鈍感な提督と艦娘たち   作:東方の提督

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榛名改二水着グラ実装記念作
大していつもと変わりませんが。

4/18追記
こっそりと続きを付け加えました。




提督と榛名

「提督っ!」

 

始まりはいつも突然。

 

「おっ―――榛名か?どうしたの、そんなに慌てて?」

 

この日も、それは例外ではなかった。

珍しく慌てている様子の榛名が、執務室に飛び込むように入ってきて。

 

普段、落ち着いていて真面目な榛名。

それだけに、何か急を要する事態があったのか、と身構えたのだけど―――

 

「えっと、そのぉ……」

 

これまた珍しく、歯切れが悪い。

 

落ち着かないのだろうか。

手は忙しなく彼方此方と彷徨い、目も泳いでいる。

 

「……榛名?大丈夫?」

 

「は、はいっ!榛名は大丈夫です!」

 

「そ、そう?……いつも頑張ってくれてるから、心配でね」

 

そんなに気張らずにやってくれて良いんだけど。

そう伝えたところ―――

 

「……!……お心遣い、ありがとうございます。……って、そうではなく!」

 

が、どうやら、期待していた言葉では無かったようだ。

首をかしげてみせると。

 

「あっ、いえっ!本当に、榛名には勿体ないお言葉なのですがっ、その……っ」

 

「……大丈夫。落ち着いてから、話してくれて良いんだよ?」

 

「……!……では、少しだけっ」

 

束の間の静けさ。

 

暫くして。

意を決したのか、息を深く吸い込んで、こう言った。

 

「は、榛名と、海に行きませんかっ!?」

 

 

 

 

 

僕の頭上には、燦々と輝く太陽。

その光を反射して、煌めく青い海。白い砂浜。

 

「……来てしまった」

 

あまりに衝撃的だったのか、どうしてこうなったのか覚えていない。

いつの間にか、僕は海パン一丁に着替えていた。

 

そこに。

 

「提督っ、お待たせ致しました!」

 

榛名がやってきた。

上は白いパーカーを羽織っており、下はパレオというのか、同じく白い腰布が巻かれている。

 

「いや、大して待ってないから。大丈夫」

 

「そうですかっ。……ところで―――」

 

そう言うと、たたたっ、と僕の数歩前へと回り込み。

 

「この水着、榛名に似合っているでしょうか?」

 

パーカーのチャックを下ろし、少し恥ずかし気に見せてきた。

 

先程までは見えなかった、やはり同じ白色のビキニが姿を現す。

胸の間には大きなリボンがあしらわれており、とても可愛らしいと思う。

 

「ああ、似合ってると思う。可愛いよ?」

 

「……っ、その言葉は反則です、提督っ……♡」

 

色も榛名らしい、白。純粋無垢な彼女にとても似合っていると思う。

……しかし、リボンに目が行くと、それ以外のところにも目が移ってしまう訳で―――

 

「……?提督、どうかしましたか?」

 

「……っ!何でもないよ。……さ、ビーチまで行くんだろう?着直して、ね?」

 

その白い肌が日に焼けてしまうのは、少し勿体ない気がして。

それに、このままでは目に毒だし。前を閉めてもらう。

 

 

「むぅ……榛名は、別にどこを見てもらっても……」

 

 

小声で何か言っているが、それでもこんな些細な事であっても、僕の言う事に従ってくれて―――

素直で、優しい子だ。

 

くれぐれも頼り過ぎないようにしなければ。

そう、固く心に誓った。

 

「えいっ。……うふふ、今日は楽しみましょうね、提督♪」

 

そんな事を考えている間に、着直してきてくれたのであろう、榛名が僕の腕に抱きついた。

 

うっ……やっぱり、パーカーを着ていても―――

 

 

 

 

 

「―――うん、これで、よしっと」

 

良い感じに準備できたね、うん。

 

「ふふ、お疲れ様でした。……榛名にも、お手伝いさせて下さっても―――」

 

「いやいや。いつもお世話になってるんだし、これぐらいの事は任せてよ」

 

作業自体も、パラソル刺して、椅子置いてぐらいだし……大したことは無かったからね。

 

「そんな……榛名には―――」

 

「待った。それだと終わらなくなっちゃうから、お互い様って事にしない?」

 

「―――!……ありがとうございます、提督♡」

 

ううっ、本当に健気で良い子だ。つくづく、僕には勿体ないと思うよ。うん。

……僕が頑張る事で、少しは恩返し出来ていればいいんだけど。

 

 

「それじゃあ榛名、何しようか?」

 

「はい!そうですね……」

 

うんうん、と口元に手を当て、可愛らしく唸る榛名。

何とも微笑ましい光景だなぁ……

 

悩む事十数秒。

 

「やっぱり、せっかく海に来たんですから、取り敢えず海に入ってみましょう!」

 

そんな『取り敢えずビール!』みたいなノリで良いのだろうか。良いか。

 

「そうと決まればっ、いざ―――あっ!」

 

「―――もしかして、日焼け止め?」

 

「そうですっ!」

 

すっかり忘れてました、と榛名。

 

「私の考えている事が見抜けるなんてっ……榛名、感激です!」

 

「あ、あはは……」

 

そんな大層なもんじゃないんです……

なんだか騙しているようで申し訳なくなる。いや、騙してるようなものか。

ごめんね、榛名。

 

そんな事を考えているとは露とも思っていないんだろう。

榛名は変わらぬ笑顔で―――

 

「それでは提督、いつものように塗っていただけますか?」

 

 

 

 

 

「へっ?」

 

予想外の言葉に、思わず変な声が出てしまった。恥ずかしい。

 

「……て、提督?」

 

しかし、当の本人はどこもおかしなところに気付いていないようで。

寧ろ、『その反応は何?』と言わんばかりに首をかしげている。

……あ、あれ?もしかして、おかしいのは僕だったのか―――

 

「……はっ!」

 

あっ、気付いたみたい。

 

「ぁぁあのですねっ!今のは違うと言いますかっ、えっと、その―――」

 

だ、だよね!あー良かった。……いや待て、全然良くない。

 

「お、落ち着いて榛名!ちょっとびっくりしただけだから―――!」

 

これなんてデジャヴ?

 

 

「それで、なんであんな事を……?」

 

「ええっと、ですね……」

 

「私、お姉様方や霧島と海水浴に来る時、日焼け止めはお互いに塗りあっているので……」

 

その時の勢いで、つい言ってしまったというところか。

……その状況に、出くわしてみたいような、そうでもないような。

 

「うぅぅ……でもでも……」

 

僕としてはよく分かったんだけど―――

榛名はまだ、何か思うところがあるのか、小声で何か呟いている。

 

暫くして。

 

「やっぱり、お願いしてもいいですか……?」

 

「はっ!?」

 

また変な声が出てしまった。

 

「ど、どうして、かな……?」

 

「えっと……自分ですると、塗り残しができちゃいそうですし……」

 

「……」

 

「あ、あとっ!背中とか、ちょっと届かないところとかありそうですし……」

 

「う……」

 

「うぅ……そんなに、榛名に触れるのは、嫌ですか……?」

 

「!……分かった、やるよ……別に、触るのは嫌じゃないし、ね」

 

傷つけてしまわないか、とか色々思うところがあるだけで。

そう伝えると。

 

「やったっ!提督、ありがとうございます!」

 

とても嬉しそうにそう言うものだから。

そこまで深く悩む事もないのかも、と思った。

 

 

 

 

 

「えへへっ。それじゃあ、お願いしますねっ」

 

ビーチチェアにうつ伏せで横たわる榛名。

なんとも、絵になるというか……

 

気を取り直して。

 

「じゃ、じゃあ……いくよ?」

 

「ふふ。……優しく、してくださいね?」

 

手に日焼け止めを乗せ、そっと背中に触れる。

 

「ひゃっ」

 

「!……ごめん、冷たかったかな?」

 

「い、いえっ!榛名は、大丈夫ですっ」

 

「そ、そう……?」

 

 

「―――あっ…………あんっ……」

 

 

「…………んんっ………ふぅっ…………」

 

 

「………ひぁっ…………ふぁぁぁっ……♡」

 

 

……日焼け止めを塗っているだけなのに、何故そんな艶めかしい声を上げるのか。

……なんだか、変な気分になってしまう。

 

「……ねぇ、榛名っ?大丈夫?」

 

「ひんっ!?……あっ♡……提督ぅ……?」

 

「ほんとに大丈夫なのっ!?」

 

「あんっ♡……はるなはぁ……だいじょぶれすよぉ……?」

 

「えへへぇ……提督ぅ、とってもお上手でしたぁ……♡」

 

「お、おう」

 

「お上手なのれぇ……このままぁ……前もお願いしてもい―――」

「流石に前は自分でやって欲しいなっ!?」

 

そこまで僕がやるのは、ちょっとまずい気がする。

 

「ちょ、ちょっとトイレ行ってくるから!」

 

身の危険を感じ、この場から離れることにした。

 

「あっ……♡……提督の、いくじなしぃ……」

 

 

 

 

 

気を取り直して、小休止から戻った僕は、榛名と束の間の夏休みを満喫する事にした。

 

 

例えば、ビーチバレー(っぽいもの?)。

 

 

二人でやるには無理がないか、と言ってはみたのだが。

 

「やっぱり、浜辺でやるものと言えば、ビーチバレーではないでしょうか!」

 

キラキラした目で訴えかけられたので、無碍にも出来ず。

 

……まぁ、断る理由もないし。

彼女が楽しめるのなら、それもいいか、と思った。

 

 

そんな彼女が、どこからか取り出したのは、ビニール製の小さ目なボール。

 

「提督、行きますよ!……それっ!」

 

元気な声と共に、高々と投げ上げて―――

 

 

ばんっ。

 

 

「……榛名は強いなぁ……」

 

「あっ、えとっ…………榛名、張り切り過ぎました……」

 

耳まで真っ赤に染めて、縮こまる彼女の傍らには、すっかりしぼんでしまったボールが。

 

……なんと声をかけようか。

 

 

 

例えば、泳ぎの練習。

 

 

「―――泳げない?」

 

「はい……お恥ずかしながら……」

 

 

普段、海で活動しているのだから―――と言いかけて。

 

そう言えば、彼女たちが海上を移動する時は、水面を滑るように―――艤装によるものなのだが―――して行くのを思い出し、泳ぎの上手下手は関係ない、という当然のことに気が付いた。

潜水艦の子たちのように潜ることもないため、尚更度外視されるものだろう。

実際、僕は考えた事もなかった。

 

 

彼女曰く。

万が一、艤装が外れてしまった時、パニックにならないようにするため―――だそうだ。

 

 

という訳で。

 

「うぅっ、やっぱり、ちょっと怖いですっ……」

 

ゴーグルを装備した榛名。

ちょっと珍しい姿だ。

 

「手を握ってあげるから、取り敢えず水に顔をつけてみようか?」

 

どのくらい泳げないのか、まずは様子を見てみる事に。

 

流石に、泳ぎもしなければ大丈夫だろう。

寧ろ怒られるかな、と思ったのだが。

 

「……榛名、参りますっ」

 

そんな大袈裟な。

 

彼女は思い切り息を吸い込むと、

 

 

ばちゃんっ。

 

 

豪快に顔を水面に打ち付ける。

 

 

ぶくぶく。

 

 

大丈夫なのだろうか……

そう思った数秒後。

 

 

ざばんっ。

 

 

「ぷはっ!」

 

 

むにゅっ。

 

 

「や、やっぱり榛名には無理ですぅっ!?」

 

……やはりか。ちょっと予想はしていた。

涙目で僕に必死にしがみつく榛名を、その柔らかい感触に悩まされながら、慰めるのだった。

 

 

例えば、買い食い。

 

 

泳ぎの練習はまた後程。プールでやろう、という結論で落ち着いた。あちらの方が波も比較的穏やかだし。

 

激しい運動をしたせいか―――と言っても榛名だけなのだが―――

 

「次は何をしましょうか、提督っ?」

 

「うーん、そうだな……」

 

くぅぅぅ……

 

「っ?!…………」

 

腹の虫が可愛らしく鳴いた。

 

僕ではないし、きっと(というか絶対)彼女から、なのだろうけど……

耳まで赤くなっているあたり、とても恥ずかしいと思っているはずだ。

 

それもそうか。上司に、それも異性に聞かれるのは誰でも恥ずかしい。

 

……よし、ここはひとつ―――

 

「あーお腹が空いたなー」

 

「?……どうなさったのですか?」

 

我ながら酷い棒読みである。

榛名が困惑するのも納得だな。……はぁ。

 

「んんっ。という訳でだ、榛名くん。お昼にしないか?」

 

「え、えぇ。榛名もお供しますっ!」

 

おかしなテンションで押し切ってしまったが、無事に昼食へ誘うことに成功。

 

……珍しく察しが良いからお気づきの方もいるだろう。

一連のやり取り、大体熊野女史の教えに因るものである。

本当に、熊野様々だ……彼女には頭が上がらない。

 

という話も決して口外してはならない、と口を酸っぱくして言い付けられているため、榛名には内緒だ。

 

しかし、慣れないことはしない方が良いなあ……まだ、顔が熱い。

彼女にバレていなければいいのだが

 

 

 

「あっちに海の家が並んでいるのが見えたんだ、行こう!」

 

 

そう言って、私の手を引いてくださる提督。

 

その顔は、珍しく紅潮していて。

 

先程も、いつもはなさらないような言動でしたし……

 

まさか体調を崩されて―――とも考えましたが。

 

……いつからおかしくなったか、省みればすぐに分かりました。

 

 

「……ありがとうございます、提督っ♡」

 

「ん、賑やかだから聞き取れなかったけど……何か言ったかい?」

 

「いいえ、なんでもありません!……さ、行きましょう?売り切れてしまうかもしれません!」

 

「そうだね、急ごうか!」

 

「はい!」

 

榛名はとっても、果報者ですっ!

 

 

 

 

 

「いやー、遊び倒したね……」

 

もう陽が暮れる。

こんな時間まで遊んでいたなんて……

正直、現役軍人でなければ倒れていたかもしれない。

 

「はい、榛名もヘトヘトです……」

 

「ふふ、まだここから帰り道が残ってるんだけどな?」

 

「ううっ、提督は意地悪ですぅ……」

 

あとで帰りに誰かを呼ぼう。流石に疲れた。

 

「……楽しかったかい?」

 

「……はいっ」

 

「……またいつか、必ず来よう―――」

 

「……はいっ!」

 

 

()()()()!」

 

 

「……むぅ」

 

「あ、あれ?何か間違った?」

 

「いーえっ。……冗談でも、()()()()って言って欲しかったですけど……」

 

「えっ、なんだって?」

 

「なんでもありませんっ!意地悪な提督には教えませんからっ!」

 

「そんなー!?」

 

結局この問答は、陽が落ちかけ、迎えが来るまで続いたのだった。

何を言ったか教えてもらえるのは、もう少し先のこと―――




という訳で、今回は榛名でした。めちゃめちゃ可愛い。
艦これを始めた理由も、この子を広告で見かけたからなんです。

よく腹黒属性を付けられがちですが、榛名はガチであんな性格してて欲しい。
まぁ、腹黒でも別に問題はありませんが。可愛いは正義です。

待望の水着ですよ、水着!とっても嬉しかったです。
榛名っぽくて良くないですか、白。

贅沢は言わないから、榛名と付き合いたかった……
とかいう贅沢。

4/18追記
ラノベやss(学園モノ)によくあるイメージの海水浴。

ラストは夕陽をバックに語り合う……そんな印象が私にはあるのですが、
昼前からそんな時間までいたら体力が持たないよ?
とか考えながら書いていました。ちなみに私は途中で干からびます。

ラノベ主人公には人並み以上の体力が必要。あとコミュ力も。
そう考えると、案外主人公やるのは大変そうです。
やれやれ系が多いのも、実は本当に疲れているからなのかも。

というよく分からない後書きでごめんなさい。
時間空いたのに付け足しただけでごめんなさい。

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