鈍感な提督と艦娘たち   作:東方の提督

15 / 19
いつも通りです。

ちなみにこちら、後編となっております。
前編(朧回)から読むとお話が分かりやすいかもしれません。


提督と漣

仕事で鎮守府近くの海水浴場に来ていた僕。

そこで偶然、朧に出会ったのだけど……

彼女の妹達―――曙、漣、潮―――が行方不明になってしまった。

 

以上、三文で分かる状況説明でした。

 

 

……などとふざけている場合ではない。

 

彼女たち駆逐艦はまだ子供。暴漢に襲われていないとも限らない。……あの子たち、可愛いし。

 

……と考えて、ふと、自分がいささか過保護すぎるのではないか、と思った。

が、常に最悪の事態を想定するのは悪い事ではない……よね?

 

はぁ……何もないと良いんだけどなぁ……

 

 

 

そんな訳で、朧に聞いた通り、海の家のある辺りまで来たのだけど。

 

見つからない。

 

店員さんや周囲のお客さんに聞いて回ってみた。

しかし、皆一様に首を横に振る。

結局、小一時間粘ってみたが、めぼしい収穫はなかった。

ごく普通の水着の小学生(実際には違うけど)について聞いているのだから、記憶になくて当然ではあるが。

 

 

弱ったな……早くも足取りが途絶えてしまった。これではお手上げだ―――

 

 

そう思った時だった。

 

 

-------------------------------

 

 

―――時は少し遡り―――

 

 

 

「ご飯キタコレ!しかも中々おいしそうじゃないですかぁ~!」

 

「漣、うるさいわよ」

 

諸君、私は帰ってきた!……えっ、ここでは初めてだろうって?まぁまぁ、そうつれない事を言わないで。

と言う訳で、ここからは稀代の美少女、この漣が―――って、こうでもない?

 

とと、話が脱線しちゃいましたねっ。

 

今、漣たちはお昼ご飯を無事ゲットしたところ、なんですよ。

熱心に砂の城を作っていたおぼろんを一人残し、七駆の3人で買い出しですっ!

 

「これがほんとの()()()()ってね!」

 

ダジャレウマー!ふひひ、これは会心の一撃でしょ!

って思ったんだけど。

 

「やかましいわ!しかもあんまり()()くないわよっ!」

 

ぐぬぬ……ぼのぼのは厳しいなぁ……ん?

 

「……あぁ!ぼのぼの、今のダジャレ?」

 

「あ~っもう!私が何言ってるのか分かんないみたいな反応やめてよ漣っ!ていうかダジャレじゃないわよっ!」

 

いやぁ~、ぼのぼのは面白いですなぁ。

って、めっちゃおこですやん!逃げるんだよぉ~!

 

「ちょ、ちょっと落ち着いて二人とも~っ!?」

 

えへへ……結局、うっしーに仲裁してもらって事なきを得たんですけどね。

なお、ぼのぼのにはこってり絞られた模様。

 

 

-------------------------------

 

 

「まったく、あんな恥ずかしい目に遭うなんて……っ」

 

口では文句ばっかり言ってるけど、ぼのぼのは何だかんだで律儀なんだよねぇ……

……そこが、いいとこなんですけどね。

 

……ふふ、時折真面目で心優しい美少女感をアピールするっ……!これは漣的にポイント高い。

 

「ねぇねぇ、早く食べよっ!はよ!はよ!」

 

「あんたは少し反省しなさいよっ!?」

 

ちっちっちっ。甘い、甘すぎますよ曙さぁん……

この切り替えの早さが漣様の真骨頂なのです!

 

 

アッハイ、反省します。

 

「ふふふ。まだ食べちゃだめだよ、漣ちゃん?ちゃんと朧ちゃんのところに戻ってから―――」

 

「ガーン!漣はそんな食いしん坊じゃないよっ!?」

 

ショーック!ぼのぼのじゃなくてうっしーに言われたのがまた一段とショックっ!

 

「どっちかって言うと、漣の日頃の行いが悪いせいじゃないの?」

 

むむむ、その印象は心外ですなぁ。

 

「ははは、そんな事ある訳ないじゃないですかぁ~。やだなぁ、もう!ね、うっしー?」

 

まったく、ぼのぼのってば……鎮守府内で最も品行方正(自称)である漣の日頃の行いが、悪いはずなど……

 

「あはは……」

 

応答せよっ、応答せよ潮ー!

 

「あとそのあだ名、センスないからやめた方が良いわよ」

 

「ぐふっ」

 

そこに特に理由の無い(言葉の)暴力が瀕死の漣を襲う―――!!

 

「あ、曙ちゃん!……違っ、違うんだよ漣ちゃんっ!?決してちょっとうざいとか思った事なんてないんだよ!?……あっ」

 

「潮……あんた……」

 

ついげきの潮の(フォローにならない)フォローでさらにダメージは加速した

 

やめて!漣のライフはとっくにゼロよ!もう勝負ついてるから!

 

「ふふふ…たとえここで私が倒れようとも、いずれ第2第3の漣が―――」

 

しかーし、そんな事でへこたれる漣ではないわっ!

い、いつか私の存在の偉大さがっ……

 

「置いてくわよ」

「ごめんなさい待ってください」

 

 

-------------------------------

 

 

なんやかんやありまして、おぼろんを残してきたところまで戻ろうとしたんですけどね。

 

「痛ってぇ!」

 

「ひゃっ!……ご、ごめんなさい。大丈夫ですか?」

 

うっしーが男の人にぶつかっちゃったんです。

……金髪にサングラス。あとめちゃくちゃアクセサリーをじゃらじゃらを付けてる。

よくいるアゲアゲな感じの。言っちゃ悪いけど、面倒そうな人ネ。

 

「ったく、どこ見て歩いて―――おっ」

 

この間改二になってから、ちょっと自分に自信を持ち始めたうっしーだけど、まだ男の人(あ、ご主人様以外ね?)は苦手そうだしなぁ……ああいう人なら尚更。

 

とか考えてたら、あの男の人、こけたうっしーに手を差し伸べて―――

 

「こーんな可愛い子に出会えるなんて、お兄さんラッキー♪」

 

「きゃっ―――」

 

「ぶつかっちゃってごめんね。痛くない?」

 

「ひっ、ひゃい、大丈夫でしゅ」

 

「そ、そう?……あ、そうだ」

 

返事に何故か戸惑った男の人。

多分、絵に描いたような(喋ってるんだけどね)噛み噛みの返事だったからかな。

おーい、そこの人。別に狙ってやってる訳じゃないと思うよ。素だよ、素。

 

気を取り直して、男の人も絵に描いたように、何か閃いたような素振り―――漫画によくあるでしょ?頭の上に電球が描かれてそうなポーズ―――をして。

 

「お茶しに行かない?お詫びってことでさ、代金は俺が払うから、ね?」

 

「ふ、ふぇっ!?あ、あの―――」

 

「ちょ、ちょっと!何勝手に話進めてんのよ!潮から離れなさいよ!」

 

ハッ!

 

流れるようにナンパする、その手法―――漣でなきゃ見逃しちゃうね(一敗)

いや~、惚れ惚れするね~。痺れるね~。全然会話に入り込めなかったよ。

 

この人を見て思った。

……ご主人様もこのくらい積極的になれば、もっと女ウケすると思うのに―――

 

……いや、やっぱダメ。漣たちの手から離れちゃうかもしれないしね。

それに、ご主人様が積極的に女の子に話しかけに行くのとか、あんまり想像できないよね。

 

っと、いけないいけない。話を戻すよ。

まぁ、ぼのぼのがつっかかってるし、暫く眺めてましょうかねぇ。

 

「何だよ、邪魔しないで―――おっ」

 

ふっふっふ。やっぱり面食いは惹かれるよね。

綾波型、ひいては特型駆逐艦、さらに言えば艦娘になる子は、みんな可愛い子ばっかだもんねぇ。

勿論、ぼのぼのだってそうだしね。なお、性格は痛いいたいごめんなさいゆるして

 

「ふふ、君も可愛いねぇ……でも」

 

おおーっと!ここで顔から目線が少し下がりましたね~。

これは……あっ

 

「……?……なっ」

 

おっと、気付いたようですね。

 

さすがのぼのぼのも、これにはお冠ですわぁ。

えっ、チョイスが古い?何のことやら。

 

「どこ見てんのよ変態!」

 

「やっぱおにーさん、こっちの子の方が良いや♪」

 

「は、離してくださぃぃ……」

 

……まぁ、正直同性から見てもムラm―――んんっ、羨ましいよね。

 

お姉ちゃんがある程度大きいのはまぁ、受け入れられるんだけどね?

……()()()()()が、漣たちのなかで()()()()()んだよね。

 

くやしいのうwwwくやしいのう……

 

「もうあったまきた!いい加減に―――」

 

って、そんな事考えてる場合じゃねぇ!

 

さっきの反応が気に食わなかったのか、ぼのぼのが掴みかかろうとしてる。

待って待って、流石に手を出されたら勝てっこないし、ちょとsYレならんしょこれは・・?

 

ああっ、誰かこの場を収めてくれる人は―――

 

その時だった。

 

 

-------------------------------

 

 

「曙!」

 

って、この状況は何なんだ。

 

ちょっと人だかりが出来てたから、パトロールってことで見に来たら、曙たちだった。

ここまでは良いんだけど。

潮は見知らぬ男に抱っこされてるし、その男に曙が殴りかかろうとしてるし……

 

取り敢えず、三人を引き離して、ちょっとお話しようと思ったんだけど。

 

「ご主人様っ!」

 

横から誰かにタックルされた。……ん?ご主人様って―――

ぶつかられた方に顔を向ける。

 

「さ、漣っ?その呼び方は、外ではやめ―――」

 

「えへへっ。漣たち、ご主人様の事をずぅっと、お待ちしてたんですよ?」

 

聞いてもらえてないっ!?外でその呼び方は―――ああっ、周囲の方々の目が徐々に冷たくなってきてる!

 

と、ここで。

 

「!―――あ、ありがとう」

 

どうやら、彼女には何か考えがあることがわかった。

 

いつもよりわざとらしく―――いつも狙ってやってるんだろうけど―――話しかけて来るし。

その距離も、いつもより近いから、何となく察することが出来た。

 

取り敢えず、その策に乗っかるとしよう。

 

「……ほら、ぼのぼのもうっしーも!……」

 

「……はぁ!?なんでそんな事……」

 

「ふぇっ!?……恥ずかしいからやめようよぅ……」

 

……何か小声で言い争っているが、本当に大丈夫だろうか。

 

「ううっ……でもでもっ……よしっ!」

 

と、いきなり潮が気合を入れたかと思えば。

こちらへとてとて、と近寄って来て。

 

「あ、あの!ご、ご主人様!」

 

深呼吸を一つして。

 

「潮、怖かったです~っ!」

 

「ちょ」

 

頬を真っ赤に染めて、半泣きで思い切り抱きついて来る潮。

……その後ろで、男性が項垂れている。

 

「ご、ごめんね潮。あ、あのさ、ちょっと離れてくれると嬉しいな。あと、声が大きい―――」

 

冷ややかな目線が背中に突き刺さっているような気がするから!

 

「ね、ねぇ!」

 

さらに、そこに追い打ちをかけるように。

 

「……寂しかったんだからね。―――ご、ご主人様っ……」

 

曙が、いつになく顔を真っ赤にして、そっと腕に抱きついてきた。

 

「んっふっふ~」

 

そして、何故か満足げな漣。ここまでする必要はなかったよねっ!?

 

「ん、んんっ!……兎に角、そういう事ですのでっ!失礼します!」

 

真夏だというのに何故か冷汗が止まらない。

いたたまれなくなった僕は、最初の目的をすっかり忘れて、その場を後にした。

 

 

-------------------------------

 

 

「まったくもう、漣ってば……」

 

「はっはっは、済まんな」

 

反省の色なし。別に良いんだけどさ。

 

結局、この子たちに話を聞いて、何となく内容を察した訳だけども。

 

「まぁ、間に合ってよかったよ」

 

その一言に尽きる。何かしたり、されたりした後では遅いからね。

……間に合ったかどうかは内緒にしておこう。無事みたいだしね。

 

「あ、ところでご主人様?」

 

と、唐突に漣が。

 

「結局、誰の『ご主人様』が一番グッと来たんですかねっ?」

 

爆弾を投下した。

せっかく忘れてもらえそうだった話題を、蒸し返された……っ

 

「ああ、それ気になるわね。……散々恥ずかしい思いしたんだし、クソ提督も―――」

 

しかも、普段止めてくれる側の曙もノリノリだし!

頼みの綱の潮も―――

 

「うぅ……やめようよ二人ともぉ……」

 

口ではそう言っているが、実は気になる、と言わんばかりに目がこちらにチラチラ。

 

「ふへへへへ……さぁ!さぁ!」

 

 

ねぇ、その笑い方怖いよ!ちょっと待って!にじり寄って来ないで―――!

 

 

 

-------------------------------

 

-------------------------------

 

 

 

「提督と曙たち、遅いなぁ……あっ」

 

よそ見をしていたら城が少し崩れてしまった。

 

「……作りなおそ」

 

はぁ……お腹空いたなぁ……

 

 

 

 

 




今回はいかがでしたでしょうか。ちゃんと間に合ってよかったです。

曙のツンデレばかりあげられるイメージですが、漣も中々ツンデレ―――というか、素直じゃない子、だと思うのです。
ムードメーカーとして振る舞おう、と明確に考えて行動していそうで。
一歩引いたところから傍観していたいのかもしれない―――そんな勝手なイメージを抱きつつ、書いてみました。
……ぶっちゃけ、そこまで考えているのかもよく分からないですけどね(

ご主人様呼びも他の子にない特徴ですよね。
可愛い子にご主人様呼びしてもらいたかっただけの人生だった。
メイド喫茶に行く度胸はないんですけどね。

スラングもいくつか鏤めてみました。貴方はいくつ分かるかな?

次のお話は多分短め……だと思います。
夏イベが終了するまでには投稿するつもりでいます。ご期待ください。

それでは、これにて失礼します。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。