4話
本日は12歳の誕生日である。
今年の誕生日は拉致されなかったので、これ幸いと船に乗り、近くの街までやって来た。
この世界における俺の趣味は読書である。
まあ、主に実用書ばかりなのだが。たまには小説も読む。
本も買って、昼飯を何にしようか考えた時に、突然何かが飛んできた。
「レオ、防御モード」
液体金属のレオを変化させ、ドーム型に展開する。
何かが激しくぶつかる音や、悲鳴が聞こえる。
「砲弾……? この街襲われてるのか?」
音が止んだので、ドームを解除させ、辺りを見回す。
辺りは瓦礫の山。
所々の民家や、店から火の手が上がっている。
「海賊船……か。何で、俺はこうトラブルに巻き込まれるかね……」
ここは東の海。四つの海の中で最も平和な海のはずなのだが。
さすがは、モンキー一家の血というところなのだろうか。
とりあえず、俺も救助活動を手伝うかと、近くの店に向かおうとした時、
「命が惜しけりゃ、街中の金と酒と食料を持ってきやがれ」
「俺たちは、ペンギン海賊団だ」
「逆らう者は女子供でも容赦なく殺す」
咽た。
いや、ペンギン海賊団って。
何それ?
「ペンギン海賊団って、懸賞金800万ベリーの海賊じゃねえか」
近くにいる人がそう言うのが聞こえた。
800万ベリー。
平均300万べりーのこの海にしちゃ、高額だ。
「グズグズしてねえで、さっさと用意しろ。あんまりモタモタしてっと、血を見ることになるぞ」
テンプレ通りの脅し文句を口にしながら、船長らしき男が銃を片手に叫ぶ。
あれが、ペンギン?
親は何を思って、そんな名前をつけたんだ。
まあ、未来において、タマネギやニンジンなどの名前をつける世界だ。
ペンギンって名前もおかしくないのかも知れない。
「てめえ、何しようとしてやがる!!」
その怒声に目を向けてみると、1人の男性が電伝虫を片手に震えていた。
「お前、海軍に通報しようとしやがったな。小賢しい真似してんじゃねぇよ!!!」
そう言いながら、男を殴り飛ばす。
フム、完全に悪党だな。
倒れた男に、家族らしき女性と子供が駆け寄る。
「チッ……くだらねえ真似しようとしやがって、オイ、罰として、そのガキを殺せ。見せしめだ」
手下にそう命令する。
命令された男はニヤケながら、剣を片手に、子供に近づき、振り下ろそうとした。
「剃」
子供の近くに近づき、
「レオ、スラッシュ!」
右手で剣を受けとめ、レオを変形させ、男の手首を斬り落とす。
「この餓鬼!」
悲鳴を上げて倒れる仲間を尻目に、残りの手下二人が掴みかかってくる。
だが遅い。
男たちの手を避け、先日覚えたばかりの指銃で、相手の心臓をそれぞれ貫く。
「餓鬼、何しやがった!!」
ペンギンが、俺目がけて銃を撃つが、その弾丸を剣で斬る。
これが、出来るようになった時、自分が人間ヤメかけてるなぁと少し遠い目になったものだ。
どうやら弾を撃ちつくしたらしい。
銃を捨て、腰に差してあった片手剣を手に俺に襲い掛かってくる。
「八百万の賞金首か。小遣いにはちょうどいいかな」
「この餓鬼」
力任せの剣をひらひらとかわしながら、相手を挑発する。
見聞色の覇気を使わなくてもこの程度の剣なら簡単に避けられる。
「賞金首はできれば生かして捕まえて欲しいらしいから、お前は生かしてやるよ」
「…………!」
力んで大振りになった剣を沈んでかわし、一足で鳩尾に拳を叩き込む。
ペンギンは白目を剥いてその場に気絶した。
一瞬静まり返ったあと、歓声が起こった。
「ありがとう、助かったよ」
先ほど助けた子供の家族に頭を下げられた。
「いえ、それより海軍に通報はできたんですか?」
「ああ、近くにたまたま、本部から海兵が来ていたみたいで、すぐに来るとの事だったよ」
「そうなんですか。あ、まだ船にこいつらの手下がいるかもしれないので、見てきますね」
そう言い、港に行こうとしたが、港の方から火の手が上がるのが見えた。
誰だろう?
見聞色の覇気で感じる強さはかなりのものだ。
しばらく、ペンギンたちを見張っていると海兵達が近づいてくるのが見えた。
「お前が、これをやったんか?」
「サカズキさん……なんでこんな所に?」
現れたのは未来の大将赤犬ことサカズキさんだった。
「お前は、ガープさんの息子か。さすがじゃのう」
「はは、ありがとうございます。ちなみにこれ懸賞金もらえますよね?」
「まあ、そうじゃのう。後でどこかの支部にでも顔出せや。手配しておくわい」
「ありがとうございます」
その後、手際よくペンギンたちを連れて、海兵たちは出航した。
サカズキさんとも軽く世間話をして別れた。
「ハァ……とんだ一日だったよ」
家に帰り、ソファで一息つく。
「しかし、初めて人を殺したけど、案外堪えてないな」
もう少し、何か精神ダメージを受けるものかと思っていたが……。
まあ、人が死ぬところなんて、この世界では結構見るから、いつのまにか耐性ができてたのかな。
「まあ、いいか。とりあえず寝よう」
電気を消し、散々だった誕生日を終えるために眠りに就いた。