忌々しい人間を排除したエミフィルは一人、この館の図書館に立っていた。目的はだいぶ前に整理した彼女の母の日記を読み返す為だ。
10月4日 晴れ
今日はここから一番近い里に支援に出た。食料、話し相手など、根本的な原因は解決できるものではないけれど、夫とも協力して少しでも里に笑顔が満ちるように努力した。
(そのせいでお母様、貴方は亡くなってしまわれた。貴方が愛したその人間というゴミのせいで。)
10月20日 雨
この日は生憎の雨だが、それでも私は単独で里に向かった。里の人に「吸血鬼なのに雨が大丈夫なんですか?。」と聞かれたが、私は「魔法で大丈夫にしてますので。」と言って普通に人々と接していた。実際、そんなものはハッタリで、私自身もそれなりのダメージを負っていた。
けれど、誰かが救われるのなら私の命が消え失せたとしても全くもって構わない。
(そんな善意を持ってしまったがために、お母様は未だ幼い私達を置いて逝ってしまった。これも全て人間のせい!。)
11月2日 雨
私のお腹にいる子が大きくなってきた。ここ一週間はロクに里に行けてない。夫は継続して里に行ってくれてるみたいだが、雨の日は行ってくれない。当然っちゃ当然だけど。
でも、それ以上に私はお腹の子にどんな名をつけようか、ワクワクしている。可愛く、でも冷静に物事が見れる子になってほしい。名は決まっても意味はこの日記には書かないつもりでいる。この子には
(結局、私は名の由来を聞くことは出来なかった。聞きたかった。…でも、もう二度と聞くことはできない…………………。)
バサッッッ!、ガツッ!!
エミフィルは悲しみに日記を投げ捨て、飛んでいった日記が本棚に衝突する。これだけ強い衝撃打たれても、日記には傷一つない。
(私がもっと早く人間どもを消していれば、こんなことにはならなかったのかもしれない。あの日記の続きを、家族との日常を、守れていたのかもしれない。)
過ぎ去ってしまった過去だからこそ、エミフィルは堪らなかった。悲しみ、寂しさ、怒り、あらゆる感情が交差して目が回りそうになる。
遂に、足が言うことを聞かなくなっていってエミフィルは掴んでいた机から手を離してしまう。
「お姉様っ!!」
そこに間一髪、走ってきたレミリアがエミフィル抱き留める。幼くても吸血鬼である彼女には、それくらいの力はある。
少し落ち着いたエミフィルは小さな溜め息をつく。確かに、両親は亡くなってしまった。だが、まだ、全て失った訳じゃない。
(私は私なりに全力で
(二度とこんなことは起こさせない。妹の為、そして、私の為にも…。)