パープルアイズ・人が作りし神   作:Q弥

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達也と久が初めての共同作業。
偶然や巻き込まれでなく、達也と久が最初から最後まで一緒に作戦をするのは初めてです。


片手落ち

 

 

コミューターの暴走事故も、時間にすれば10分程度の混乱で収まり、僕は警察への聴取もなく、そのまま警護の運転する車で帰宅した。

帰宅時刻は21時。

ちょっと遅めの晩御飯を澪さんと食べて、響子さんは今夜も軍のお仕事で不在。いつもならこれからの時間は、勉強したり光宣くんと電話をしたりするんだけど、今夜は食事中に達也くんから連絡があった。

 

「グ・ジーの居場所が判明した。翌朝、襲撃をする」

 

達也くんの声色は、特に緊張するでなく、近所のスーパーに買い物に行く程度の雰囲気だった。

おおー。早くもレストラン会議の結果が出たか。

あの会議は、毎日開催する必要性が疑問で、達也くんと真由美さんの会う機会を作る茶番だと思っていたから、師族同士の情報の疎通が思っていたより上手く行っていることに僕は素直に喜ぶ。決して仲が良いわけでない十師族同士の共闘が行われる。

達也くんと十文字先輩が一緒に戦う姿を間近で見られると言うのは、想像するだけで心が躍る。

 

「うん。現場までの足はどうするの?」

 

「バイクで向かう。久はタンデムシートに乗ってもらう。3時に久の自宅に迎えに行く」

 

「動きやすい格好で待ってるよ」

 

古式の魔法師であるグ・ジーは、その『魔法』の特徴から人家、住宅街に隠れている可能性が高い。住宅街をうろついていても問題のない姿でいないと、僕たちが警察に通報されてしまう。

その辺りの打ち合わせはできているから、僕は落ち着いて電話を切った。

電話はリビングでだった。

澪さんも同席してたけど、僕が慌ててないし、四葉家も達也くんもテロ主犯の捜索が切迫していないみたいな空気は、会話からも伝わった。

澪さんは『魔法』に関しては僕の心配はあまりしない。

体力や集中力、探知系に関しては難があるけど、達也くんや十文字先輩もいるわけだから、涙ながらになんてことにはならず、簡単な心得を注意をする程度で僕を送り出した。

 

翌朝、防寒をしっかりして、靴底の頑丈な靴を履いて、達也くんの運転する電動二輪の後ろ座席に腰かける。

バイクのタンデム走行は、将輝くんのバイクで経験済みだから、達也くんの運転に完全に身を委ねる。ただ、将輝くんの時よりも、しっかり達也くんの逞しい背中にしがみついていた。

バイクは重心が中心にあったほうが安定するから、それはもうしっかりと抱きしめる。

達也くんは一見、普通のバイクスーツを着ている。多分、四葉家謹製のスーツだろう。二の腕にホルスターに入った達也くんの拳銃型CADが感じられる。

僕の被るヘルメットは、バイクのシート下から取り出した達也くんとお揃いのデザインで、未使用品ではなかった。

 

「ひょっとして、このヘルメットは深雪さんの?僕が被ってもいいの?」

 

自分のヘルメットを、他人が被るのは深雪さんは抵抗を感じるんじゃ?達也くんだって、婚約者のヘルメットを他の男が被るのは嫌だろう。

 

「別に構わない。久は家族で、妹みたいなものだからな」

 

「僕はお義兄さんだよ」

 

えへへ、家族だって。

グ・ジーの居場所は鎌倉で、練馬からだと高速道路を利用しても2時間弱かかる。その時間ずっと達也くんにしがみついているのは嬉しいけど体力的にかなり辛い。

往路はともかく、帰りはきつそうだ。そもそも今日は土曜日で、普通に学校のある日だ。5時に襲撃するとしても、とんぼ返りしないと遅刻しちゃう。

達也くんの体温を感じながら、バイクは順調に鎌倉の西部、別荘が立ち並ぶ地域に到着した。

日の出まで二時間もあるし人気なんてなく、真冬のこの時間だ、吐く息すら凍りそうなほど寒かった。

防寒はしていても、走行中の背中が寒かった。もっと防寒着を着込んでくればよかったな。ちょうど、あの人みたいに…

イヌマキの垣根の影、誰かが隠れるように立っている。バイクのヘッドライトが一瞬、その人物を照らす。達也くんは、明らかにその人物にバイクを向けて進めていた。

その人物は体つきから、多分女性で、ぶかぶかの鳥打帽、シンプルなマフラーを普通に首に巻いている。羽織っているコートもファッション性は低く、この時間なのにレンズの大きなサングラスをつけていた。存在感が希薄なのに、奇妙に目立つ、変な人物だ。存在と行動と格好がちぐはぐなんだな。

達也くんが無言で身体を揺らしたので、僕はゆっくりとバイクから降りた。

その女性がサングラス越しに僕をちらっと見て、頭を少し下げた。挨拶って理解するのに時間がかかる。暗闇の中、もっさりとした雰囲気だ。

わざとなのか、無意識なのかこれから襲撃って時に会う人物とは思えなかった。

達也くんは、その女性の佇まいを特に気にするでなく、情報端末でやり取りをしている。両者は同時に頷いて、女性が先導して歩き始めた。達也くんがその場にバイクを置いて、その後ろを僕が続く。

その女性の説明はされなかった。僕も聞かない。必要があれば言ってくれるだろう。

別荘地は三方が緑に囲まれ、鎌倉の歴史的に道が狭く、古い洋館も目立つ。

女性が一軒家の別荘の前で足を止めた。周囲に人の気配はない。達也くんが周囲を目だけで見まわす。

僕もつられて周囲を見回すけど、朝の冷たい空気しか感じられない。

 

「あれ?」

 

「どうした?」

 

「十文字先輩や、七草家の人は?」

 

人気は感じなくても、周囲には四葉家の魔法師が潜んでいるはずだ。それに、この現場には当然、十文字先輩や七草家の魔法師もいると僕は考えていた。

昨夜の達也くんの連絡から6時間以上時間が経過している。時間は多くないけど、東京から戦闘魔法師を派遣するには十分な時間だ。

 

「我々だけだが?」

 

達也くんがヘルメット越しに、不思議そうに呟いた。

え?四葉家の戦闘員だけ?さっきまでの会議や十師族の協力体制の話はどこに行ったんだろう。

準備に手間取り、捕縛の動きをグ・ジーに察知されるほど、十文字家も七草家も手際は悪くないはずだ。

この周囲には他家に知られたくない部隊が詰めているのだろうか。達也くんの隣に立つ女性の存在を知られたくない、とか。

達也くんは、ハナッから四葉家だけで捕縛しようとする態度で、女性もそう考えているみたいだ。他家は信用できない、情報漏れを気にしているとしたら、師族会議で結成させた捜索部隊の意味がない。

僕には理解できない深い意味や意図があるのだろうか。ちょっと釈然としない。

全身で考え出す僕に、女性もやや戸惑っている。

そんな奇妙な雰囲気をかえようとしたのか、

 

「ここですか?番地が違うように思われますが」

 

「間違っていました」

 

達也くんが女性に質問して、女性も短く答えた。

その返事に、達也くんがいきなり両手で拳銃型CADを抜いて構えた。かちゃりと、静かな別荘地に、乾いた金属音がした。女性が別荘に意識を向ける。

 

「総員、耐熱、耐魔法防御!」

 

達也くんが別荘に向けて拳銃型CADの引き金を引いた。別荘内から発動した『魔法』が膨れ上がると同時に霧散した。

直後、別荘が燃え上がった。達也くんと女性が『跳躍』で後方に飛び退る。女性の方が大きく飛んで、それでもしっかりと身構えている。そして、僕が身動きしないで突っ立いていることに驚く。

炎に、僕の半身が照らされて赤くなっていた。

僕が動かないことに女性は一瞬、訝しむも、すぐに気が付いた。

 

「音がしない?」

 

「うん。僕の役目はグ・ジーの逃亡阻止だから」

 

達也くんが警告すると同時に、僕は別荘の敷地を『能力』で完全に囲っている。

『壁』の内側からは空気も音も漏れ出せない。当然、人間では脱出不可能だ。それも、他の『魔法』に干渉しないよう効果範囲を細かく計算している。

 

「…どうやって」

 

どうって?説明が難しい。

 

「『念力』で空間そのものを『ずらす』んだ。この世界の物理法則からは逸脱しているから、『魔法』や兵器で対処は不可能だよ」

 

僕の説明は、現代魔法では説明になっていない。僕にとって『サイキック』は、人によって足が速かったり、スピードボールを投げられる人が投げられるような感覚だ。そしてこの程度の『サイキック』は街頭のセンサーレベルでは検知できない。魔法師から見ると、僕は無防備に立っているだけに見える。

女性が茫然としているのがわかる。

 

「吉見さん、久の『能力』を常識で考えても無意味ですよ」

 

自身も非常識の塊の達也くんが言った。この女性は、多分女性は吉見さんと言うのか。

 

「…最強のサイキック」

 

吉見さんがもごもごと呟く。僕が『サイキック』であることは知識として知ってはいる。でも、路傍の石ころを浮かべる程度のレベルとは次元が違うことを理解したようだ。

 

「グ・ジーはいない。中にいるのは『ジェネレーター』が三体」

 

達也くんが周囲の戦闘員にも伝えるため、再び叫ぶ。

 

グ・ジーがいないのにジェネレーター?

警戒されていた…警戒は当然しているだろう。グ・ジーは十師族や公権力の捜索から逃げおおせているんだから。

でも、貴重な戦力であるジェネレーターを置き去り?罠?違うな。

これは、待ち伏せをされたんだ。

グ・ジーはとっくに逃げていて、襲撃の情報は、結局、漏れていたわけだ。

家電以上携帯以下の僕が情報戦を語る資格はないんだけど、他家に情報を報せなくても、こうなったのは…四葉家にしては何だかしっくりこない。

 

「三体とも死体を残してください」

 

吉見さんが達也くんに言う。

ジェネレーターは尋問が無意味なので、さっさと殺した方が早い。

死体を残す…吉見さんがわざわざそう伝えたのは、遺留品から情報を得ようと言う意味なんだろう。

 

「下がって。俺が一人でやります」

 

拳銃型CADを構えなおし、達也くんが言う。その姿は、凛々しくかっこいい。吉見さんは頷き数歩下がり、周囲を囲んでいた四葉家の戦闘員も足を止めた。

達也くんが僕に目を向け、僕は達也くんの通り道を開く。達也くんが駆け出すと、別荘を包む炎が一段大きくなった。

 

「…敵はサイキック…いや、強化型のサイキックか」

 

敵の『魔法』が起動式を使う現代魔法ではない、個人能力に拠った『サイキック』であることに僕はすぐに気が付いた。当然、達也くんも。

僕の『弟たち』は、まだいるんだ。全く、過去の軍はどれだけ『弟たち』を造ったんだ。グ・ジーはどこから彼らを調達しているのだろう。

僕が考えている間、達也くんが炎の中で機敏に動き回っている。三体の敵に達也くん一人をあてるのは、達也くんが一人で戦うことに特化しているからだ。下手に魔法師を戦闘に参加させると、レベル差で連携が難しくなる。

敵の発動する『発火』を次々と『分解』する達也くん。

そんな炎に照らされた後姿を見ながら、

 

「しまったな」

 

僕は呟いた。吉見さんがサングラス越しに僕に視線を向けた。

 

「達也くんでも、『魔法』の結果である炎は消せない。水をかけるとか空気を遮断するとかの『魔法』は出力の小さい達也くんでは難しい」

 

吉見さんは、黙って僕の呟きを聞いている。

 

「逃走を防ぐために『空間』を遮断したけど、この明るい炎は誰からでも目で見える。別荘地に住む人は火災には敏感だろうから…」

 

僕の言いたいことに吉見さんも気が付いた。炎の柱が三方の山を、朝の光とは違う色で染めていた。

 

「視界を覆う『幻術』を展開した方がよかったけど…同時に『魔法』は使えないし、そもそも手遅れか…」

 

いきなり建物が崩壊して火柱が消えた。達也くんが建物の柱を破壊して、瓦礫と炎に押しつぶされたジェネレーターが炎を消したんだ。

達也くんにしては雑な攻撃だ。音が漏れないってわかっているからかな。

瓦礫を弾いて飛び掛かる敵が放った『発火』を、達也くんはサイオンを放出することで魔法式その物を吹き飛ばす。

そのままCADをジェネレーターに向ける。

人体にかける『魔法』は難しいけれど、達也くんの『魔法』でジェネレーターを護ってた事象干渉力が簡単に崩れる。

引き金を引き、敵の胸がこぶし大に陥没し、もう一度引き金を引くと、三つの心臓が文字通り消し飛んだ。

心臓を失ったジェネレーターが瓦礫の中に倒れる。達也くんは油断なく銃を構えていた。

常人なら心臓を失えばアウトだけどジェネレーターは『僵尸術』の応用で、どこからが死亡になるのか不明だ。

遠くからサイレンの音が聞こえる。消防車のサイレンだ。付近の住人が通報したんだ。

その音を聞いた吉見さんが、死体を『視て』いた達也くんの合図を待たず動いた。

吉見さんがもっさりとした服装にしては機敏に動く。僕が解除した『壁』の一部から死体に駆け寄る。周囲の四葉家の戦闘員も、炎の明かりに身を晒していた。少し無防備だ。

達也くんは視線を死体から動かさない。『壁』のせいでサイレンが聞こえないから…いや、違う。

倒れていた死体がいきなり発光した。

遅延発動型、『ジェネレーター』の死亡を発動キーにした『魔法』。『僵尸術』だ!

映画のゾンビみたいに復活した死体が、ありえない動きで立ち上がった。

死体の一体に屈みこんでいた吉見さんに襲い掛かる。吉見さんが慌てて、転びそうになった。

達也くんは、冷静に拳銃型CADを死体に向けた。

使う魔法は、『術式解散』。例の、達也くんの『異能』、魔法式の分解だ。

三つの死体が、万歳しながら倒れ、焦げた木材に巨体が沈んだ。

 

「ありがとう…ございます」

 

「もう大丈夫でしょう」

 

吉見さんは震える声で言い、達也くんに、動揺と安堵、感謝を込めた礼をした。

達也くんがサイレンに気が付いた。

 

「後は、私たちがします」

 

吉見さんが再びもごもご呟く。達也くんは遅疑することなく、CADを両脇のホルスターにしまう。

 

「久、行くぞ」

 

「うん」

 

達也くんがバイクに向かって駆け出し、僕も続く。

走りながら振り向くと、四葉家の戦闘員が死体を運び出そうと動き出していた。

火事現場は血痕に複数の足跡など痕跡だらけだ。

消防隊員は、この現場が過失や事故でないことにすぐ気が付くだろう。

地元は、しばらく大騒ぎになる。

待ち伏せだったとは言え、達也くんも四葉もあまりスマートな対応ではなかった。それとも、グ・ジーの方が上手だったのかな。

 

 

「達也くん、ごめん」

 

「何故、謝る?」

 

バイクは高速道路を急いでいた。

タンデムシートに座り、往路のように達也くんにしがみ付きながら僕は、バイクの騒音に消されないように大声で言った。

 

「音だけじゃなく、炎が周辺から見えないように偽装すればよかった」

 

達也くんのバイクスーツから炎と煙、建築物の埃のにおいがする。十文字先輩がいないことに思考が寄ってしまい、対応が遅れてしまった。『遮断』ではなく、別荘の敷地のすべての空気を抜いてしまえば火事は防げた。さしものジェネレーターもほぼ真空では生命活動はできないだろう。

 

「久が気にすることじゃない。それよりも、情報の漏洩の方が気になる。四葉の通信を傍受・解読するだけの組織やスキルがあるとは思えないのだが…」

 

それきり達也くんは黙った。

四葉家の通信セキュリティーはしっかりしているだろうけれど、どれ程のレベルかまでは僕にはわからない。

響子さんなら容易くハッキングできるだろうなぁって考えながら、振り落とされないよう達也くんにしがみついていた。

 

帰宅は7時で、外は白々と明けている。

自宅前でバイクを降りると、どうせすぐ一高前駅で会うし、あいさつもそこそこに僕たちは分かれた。

達也くんも、颯爽とバイクで去って行く。

僕は軽くシャワーを浴びて汚れを落とすと、澪さんが用意してくれた朝食を食べる。食べながら澪さんが僕の身づくろいをしてくれて、襲撃の顛末を教えた。

今回の襲撃について四葉家は、他家には今朝になって報告したって。

四葉家単独で行動し、なおかつ失敗したって報告を、他の十師族はどう考えるのだろう。

 

「澪さんは、達也くんたちが単独で動いたことをどう思う?」

 

澪さんは、ちょっと考えて、

 

「秘密主義の四葉家は、やはり他家に戦力を見られたくはないのでしょうね」

 

「独断で動いたら、たとえ今回の襲撃が成功していても非難されていたよ」

 

「…非難を気にしないって、ことでしょうね」

 

四葉の独立自恃の精神は、他家には傲慢に感じるはずだ。

レストラン会議のぎこちなさや、師族会議の連携不足は四葉家のせいだって、他の十師族は考えるだろう。

今回のグ・ジー捜索隊は、十師族間の軋轢を浮き彫りにしている。

それは無意識なのか、自然の流れなのか、故意なのか…グ・ジーの捜索よりも、いずれ大きな問題の端緒になる気がする。

 

 

1時間後、一高前駅のキャビネット乗り場で達也くんたちと待ち合わせをする。

僕の心の中のもやもやは、何かを殴りたい気分にさせる。

勿論、殴ったところで僕の手が痛いだけだからしないけど、深雪さんの表情もやや暗い。

グ・ジーの確保失敗に深雪さんは少し落ち込んでいた。これは純粋に婚約者の身体を心配してだろう。

 

「久も、お疲れ様ね」

 

寒さに肩を窄めていた僕に深雪さんが優しく声をかけた。

 

「うぅん、僕は何もしてないよ。ほとんど往復のバイクで達也くんに抱き着いていただけだった」

 

「抱き…ついていた?」

 

深雪さん、今朝も笑顔が素敵だね。

 

「流石に4時間も抱きしめていたから、腕が疲れちゃった」

 

腕を揉む。

 

「達也くんの体温と香りが宿っているみたいだよ」

 

「4時間も」

 

今朝は冷えるな。小雪がちらついている。

 

「でも2人で高速道路を走りながら見た朝日は、綺麗だったな。夜明けのデートみたいで、雪を頂いた富士山もご褒美みたいだった」

 

「体温、香り…でーと」

 

「達也くんと一晩を過ごすのは初めてだったから…一生の思い出になったな。達也くんのぬくもりが忘れられないよ」

 

もやもやはあるけど、達也くんと最初から任務にあたるのは初めてだったから、襲撃も含めて、ちょっと楽しんでしまったことは否定できない。

 

「久、誤解を招く発言をするな」

 

ぽかっ!

 

「あー、達也くん、ぐーで殴った!深雪さーん」

 

僕は深雪さんの背中に隠れる。深雪さんの背中に手を触れているけど、深雪さんは気にしないで僕の黒髪を撫ぜてくれる。

 

「お兄様、久は私たちの可愛い妹ですよ、女の子に手を挙げるなんて非常識です」

 

「妹じゃないって、お義兄さんだよ」

 

水波ちゃんが、そんな四葉の兄妹のじゃれあいをジト目で見ている。

それは平和な日常の風景だった。

 

 

 

 




レストラン会議の翌朝、達也と吉見が四葉家単独で、鎌倉のグ・ジー潜伏先を襲撃します。
原作では、さらっと襲撃していますが、
これって、それまでの会議や十師族協力はどこに行ったんだ的な流れです。
二日後、将輝が一高に来る月曜日の会議までには、
克人と真由美に、襲撃の件は報告できる範囲で話しているって、こちらもさらっと書かれています。
四葉家が勝手に動いて、事後承諾することに、2人がどう思ったかは書かれていません。
これでは四葉は十文字と七草をまるっきり信用していない、もしくは戦力としてあてにしていないって思われます。
克人は、どう思ったでしょうね。

原作では四葉以外の組織は、独立魔装部隊以外はほとんど無能のように描写されているので、仕方がないのですが、
達也や四葉が失敗する時は、たとえばグ・ジー逮捕の失敗やなんかは、他の誰かが足を引っ張るからです。
八雲の介入とかエリカのバカ兄貴さんとか。
諸葛孔明が負けるときは、部下の誰かが失敗するみたいな雰囲気です。
黒羽の双子がもっと強ければ、次のグ・ジー襲撃も成功したはずですし。
このあたりから最新刊まで、原作中での達也と四葉の行動が『片手落ち』だと感じるのは、
達也が強すぎて、単独で動かしにくくなった結果、他とのバランスが難しい、
次期当主に決まった深雪がまったく動かせられない、
達也と深雪が共闘する場面がなくなったから、と思うのは自分だけでしょうか。

では、また次回。



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