推測できる。
自分のスタンドを出そうとした瞬間、僕は目に見えない何かの塊にぶっ飛ばされ壁へと激突した。
「どんな気分だ?笈田亮介くぅ~ん?痛い?痛いか?それがお前の味わってきた幸福の味だよッ!」
奴のスタンドのビジョンが見える。人型のスタンドで両手部分に巨大なスピーカーのようなものがくっついてる。肌の色は焦げ茶、おそらくは近距離パワー型で能力を駆使して戦うタイプだろう。
「てめえの父親にはよ~、俺の姉がずいぶんと世話になったぜ。てめえの父親は行方不明になってやがってどこにもいねえ。だからよ~、ガキのお前が親のやったことを償うのは普通だよな~?」
「先に宣言させてもらうぜ!てめえがいくらガードしようとも必ずてめえに攻撃は当たる!必ずだッ!」
奴のスタンドがこちらへ手を向けてくる。手を体の前で交差させガードする。だが、ヤツの宣言通りガードをすり抜け僕の体へとぶち当たる。その勢いを利用し、近くにあった窓を破壊しながら外へと飛び出した。
「チッ、俺の攻撃に乗じて逃げ出したか。まあいい、ヤツの家はわかってんだからよ~」
そいつは昇降口をゆっくりと歩き始めた。その目はランランと輝き獲物を追い詰める狩人の目をしていた。