課金厨のソシャゲ廃人がリリカルなのは世界に神様転生してまた課金するようです   作:ルシエド

5 / 69
魔法使いと山猫のリニス、とか誰か書きませんか!


別に時系列どっかとかではないけど無印より後なのは確定な幕間集系の話

 とある日のこと。

 

 なんだかんだ、男は泊まれるならば男の部屋に泊まりたいと思うものだ。

 流石に関係を持っていない異性の部屋は気疲れしすぎる。

 ユーノはその日、課金少年の家にて、男二人でゴロゴロしていた。

 

「ミッドの小説でさ、本当はAランクだけど偽装してEランクってあるじゃん?」

 

「あるねえ」

 

 特に意味もなく少年が語り出し、特に意味もなくユーノが返答を返す。

 

「二年くらい前にさ、魔法で胸偽装して結婚詐欺で訴えられた女居たじゃん?

 "なんでや! E(いい)おっぱいがA(ええ)おっぱいになっただけやろ!"

 の名言で一躍インターネットの海で大人気になってしまったあの人」

 

「居た居た」

 

 男子特有の中身の無い会話。

 

「つまりさ、昨日のオレの課金額は100kじゃなくて1kだったんだってなっちゃんに弁明すれば」

 

「言ってみればいいんじゃない? 僕は変身魔法でハゲを隠すより不毛なことだと思うけど」

 

 会話の中身もなければ金も無い。

 あったはずの金が無い。

 何も当たらなかったので昨日10万課金した意味もない。

 自制心も、庇ってもらえる道理も、なのはに叱られる未来を回避する方法もない。

 

 とん、とん、とん、と階段を上がってくる軽い足音。

 少年の部屋のドアの前でそれは止まり、ドアノブに手がかかる音がする。

 ドアノブの回る音と、ドアの向こうのなのはの気配が、少年の五感に危機を訴えていた。

 

「I'll be back」

 

 少年が窓から逃亡。

 

「Hasta la vista, baby」

 

 ユーノが呆れた顔と声で送り出す。

 

「私、話せばいつか分かってくれるって信じてるんだよ!」

 

 そしてなのはが魔法を使って飛び出した。その結末は語るべくもなく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 またある日のこと。

 

 ここは第1管理世界・ミッドチルダ。

 時空管理局が平和を保っている次元世界群の中心と言う者も居る、魔法の世界だ。

 この世界の喫茶店の片隅で、香りのいい茶を飲んでいた少年の向かいに、整った容姿と優しげな雰囲気を兼ね備えた青年が座る。

 

「やあ、リーダー」

 

「遅刻してるぞ、ティーダ」

 

「すまない、仕事の引き継ぎが中々終わらなかったんだ」

 

 青年はティーダと呼ばれ、デバイス・アンチメンテをいじっている少年をリーダーと呼びつつ、頭を軽く下げる。

 遅刻したことが事実とはいえ、年上相手には丁寧な物腰で接することが多い――ただし課金中は除く――少年には珍しく、ティーダに対する態度は気安いというか、横柄に見える。

 ただそれは、少年がティーダを舐めているからではなく、兄に遠慮無くよりかかる弟のように、少年がティーダを信頼しているからであるように見えた。

 

「で、ティーダ、進捗は?」

 

「計画実行まであと十年はかかりそうだ。リーダーの計算より二年遅れくらいか?」

 

「参ったなあ、時間かかりすぎじゃないか……」

 

「リーダーが課金抑えめにしてればリーダーの計算より二年早められたんだが」

 

「参ったなあ、金かかりすぎじゃないか……」

 

「リーダーがいつも通りすぎで笑いをこらえるのが辛いぞぅ」

 

 ティーダが"優男の苦笑"としか言えない表情を顔に浮かべる。

 反応に困っているのか、旧知の友の変わらなさに安心しているのか、それともその両方か。

 

「ティアナちゃんどうしてる? オレが送ったケーキにがっかりしてない?」

 

「めそめそしてた」

 

「え、どうしたんだそれ」

 

「太陽みたいに笑うティアナはどこだ!」

 

 にんたま!

 

「去年の管理局嘱託試験の問題が販売されてたんだ。

 ティアナがそれに挑戦した、というところまでは良かったんだけど……

 その、なんだ、合格ライン越えてなくて……

 リーダーが今のティアナと同い年だった時、嘱託試験に合格してたってティアナが聞いて……」

 

「え、それそんなに気にすること?」

 

「リーダーにテストの点で負けたら、人によっては自殺したくなると思う」

 

 そりゃあ、めそめそもするってもんである。

 

「あとうちのティアは、結構リーダーのことを舐めてるフシがあるからね」

 

「見下される理由に心当たりがありすぎる……」

 

「いや見下すところまでは行ってないと思うけれども……」

 

 ティアナ・ランスターはティーダ・ランスターの妹である。

 そのためティアナは、兄の友人である課金少年に対し「兄に悪い影響を与えないだろうか」「兄さんは付き合いを考えたほうがいい」「でもあの人は悪い人とも言い切れない」「アレに負けるのは悔しすぎる」「私の友達……友達?」と複雑かつ入り混じった感情を抱いていた。

 とはいえ、ティアナの話は今日の彼らの本題ではない。

 ティーダはこの話題に時間を割きすぎるのもどうだろう、と話題を変えた。

 喫茶店のテーブルの上に、ティーダが静かに一枚のカードを置く。

 

「それはそれ、これはこれ。闇の書の件で金が要るだろうって、Gからの支援金だ」

 

「オレに大金渡すとか正気かよ……すぐ無くなるぞ」

 

「自分で言うかいフツー?」

 

 すぐに無くなる運命の大金が、課金少年の手に渡って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある世界、とある場所、とある研究所。

 そこでジェイル・スカリエッティと愉快な仲間達と呼ぶ人が居たり居なかったりする集団が、様々な実験を行っていた。

 戦闘機人(ナンバーズ)No.5・ロールアウトNo.4、チンクが訓練室でナイフを構える。

 戦闘機人(ナンバーズ)No.4・ロールアウトNo.5、クアットロがそれをモニター室で見ている。

 モニター室でチンクのデータを取っているのはクアットロだけでなく、チンクとクアットロという人機を1から作り上げた狂気の科学者、ジェイル・スカリエッティもそこに居た。

 

 クアットロはチンクが右目に付けている眼帯を見て、ぷぷっと笑う。

 スカリエッティの指示による外出から帰って来た時、姉のチンクが何故か付けていた眼帯だ。

 当然その眼帯に意味があるわけもなく、性格の悪いクアットロからすれば格好の罵倒材料にしかならない。

 

「あらあらお姉さま、その眼帯はなんですかぁ?」

 

『カッコ良いだろう?』

 

「いえいえ、かなりダサいですわぁ」

 

『いや、これはカッコ良いんだ。その事実だけは動かない。

 これがダサく見えるのはお前の心と美的感覚がクソダサナメクジだからさ、クアットロ』

 

「クソダサナメクジ!?」

 

 からかうつもりが予想外にど真ん中どストレートの返答が返って来たことに、クアットロは思わずたじろいでしまう。

 何故だろうか?

 外出に行く前と行った後で、チンクの雰囲気がまるで違って見える。

 "気のせいだ"とクアットロは自分に言い聞かせ、チンクの現在の能力を測るため、訓練室に10mほどの大きさの機械兵士……ガジェットドローンを出現させる。

 

「う、で、ではでは、訓練始めますよー」

 

(さて、チンクちゃんのランブルデトネイターの腕はどのくらい上がって……)

 

 そして、眼帯は投げ捨てられる。

 

『チィンクッ! ビームッ!』

 

「んにゃぴ!?」

 

 眼帯というファッション蓋が外された右目から突如ビームが放たれ、ガジェットが粉砕された。

 魔力反応無し。前兆無し。モーション無し。溜め無し。

 それでいて高威力のビームが連射され、ガジェットは跡形も残らない。

 クアットロはその光景の凄まじさに思考を停止し、隣のスカリエッティに食ってかかった。

 

「ドクター! またなんかやらかしたんですかあなたは!」

 

「予想外のことが起きたら全て私のせいにするのはやめたまえ」

 

 スカリエッティはそんなクアットロをいなし、モニターのチンクを興味深そうに凝視する。

 蛇が獲物をじっと見つめるようなその視線。普通の人間がその視線を向けられれば、生理的嫌悪感で鳥肌が立っていることだろう。

 チンクの側からはスカリエッティの顔が見えていないことが、唯一の救いか。

 

「この件に関しては私も何も知らないさ。現に今かなり驚いている」

 

『ああ、そうだ、クアットロ。

 この眼光(ビーム)はドクターも知らない私の新技だ。

 野球漫画で新しい変化球を覚えるように、私も少し時間があれば新たな技を覚えるというもの』

 

「野球と現実のレーザービームを混同するようなマネはやめていただけません?」

 

 おかしい、会話のペースが握れない、とクアットロは内心焦り始めた。

 

「で、だ。チンクはそれはどこでどうやって手に入れたのかな? 実に興味がある」

 

『あれは先週、ドクターの命令で街の探索をしていた時のことです』

 

「ああ、チンクにはナンバーズが街に溶け込めるかのテストをしてもらっていたね」

 

『そこで私は友と出会いました。いえ、出会ったその者と友となりました。

 友は私のことも友であると思ってくれたらしく、実に親しくしてくれました。

 そして別れ際、友は私に友情の証としてオサレ眼帯と目からビームを出す力をくれたのです』

 

「そいつ頭おかしいんじゃないですか?」

 

 "友達は選べよ"とクアットロは友達が居ない自分を棚に上げ、友達が居ない分際でチンクの友とやらを心の中でこき下ろしていた。

 

「か、関連性が全く見い出せない……!

 街で出会ったパンピーと目からビームに何の関連性が……!?

 幕末の人斬り剣士が活躍するアニメのOPがそばかす少女の歌なくらいに関係ない……!」

 

『ドクター、クアットロにどういう教育を?』

 

「最近は少し趣味に走った……かな」

 

 ふっ、と笑うスカリエッティ。

 大惨事を生むのはだいたいこういう、他の人間に真似できないことができるくせに保身・打算・協調といった事柄を考えず、思いつきや趣味に自分の命運をさらっと賭けた上で幾重にも策を張り巡らせる、自分の好きなことしかしたくないタイプの人間だ。

 つまりある意味、この男はかの課金少年と同類であると同時に対極の存在だった。

 

「つ、疲れる……何の意味もなく……ドクター、レリックウェポンの件だけは真面目に……」

 

「クアットロ。君は私の本当の出身世界のことを知っているかい?」

 

「は?」

 

 そしてスカリエッティは、かつて課金文化によって滅びたアルハザードと、切っても切れない関係がある人物であった。

 

「レリックウェポンの死者蘇生の原理というものは、だ。

 要するに課金石一個を引き換えにしてコンテニューするアルハザード産の技術なんだ」

 

「……」

 

 クアットロはそれを聞き、スカリエッティに背を向けながらソファーに寝っ転がってふて寝を始める。その挙動は、どこかしなびたオッサンのようだった。

 

「しかしなんだ。

 私が予定していた優秀な魔導師の捕獲計画は取りやめるべきかな。

 管理局の定期健康診断を利用して個体データを集めた方がいいかもしれないね」

 

『その際には私も、いずれロールアウトする妹達も活躍してみせます』

 

「頼りにしているよ、チンク。

 あ、それと後で身体データを取らせてくれ。

 ナンバーズは全員目からビームが出るようにしよう」

 

『ノリノリですねドクター』

 

「いやあ、そのチンクの友とやらに会いたいなぁ!

 なんとなく私の半身か相棒か宿敵か天敵になりそうだよ、その人物は!」

 

 蠢く悪。

 強化される未来の敵。

 原型を残さないほどに荒れ狂う運命。

 彼らの戦いはまだ遠く、されどいつか必ず来るであろう、凄惨な戦いを想像させた。

 

 




『アンチメンテ』

 主人公の所有するストレージデバイス。
 出荷状態では日本語が登録されていないデバイスで、「いいから日本語で喋れ」と言う主人公の調整により日本語以外の言語を全削除された結果、言語データが内部に存在しなくなり喋れなくなってしまった悲しみの相棒。

・キャッシュフォーム
 なのはのデバイスモード、フェイトのデバイスフォームにあたる基本形態。
 キャッシュカードと連結し、預金口座の金を魔力の代わりに湯水のごとく消費するフォーム。
・ギフトフォーム
 なのはのアクセルモード、フェイトのアサルトフォームにあたる強化形態。
 キャッシュカードとギフトカードの同時使用により、二倍の速度で資産を溶かすことができる。
・リボルビングフォーム
 アンチメンテのフルドライブフォーム。
 誰も使用したところを見たことがない、彼の奥の手。
 なのはのブラスターフォームにあたる、"自身の未来を一切顧みない"フォーム。

 宝珠を埋め込まれた篭手型のデバイスであり、キャッシュフォームは『まだ安全』を意味する青い光で宝珠が輝き、ギフトフォームは『止まれ、状況によって進んでよし』を意味する黄の光で宝珠が輝き、リボルビングフォームは『危険。止まれ』を意味する赤の光で宝珠が輝く。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。