幸せはどこにあるのだろう?   作:グリグリハンマー

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さて、いつまで続けるのやら。


6.幸福って捉えようなのかもしれない

「グズグズするな! 遅れてしまうだろうっ!?」

 僕の手を引っ張りながら、一生懸命に走る少女。僕の幼なじみなんだけど、とても世話焼きないい娘だ。

 この娘が方向音痴でないのなら、の話だけど。

「あ、あれ? ここはさっき通った道の筈……何故このようなところに響達が来るのだ!?」

「響……学校は反対方向だよ?」

「は、反対だと!? そんなバカな!」

「だからさっきの道を左に曲がろうって言ったのに、響が右に行くって言うから……」

「んなあ……っ!?」

 本当に、とてもいい娘なんだ。こんなひ弱な僕に構ってくれて、毎朝一緒に登校してくれて、苦手としながらも家事を手伝ってくれて、幼なじみとしてこんなに嬉しいことってない筈なんだ。

 でも、響本人が無自覚な方向音痴というのが、それらを打ち消してしまうような気がする。

「早くしないと、蓮との待ち合わせに間に合わなくなるよ」

「そんなことは分かっている! だがしかし……ここは一体どこだと言うのだ……」

 

 自己紹介がまだだったね。僕の名前は今泉(いまいずみ)(かえで)。そして今すぐそばでウンウン唸っているのが、幼なじみの萩生(はぎゅう)(ひびき)

 今日、僕達は天之御船学園の入学式を迎えようとしていた。もちろん新入生なので、入学式に出席しようと登校していたのだが、さっき言ったように、響の極度の方向音痴のおかげで見事に迷子になってしまったということなのだ。

 響が方向音痴なのは、子供の頃から変わっていない。そんなことはいくらなんでも僕でも分かる。だから、迷子にならないようにナビゲートしながら一緒に学校に向かう予定だった。

 しかし! 響は極度の負けず嫌いでもあり、何でも自分が一番にならないと気が済まない性格なのだ。そんな響に対して、僕みたいな奴が横から口出ししても聞く耳を持たないというのは、至極当然のことで、結果的にこうして二人仲良く迷子になってしまった。

「響。とりあえず学校に向かおう。遅刻なんてしたら、それこそ恥ずかしいったらないよ」

「確かにそうだな。よし、こっちだ! ついてくるがいい!」

「待って響」

 意気揚々と歩き出そうとする響を引き寄せる。因みに、歩こうとしていた方向は学校から更に遠くに行く方向でした。

「な、何をするのだいきなり!」

「いいから」

 でも、流石の僕もそろそろ限界。入学初日から迷子になったせいで遅刻なんて、絶対に嫌だ。更に言えば、このまま野放し状態で響が遅刻するというのも嫌だ。

「ほら、学校はこっち。蓮も待ってるだろうし、早く行こう」

「わ、分かった。分かったから手を放すのだ~!」

 いいや分かってない。手なんか放したら、またどこへ行くか分かったもんじゃない。

 

「おはよー蓮」

「お、おはよう……レン」

「……おはよう。二人とも」

 この娘は江古田(えこだ)(れん)。僕と響のもう一人の幼なじみ。男の僕から見ても惚れ惚れするくらいにカッコよく、クールな立ち居振る舞いもそれを助長させている。それ故に、色々な厄介事に巻き込まれることも多いんだけどね。

 さっきの場所からは意外と距離は短く、蓮との待ち合わせにも何とか間に合った。迷っていた時間は長かったけど、家を出た時間がかなり早かったので、これが幸いしたって感じ。

「それにしても……今日も二人は仲良しだね」

「ち、違っ……これはカエデが勝手に……!」

 顔を真っ赤にしながら手を振り払う響。……まあ、無理やりあんなことされたら嫌がるよね、そりゃ。

「それじゃ学校行こっか」

 長い話を聞くのは眠たくなりそうだけど、入学式なんてそんなもんだろうし、我慢して行くとしましょうかねー。

 

「また恥ずかしがってる」

「し、仕方ないだろうっ!? ずっと繋ぎっ放しだったんだぞ……!」

「響は素直じゃないな」

「う、うるさいっ!」

 

 入学式も無事に終わり、僕達は教室に向かった。嬉しいことに、響も蓮も同じクラスだった。

 でも、その後やってきた担任の教師から、僕達は驚愕の事実を突き付けられた。僕達1年7組は、「不幸」クラスだということを。

 僕自身、不幸と言われたことに対しては特に思うところはなかったけど、同じクラスメートである雲雀丘さんという娘は、納得いかないという表情で、担任の小平先生に質問をしていた。雲雀丘さんだけに限らず、クラス全体が、いきなり「不幸」だと言い放たれたことに対して、何かしら思うところがあるみたいだ。さっきからざわめきが収まらない。

 

「さっさと黙れよガキ共。そんなだからロクな運持ってねえんだろーが」

 

 ……誰だ今の。さっきまでのざわめきが嘘みたいに静まり返ってる。いやいやいや、眼光だけで人を殺せそうな人、初めて見た気がする。そういうのって、アニメやマンガの世界だけの話なんじゃないの?

 

「ぐぬぬ……何故響が一番ではないのだ……」

「そんなに上手くいくものじゃないだろう」

「そう言いながら、レンはちゃっかり良い番号を引いているではないか!」

 その後、テキトーに数字が書かれた紙を小平先生が机に入れておいたということで、各々紙に書かれた数字を見ることになった。今回は、数字が小さいほどラッキーということらしい。

 負けず嫌いな響は、やっぱり「1」を所望していたみたいだけど、そう上手くいく筈もなく、更にはレンよりも数字が悪かったことをメチャクチャ悔やしがっている。

 っていうか、全体的に「不幸」なクラスの中で「1」を引いたとしても、人並み以下の幸福しか無さそうな気がするのは僕だけかな? 因みに僕の机に入っていた紙には「1」と書かれていた。

 

 妙に波乱染みた入学初日。訳の分からないことを言われて、訳の分からないクラスに入れられて、先行き不安な未来しか見えないけど、入学してしまったものは仕方ないし、これからの学校生活を楽しんでいくとしようかな。

 そして宿題が出された。内容は、小平先生から渡された卵を、明日のHR(ホームルーム)まで割らないこと。なるほどね、「不幸」な僕達なら、こんな簡単なことすらも困難なことになるって寸法か。

「よし、帰るぞ! レン、カエデ」

「うん」

「そうだね」

 僕はともかく、この二人はどうなんだろう。果たして卵を割らずに明日を迎えることが出来るんだろうか。

 ……いや、無理だろうね。根拠? そんなもの無いよ。ただの勘。でも、この二人が卵を守り切れそうな感じがまるでしないんだよねー。

「響、あんまり走ると危ないよ」

「何を言うか! こんな平坦な道でこの響が……っ!?」

 フラグ回収って、こういうことを言うんだよね。本当に響はドジっ娘だなあ。

「本当に響はドジっ娘だなあ」

「な、何だとぉ!」

「あ、声に出てた」

 まだ学校から数十メートルしか歩いていないのに、響はこの平坦な道で転んだ。しかもカバンを下敷きにしながら。

 ……卵はもう、ダメだろうね。

「とりあえず、ケガとかしてない? 大丈夫?」

「だ、大丈夫だっ」

 顔を真っ赤にして涙目になっているところを見ると、相当悔しかったのだろう。

 流石に抱きかかえたりなんかしたら、響が怒るだろうから、肩を貸しながら帰ることにした。これなら、帰り道で迷うこともなくなるし、一石二鳥ってやつだね! とかいう具合に、響の手助けをしていたら、今度は蓮が大変なことになっていた。

 

 大量の動物に下敷きにされていたのだ。

 蓮がとてもカッコいいということはさっき話したよね? それ故の苦労というのは、これである。

 カッコよすぎて、様々な()()()動物から好かれやすいのだ。それも異常なまでに。時にそれは人間に対しても起きることがある。実際、僕と響は、蓮が女の子から何度も告白されている場面を目の当たりにしてきている。

 恐らく、下敷きにされているこの大量の猫やうさぎも、99パーセントがメスのものだろう。

「れ、レン大丈夫か!?」

「動けそうなら手動かしてみて」

「……ここ」

 辛うじて、ひょこひょこと動く右手を見つけた。それをしっかりと掴んで、響と二人で動物の群れから引っ張り出す。

「ふぅ……」

「相変わらずモテモテだね」

「モフモフしてて気持ちよかった」

「何を言っているのだお前は!」

 蓮が離れたことにより、大量の動物の群れは散り散りになっていった。そしてその群れがいたところには、蓮のカバンと、一緒に入っていたであろう卵が無残な姿で捨て置かれていた。

 

「割れちゃった」

「響のもだ」

「本当に響はドジっ娘だなあ」

「何故響だけ名指しするのだっ!?」

 

 てな訳で、二人とも卵を守ることは出来なかった。なるほど、こういうところを考えると、確かに「不幸」なのかもしれないね。

 でも、「不幸」って考えるから「不幸」なだけで、場合によってはそれは「幸福」なことかもしれないし。

「くぅ……っ! カエデは何故卵が割れていないのだ……!」

「おめでとう、カエデ」

「ありがとうレン。そしてドンマイ響、あそこで転ばなかったら、割れてなかったかもね」

「強者の余裕というやつか……!? 悔しい……」

 卵が割れなかったのは、僕を含めて二人だけ。もう少しいるもんだと思ったけど、やっぱりみんな「不幸」ってことなんだろうか、まさかここまで少ないとは思わなかったよ。




オリキャラ登場です。
響と蓮との絡みが中心なオリジナルストーリー、拙い内容ですみません。
ではまた来月に。
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