パープルアイズ・人が作りし神   作:Q弥

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そろそろオリ主と達也を絡めたい。
でもその前に重要イベントを入れないと!


四と五と九
川の字


 

 

 

僕は三歳のときに実験動物になって研究所に入れられた。

それからの7年間、体中をいじくり回された。そのことに恨みはない。自分で選んだ結果だから。

世界は群発戦争で大混乱だったし、日本もかなり追い詰められていた。

僕のあげる小さな声は大きな戦いの音にかき消されるだけだった。

7年間のうちの数ヶ月は戦場ですごした。

最後は特攻を命じられて、『能力』の制御ができず、半径100キロにわたる更地を作ったりもした。

最後の半年は、烈くんがいろいろと話を聞かせてくれて楽しかったけれど、僕は勉強をしたことがない。

実験動物に一番必要ないものは知恵だからだと思う。

戦場では、破壊工作や人殺しの方法をいくつか知った。

僕は、命じられたことをこなすだけの機械でしかなかったから…

 

 

だから、今、僕はこの状況で何をすればいいかさっぱりわからず、照明を落とした寝室の天井を見ながら硬直している。

 

僕の左右には、二人の女性が寝ている。

 

僕の右腕に腕を絡めて(柔らかい胸がむちむちあたる…)、大人らしいシルクのパジャマで寝ているのは、

藤林響子さん。26歳。「電子の魔女(エレクトロン・ソーサリス)」の異名を持つ目の涼やかな美女。

九島烈くんの孫で光宣くんの従姉弟。現在は防衛省にお勤めのキャリアウーマンさん。

僕の婚約者になっているけれど、本人は絶対僕をからかって遊んでいる。

仕事場の後輩のシスコン男の話は、涙なしにはいられない。ストレスが溜まっているんだな。

声は『伊藤静』さん。静姫…

 

僕の左腕に腕を絡めて(あれ…胸がない…まったく?…)、大人らしくない上下ジャージで寝ているのは、

五輪 澪さん。25歳。国家公認戦略級魔法師「十三使徒」の一人で、小柄で虚弱体質な可愛らしい女性。

世界的にも超有名で戦略級魔法「深淵(アビス)」の使い手。

現在は大学院生だけれど、体質のために特例で自宅でのオンライン講習している引きこもりさん。

21世紀前半のアニメ漫画に詳しく、あまり女性らしくない体形のせいで(本人には絶対に言えない)性別を越えた僕のオタク友達だ。

声は僕の脳内変換で『後藤沙緒里』さんと言うことになっている。可愛い…

 

真ん中の僕は、実験動物だった頃の面影はない。

どう見ても10歳そこそこの腰まで黒髪を伸ばした(切りたいんだけれど、周りが反対するんだ…)、人形じみた容貌の美少女…

現在、男性ファン急増中の魔法科高校一年生男子。男の娘?…いや断じて違う!

 

一見すると美女ふたりに美少女の『川の字』だ。

僕が普通の高校生男子だったら、ハーレムうはうはフルスロットルなんだけれど、僕の身体もメンタルも基本10歳の子供だ。

『身体は子供、頭脳は大人』なコナンくんと違い、『身体も頭脳も子供』…

 

性欲は殆どあんまり微塵もちっともこれっぽっちも、ない…興味はあ…いっいや…その…うぅ。

 

両隣のふたりは、寝息も可愛く、すやすや寝ている。

僕はスプリングのきいたベッドで寝返りもうてない…

ずっとこの体勢と言うのは結構苦しい。

右を向くと、胸元をはだけさせた、響子さん。

左を向くと、女性というより女の子、見た目『すこやん』な澪さん。

 

どうしよう…う…ん…良い香りだな…同じシャンプーなのに女性が使うと空気まで変わる気がする。

体勢は苦しいけれど、心は、温かい…んっ目を閉じてじっとしていようか…

 

僕はいつの間にか眠りに落ちていた。

悪い夢も見ない、深い眠りだった。すうすう。

 

朝になった。

響子さんはすっきりと、僕はもう少し温もりに包まれていたい、澪さんは基本お寝坊さんだ。

 

台所の食卓で僕たちは朝食をとっていた。

ごくごく普通の和食の朝食なんだけれど、作ったのは、僕だ。

響子さんも澪さんも料理はからっきしだった。二人とも名家のお嬢様だからしかたがないけれど…

 

「このお味噌汁、おいしいですね」

「赤味噌なのね」

「出汁はとりすぎず、あまり煮立てないのがコツだよ、やっぱお揚げが至高だね」

 

三人、話が弾まないまま、お味噌汁をずるる。

 

食べ終わった食器を三人並んで洗う…うぅ狭い。

 

「ふぅ~ごちそうさまでした」

 

食後のお茶を飲みながら、響子さんが隣に座る澪さんに昨夜とおなじ事を言い始める。

 

「でも、どうして澪さんがお泊りしていくんですか?」

 

「久君は未成年なんですよ、そんな一人暮らしのお家に響子さんお一人を泊めるわけにはいかないでしょう」

 

「私たちは婚約しているんです何の問題もありません。第一、澪さんは他人でしょう、人の家庭に意見を言える立場ではありませんよ」

 

澪さんは必死に、響子さんはからかうように話を続ける。

 

「久君は私にとって、お友達であり弟のような存在なんです!久君、私のことは澪お姉ちゃんと呼んでくださいね」

 

…澪お姉ちゃん。お姉ちゃん…えへへ。

 

「澪さん、弟さんがいらっしゃるでしょう、たしか七草真由美さんと交際のお話が進んでいるとか」

 

それは、ちょっと気になる情報だな…こんど女装させられそうな時にネタとして使ってみよう。

 

「お二人とも、喧嘩はしないでください。響子さんもからかわないでくださいよぉ。僕としては烈くんの決定は決定として、響子さんにはふさわしい人とお付き合いしてくれたら良いと思うんですけど…」

 

「ひどい、私のことは遊びだったのね」

 

「僕のほうが遊ばれていますよぉ、僕は真剣なんですよ…」

 

響子さんは話をまぜっかえして、面白い方向に持っていこうとしている…

 

「そうですよ、藤林さんはまだお若いんだし、いくらでも素敵な出会いがあると思いますよ」

 

「澪さんは私よりひとつ年下なだけでしょう…それを言うなら澪さんもふさわしい方がいらっしゃいますよ?」

 

「私はこんな虚弱体質ですし…女の幸せはすでにあきらめています…」

 

「そんなぁ、澪さんそんな悲しいこと言わないで!」

 

 

それに貰い手が無いときは、久君にお嫁さんに貰ってもらおうかしら…ぶつぶつ。

 

 

ん?今、心の声が聞こえたような…僕はエスパーじゃないけど…

 

「虚弱って…とっても元気そうですけれど…」

 

響子さんのジト目に、澪さんが頷いた。

 

「実は九校戦のころから少し調子が良くって…こんなに良いのは大学に入る前以来です…」

 

澪さんの肌ツヤは、これまででも一番張りがある。澪さんが元気になってくれると嬉しいな。一緒にアキバにも行きたいし。

 

「澪さんはもう少しご飯を食べた方が良いと思うな。栄養つけて元気になろうよ!僕料理部でもっと『女子力』をあげて、澪お姉ちゃんに美味しいもの食べさせてあげるね」

 

澪さんは、栄養をつけてもっと脂肪をつけたほうが良いと思う。

抱き心地が響子さんにくらべてかたい…いや、これは澪さんの健康を考えて…うん。

 

「えへへ、澪お姉ちゃんか…有難う久君。久君のご飯を食べるにはこの家に住まないといけませんね」

 

澪お姉ちゃんは凄く嬉しそうだ。その笑顔に毒気が抜かれたのか響子さんも素に戻った。

 

「とは言え、私も仕事の関係で、久君の家に毎日帰る、と言うわけにはいかないのよね」

 

「私も、学校は端末でOKなんですが、登録魔法師としては自宅を離れ続けるわけにもいかなくて。ここには緊急時にヘリは降りられませんから」

 

あのでかいヘリが、こんな住宅街に降りてこられたら、大迷惑です。

澪さんは戦略魔法師なので非常時につねに備えておかなくてはいけないらしい。

今も、警護の人が家の近隣を固めているそうだ…それは僕の安全も守られるからいいんだけれど…戦略魔法師は大変だなぁ。

 

響子さんはお仕事に差しさわりがない日には家に顔をだしてくれるそうで、澪さんも週の半分は自宅に戻ることになった。

 

「いずれこの家の裏にヘリポートを作って、愛の巣を…ぶつぶつ。」

 

裏にって、他の人を追い出しちゃ駄目ですよ!

 

「久くん、今夜は一緒にお風呂入りましょう、婚約者なんだから遠慮はいらないわよ!」

 

「藤林さん!!それはまだ早いですよ!だったら私も一緒に入ります!」

 

「家のお風呂はそんなに大きくないですよ!」

 

結局その日は、三人でどたばたとライトノベル的な一日をおくった。

二人は家事を手伝ってくれて、九校戦で着たキャミソールを着させられて…

響子さんは自分の電動クーペでお仕事を片付けて、澪さんは勉強を教えてくれた。

オタクトークに花が咲いた時には響子さんはドン引きしていたけれど。

夜、お風呂に入っているとき、本当に響子さんがバスタオル一枚で入ってきて、澪さんもお姉ちゃんが髪を洗ってあげるって入ってきて…

 

「ちょっ、二人とも身体くらい自分で洗えるから、どこ触って、だめ、あっそこは大事な…ああああぁ」

 

気のせいか、僕をいぢめる時の二人は『翼&岬』のゴールデンコンビも驚く息の合い方で…

 

僕、もうお嫁にいけない…ん?おムコだったっけ?

 

お風呂あがり、僕の髪を二人が綺麗にくしけずってくれて、とっても気持ちよかった。

 

「久君や澪さんの髪はすごく綺麗ね。わたしはどうしても跳ね返っちゃって」

 

響子さんの髪の毛は、響子さんの性格みたいだ。澪さんはお人形さんみたいだね。

お互いの髪を整えながら…ってこれ完全に女の子同士だよね…

正直、長い髪の毛は面倒なんだけれど、こんな日常も楽しいな。

 

その夜は、昨夜と同じような状態で三人で川の字で寝た。朝には一文字になっていたけれど。

背中に柔らかい暖かいものや、シャンプーや女性の香りに包まれて…

二人とも、僕を抱きまくらかぬいぐるみ扱いしているよな…

それでも熟睡できてしまった僕は大物なのかもしれない。

 

朴念仁…?いやいや、僕は10歳の男の娘だし。ん?

 

翌朝、響子さんは自分の電動クーペで出勤。

澪さんはお迎えのおっきなリムジンで帰宅して行った。あれは角を曲がれるのかな。

 

 

「ふう」

 

僕は深いため息をついて、玄関の扉をロックする。

 

僕は起きている間に『回復』するから、逆に、眠るとまったく回復できない。

一人で眠ると、怖い夢を必ず見るから、一人のときは極力起きている。

誰かが隣にいてくれると、怖い夢をみないで眠れるから澪さんと響子さんのおかげで頭のリフレッシュはできた。

凄く楽しかったけれど、使ったことのない筋肉を酷使した感じだ。

九校戦の疲れはないけれど、今日は一日休憩だな。つまり引きこもる。

お茶でもいれようかな…と考えたところで、ああ今夜は一人なのか…と寂しくなった。

なんだかんだで三人でいたときは修学旅行みたいで楽しかったんだな。

まぁ三日後には澪さんはまた来てくれるし、響子さんもその日の予定をメールしてくれるそうだ。

それまでは食料の備蓄もあるし、家に引きこもって、大人しくしていよう。

 

そう思っていたら、ぴんぽーん。おなじみのドアホンが鳴った。

 

こんな朝から来客かな?まさか勧誘かな、宗教の勧誘なら、たいがい二人連れだから、モニターをみて出るかどうか考えよう。

 

「うっ…」

 

モニターには黒い二人の少女が映っていた。双子の女の子…一人はにっこりと、もうひとりは苦虫を噛み潰したような表情…

 

「こんにちは、多治見久さん」

 

黒いコスプレまがいの格好の二人、『ヨル』と『ヤミ』。二人の後ろには黒いリムジン…

 

「そんな黒い大きな車、逆に目立ってしょうがないよ?」

 

「大丈夫です、認識阻害の魔法を使っていますから」

 

「…」

 

街中での魔法の使用は厳しく制限されているのではなかったのだろうか…

 

「これから、主のところにお連れいたしますので、失礼のない服装に着替えてください」

 

「えぇと、今日は朝の占いが悪かったので外出は控えたいなぁ、宿題も溜まってるし」

 

「大丈夫です、車の中でお勉強はお手伝いします」

 

「ヨルちゃんは魔法科高校一年の勉強わかるの?」

 

「あなたよりできますわよ」

 

『ヨル』ちゃんの目は厳しい…なんで僕の成績知ってるの?情報ダダ漏れ?

 

「ええと、どちらに向かわれるのでございますか?」

 

モニターの中の『ヨル』さんは、

 

「横浜の魔法師協会本部ビルです。さっさと扉をあけないと、破壊して、首に縄をくくって、全身を縛り上げて引きずっていきますわよ」

 

本気の目でそう僕に告げる。

 

「姉さん、さっさと壊そう、車もいつまでもここにおいて置いては面倒だ」

 

ものすごく面倒になりそうなことを『ヤミ』ちゃんが言ってる…

 

「うぅ、わかりました…」

 

この二人、怖いな…僕は何故か敬語で答えていた。

横浜の魔法師協会ビル?二人の主?いったい誰がそこにいるんだろう。

 

 

 




久は起きている間は回復を繰り返しています。
逆に、寝ている間は巨大すぎるサイオンが脳を攻撃してしまい夢見が悪くなります。
誰かと触れながら寝ると、悪い夢は見ません。
何故でしょうかねぇ…?
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