第2話、短いですがお楽しみください。
赤い壁に包まれた部屋で意識を失って、気づくと僕は、公園のベンチで横になっていた。
このとき、無事に転生を果たすことができたのだと、なぜかは分からないが実感することができた。
「ここが新しい世界……」
目覚めたばかりの僕は、周囲を見渡し、新しい世界を眺めるが、僕が住んでいた世界とあまり変化がなかった。
ビルが立ち並ぶ街並み、時間に追われて行きかう人々、ところどころ地面に植えられて咲く花、そのどれもが一度は見たことのある光景で、興奮していた心が徐々に沈んでいった。
「たしかにあまり変わりがないとは言ってたけど……」
スピーカーの声の主が言っていたことを思い出して愚痴をこぼす。
冷静になってきたためか、先ほどよりも周りのことがよく見えるようになってきた。
まずは、自分の状況を確認しようとポケットなどをたたいてみる。
「財布はある……。それ以外の持ち物は特になし……」
僕はポケットに入っていた財布を開き中身を確認する。
財布の中には紙幣などはなく、1枚のカードだけが入っていた。
「キャッシュカードか何かか……?」
引き続き財布の中を漁っていると、メモのようなものが小銭入れの中に入れられていた。
メモを開き、書かれている内容を確認する。そこには、先ほど見つけたキャッシュカードと思われるカードの使い方と暗証番号が書かれていた。
「とりあえずATMで確認してみるか」
僕は近くにあったコンビニに入り、ATMでキャッシュカードを使ってみることにした。
「……はぁぁっ!!」
残高の表示された画面を見て僕は思わず声をあげてしまう。買い物に来ていた人たちや、店員が僕のほうを一斉に見つめてくる。
「すいません、何でもないです……」
とりあえず一言、驚かせてしまった方々に向かって謝罪の言葉を告げて会釈をするが、きっと僕の顔は強張ったままだったろう。僕を見つめる人たちから視線を外し、再び画面に視線を合わせるが、そこに表示されている残高が変化することはなかったようだ。
「一体いくらだよこれ……」
0がやたらと多い金額に思わずため息が出てしまう。
とりあえず、常識的かと思われる金額だけ引き出し、僕はATMから離れ、コンビニ内を軽くうろつき、必要なものを買うことにした。
「インフィニット・ストラトス……?」
世界の情報を集めるために雑誌コーナーに並んでいる本を見ていると、僕の住んでいた世界では聞いたことのない言葉が乗っていた。
僕は、その雑誌を手に取り、パラパラとページをめくり、内容を頭に入れていく。
インフィニット・ストラトス――
通称IS
数年前に日本の天才、篠ノ之束によって開発されたマルチフォーマルスーツ。
人類の宇宙進出の為に開発されたものだが、発表当時は、篠ノ之束博士の若さもあり、性能が疑問視されていたが、白騎士事件で、現代兵器の追随を許さぬ、驚異的な力が証明されることとなった。
以来、各国での性能実験、新規機体の開発が行われているが、ISの心臓部であるISコアに関しては、未だにどの国もその詳細を解明できておらず、真実を知るのは篠ノ之束博士のみとなっている
「僕が住んでた世界にはなかった存在、これは覚えといた方がいいかもな」
少しだけ雑誌を読み進め、書かれている情報が僕にとっては必要なものだと判断し、雑誌を買い物かごに入れる。ほかに情報になりそうな雑誌はないか、コーナーを一通り物色するが、望む内容が書いてあるようなものは並んでいなかった。雑誌コーナーを離れ、僕は空腹を満たすための食料や、身だしなみを整えるための生活用品を選んでレジに向かった。
「4980円です」
「じゃあこれで」
僕は、財布からおろしたばかりの万札を店員に手渡す、店員は慣れた手つきで、預かった金額を入力し、おつりとレシートを返してくる。僕は、それらと、購入した商品が入ったレジ袋を手に取り、レジから離れる。
「ありがとーございましたー」
間延びした店員の言葉を聞き流しながら、自動ドアから外へと出て、目覚めた時にいた公園に向かう。
公園に着くと、都合よく空いていたベンチに座り、コンビニ袋から惣菜パンを取りだして封をあける。ついでに雑誌を開き、先程まで読んでいたページを開く。
「んぐんぐ、アラスカ条約に、モンドグロッソ、女尊男卑か」
口にパンを含みながら、書かれている内容を読み進めていく。ところどころ、専門的な用語か書かれていて理解するのに苦労する。しかし、雑誌に書かれていた内容だけだが、ISに関しての情報を得ることが出来た。
僕は、得た知識を頭のなかで反芻し、整理していく。
(ISの占有、軍事利用を禁止したものがアラスカ条約……)
(兵器としての利用が禁止されたISの開発、研究成果を、対外に知らしめようとして、モンドグロッソという競技大会を各国政府は合同で開こうとしている……)
(でもってISは、なぜか女性にしか動かせないから、その権利を持つ女性たちが幅を利かせるようになってきたという感じかな……)
「ふぅ、少し休憩」
思考を止めて、ひと息つく。
購入してあったミネラルウォーターを取り出し、キャップをひねり飲み口を口元に近づける。水分を摂取するために自然と視線が持ち上がり、景色が地面から切り替わる。
「ん?……あれは」
切り替わった視界の先で、水色の髪をした少女の姿が目に入った。
少女はキョロキョロとあたりを見渡して、周囲の様子をうかがっている。
その姿はどこか不安げで、おびえているように見える。
僕は、その様子が少し気になり、その少女を見つめていたが、しばらくすると少女は小走りでどこかへと駆けていってしまった。
「迷子かと思ったけど違うみたいだ」
僕は、少女へと向けていた視線を読んでいた雑誌に戻して、ページをめくる手を進めた。
(女尊男卑の影響で、男性の冤罪被害が増えている……僕も気をつけたほうがいいかもな)
冤罪事件の記事を読み進めながら、この世界独特の風潮を把握し気分を引き締める。
「あのっ……すいません」
時間にして数分、数ページほど雑誌を読み進めたところで声をかけられた。
雑誌から外した視線の先には、先程どこかへと駆け去った少女が立っていた。
「ごめんなさい……少しいいですか?」
小学校の低学年位だろうか、その割には言葉遣いが丁寧だが、少女は申し訳なさそうに、僕に問いかける。
「なにかな?」
僕は、ベンチから降りて、少女と同じ視線の高さになるようにしゃがみこむ。
「あの……ここ何処だかわかりますか?」
先程の迷子だという予想は当たっていたようだ。
ただ、残念なことに、僕も先程こちらに来たばかりでここが何処なのかは把握していない。僕は不本意ながらも少女に対して、力になれないわけを話す。
「ごめんね。僕も初めての場所で詳しいことは分からないんだ」
「そうですか……」
僕の返答を聞いて、少女は悲しそうに瞳を潤ませる。
さっき読んだ冤罪事件の記事に、迷子の少女を助けようとして誘拐犯として逮捕されたという記載があったため、なるべく女性との関わりは避けたかったのだが、潤んだ瞳を見て、罪悪感に駆られてしまう。
(人助けして、捕まったなら、仕方ないか……。ここで見捨てて、一生後悔するよりはマシだろうし)
逡巡する心を押さえつけ、僕は少女に微笑みかける。
「えっと、どこに行きたいか教えてくれたら、お兄さんが誰かに聞いて案内してあげるよ」
僕の提案を聞いた少女は、少し戸惑った後、ゆっくりとうなずいた。
こうして僕は、迷子の少女を目的地に送り届けるという、転生してから初めての人助けを行うのだった。
いかがでしたでしょうか?
本作品は気ままな作者が、暇な時間に気の向くままに書いています。
なので、更新時期はこれといって決めていません。
IS本編にたどり着くまでにしばらく時間がかかると思いますが、気長にお待ちいただけると幸いです。
読んでいただきありがとうございます。