そしてついに本番の第二ゲーム目の火蓋が切って落とされようとしていたのだが……。
「疑問。それはどういうことですか、耶倶矢」
「くく、倶風の巫女たる我は結果が見え見えの試合をしたところで何も得られる物が無いということに気づいてしまってのぅ、あえて逆境からの逆転勝利を目指すことにしたのよ!」
耶倶矢が大仰なポーズを決めながら宣言した。
「確認。つまり寝返るということですね」
「うっ……まあさすがにかわいそうだし?あたしが入ったらちょうどぐらいじゃない?」
「さっきボール取りに行ってる時に何を誑し込んだのさ~少年?」
二亜が底意地の悪そうな顔を浮かべて言った。
「いや、本当に俺は何も言ってないぞ?」
「どうでしょうねぇ~、だーりんのことですから無意識に何か耶倶矢さんの琴線に触れることを言ったのかもしれませんよ?」
完全に勘違い、無罪、冤罪であり、このメンツ相手では弁解もままならないため、士道は頬から汗を垂らすことしかできなかった。
そして多少チーム替えが起こり、士道チームが十香、四糸乃、耶倶矢、そして士道の四人となり、
対するもう片方のチームは、完全に猛獣の目となったリーダー折紙に率いられる琴里、夕弦、美九、二亜の五人へと減少した。
「士道、もう容赦しない、士道のボールも触らせてもらう」
「待て待て!そのセリフはグレーというより完全にアウトだぞ!」
あいかわらずぶれない鳶一嬢であった。
「じゃあこのゲームに勝つための最終確認をしておこうか」
「うむ、それはとても良いことだと思うぞ、シドー!」
「くく、我が参上したことによりこちらの戦力は倍増……いや、三倍であるかもしれぬ、何を恐れることがあろうて」
『でもさー耶倶矢ちゃん?実際のところ人数差もあるし何より折紙ちゃんは危険だよ~?』
「私も……そ、そう思います」
よしのんが冷静に現状を分析してくれている。確かにその通りなのだ、耶倶矢が入ってくれたことによって、最低限出来レースではなくなった。しかし絶体絶命なことに変わりはない。
士道は絶対に負けられないのだ。自身の貞操や人としての尊厳など、あらゆるものがかかっているのだから。
「……鳶一折紙は私が抑えよう」
「十香、いけるのか?」
士道が尋ねると十香は静かに首肯した。
「うむ、どちらにせよ誰かがやらねばならんのだ。それならば私が適任であろう」
確かにその通りではある。士道では点数を上げることができたとしてもせいぜい後10点ぐらいが限界だろう。十香に任せた方が希望はある。
「なら俺たちは他のみんなを抑えようか」
「くく、我が一手に二人を引き受けようではないか」
「確かにすごく助かる提案ではあるけど、夕弦は厄介だぞ?1ゲーム目でも1点差しかなかったじゃないか」
『十香ちゃんが折紙ちゃんを抑えてくれるにしろ、よしのんたちで残りメンバー分の点数を稼がないとだしね~』
その通りなのだ、二亜のように堅実な点数を取っているやつもいる。こちらは全員がさっきのゲームを大幅に超える点数を取らねばならないわけである。
「じゃあまあみんな楽しむことを第一に考えて頑張るか」
「が、頑張りましょう!」
「かっかっか、さあ!派手に終焉の宴の幕を開けようではないか!」
「うむ!」
「は……はい!」
『おー!』
士道の投球順番は最後だ、必ずみんなを支えると静かに決意する士道であった。
投球は着々と粛々と進められていく。
しかし全プレイヤーたちが第5投球まで終えた地点から折紙チームに異変が起き始めた。そこまでは第一ゲームとほぼ同じ点数を取っていた折紙、二亜の二人が、急に点数を稼ぎ始めたのだ。
「どうなってるんだよ……」
「うむ、さっきまでがまるでお遊びだったかのような勢いだぞ」
「かか……あたしでもこれ挽回するのはさすがに……」
「士道さん……!」
『士道くん?』
一部の精霊たちからは諦めの気配を感じることすらできる、確かにここで諦めてしまえば楽になれるかもしれない。
淡い希望に縋り、思いを託すことほどばかばかしいことはないのかもしれない。
でも、それでも……それだけはできない。
諦めることは今までの士道の……自分自身のしてきた行いを否定することになるのだ。
いつかのあの日、自分はあの精霊に胸を張って答えることができなかった。
士道は……自分は弱い、そんなことは百も承知のことだ。
(――仮にむくの力を封印したとして、むくは本当に、ここにいるよりも安全に暮らせるのか?今までうぬが救ったという精霊たちは、敵に一度も襲われなかったのか?)
あの時ほど図星を突かれ、自分の無力さを呪ったことはな
い。
しかしその時とは別に、士道は『自分自身』に諭されたの
だ。
(――「俺」は○○を、どうしたいんだ?)
あの時、誓ったのだ「俺」自身に、自分の思いだけは曲げな
いように……。
たとえ遊びの話だとしても精霊たちの手前だ、自分だけは諦めるわけにはいかない。
「さあ、そろそろ観念したらどうなの?士道」
「……いや、まだだ、勝負は終わってないぞ、琴里」
不敵な笑みを浮かべる琴里に向かって、士道は挑戦的な顔を持って応じる。
「往生際が悪いね~少年?」
「たとえ負けることになったとしても、最後まであがいて見せるさ」
「うむ、行こうではないか、シドー!」
「かっかっか……その通りよ、何を勝った気になっておる。勝負はまだまだこれからよ、さあ!眷属たちよ、しょぼくれている暇はないぞ!」
「は、はい!」
『最後まで頑張っちゃおっか、四糸乃!』
士気は上々、物語のクライマックスは近い、士道チームの最後の反撃が始まる……。
どうだったでしょうか?そろそろゲーム自体も佳境を迎えてますね。私自身も佳境を迎えているのはまた別の機会にでも…
この話を書ききったら次は完全オリジナルの小説を書くか、もしくは精霊一人一人のルートを順番に書けたらいいかなと考えております。デアラは大好きな作品ですのでw
まずはこの短編を確実に書き上げたいと考えておりますので、まだしばしお付き合いくださいな。