鈍感な提督と艦娘たち   作:東方の提督

14 / 19
ヤマなしオチなし。
夏のある日のお話です。





提督と朧

「暑いなぁ……」

 

―――澄み渡るような青い空。まさに、快晴という単語がぴったりの空である。

日光を遮る煩わしい雲は、一つも浮かんでおらず―――

 

 

暑すぎる。

 

 

僕は今、鎮守府近くのとある海岸へとやって来ている。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

職務上、普段あまり外出する事のない僕が、何故そんなところにいるのか。

 

ご存知の通り、現在我々は深海棲艦と日々死闘を繰り広げている。

一時はその戦力に押されていたが、最近は深海棲艦の根城を壊滅させる事に成功した。

それが功を奏しているのか、いないのか。

彼女たちが近海まで接近する事は、滅多に無くなって。

その数も、ある程度減っている。

そんな訳で、一般市民が日常生活を送るのに、差し支えはなくなりつつあるのだった。

(勿論、貿易面等完全に回復したとは言い切れないところもあるが)

そして、そんな市民たちは、段々と娯楽を求め始め―――

 

長々と話してしまったが、要するに。

 

深海棲艦の出現後、暫くの間閉鎖されていた海水浴場が、ここ最近解禁されたのだった。

 

勿論数は限られているし、『周辺の鎮守府が海水浴場周辺の海の索敵を行う事』等条件がある。

が、市民が知る由もないため、ここでは詳細な説明を割愛する。

 

……そんなこんなで、夏の暑いこの時期。その暑さを乗り切るためだろうか、この海岸も多くの人で賑わっている。

 

そして、僕は今。

 

上からは、焼き付くような強烈な日光。

下からは、白い砂浜から照り返される日光。

 

この炎天下で、海岸周辺―――主に陸地―――の警備に当たっているのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

日よけの一つでも持ってくるべきだったな。

 

判断を誤った事を少し後悔しつつ、問題がなさそうか確認して回る事にした。

暑いからといって、職務の手を抜くわけにはいかないしな。

 

 

-------------------------------

 

 

「ありがとうございましたー」

 

にこやかに手を振り、去っていく親子連れに、会釈した。

……何故、僕が声をかける人は必ず女性なのか。そして、何故いつも一悶着あるのか……

 

 

先程のお子さん(勿論女の子)には、溺れかけていたところを助けたお礼に、と頬にキスをされてしまった。

その前には確か、怪我をしたという女性を医務室へ連れて行ったところ、お礼に遊びに行こうと誘われたのだったか。

仕舞いには、何故か僕に絡んでくるグループもいただろうか。やたらとべったり近寄ってくるため、身の危険を感じていた。

(曰く、見た目と反応のギャップが可愛いとか)

……何か裏があるような気がしたし、第一仕事中なのでお断りしたのだが。

 

 

どっと疲れたため、どこかで休憩しようかと思案していたところ―――

 

ふと。

 

 

「あっ、提督!」

 

 

どこかからそんな声が聞こえたので、その主を探す事にした。

 

辺りを見回して―――おや、あそこで手を振っている娘が。

あれは―――

 

 

-------------------------------

 

 

海岸の端の方。人も少なく、少し開けたところで、無邪気に手を振っていたのは朧。

そうそう。彼女たち第七駆逐隊は今日、休暇だったはず。

 

「楽しそうで何よりだよ」

 

「はい!来てよかったです、提督!」

 

そう言って、はにかむ彼女の傍らには砂の城。

自信作ですよっ、とは彼女の弁。その顔は、どこか満足気だ。

 

「朧、この季節大好きなんです!それに―――」

 

ちょっと待っててくださいね、と砂の城をがさごそ。

 

そして。

 

「ほら!カニさんも嬉しそうでしょ?」

 

朧がこちらに手を差し出してきた。その上には、カニさん。

元気さをアピールするように、右手(彼ら?の場合は脚か)を上げて爪を動かす。

 

しゃきんしゃきん。

 

そんな音が聞こえてきそうでした。ちょっと怖い。

 

 

-------------------------------

 

 

二人で他愛のないお喋りをしていると。

 

「……ところで、提督?」

 

いきなり、もじもじとし始めた朧。

暫くして、意を決したかのように一言。

 

「あのっ!……朧の水着、似合っていますか……?」

 

休日、という事もあってか、いつものセーラー服ではない。

淡い緑のビキニ―――と呼ぶのだろうか、あまり詳しくないけれど―――を身に着けている。

……彼女は緑が好きなのか。覚えておこう。

 

「ああ、似合ってるよ。朧らしくていいと思う」

 

「……可愛い、ですか……?」

 

「うん、可愛いよ?」

 

僕がそう素直に感想を述べてみる。

すると。

 

「~~~~~っ!?」

 

急激に耳まで赤くなってしまった。

 

「顔赤いけど、大丈夫?……まさか、熱中症とか―――」

 

この暑さなので、やはり心配だ。

……と思ったのだけど。

 

「……はぁ……」

 

呆れた、と言わんばかりにため息を一つ。

顔の赤みもなくなっている。どうやら杞憂だったようだ。

 

「いえ、朧は大丈夫ですっ。心配いりませんっ」

 

なんだかご機嫌斜めなご様子。

また何か間違った事を言ってしまったのか、僕は……

 

 

-------------------------------

 

 

不甲斐なさに自己嫌悪しながら、ふと気が付いた事を口にする。

 

「あっ、そうだ……朧、七駆の他の子たちはどうしたの?」

 

僕が見かける時はいつも一緒に行動している第七駆逐隊。

が、今日、朧は一人でいるから、先程から違和感があったのだ。

 

「そういえば……帰ってくるの遅いですね」

 

聞けば、昼食を買いに海の家へと向かったそうな。

大分前に出かけたようだが、連絡はないという。

……彼女たちが戻ってきていない事に今まで気づかなかったとは、朧は意外とマイペースなのか……?

 

「ちょっと心配だな。探しに行ってくる」

 

みんな可愛い娘たちだし、変な奴らに絡まれてなければいいんだけど。

よし、そうと決まれば早速行動しよう―――と立ち上がると、朧も腰を浮かせた。

 

「あ、朧も―――」

 

七駆の中でも真面目な彼女だ。僕と探しに行くつもりなのだろうが―――

 

「いや、君は残っていて。もし何事もなく帰ってきた時、誰もいないと困るだろうからね」

 

「……そうですね。では、朧はここでお待ちしております!」

 

物分かりが良くて助かった。……さて、ぐずぐずしていても仕方がない。

 

「すぐ戻るから!」

 

 

彼女にそう言い残し、僕は喧騒の中へと戻るのだった。

 

 

 

 

 




珍しく季節ネタでした。いかがでしたかね。

個人的な目標として、『夏イベ開始前までに投稿する』というものがあったのですが、
思い切り遅刻しました。ダメダメですね。

今回は七駆の朧さんです。
ボイス可愛いですよね。人気がそれほど高くないのが疑問です。
私のよく見るサイトやSNSが偏っているせいなのか。

ちなみに前後編であります。こちらが前編という事になっています。
後編は七駆のあの娘メインの予定です。あと一人なので分かるとは思うのですが。
イベント期間に必ず投稿します。本当ですよ?

どうでもいい予定としてもう一つ。
私の大好きな艦娘に水着グラが実装された事が嬉しすぎた為、記念に書きます。
こちらもイベ期間には。多分。

今回は以上です。お付き合いありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。