あとちょっと長めです(当社比)。
前回のあれよりはましです…多分。
ある日の執務中の事。
雨は止むことなく、しとしとと降り続いている。
透き通るような青い空を、ここ数日、見ていないような気がする。
梅雨の季節に入ってからというもの、我が鎮守府は開店休業状態である。
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いつかの通り、基本的な方針として、雨天時は出撃しない、としている為だ。
それに。
そういう日には、深海棲艦の活動も落ち着くのだ。何故かは分からない。
深海棲艦も、雨に濡れたくないのだろうか―――
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―――いや、深海に棲む彼女ら?が、そんな事を厭うはずもないか。
そんな、少し頓珍漢な事を考えていると。
「司令官さん、お疲れ様です」
秘書艦の鳥海がコーヒーを持って来てくれた。
「ありがとう、鳥海」
「いえ……今日も、雨ですね」
「そうだね……仕事が少ないのは、良いんだけど…」
それはそれで手持ち無沙汰で、なんだかそわそわしてしまう。仕事に毒されているのだろうか。
「梅雨の季節は、少し落ち着きます。……司令官さんは、どうですか?」
「こうしてゆったりと過ごせるのは良いよね。…仕事柄、あまり大っぴらには言えないけど」
「ふふ。たまには、良いのではないでしょうか」
「…鳥海に言われると、なんだかおかしいな」
「むっ。それ、どういう意味ですか、司令官さん?」
「ち、違っ……いつも真面目な鳥海に、そう言われると、ね」
あまり気を抜いたところを見せないから、鬱憤が溜まっていないかと心配してしまう。
「…たまには、羽目を外しても良いんだよ?君も」
「うふふ。司令官さんは、私をそんな風に見ているのですね…」
「ごめんごめん。心配し過ぎだよね」
艦隊や艦娘のデータの収集や管理を得意とする彼女。それならば、自己管理もお手の物、なのかもしれない。
…どうやら、僕の杞憂だったようだ―――
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―――で終わるはずだったんだけど。
「でも、司令官さんを心配させるのは忍びないので…」
「えっ、大丈夫だよ?別に―――」
「時間もそんなに掛からないですし、今ここで証明しますね…♡」
先程までの様子とは遠くかけ離れた、妖しげな雰囲気を漂わせ、蠱惑的な笑みを浮かべる鳥海。
…一瞬で変わり過ぎじゃない?―――などと、まるで明後日の方向に思考を飛ばしてみたり。
というか、最近の彼女たちの様子からすると、この流れはなんだかまずい気が―――
一人混乱している僕を尻目に、彼女はそのまま距離を縮めて来る。
「な、なんで近づいて来るのかな…?」
「ふふ…司令官さぁん…♡」
聞いているのか、いないのか。混乱から怯え始めた僕の質問を意にも介さず、どんどん寄ってくる。
「ひっ」
ついに僕の座る椅子の肘掛けに手をつき、こちらへずいっと顔を近づける鳥海。
表情をぴくりとも変えない彼女に、情けない事ながら恐怖した僕は、思わず背中を反らせ、顔を背けてしまった。
「司令官さぁん…?なんで逃げようとするんですか…?」
「だ、だって…」
君が寄ってくるからだよっ!?…と強気に言う事が出来ないのが、僕の悪い癖なんだろうなぁ…
異常事態過ぎていきなり自己分析を始め、勝手に反省する僕。謎行動である。
落ち着け、僕。どうすれば、この状況から抜け出せる…?
と、考える間もなく。
「もう……こうなったら…えいっ♡」
「うわっ!?」
肩を掴まれ、無理矢理椅子に座り直すことになってしまった。
顔は背けたままにする。今見る訳にはいかないっ…
「むぅ…それでも私を見てくれないんですね…」
悲しげな声で言われると決意が揺らぐ…
だが…それでも!顔を前に向ける訳にはいかない…絶対にっ!
しかし。
「強情なんですから…でもっ」
ぐいっ。
「ぎゃあっ、痛い痛いいっ!?」
現実は非情である。
決意空しく、頭を掴まれ、無理矢理前を向くことに。良い子は真似しちゃだめなやつ。たぶん。
「ふふ。漸く私を見てくれましたね。…尤も、こうすれば良い事は既に調査済みでしたが。私の計算通りだったわ♡」
全然計算してないじゃん…力づくだったじゃん……ていうか今漸くっていったよねっ!まったく計算通りじゃないよそれっ!
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閑話休題。…しかし、これはまずい…
「…どこを見ているんですか?司令官さん♡」
「っ…ごめん」
先程まで僕が頑なにこうしたくなかったのは、これが理由。
目のやり場に困るのだ。
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僕の股の間に膝をつき、上から見下ろされる形になっているため、
目線を上げれば、彼女の端整な顔が間近に見える。
特徴的な赤っぽい黒目を持つ瞳に、思わず吸い込まれそうな感じがして。
眼鏡越しにも、彼女の強い意志のようなものが伝わってくる気がした。
じっと見つめられる事に気が付き、気恥ずかしくなって目線を下げれば、彼女の発育の良い体が嫌でも目に入る。
彼女の制服は露出度が多い。
胸元は大きく開いていて、谷間が強調されている。
だというのに、腕や足は細く引き締まっていて。
彼女の滑らかな、白い肌がむき出しになっているのは目に毒だし―――
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「大丈夫ですよ…?司令官さんなら、どこを見てもらっても…♡」
「っ…僕をからかわないでよ、鳥海っ」
「あら…♡司令官さん、拗ねちゃいましたか…」
そんな声で言われてももう騙されないぞ…
今度こそ、ここから抜け出す方法を―――
「司令官さん…♡食べちゃいたいくらい可愛いです…♡」
「ひいっ!」
耳元で囁かれたため、考えることは出来なかった。
が、すぐに顔を離してくれたので、安堵した……のも束の間。
「顔を真っ赤にして恥ずかしがっているのも、とっても可愛い…♡」
がしっ。
「わっ!鳥海、肩を掴まないでよ!」
「大丈夫です…♡痛い事はしませんから…♡」
ほんとに何する気なのっ!?力強すぎっ、逃げられないし…
そして。
「……少しだけ、私の我儘にお付き合いください、司令官さん……」
そんな言葉が、小さく聞こえた気がしたが。
そのまま、鳥海は顔を僕に近づけて―――
「よっ!提督、邪魔するぜええぇぇっ!?鳥海、何やってんだよっ!?」
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少女説教中…
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結果、突然来訪した摩耶によって、この場は収まった…多分。
鳥海は摩耶に散々怒られていた。
…ちなみに。その間、僕は正座させられていた。…何故だ。
「はぁ…ほんとに何やってんだよ、鳥海…」
「私の計算では…こんな事あり得ない…!」
「反省しろよお前っ!?」
鳥海って、意外とポンコツなのか……?
「まぁまぁ、摩耶、そこまでに―――」
「提督!お前もだよ!」
「ひっ!」
「お前はあたし達に甘すぎんだよっ!分かってんのか!?」
そんな事もない…つもりなんだけど…なぁ……
「……つーか、びしっと断ってくれよ…寂しいじゃんかよぅ……」
「……?なんか言った、摩耶?」
小さな声で、何か呟いたようだったが。
「な、なんでもねぇよっ!」
「……?」
どうやら気のせいのようだった。
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ひとしきり怒られたので、ずっと気になっていた質問をしてみた。
「ところで摩耶、なんで執務室に?」
「おっと、そうだ!忘れるとこだったぜ…」
まぁ、扉を開けてすぐあんなのを見たら、ねぇ……
「鳥海、飯食いに行こうぜ!」
あぁ、もうそんな時間になっていたのか。濃い数時間だった……
「分かったわ、摩耶。…それでは、本日の執務はここまでという事に―――」
「……ああ、勿論なるさ。行ってきていいよ、鳥海」
言いたい事は色々あったが、大体摩耶が言ってくれたのでまあいいか、という気分だ。
あと、凄い疲れたので正直休みたい気持ちの方が強い。
「お心遣い、ありがとうございます」
「おっし、じゃあ行くか!」
そう言って楽しそうに執務室を出ていく摩耶。姉妹仲が良いようで何よりだ。
「あっ、待ってよ摩耶……そうだ…!司令官さん」
何かを思い出したのか、不意に立ち止まり、こちらに振り向く鳥海。
「ん、何かあった?」
「先程は本当に失礼しました」
そう言ってお辞儀を一つ。うん。それは摩耶に怒られている時に既に聞いたけど……?
「……それと―――」
彼女は僕の耳元に顔を寄せて一言―――
「―――今度は、もっと積極的に来てくださいね?司令官さん…♡」
と、言って離れて行き。
「それでは、今度こそ失礼します。…また明日、です」
そして、何事もなかったかのように執務室を後にした。
今のは、どう捉えれば良いんだ、鳥海…?
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「はぁ……疲れた……」
本当に疲れた。色々あり過ぎて整理が追い付かない。
どうでもいいけど、皆切り替えが早くないか?
あんな事して平気でご飯食べに行けるのか……
まぁ、僕も若干影響され始めている節はあるが。
「体、持つかなぁ……」
窓の外、どんよりと空を覆う雨雲をぼんやりと眺めながら、これから彼女とどう接すれば良いのか、考える事にした―――
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「ふふ…司令官さん、可愛かったなぁ…」
そう呟いて、思わずにやけてしまう。
きっと今、鏡を見たなら、自分の顔はさぞ気持ち悪い事になっているだろう。
青葉に頼んで写真を撮ってもらいたかったな、あの照れ顔。
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しかし、事は予想以上に私の思い通りになった。
それもこれも、彼を
青葉を買収―――もとい、彼女に頼み込み、この鎮守府の至る所―――勿論、彼の自室にも―――にカメラを設置し、
時間があれば、逐一映像を確認し続け、彼の好みや行動、及び反応を研究し尽くし、計算に計算を重ねた。
それに彼は以前、兵学校の出身と言っていた―――
それらから得られた情報を基に導き出されたのは。
―――女性慣れしていない彼への誘惑は、積極的に接触していくのが最も効果的である―――
という結果。
こんな事をしているなんて、自分でも呆れてしまう。
正直、誰かからこんな話を聞かされたら笑ってしまうだろう。
だが、そんな思いよりも、彼への恋慕の情の方が強いのだ。
誰に何と言われようとも、この気持ちは、誰にも止められない―――
―――はずだったのだが。
彼を愛する
もしも、私の気持ちが知られてしまったのなら―――そんな事は万に一つもあり得ないが―――必ず、私を阻むであろう者だらけだ、とその時思った。
この間なんて、彼が眠っているのを良い事に、接吻までしようとする輩を確認した。
―――未遂であったが。
私の姉―――尤も、双子の姉のようなものだが―――摩耶の事も頭を過る。
彼女も、彼の事を愛していて。分かりづらいし、彼もそんな事とは露程も思っていないようだが。
このままではまずい、と柄にもなく焦り、計画の実行を早めてしまったのが今回の敗因の一つだ。
まあ、印象付けには成功したようだが。
しかし、このままでは何も変わらない。
どうすれば、彼を手に入れられるのか。
―――こうなったらあいつらを消すしか―――
「っ……」
そこまで考え、恐ろしい事を考えている自分に激しく憎悪した。
仲間を手に掛けてしまえば、後には戻れない。彼の元へも、戻れないというのに。
何より、そこに自らの姉を巻き込んだ事に。
焦り過ぎだ。落ち着け、私。
幸い、まだ直接的な行動に出た者は少ない。
私にも、チャンスはまだまだある―――
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「おーい!鳥海、置いてっちまうぞ、早くしろー!」
その時、私を呼ぶ摩耶の声が聞こえ、私は我に返った。
走って、彼女の元まで向かう。
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「…ごめんね、摩耶。ちょっと考え事してて……」
「…今日のお前、なんからしくないぞ?…どうかしたのか?」
「ううん、なんでもないわ」
「…そっか」
「さっ、行きましょう?」
「そうだな!今日は何にすっかなぁ~」
どうもお久しぶりです。
忘れ去られてはいないでしょうか。
久々の更新がこんなにもどぎつい内容で、しかも長大作(当社比)ですみません。
私の趣味です(
(あと何度か大幅に内容を変更したため矛盾などが存在するかもしれません。気になった場合はご一報を)
ですが、人選には理由があります。
私の嫁艦(候補)
というのもありますが(嫁に候補がいる時点で大分私は屑)、もう一つあります。
それは。
鳥海の二次創作があまりにも少なすぎる、という事っ…!
立ち絵の時点であんなにえっちいのになーんでこんなに少ないんですかね。特にss。
私的にはもっと人気が出ても良いと思うのです。
鳥海ちゃんに計算尽くで誘惑されたい。美人局的なあれ。
と言う訳で、何が言いたいかと申しますと。
これを読んでくださった皆様に、鳥海メインのssを書いてもらいたいんです。
本当にお願いします。私が自分で書かなくても良いようなのをお待ちしています。はい。
話は変わって。
私の作品では伝わりにくいかもしれませんが、鳥海ちゃんの良さは、
計算通り見つけた→突撃→即中大破→私の計算ではこんなのあり得ない
のドジっ娘要素にあるはずです。可愛い。一発大破でも許される可愛さ。
あと眼鏡。改装前だと分かってもらいづらい事が多いのは非常に残念。
それとおへそ…っていうかお腹。触ってみたいだけの人生だった。
黒髪ロングなのもポイント高いですよね。梳いてあげたいだけの(ry
摩耶様ですか?
……書きたい事は沢山ありますが、彼女メインのお話までとっておきます。
ただ、一つ言えるのは。
ヤン(キー)デレ可愛い。
以上、後書きはここまでになります。ここまで読んでくださった方、お付き合いありがとうございました。