パープルアイズ・人が作りし神   作:Q弥

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劣等性SS一気読みしました。
しかし、美月は影がうすいですねぇ、美月主人公のエピソードがないと幹比古とは進展しなさそう…


戦略級魔法師

藤林響子さんとは、その後も色々なお話をした。

僕はあまり物を知らないので、基本的に話すのは響子さん(そう呼ぶようになった)の方だ。

だんだん響子さんの話は愚痴っぽくなってきて、仕事の後輩の可愛げのないシスコン男の話を聞くに、僕は同情に耐えなかった…

 

お昼になって、響子さんはストレスを思いっきり発散させたすっきりした顔でお仕事で集会があるからと部屋を出て行った。

ご飯を一緒に食べたかったけれど、それは今度と言う事に。

僕はどうしようかと思ったけれど、

 

「VIP用のレストランで好きなものを好きなだけ注文して良いわよ。全部、お祖父様が払ってくれるわ」

 

と頼もしいことをいわれたので、早速同じ階のレストランに行った。

僕は起きているうちは絶えず回復しているので、物凄くお腹がすくんだ。

どれだけ食べても太らない…成長も出来ていないけれど。

 

でも、VIP用レストランに入って凄く後悔した。

お昼時間だと言うのに、僕以外誰も利用者がいないのだ。烈くんも来ないし、テーブルマナーも知らないし、僕よりウェイターの人数が多いって…落ち着かない

何だか居残りの教室みたいで、食欲も減退するな…

 

やっぱり生徒用の食堂に行こうかと思っていたら、車椅子の五輪澪さんが、護衛の人とともにレストランに入ってきた。

護衛の人は入り口で控えて、澪さんは僕に気づくと車椅子を自分で操って僕のところに来た。

 

「こんにちは、多治見君」

 

「こんにちは五輪澪さん」

 

お一人でしたら…相席はよろしいですか?と丁寧に尋ねられたので、僕は喜んでOKした。

どれだけ美味しくても一人じゃ寂しいから。

 

「多治見君は…」「久でいいですよ」「じゃぁ私も澪で」

 

とお互い名前を呼ぶように約束した。

 

澪さんは僕に学校のことを聞いてきた。澪さんは病弱で学校にいけなかったので、学校生活に興味があるそうだ。

 

澪さんは小食で、僕が健啖にぱくぱく食べている姿をほほえましく見つめてくれる。

 

また勉強の話になった。魔法科高校の勉強は難しくて大変だ。

 

「僕は入試前までは山奥に引きこもっていたみたいなものだから勉強は苦手で…」

 

僕の身体は最後の戦いで全身ぐちゃぐちゃにつぶれて、五感もすべて失われていた。

意識を取り戻したのはどれくらい経ってからだろうか。

遺伝子レベルに染み込んだ薬物や壊れた部位の排除を繰り返したため、男的な頑強な部分がなくなってしまった。

エネルギーを補給できず、能力だけで回復したので、一回り縮んで、ますます女の子みたいになって…

 

言葉を選んで、僕の病気のことを話したら、澪さんは凄く同情と共感してくれたみたいだった。

 

「…そう」

 

澪さんは僕の男の子らしくない体形を、病気のせいだと思ったようだ。

 

秀でた魔法師は魔法力と身体のギャップで、病気とは違うさまざまな症状がでるみたいだ。

光宣くんや澪さんはそれで苦しんでいるんだ…

完璧な遺伝子なんて創れないんだ。僕も身を持って知っている…

 

学校の友人はみんなとても優秀で、僕のレベルじゃ足を引っ張るだけだから、一度も勉強の質問をしたことが無い。

教師も正直いって人間的な能力に不信がある。だからテキストの丸暗記になっちゃって…

そもそも魔法の理論の勉強はいきなり専門用語の羅列でパニックだ。

 

僕の話を静かに聞いていた澪さんは「わかりました、久君は基礎が出来ていないんです」

 

「でも基礎ができていなくても、魔法は大体使えるし…」

 

澪さんは少し考えて…

 

「久君はドリブルもレイアップシュートも練習しないで、いきなりダンクシュートを決めようとしているのです」

 

「はっ!」

 

それは僕の脳髄にダイレクトで伝わる言葉だった。

 

「身体能力がずば抜けて強い『桜木花道』くんと、魔法力がずば抜けて強い僕は…同じ…」

 

澪さんが端末で、二つの起動式をみせてくれて、

 

「この二つの違いはわかりますか?」

 

「さっぱり」

 

「じゃあ量産型ザクのF型とJ型の違いは?」

 

「えぇ!?全然違うよ、バーニアの形とかスラスターの有無とか防塵フィルターとか…」

 

「なるほど…久君は空間や立体の理解はすばらしいけれど、逆に端末内の…つまりデジタルが苦手なのね」

 

魔法の専門用語ではなく、僕の偏った知識に上手に当てはめて説明してくれる…

 

「すごい、すごいよ澪さん!澪さんの説明物凄く良くわかる!もっと教えてください!」

 

その日、僕は澪さんに勉強を教えてもらうことになった。

僕の部屋では無理なので、澪さんが泊まっているVIP用のスィートルームに勉強道具を持って行く。

 

澪さんは病弱だったせいで学校は休みがちで、特に大学以降は自宅にいることが多かったので、アニメやコミックスを沢山読んでいるのだそうだ。

 

 

「恋はいつでもハリケーンなのじゃ!!!」

 

「撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ」

 

「てめぇらの血は何味だーっ!」「久君、それはケロロ軍曹ねっ!」

 

 

その晩は、勉強そっちのけでアニメ激熱台詞掛け合いごっこをしてしました。

一高の友人とはこんなことできないから、心の底から楽しかった。

 

これは…運命の出会いかも知れない…

 

「僕と…」

 

「私と…」

 

 

「「オタク友達になってください!」」

 

 

勉強後も(殆どしてないけれど)、澪さんが貸してくれたパジャマに着替えて、深夜まで、オタクトークに花が咲く。

疲れた僕たちはベッドで寝そべりながらも話を続け…

気が付いたら、朝。

僕は澪さんと手をつなぎながら、一緒のベッドで眠っていた…

パジャマかわりのジャージを着た澪さんのすこやかな寝顔を見ながら、僕もまた眠りに落ちた。さすが『すこやん』…

 

 

あれ?僕は藤林響子さんと婚約したことになっているから、ほかの女性と寝ちゃっていたのは、浮気?

えぇ?婚約当日に、浮気!?

これはまずいかもしれないけれど、僕、子供だし…と都合よく子供をアピールしてごまかそう…むにゃむにゃ…

 

 

あっ、しまった、九校戦の開会式…ガン無視しちゃった…

 

 

開会式のあと、競技が始まった。

僕は澪さんに誘われて大会用本部のVIPルームでモニター観戦していた。

本来なら一生徒は入れない場所らしいんだけれど、澪さんの希望はあっさりと了解された。

澪さんの要望は大概通るんだそうだ。すごいな。

でも、ここだと選手を直接見たりできず、観客の熱狂も厚い壁の向こうで、自宅でテレビを観るのとかわらないな。

澪さんはあまり人目につくところには出てはいけないんだそうだ。

大人は色々と事情があるんだな。

僕の試合は直接見てほしいなって言ったら、観客席横の来賓席で見られるように調整するって言ってくれた。

 

澪さんは九校戦のファンなので、出場選手の得意魔法や使用魔法、戦法なんかを詳しく説明してくれる。

 

一日目のスピード・シューティング男女予選と決勝、バトル・ボード男女予選。

二日目のクラウド・ボール男女予選と決勝、アイス・ピラーズ・ブレイク男女予選。

三日目のバトル・ボード男女準決勝、決勝。アイス・ピラーズ・ブレイク男女決勝リーグ。

 

先輩たちの競技を空調のきいたVIPルームで澪さんとわいわい言いながら見て、夜はアニメ漫画トークで盛り上がり…澪さんの部屋で寝て…

澪さんは僕を歳の離れた弟みたいに扱うので、僕もすっかり打ち解けてしまった。

三日間はあっという間に時間が過ぎていった。

 

渡辺委員長の事故のときは、驚いたけれど、達也くんがすばやく対処していたみたいでよかった。

僕がいても何も出来ないからなぁ…

 

四日目の新人戦が始まる朝、僕の携帯端末に、真由美さんと深雪さんのメールが溜まりに溜まっていることに気が付いた…

端末は自室に置きっぱなしだった。

澪さんに競技の準備があるから、今日は一緒の観戦は出来ないと、VIPルームまで直接断りに行った。

 

「そうですか…残念です」

 

「あっああ、でもお昼ご飯までなら大丈夫です!」

 

寂しそうな澪さんを放っておけずに、午前中はVIPルームで手をつなぎながら森崎くんやほのかさんの試合を見ていた。

澪さんは少し、子供っぽいところがある。

周りの偉い人たちも、澪さんにはあまり強く物を言えないみたいだ。愛されているんだなぁ。

今は大型モニターでほのかさんのバトル・ボードを見ていたけれど、

 

「「きゃっぁぁぁ」」

 

ほのかさんの閃光魔法には澪さんともども声を上げて驚いていた。

 

 

早めのお昼ごはんを澪さんと一緒に食べて、僕は一高の天幕におどおどと顔をだした。

真由美さんが新人戦女子スピード・シューティングで上位を独占した雫さんたちと達也くんを褒めたたえていた。

 

天幕に足を踏み入れたとたん、みんなの視線が僕に集まった。

幕内の浮ついた空気が変わった…いや、気温が数度さがった。

真由美さんはふうと安堵のため息をついて、頬に治療あとのある渡辺委員長や生徒会メンバーは真由美さん同様一安心していた。

 

しまった、返信メールを出すのを、すっかり忘れていた…僕はひとつに集中すると、他に意識が行かなくなる癖がある。

 

僕は音信不通状態で、深雪さんは僕が富士の樹海で迷子に、真由美さんはまた誘拐されたんじゃないかと心配していたそうだ。

 

「久っ!ちょっとそこに正座なさい!」

 

あっ深雪さんは怒った顔も素敵です…

 

「ごめんなさい!ある意味ずっとホテルで引きこもっていたんです!」

 

澪さんが会場にいることは、誰にも言ってはいけないんだそうで、となると言い訳は何も出来なくなる。

必死に謝ったんだけれど…ごめんなさい。

 

スピード・シューティングで雫さんが使った魔法がインデックスに登録される可能性があり、登録者名を雫さんにして欲しいと達也くんが謙遜していた。

真由美さんたちは怪訝そうに、深雪さんは少し悲しそうに、達也くんの辞退理由を聞いていた。

 

やっぱり達也くんは凄いな。

明日は、達也くんに恥をかかせないよう、僕も新人戦アイス・ピラーズ・ブレイク頑張らなくちゃ。

達也くんが調整してくれたCADで負けたなんて絶対にいやだもの。

澪さんも応援してくれているし。

 

 

その夜、僕は勝利でハイになった女子生徒に散々着せ替え人形にされた。

そんな中、深雪さんは笑顔にどこか不機嫌さを隠していた。何があったんだろう。僕でストレスを発散するのはやめてぇ!

 

達也くんになぐさめてもらいなよ…

 

表情は変わらないけれど、深雪さんの機嫌がすこし良くなった気がした。この後、達也くんの部屋に行くのかな?

 

深雪さんの攻撃がはげしくなった。どうしてこんなに色んな衣装があるんだろう?

待って、明日、僕試合なんだよ!

え?アイス・ピラーズ・ブレイクの衣装?ちょっと待って、僕は男の子だよ!

 

 

うぅ、明日のアイス・ピラーズ・ブレイクは男の子らしく頑張ろう…




あはは、五輪澪さんを隠れオタクの面白お姉さんにしてしまいました。

深雪や先輩たちの活躍は原作どおりなので同じ事をここで書きません。
お読みいただき有難うございました。
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