ちなみにこちら、後編となっております。
前編(朧回)から読むとお話が分かりやすいかもしれません。
仕事で鎮守府近くの海水浴場に来ていた僕。
そこで偶然、朧に出会ったのだけど……
彼女の妹達―――曙、漣、潮―――が行方不明になってしまった。
以上、三文で分かる状況説明でした。
……などとふざけている場合ではない。
彼女たち駆逐艦はまだ子供。暴漢に襲われていないとも限らない。……あの子たち、可愛いし。
……と考えて、ふと、自分がいささか過保護すぎるのではないか、と思った。
が、常に最悪の事態を想定するのは悪い事ではない……よね?
はぁ……何もないと良いんだけどなぁ……
そんな訳で、朧に聞いた通り、海の家のある辺りまで来たのだけど。
見つからない。
店員さんや周囲のお客さんに聞いて回ってみた。
しかし、皆一様に首を横に振る。
結局、小一時間粘ってみたが、めぼしい収穫はなかった。
ごく普通の水着の小学生(実際には違うけど)について聞いているのだから、記憶になくて当然ではあるが。
弱ったな……早くも足取りが途絶えてしまった。これではお手上げだ―――
そう思った時だった。
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―――時は少し遡り―――
「ご飯キタコレ!しかも中々おいしそうじゃないですかぁ~!」
「漣、うるさいわよ」
諸君、私は帰ってきた!……えっ、ここでは初めてだろうって?まぁまぁ、そうつれない事を言わないで。
と言う訳で、ここからは稀代の美少女、この漣が―――って、こうでもない?
とと、話が脱線しちゃいましたねっ。
今、漣たちはお昼ご飯を無事ゲットしたところ、なんですよ。
熱心に砂の城を作っていたおぼろんを一人残し、七駆の3人で買い出しですっ!
「これがほんとの
ダジャレウマー!ふひひ、これは会心の一撃でしょ!
って思ったんだけど。
「やかましいわ!しかもあんまり
ぐぬぬ……ぼのぼのは厳しいなぁ……ん?
「……あぁ!ぼのぼの、今のダジャレ?」
「あ~っもう!私が何言ってるのか分かんないみたいな反応やめてよ漣っ!ていうかダジャレじゃないわよっ!」
いやぁ~、ぼのぼのは面白いですなぁ。
って、めっちゃおこですやん!逃げるんだよぉ~!
「ちょ、ちょっと落ち着いて二人とも~っ!?」
えへへ……結局、うっしーに仲裁してもらって事なきを得たんですけどね。
なお、ぼのぼのにはこってり絞られた模様。
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「まったく、あんな恥ずかしい目に遭うなんて……っ」
口では文句ばっかり言ってるけど、ぼのぼのは何だかんだで律儀なんだよねぇ……
……そこが、いいとこなんですけどね。
……ふふ、時折真面目で心優しい美少女感をアピールするっ……!これは漣的にポイント高い。
「ねぇねぇ、早く食べよっ!はよ!はよ!」
「あんたは少し反省しなさいよっ!?」
ちっちっちっ。甘い、甘すぎますよ曙さぁん……
この切り替えの早さが漣様の真骨頂なのです!
アッハイ、反省します。
「ふふふ。まだ食べちゃだめだよ、漣ちゃん?ちゃんと朧ちゃんのところに戻ってから―――」
「ガーン!漣はそんな食いしん坊じゃないよっ!?」
ショーック!ぼのぼのじゃなくてうっしーに言われたのがまた一段とショックっ!
「どっちかって言うと、漣の日頃の行いが悪いせいじゃないの?」
むむむ、その印象は心外ですなぁ。
「ははは、そんな事ある訳ないじゃないですかぁ~。やだなぁ、もう!ね、うっしー?」
まったく、ぼのぼのってば……鎮守府内で最も品行方正(自称)である漣の日頃の行いが、悪いはずなど……
「あはは……」
応答せよっ、応答せよ潮ー!
「あとそのあだ名、センスないからやめた方が良いわよ」
「ぐふっ」
そこに特に理由の無い(言葉の)暴力が瀕死の漣を襲う―――!!
「あ、曙ちゃん!……違っ、違うんだよ漣ちゃんっ!?決してちょっとうざいとか思った事なんてないんだよ!?……あっ」
「潮……あんた……」
ついげきの潮の(フォローにならない)フォローでさらにダメージは加速した
やめて!漣のライフはとっくにゼロよ!もう勝負ついてるから!
「ふふふ…たとえここで私が倒れようとも、いずれ第2第3の漣が―――」
しかーし、そんな事でへこたれる漣ではないわっ!
い、いつか私の存在の偉大さがっ……
「置いてくわよ」
「ごめんなさい待ってください」
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なんやかんやありまして、おぼろんを残してきたところまで戻ろうとしたんですけどね。
「痛ってぇ!」
「ひゃっ!……ご、ごめんなさい。大丈夫ですか?」
うっしーが男の人にぶつかっちゃったんです。
……金髪にサングラス。あとめちゃくちゃアクセサリーをじゃらじゃらを付けてる。
よくいるアゲアゲな感じの。言っちゃ悪いけど、面倒そうな人ネ。
「ったく、どこ見て歩いて―――おっ」
この間改二になってから、ちょっと自分に自信を持ち始めたうっしーだけど、まだ男の人(あ、ご主人様以外ね?)は苦手そうだしなぁ……ああいう人なら尚更。
とか考えてたら、あの男の人、こけたうっしーに手を差し伸べて―――
「こーんな可愛い子に出会えるなんて、お兄さんラッキー♪」
「きゃっ―――」
「ぶつかっちゃってごめんね。痛くない?」
「ひっ、ひゃい、大丈夫でしゅ」
「そ、そう?……あ、そうだ」
返事に何故か戸惑った男の人。
多分、絵に描いたような(喋ってるんだけどね)噛み噛みの返事だったからかな。
おーい、そこの人。別に狙ってやってる訳じゃないと思うよ。素だよ、素。
気を取り直して、男の人も絵に描いたように、何か閃いたような素振り―――漫画によくあるでしょ?頭の上に電球が描かれてそうなポーズ―――をして。
「お茶しに行かない?お詫びってことでさ、代金は俺が払うから、ね?」
「ふ、ふぇっ!?あ、あの―――」
「ちょ、ちょっと!何勝手に話進めてんのよ!潮から離れなさいよ!」
ハッ!
流れるようにナンパする、その手法―――漣でなきゃ見逃しちゃうね(一敗)
いや~、惚れ惚れするね~。痺れるね~。全然会話に入り込めなかったよ。
この人を見て思った。
……ご主人様もこのくらい積極的になれば、もっと女ウケすると思うのに―――
……いや、やっぱダメ。漣たちの手から離れちゃうかもしれないしね。
それに、ご主人様が積極的に女の子に話しかけに行くのとか、あんまり想像できないよね。
っと、いけないいけない。話を戻すよ。
まぁ、ぼのぼのがつっかかってるし、暫く眺めてましょうかねぇ。
「何だよ、邪魔しないで―――おっ」
ふっふっふ。やっぱり面食いは惹かれるよね。
綾波型、ひいては特型駆逐艦、さらに言えば艦娘になる子は、みんな可愛い子ばっかだもんねぇ。
勿論、ぼのぼのだってそうだしね。なお、性格は痛いいたいごめんなさいゆるして
「ふふ、君も可愛いねぇ……でも」
おおーっと!ここで顔から目線が少し下がりましたね~。
これは……あっ
「……?……なっ」
おっと、気付いたようですね。
さすがのぼのぼのも、これにはお冠ですわぁ。
えっ、チョイスが古い?何のことやら。
「どこ見てんのよ変態!」
「やっぱおにーさん、こっちの子の方が良いや♪」
「は、離してくださぃぃ……」
……まぁ、正直同性から見てもムラm―――んんっ、羨ましいよね。
お姉ちゃんがある程度大きいのはまぁ、受け入れられるんだけどね?
……
くやしいのうwwwくやしいのう……
「もうあったまきた!いい加減に―――」
って、そんな事考えてる場合じゃねぇ!
さっきの反応が気に食わなかったのか、ぼのぼのが掴みかかろうとしてる。
待って待って、流石に手を出されたら勝てっこないし、ちょとsYレならんしょこれは・・?
ああっ、誰かこの場を収めてくれる人は―――
その時だった。
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「曙!」
って、この状況は何なんだ。
ちょっと人だかりが出来てたから、パトロールってことで見に来たら、曙たちだった。
ここまでは良いんだけど。
潮は見知らぬ男に抱っこされてるし、その男に曙が殴りかかろうとしてるし……
取り敢えず、三人を引き離して、ちょっとお話しようと思ったんだけど。
「ご主人様っ!」
横から誰かにタックルされた。……ん?ご主人様って―――
ぶつかられた方に顔を向ける。
「さ、漣っ?その呼び方は、外ではやめ―――」
「えへへっ。漣たち、ご主人様の事をずぅっと、お待ちしてたんですよ?」
聞いてもらえてないっ!?外でその呼び方は―――ああっ、周囲の方々の目が徐々に冷たくなってきてる!
と、ここで。
「!―――あ、ありがとう」
どうやら、彼女には何か考えがあることがわかった。
いつもよりわざとらしく―――いつも狙ってやってるんだろうけど―――話しかけて来るし。
その距離も、いつもより近いから、何となく察することが出来た。
取り敢えず、その策に乗っかるとしよう。
「……ほら、ぼのぼのもうっしーも!……」
「……はぁ!?なんでそんな事……」
「ふぇっ!?……恥ずかしいからやめようよぅ……」
……何か小声で言い争っているが、本当に大丈夫だろうか。
「ううっ……でもでもっ……よしっ!」
と、いきなり潮が気合を入れたかと思えば。
こちらへとてとて、と近寄って来て。
「あ、あの!ご、ご主人様!」
深呼吸を一つして。
「潮、怖かったです~っ!」
「ちょ」
頬を真っ赤に染めて、半泣きで思い切り抱きついて来る潮。
……その後ろで、男性が項垂れている。
「ご、ごめんね潮。あ、あのさ、ちょっと離れてくれると嬉しいな。あと、声が大きい―――」
冷ややかな目線が背中に突き刺さっているような気がするから!
「ね、ねぇ!」
さらに、そこに追い打ちをかけるように。
「……寂しかったんだからね。―――ご、ご主人様っ……」
曙が、いつになく顔を真っ赤にして、そっと腕に抱きついてきた。
「んっふっふ~」
そして、何故か満足げな漣。ここまでする必要はなかったよねっ!?
「ん、んんっ!……兎に角、そういう事ですのでっ!失礼します!」
真夏だというのに何故か冷汗が止まらない。
いたたまれなくなった僕は、最初の目的をすっかり忘れて、その場を後にした。
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「まったくもう、漣ってば……」
「はっはっは、済まんな」
反省の色なし。別に良いんだけどさ。
結局、この子たちに話を聞いて、何となく内容を察した訳だけども。
「まぁ、間に合ってよかったよ」
その一言に尽きる。何かしたり、されたりした後では遅いからね。
……間に合ったかどうかは内緒にしておこう。無事みたいだしね。
「あ、ところでご主人様?」
と、唐突に漣が。
「結局、誰の『ご主人様』が一番グッと来たんですかねっ?」
爆弾を投下した。
せっかく忘れてもらえそうだった話題を、蒸し返された……っ
「ああ、それ気になるわね。……散々恥ずかしい思いしたんだし、クソ提督も―――」
しかも、普段止めてくれる側の曙もノリノリだし!
頼みの綱の潮も―――
「うぅ……やめようよ二人ともぉ……」
口ではそう言っているが、実は気になる、と言わんばかりに目がこちらにチラチラ。
「ふへへへへ……さぁ!さぁ!」
ねぇ、その笑い方怖いよ!ちょっと待って!にじり寄って来ないで―――!
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「提督と曙たち、遅いなぁ……あっ」
よそ見をしていたら城が少し崩れてしまった。
「……作りなおそ」
はぁ……お腹空いたなぁ……
今回はいかがでしたでしょうか。ちゃんと間に合ってよかったです。
曙のツンデレばかりあげられるイメージですが、漣も中々ツンデレ―――というか、素直じゃない子、だと思うのです。
ムードメーカーとして振る舞おう、と明確に考えて行動していそうで。
一歩引いたところから傍観していたいのかもしれない―――そんな勝手なイメージを抱きつつ、書いてみました。
……ぶっちゃけ、そこまで考えているのかもよく分からないですけどね(
ご主人様呼びも他の子にない特徴ですよね。
可愛い子にご主人様呼びしてもらいたかっただけの人生だった。
メイド喫茶に行く度胸はないんですけどね。
スラングもいくつか鏤めてみました。貴方はいくつ分かるかな?
次のお話は多分短め……だと思います。
夏イベが終了するまでには投稿するつもりでいます。ご期待ください。
それでは、これにて失礼します。