デート・ア・ワン・デイ   作:上原 桜

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精霊たちとある少年の一幕ここに完結です
はたして勝負のゆくへは、士道の貞操は守られるのか


五河フェイリヤ6

作戦自体は変わっていない、十香が折紙を抑え、士道と耶倶矢がより多くの点を取る。四糸乃は現状維持だ。

「喰らうがいい!我が進化した必殺技! 真(しん) 翔(ドゥンケル)乱(ハイト・)闇黒(ヴィント)旋風弾(ホーゼ)ぇぇぇ!」

 耶倶矢が投げたボールは見事に全てのピンを弾く。

「せぇあああ!」

 十香の投げるボールも轟音、轟風と共に全てのピンを粉砕する。

「うっおぉぉぉ!」

 士道が放ったボールも同様に見事に全てのピンを弾く。

 四糸乃はストライクは取れないながらもスペアや高得点を連発し、チームに貢献している。

「……まずいわね」

「そうですね~もう気の抜ける状況じゃないですよ~?」

「さすが少年、すさまじい主人公補正だね!」

 二亜がすがすがしい笑顔で何か言っている……主人公補正?ナニソレオイシイノ?

「警戒。こちらもギアを上げましょう、マスター折紙」

「問題ない、たとえ追いつかれても人数差で押しつぶせる。でも気は抜かないで」

 折紙チームの精霊たちが首肯する。

 ゲームは大詰め、9投目、10投目を残すだけとなった。

 その地点で士道チームと折紙チームの間には数ピン程度の差しかなかった。

「これなら……追いつける!」

 士道は自身を落ち着かせようと声を出す。

 しかし9投目、焦った士道は汗で手元が狂いボールは2投とも中心を大きく外してしまった。

「ぐっ……!」

「何やってんのよ!士道!」

「し、士道さん……」

『うひゃあーまずいよ士道くん?』

 背後から悲痛なみんなの声が届く。士道は頬に汗を垂らした。

「すまんみんな……」

「気にするなシドー!最後の一回が残っているぞ!」

他のメンバーの奮闘のおかげで、実際のところそこまで点差の開きは大きくなってはいなかった。

「最後の投球ですべてが決まる……士道の貞操も」

「……この状況でまだボケるのか…」

「私はいつだって本気」

「そいつはありがとよ……」

 軽く言葉を交わしつつお互いのチームメンバーが最後の投球に移る。

 折紙チーム、そして士道以外のメンバーが投げ終える――残すは一人、全員が固唾を飲んで見守る中、士道の手からボールが投じられた――

「ありがとう。十香……」

 小さなつぶやきを残しボールは全てのピンを倒すのだった。

 

 

「かぁー!負けちゃったかー」

 夕暮れの中を精霊たちと歩いていると、不意に二亜が伸びをしながら言った。

「実際ぎりぎりだったけどな、みんなのおかげだ」

 士道が言うと四糸乃は照れくさそうにうつむいていた。

「うむ!しかしシドーも見事なすとらいくだったぞ!」

「まっ士道にしては頑張ったんじゃないの」

 みんなが口々に士道を称賛する。

「それでだーりんは一体私たちにどんな命令をするのですか?」

 美九がにこにこしながら尋ねてくる……怖い。

「無難に晩御飯の手伝いとかかな、今日はこれだけ人数がいるし大変だからな」

「健全な士道が命令するのなんてその程度だと思ってはいたけど、なんだか味気ないわね」

 琴里がため息とともにつぶやく。

「同意。もっと過激なものを所望します」

「具体的には子づく……」

 途中まで言ったところで折紙が琴里に羽交い締めにされていた。

 「あはは……これでいいのさ、みんなでいる時間が俺には何よりも大切だからさ」

 そう言って士道はゆっくりと帰路を進む。

 その誇らしそうな後ろ姿を見て精霊たちはみな一様に納得するのである――あぁ……五河士道という少年はこうなのだと、だからこそそばにいて心地いいのだと。

「さて!ならみんな買い出しを済ませてさっさと帰るわよ!」

 琴里の号令を皮切りに精霊たちは商店街へと向かうのであった……。

 

 

 これはある少年と特別な少女たちの何でもない一幕。

 




ようやく書き上げました。
これにてこの物語は終了となります。
単純にここまで時間がかかったのはリアルの影響、心境です。
アニメ デート・アライブ3期制作が決まったということで戻ってきました。
原作も佳境を迎えていますね。
まだまだ広がるデアラの世界に愛をこめて…

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