後半キャラ崩壊注意です。
「司令官、寝てるの?」
音を立てないようそっと執務室の扉を開け、そう呟いてみた。しかし、返事はない。
それもそのはず、私の目の前で、司令官は机の上に突っ伏して寝ているのだから。
分かってはいたが、念のため声に出して確認してみた。
私は司令官の方へできるだけ静かに歩み寄りつつ、彼について考える。
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昨日も、仕事を手伝おうという私の提案を却下し、私を早くに仕事から解放した一方、彼は一人夜遅くまで執務室に残って―――
もう少し、こちらへ向ける気遣いを自分へ向けて欲しい。でないと、きっと、倒れてしまう。
彼が申し出を断ったのは一度や二度ではない。前回秘書艦を任された時も、そうだった。
きっと私以外が秘書艦をやっている時もそうなのだろう。いや、そうなのだ、と吹雪が言っていた。
そう、私は、
司令官が倒れてしまわないか、それに―――
私たちを頼ってくれないことが、まるで、彼が私たちを、私を、不要だと―――
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そこまで考え、私は、ナーバスになり過ぎた、と思った。
そんな考えの人間が、一駆逐艦でしかない私の練度を最大近くまで上げるだろうか。
他の駆逐艦の子の練度も。
彼は、皆に平等に優しい。だからこそ、心配になるのだ。口には出せないけれど。
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私が執務室へ朝早くから来たのは、そんな司令官の様子を確認すること。
決して、司令官の寝顔を拝みに来たわけではない。
以前一度だけ寝顔を見ていつもの凛々しい雰囲気とは打って変わって可愛らしいな、なんて感想を持ったことはないし昨日の様子からするとこうして寝落ちしてしまっているだろうとか考えたから来たわけでもないしあまつさえ寝ている司令官の頬や唇を指でつついたりなぞってみたりできるかもなんて思ってないしそれにそれに―――
閑話休題。私は一体誰に弁明していたのだろうか。
しかし、特に異常はなさそうなのでほっとした。
安心したので、つい司令官の顔を観察してしまった。
男性に会う機会が少ない立場であるが、それによる色眼鏡を差し引いてもここの司令官の顔は整っているのではないだろうか。世間一般の男性よりも。多分。
それ故に、彼と結ばれたい―――カッコカリ、ではなく―――そんな風に考える艦娘はこの鎮守府に多い。自分もその一人だが。
勿論、顔だけではない。私たちのことを考えて怒り、悲しみ、優しくしてくれるところも素晴らしいし、女性の関心を少なからず惹くであろうルックスでありながら女性耐性に欠けるところは母性をくすぐってやまないし、というかなんでこんなに寝顔がかわいらしく見えるのとかほっぺやわらかそうさわりたいさわっていいよねはあはあ―――
「っ!?」
そんなことを考えていたら気づかぬうちに私の顔は司令官の顔の近くまで寄ってきていた。
まずい、離れなければと思い、慌てた私は机に手をぶつけ、音を立ててしまった。
当然、そんなことをしたら司令官は起きてしまい―――
「ぅん…?誰か「いやあああああああっ!?」ぶふっ!?」
私は思わず彼の頬を思い切りひっぱたき、全速力で執務室から出てきてしまった。
走りながら、ごめんなさい、と心の中で彼に謝った。
今度は、口に出して言えるようにしよう。この謝罪も、私の抱えるこの気持ちも。
タイトル、サブタイともに提督(司令官)の文字が入っているのに一言しかしゃべらないとは一体…
ごめんなさい、あってないような提督のバックボーンを決めたいだけのお話でした。
そのためには黙っていてくれたほうが個人的にやりやすかったのです…
というか前半はあんなに暗い感じになるとは思いませんでした。
この鎮守府の提督はルックスはイケメン、多方面に万能な超有能(描写できてないけど)、しかし女性関係はてんでだめだめな男性です。そんな人いないよって?そうです…ほとんどいないです…
フィクションなのでやりたい放題です。許してくだち。
叢雲は大幅にキャラを崩壊させていないつもりなのですがどうでしょうか。
個人的な叢雲像は
「司令官大好き、駆逐艦の平均的な恋愛観よりは少し上をいくおませさんで、司令官の前だとツンツン、皆の前でもツンツン(ばれてる)、誰もいないところだと司令官への愛をひとり呟いてしまう」
です。要はこのお話の叢雲です。かわいい
イメージが少しでも伝わる文章が書けたらいいなあと思っております。
ちなみに叢雲を選んだのは私の初期艦だからです。
こんな感じで続けられたらなあ(不定期ですが)、と思っています。よろしくお願いします。