幻想郷にある、とある館。そこには吸血鬼と呼ばれる不思議な種族が住んでいる。
吸血鬼…、主に夜に行動し、人の血を吸う悪魔である。しかし、そのスピードは天狗にも届き、鬼にも勝るとも劣らずの力を持つ。
幻想郷で代表的な吸血鬼と言えば、
そして、もう一人…、幻想郷縁起にものっておらず、幻想郷の歴史にも深く刻み込まれることの無かった人物がいた。
その名は、エミフィル・スカーレット。
彼女はスカーレット家の本当の長女であり、一族の中でもトップクラスのスピードとパワー、そして、その魔力に溢れた体を利用した強力な魔法を持っていた。
これは彼女たちが幻想郷を訪れる前のお話し。
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「こんな程度でよくのこのことやって来れたものよ」
エミフィルはそういって剣先を人間の首筋に当てる。人間は恐れおののいてその場に震えることしかできなかった。そんな無様な姿を見たせいか彼女は小さい溜息を吐いた。
この人間はヴァンパイアハンターの者だ。しかも、彼は自分の力に酔っていた。故に自分より強力な吸血鬼の存在を見誤り、返り討ちにあったのだ。
「負けたのならば、あとはどうなるかわかっているな?」
「ひぃ……、た…助けてくれ…」
彼はその場で彼女に土下座すると、彼女の足にしがみつき、命乞いをした。
「ほぅ、その状態なら首をはねやすいな」
彼女の返答は冷たいままだった。つまりは…
「お…お助けを…おたす……」
静かに血桜が舞った…。
「おねえさま?」
声の主はまだ幼く、まだ十分な力も得れていないが、それでも誰もが恐れる吸血鬼である。そして彼女は数百年後、紅霧異変という事件を起こし、その地にその名を轟かせることになる。
「どうしたの?レミリア」
すると、名を呼ばれた少女はエミフィルの近くまでくると、二つに分かれた人間の体をみた。しかし、それは決して可哀想だとかお姉さまひどいなんて顔はしていなかった。もっと恐ろしい思考を持っていた。
「無能な奴らは消えてしまうんだね。馬鹿な
そう言った彼女は今はもう動かない死体に冷たい目線を送りつつ、口元を吊り上げ、不気味に笑った。
「永遠に引きこもって怯えていたらいいものを…」
レミリアはそういって口を閉じた。
ここは昔からよく人間に狙われていた。そのほとんどが地位や名誉を欲しいがためにやってくる人間だった。そして…
エミフィル達の両親はそんな人間どもに殺された…。
だからこそ、彼女達にとって人間は憎むべき相手であり、つまりは死んでもどうでもいい相手でもあるのだ。
「私は人間を決して許さない」
エリフィルは静かにそう言った。それにレミリアも頷く。
夜を照らす月光の下、二人の吸血鬼は不気味な笑みを浮かべ、笑った。