パープルアイズ・人が作りし神   作:Q弥

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もう完全に女の子だ…

艦これで駆逐艦・深雪がドロップするたびに、深雪さんだって思うんだ(笑)。


真夜中は別の顔

僕は、重要な岐路に立たされている。

二日前の誘拐事件で、烈くんに貰った一校の制服を失った。

僕は二着の制服を交互にクリーニングに出しながら着ている。

もう一着は、クリーニング屋に預けたままだ。駅までの通学路にあるからいつも帰宅途中に受け取りに行っている。

昨日、受け取りに行くのを忘れていて、今は、朝の7時。

つまり、クリーニング屋は開いていない。

 

僕の目の前には、一校の女性用の制服が壁にかけられている。九重八雲さんが用意してくれた制服だ。

木魚がわりに叩こうと思っていたけれど、お弟子さんが僕を女子と間違えていたそうで、お弟子さんは叱っておいたって。

あまり叱らないであげてください。僕は八雲さんがわざとやったんだって邪推していましたって電話で謝ったら、八雲さんは薄く笑って許してくれた。

男子の制服はぶかぶかだけれど、この女子の制服は僕のサイズにぴったりで、キャミソールに紫色のラベンダーがあしらわれていて可愛い…

あっホントに可愛いな…僕これ結構好きかも…いや、違う!

 

一校には制服を着ていかなくてはならない…

 

そうだ、僕はみなに病弱と思われている所があるので、クリーニング屋が開店する時間を待って、午後から登校しよう。

そうするとただでさえ遅れがちな僕の成績は危険領域に達するかも…

 

いっいや、全てのアニメや漫画のヒロインが頭が良い訳ではないはずだ。

『ニセコイ』の小野寺小咲さんだってあんまり頭が良くないのに頑張って凡矢理高校に入学したじゃないか。

…ん?僕はヒロインじゃない…なんて愚にもつかないことを考えていたら、

 

不意に来客を告げるチャイムがなった。ドアホンのモニターを見ると、七草生徒会長が朝から機嫌よく立っていた。

 

「久ちゃん、お姉さんといっしょに学校行きましょう!」

 

小野寺小咲さんにそっくりな声だ。僕はこの声と深雪さんの声には何故か逆らえないのだ…

 

…?、待って、どうして僕が今、女子用の制服しか持っていないって知っているの?

女の勘?まるちすこーぷ?魔法師の能力はここまで進んでいたのか!?

 

七草会長が僕のことを心配して、お家の車で送迎してくれるのは、本当に嬉しい。

でも、学校まで直接行かないで、わざわざ高校前駅で降りて、歩いていくのは何故だろう。

ブランド物を見せびらかすように。いやペットかな?

 

手と手をつないで、七草生徒会長は「真由美お姉さんでいいわよ」…真由美さんは機嫌よく、女子用制服の僕は恥ずかしさでうつむいて涙目で歩く。

 

途中で会った渡辺委員長が「真由美も色々とストレスを溜めていてな…すまないな」と苦笑していたけど、助けてはくれなかった。

僕のメンタルの心配はしてくれないのか…二日前は大変だったんだよ。

 

「お昼ごはんは生徒会室で一緒に食べましょう。達也君と深雪さんも一緒よ」

 

いやだ、達也くんにこの姿を見られるのは嫌だ(バーチャルデートでワンピース姿を見られたけれど、あれは男の子の勝負服だって深雪さんが言ってたもん)。

 

しかし、教室には深雪さんがいる…

1-Aの教室に僕が入ったときのクラスのざわざわは、深雪さんが初めて教室に来たときと同じくらいのざわざわだった。

ちょっと森崎くん、どうしてそんなに顔を真っ赤にしてるの!

1-Aで僕と話をしてくれる男子は森崎くんだけなんだよ!どうして逃げるの!?

 

自分の席に向かう。隣の席は当然…

 

「久…あなた…」

 

やめて、深雪さん、何も言わないで…

 

「次のお休みの日、一緒にお買い物に行かない?あなた服はあまり持っていないって言っていたわよね」

 

僕の行動範囲は学校と、通学路、あとは自宅に殆ど引きこもっているので、制服とパジャマ以外は、適当な服はほとんどない。

服より、深雪さんがくれたエプロンの方が多い。深雪さんは何着エプロンを持っているのだろう。

 

「え?本当に?僕お買い物は近所のスーパーで食材しか買ったことがないから嬉しい、行く!」

 

僕はハットトリック音痴のファンタジスタだけど、実は買い物音痴でもあるんだ…もうキングオブ音痴だ。

 

雫さんとほのかさんが「私も行く」「だったら私も行く!」参加を表明してきた。

 

僕は男の子の服とかわかんないから、深雪さんたちが選んでくれるなら安心だな。楽しみだな。

 

僕は基本的に人を疑うことを知らない…

 

その日、僕はショッピングセンターで、深雪さんと、雫さんと、ほのかさんに散々着せ替え人形にさせられた。

 

「あらこのブラ、久に似合うんじゃないかしら」

 

ブラはまだ早いって達也くんが言っていたよ…うぅ。

どうして学校の女子生徒は僕を女の子扱いしたがるのだろう。真由美さんと同じで、ストレスを抱えているのかな…

僕のストレスは…もういい。

 

 

 

4月24日、達也くんの誕生日会に僕も参加させてもらった。

誕生日プレゼントはどうしよう、って呟いたら、「私にまかせて」と深雪さんが言った。

 

いつもの喫茶店だったのだけれど、深雪さん以外は僕とエリカさんしか誕生会のことを知らなかった。

エリカさんも騙されたとか良くわからないことを言っていた。

エリカさんは人をからかうくせに、自分がからかわれるとプンスカする。ちょっとメンド…いやお友達の悪口はだめだよ。

 

「さあ準備しましょう」って着替え室に僕を連れて行く深雪さん。

 

プレゼントの準備かな。歌とか?僕は歌には自信があるんだよ。

『咲日和』の衣たんの誕生日の会みたいに、みんなで歌うんだね「達也たんいえぇ~い♪」

 

僕は人を疑うことを知った方が良いと思う。

控え室から出てきた僕の格好は、どうみてもフリフリのヒラヒラのお姫様だった。

娘のピアノ発表会で気合入れまくりの母親みたいな深雪さんは、もう…満面の笑みで素敵だな

 

「僕より、深雪さんがドレス着て達也くん祝えばいいのに。その方が達也くん喜ぶよ」

 

「私だけ着飾っては、何の準備もできていなかったほかの皆さんに失礼でしょ」

 

たぶん夜、二人きりになって、ドレスでお祝いするつもりなんだ。

もう、結婚しちゃいなよ…

 

深雪さんが、破顔一笑した。あれ?また僕、口に出してた…?

 

その笑顔を見せられては、もう好きにして…と言う気分になっていた。

化粧までしてくれて、深雪さんが唇にルージュを引いてくれて。あ?これ深雪さんのルージュなの!?ドキドキ。

 

 

「よく似合っている」

 

達也くんの言葉に喜んで良いのだろうか。達也くんは基本的に深雪さんのする事は全肯定するんだ…

エリカさんはにやにや、雫さん無言で写真撮りまくらないで…

 

「達也たん、いえ~い♪」

 

 

 

 

「そういえば、久君の誕生日はいつなんですか?」

 

微妙に落ち込んでいた僕に美月さんが尋ねてきた。

 

「僕?4月1日だよ」

 

本当はわからないけれど、戸籍上はそうなっている。

 

「えぇ!?久が一番の年上なのか!?」

 

レオくんが声を上げ、全員が同様に驚いている。

何を言っているのだろう、僕が年上なのは当然じゃないか。僕より年上なのは知り合いでは烈くんくらいなのに。

 

「じゃぁ少し遅れたが、久も一緒に誕生日を祝おうか」

 

「うぇ?でも今日は達也くんの誕生日会じゃない」

 

「構わないわよ、お兄様、久、誕生日おめでとうございます」

 

みんなが、店長さんも「おめでとう」と言ってくれた。

誕生日を祝ってもらったことなんて一度も無い僕は、嬉しくて、幸せで、涙をぼろぼろ流しながら「ありがとう」って…

 

ろうそくの火を達也くんと一緒に吹き消して、店長さんが用意してくれたケーキを切り分けることになったんだけれども、

 

「あっ店長さんといれると9等分に切らなくちゃ…9等分ってどう切ればいいのかな」

 

エリカさんの言葉に、店長さんは自ら辞退してくれた…ごめんなさい。

 

 

 

 

 

 

幸せな気持ちで、自宅に帰宅した。魔法科高校に入学できてよかった。

深雪さんがくれたこのお姫様の服は、もう着ることはないだろうな。ない…よね!

 

パジャマの僕は、遅れた分を取り戻そうと勉強していた。

 

ぷるるるる。

 

20時頃、携帯が鳴った。相手は、九重八雲さんだった。

 

「今夜、例の組織を襲撃するよ」

 

僕は長い髪の毛を適当にリボンでまとめると、唯一まともな男の子の格好(光宣くんのお古だ)に着替える。

 

迎えのセダンに乗り込むと、飄々とした八雲さんが「これに着替えて」と動きやすい戦闘服を貸してくれた。

暗くせまい車内の中でごそごそと着替える。

 

「出家の僕は俗世にはあまり関わりたくはないんだけれど、乗りかかった船でもあるし…今回限りって事で」

 

つるつるの頭を撫ぜながら「もっと大きな組織ともつながりがありそうだからねぇ」と呟く。

 

組織のことはわからないけれど、当面の安全確保が僕の目的だ。

誘拐組織にたびたび狙われては、勉強もろくにできない。今でもできてないから、もっとひどくなる…

 

「監視カメラはすでに押さえてあるから、建物を壊さない程度で少し派手にやってもいいよ。その間に弟子たちが客船の方を襲撃するからね」

 

陽動作戦か。昔よくやったから慣れている。

 

「何人いるんですか?」

 

「幹部と戦闘員ふくめて53人」

 

「全員、殺してもいいんですか?」

 

「うん。でもこの人物だけは僕が捕まえるから、もし見つけても殺さずに足止めしておいてね」

 

その組織の大幹部は古式の魔法師で隠形が得意なんだそうだ。僕は制圧向けなので、その手の魔法師は苦手だ。

 

セダンが、その表向きは貿易商社の立派なビルの前にとまる。

僕は端末とCADを車において、外にでる。そのまま堂々と正面ホールに歩いていく。

 

「じゃあ始めようか」

 

気配を感じさせない、八雲さんの声だけが聞こえた。

 

「うん」

 

頷くと、僕の姿は、薄い紫色の光を残して、夜の闇に消えた。

 

 

 

 

翌日。

横浜港に停泊中の豪華客船から、世界中で行方不明になっていた魔法師たちが、警察によって救出された。

スクリューを破損し航行不能になっていた擬装された客船には、元魔法科高校一校生の姿もあった。

 

 

 

僕は、男子のぶかぶかの制服を着て、とてとて登校する。

1-Aの教室には、友人が無事見つかって喜ぶ森崎くんの笑顔があった。

 

 

 

 




久は、ずっと絶対服従の暗示を受けていた影響で、回復した今でも、人の言うことを素直に聞いてしまいます。
肉体や魔法力は回復できても、精神支配はわずかに残っている、と言う設定です。
どれだけ疑っても、女装させられる運命…


精神とは何か…それは四葉がずっと追い求めてきた謎ね…ふふふっ。

お読みいただきありがとうございます。


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