怪物祭。
年に1回開かれる【ガネーシャ・ファミリア】のどでかい祭り。
ダンジョンから引っ張ってきたモンスターを調教するらしい。
モンスターを町に連れてくるってことに興味が引かれ向かうことにした。
時刻は9時を過ぎ、普段は冒険者がダンジョンに潜る時間帯に東のメインストリートは大勢の人で賑わっている。
その人集りに儲けようと多くの出店が通りに沿って並び、歩いていると美味しそうな匂いが伝わってくる。
そして、この人の流れは都市の東端にある格闘場にまで続いていた。
そんな群集を見下すように、銀の双眸が高い位置から地上を見ていた。
待ち人を待つ暇つぶし。そう思って眺めていたのだけど目に映ってしまった。
見た瞬間に魅了され、目を奪われ、見惚れてしまった。
そう、偶然、たまたま視界の中を走り抜けた君に釘付けになってしまった。別に強くも賢くもない、頼りがいもないでもそんな彼は誰よりも透き通っていて、綺麗で美しく、私が一度も見たこと無い色だった。
手に入れたい彼を、私の手に。何でもいい、彼がどんなになろうが私を求めるようになればそれでいい。
「ねぇ、オッタル。だめかしら」
「仰せのままに」
オラリア最強の男は異論なく忠義を示す。怒りを懐に抑え、神フレイヤの指示に従う。
「できたわ」
「おおぉー!?」
作業姿のヘファイストスから厳重なケースを渡され、ヘスティアは歓喜する。
「でも本当、【神の力】にこんな抜け道があるなんて僕は驚いたよ」
厳重な蓋を開けてヘスティアは中身を確認する。
白銀の鞘収めてある、白銀の直剣。
全身が透き通る様になっていて、時折照明の光を強く反射させる。
約2日かけて作り出されたベルの武器にはヘファイストスと文字が刻まれている。
「そうだ!この武器の名前はどうするんだいヘファイストス!?なんだったら僕がつけていいかなぁ!ボクとベル君の愛の結晶ってことで『ラブソード』とか!」
「あんたの煩悩しか浮かばないわね。名前はつけないよ、その武器の名は貴方の子供に見つけてもらうわ。でもとりあえずは無銘って読んであげて」
無銘?とヘスティアは繰り返す。
「神名を思い出すまでの仮の名前よ」
そう言われヘスティアは居ても立ってもいられなくなり素早く部屋の扉へ直行した。
「絶対に言うんじゃないよー!!!」
振り返らずに手をぱたぱたと手を振り返し、そのままヘファイストスの店を後にした。
-----早くこれをベル君に渡したい
あの子がどう喜んでくれるか考えるだけで僕は幸せの気分になれる。ヘスティアはだらしなく頬を緩ませ路上の真ん中で顔をとろけさせた。
通りすがる人から変な目で見られ冷静になったらヘスティアは北西メインストリートを進み無難にホームでベルの帰りを待つかダンジョンに迎えに行くか思案する。プレゼントを一刻も早く渡してやりたいのだが肝心のベル君の所在が分からないためどうしようもない。この時間帯なら恐らくはダンジョンの筈だろうけど…。
「ん!?ははぁん、なるほど!」
暫く悩んででいたヘスティアだったが、通りかかった店頭のチラシを見てニヤリと笑顔になり、したり顔をつくる。
チラシには怪物祭のプログラムが記載されていた。
「今日は年に一度のお祭り…都市に来たばかりのベル君が興味を持たないわけがないっ!!」
ベル君の行動なんてお見通しさ!と自信を発揮して祭りへと赴くことにした。
「へーい、タクシー!」
小柄の体をジャンプで弾ませ小さな手を一生懸命に広げる。
通りを進んでいた青年がそれに気づき馬車をヘスティアの正面で止めた。
彼女は車両に乗り込むと「格闘場まで!早くお願い!」と行き先を告げる。
「承りましたよ。お目当ては怪物祭ですか、女神様?」
「まぁね!」
軽く馬の革を鞭が叩く音が鳴り馬車が動き出した。
青年は要望通り早くつくために人通りが多い道を避け、格闘場に向かう。
「あちゃ~、すいません女神様、ここからは進めれないみたいです」
順調に進んでいた馬車が動きを止めた。東のメインストリートに近づいた所で人の密度が増え馬車の通れる道がなくなってしまった。
「そっか、ならここまでいいよ運転手君。ありがとう!」
「いえいえ、申しわけございません。そこの裏道を通れはメインストリートには楽にたどり着けると思んで!お代は100ヴァリスになります」
財布から全てのお金を景気よく渡してヘスティアは捨て台詞を吐く。
「釣りはいらないぜ。残りは君へのチップだ!」
そのまま機嫌よく駆け出したヘスティアは青年の「ピッタリなんですけど…」の言葉は聞き取れなかった。
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